脳血管障害によって生じてくる言語障害の実態調査として, 長野県鹿教湯温泉療養所入院患者を対象に, アンケート調査を行なった. この調査は, 言語障害患者に言語検査を行なうための準備調査であったが, その結果にも, 脳血管障害と言語障害の関係を知るうえに, 興味ある知見がえられた.
アンケートの内容は, 言語障害を中心に, 運動・知覚障害, 意識障害, 嚥下障害などについて, 発病時と現在の状態とに分け, わかりやすい短い質問文と簡単な解答形式を用い, 患者またはその家族に解答させた.
対象人員は187名で, 年令は20~80才にわたるが, 50~60才代が全体の74%を占めた.
調査結果から, 次のような結論をえた.
1) 187名中97名 (52%) は, 発病時, 言語障害がみられた. うち, 失語症24名, 構音障害39名, 失語症+構音障害15名, いずれとも判定のつかぬもの19名であった.
2) 運動・知覚障害が右側の場合, 77%に, 発病時, 言語障害がみられたのに比し, 左側では, 28%である.
3) 言語障害の予後の点からいえば, 運動・知覚障害が左側にある方が良好である.
4) 構音障害は, 上肢・顔面に運動障害がある場合および, 嚥下障害がある場合に, 多くみられる.
5) 失語症, 構音障害とも, 運動・知覚障害が右側の場合に多くみられる.
6) 発病後における意識障害の有無と, 言語障害との関連性は, 認められなかった.
7) きき手と言語優位側との関係は, 左きき両ききが少ないため, 結論に達しなかった.
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