日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
21 巻, 2 号
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  • 後藤 由夫
    1984 年 21 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 1984/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    肉眼視できる最も少ない光量の100万分の一ほどの極く弱い光を検出する装置が開発され,その医学分野への応用も可能になった. このような弱い光では光子の流れは不連続で計測結果は電流としてではなく, 単位時間当りの光子数として表わされる.
    微弱な発光としては, 古くからホタルなどの luciferin-luciferase 反応によるものや, 発光蛋白質の分解により発光する生物種などが知られ, 生物発光と呼ばれている. 他方, luminol に代表される化学発光がある. 両者は励起分子が発光する点において同一である.
    この化学発光に属するものに一重項酸素の発光がある. 即ち, 励起状態の活性酸素である一重項酸素が基底状態の三重項酸素に遷移する時に光子を放出する. この性質を利用し生体試料中での一重項酸素の存在を知ることができる. ただし, 他にも発光種はあるので注意を要する.
    生体試料中での一重項酸素などによる発光は肉眼視できぬ極く微弱なもので極微弱発光と呼ぼれ, その中でも血液の発光のように極端に弱い発光を超微弱発光と称している.
    われわれは人の血液の超微弱発光の計測を行ない, 主として血漿に関して, 糖尿病や諸肝疾患で発光量が高いことを認めた. scavenger や発光スペクトルの分析からこれらの発光に一重項酸素の関与が示唆された.
    正常人でも喫煙すると血液の超微弱発光が増加することが見い出された. この現象は禁煙により消失することも判明した. また, タバコの煙自体も強い超微弱発光を示し, 一重項酸素がその発光に関与すると推察された.
    free radical や活性酸素は老化や疾患と関連して注目されているが, 臨床的には扱いにくい. その中で一重項酸素を超微弱発光として把える手段は有用であり, その実用例を紹介した.
  • 稲田 満夫, 大西 利夫, 豊田 隆謙, 阿部 圭志, 加藤 堅一
    1984 年 21 巻 2 号 p. 79-106
    発行日: 1984/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 今井 幸充, 本間 昭, 長谷川 和夫, 稲田 陽一
    1984 年 21 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 1984/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー型痴呆 (AD) と診断された109名を対象に, 随伴する精神症状について検討し, それらと痴呆の程度およびCT上の脳萎縮の程度との関連について研究した. 痴呆の程度の評価は Hughes らの Clinical Dementia Rating (CDR) を用い, 知的機能の評価には, 長谷川式簡易痴呆スケール (HDS) を用いた.
    ADに随伴する精神症状の出現頻度をみると, 自発性低下が約半数にみられ, 俳徊, 人格水準低下, 易怒攻撃性が続いた. 痴呆の程度による随伴精神症状の出現頻度は, 軽度痴呆では, 自発性低下, 心気, 抑うつ状態が高く, 高度痴呆では, 俳徊, 人格水準低下, 失禁が高かった.
    脳萎縮の評価は, CT scan から脳髄液腔面積比と半値幅の計測を著者らの方法で行い評価した. 数量化I類, II類の分析結果から随伴精神症状と痴呆の程度および脳萎縮の関連をみると, 抑うつ状態は, 軽度の痴呆状態で脳萎縮の程度も軽いADに特徴的な精神症状で, 弄便は, 脳表萎縮が軽度であるにもかかわらず側脳室の拡大が著明な高度痴呆例に特徴的であることが示された. また保続は, 脳表萎縮が著明で側脳室の拡大は比較的軽度な軽度痴呆例に特徴的な症状であった. その他失禁は側脳室の拡大が著明な症例に, 俳徊は脳表萎縮が著明な高度痴呆例に, また妄想は脳表萎縮が軽度な高度痴呆例に, それぞれ比較的特徴的な精神症状であることが示唆された.
  • 大動脈脈波速度法 (PWV) による Elastase の長期効果
    長谷川 元治, 荒井 親雄, 竹内 光吉, 安部 信行, 福永 良文, 金海 洋雄, 高山 吉降, 岸 良典, 江森 勇, 駒沢 勉
    1984 年 21 巻 2 号 p. 115-123
    発行日: 1984/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    動脈硬化の非観血的診断法の一法として著者らは大動脈脈波速度法 (Aortic Pulse Wave Velocity, PWV) を開発し, 脈波発生原理と伝播理論, 定量的組織所見との関連, 臓器動脈硬化分布特性等PWVに関する基礎, 臨床, 疫学の諸問題を検討した上で薬効検定における本法の有用性を立証して来た.
    本稿では動脈硬化用剤エラスターゼを対象として長期投与の結果, PWVをパラメーターとする生物物理学的血管機能に有意の改善, 維持効果を認めた.
    1. 対照群, 年齢平均67.5歳, 観察期間27~117カ月 (平均63.2カ月) 35例およびエラスターゼ6cap, 10,800ELU/日・投与群, 年齢平均64.8歳, 観察期間31~118カ月 (平均82.4カ月) 50例, 計85例についてPWVを3カ月毎測定し, 両群の推計学的推移から本剤の薬効を検定した.
    2. 対照群のPWVは90カ月後8.17m/secから11.47m/secに, 投薬群は100カ月後8.20m/secから9.87m/secに増加したが, 前者の回帰係数0.0367に対し後者は0.0174の低値で推移した. 又観察期間20カ月以後両群のPWVはp<0.05~0.01で有意差を認めた.
    3. 投薬群各症例の効果を回帰係数分布から判定すると無効5例 (係数0.0367以上), 稍有効11例(0.0174~0.0367), 有効26例 (0~0.0174), 著効8例 (0以下) となった.
  • 日野 精二
    1984 年 21 巻 2 号 p. 124-132
    発行日: 1984/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    日本人中高年者に対して適正な運動を処方するとき, 最もその基盤となる最大酸素摂取量(VO2max) を推定することが非常に重要である. そこで中高年の鍛練男子 (平均年齢55±8.5歳) 21名と一般女子 (平均年齢46±5.9歳) 13名を対象に, 自転車エルゴメータを用いてVO2maxを実測するとともに, VO2max推定のための既存の各種間接法並びに今回著者が新しく作成した重回帰分析を用いた推定式の妥当性について検討した.
    1) ある一つの最大下作業時の状況からVO2maxを推定する際, 既存の Åstrand-Ryhming, Döbeln らと Siconolfi らの三者の年齢全般用の推定法の比較において, Siconolfi らの方法が各心拍数レベルともに推定誤差率 (%) の標準偏差が小さく, 特に心拍数 (HR) 131-140拍/分レベルでの推定の結果がよかった.
    2) Maritz らと Margaria らの方法を用い, 2~4つの最大下作業よりVO2maxを推定する場合, 集団あるいは個人のHRmax推定に問題はあるが, Maritz らの方法がよいことがわかった.
    3) われわれは鍛練中高年男子のVO2max測定データをもとにVO2max推定のための重回帰式を求め, 一般中高年女子に適用したが, HR 131~140拍/分と151~169拍/分レベルで良い推定値が得られた.その時の重回帰分析による推定式および推定誤差率 (%) の平均値±標準偏差と相関係数 (r) を以下に示す.
    HR131~140拍/分レベル:
    VO2max(1/min)=0.7505+0.1263・VO2/HR
    (推定誤差率 (%)=6.2±4.5, r=0.681)
    HR 151~169拍/分レベル:
    VO2max(1/min)=0.4511-2.3967・VO2+0.5309・VO2/HR
    (推定誤差率 (%)=4.0±9.1, r=0.493)
    さらに鍛練男子と一般女子の両群を併せた場合の前述の2つのHRレベルにおける推定誤差率 (%) と相関係数は, それぞれ3.8±8.5%, r=0.899と2.7±8.9%, r=0.886であった.
  • 1984 年 21 巻 2 号 p. 133-172
    発行日: 1984/03/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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