安静時及び運動負荷時の呼吸中枢機能の加齢変化を検討した.
1) 安静時の呼吸中枢の応答: 肺機能を含む臨床検査は正常を示した健常者の中で若年者19例, 中年者18例, 老年者14例を対象として分時換気量P
0.1及び呼吸パターンを測定した. 室内気吸入ではP
0.1, VE両者は三群の間で有意差はなかった. CO
2再呼吸時は呼気終末CO
2分圧とP
0.1, VEの間の直線回帰式のスロープを応答性の指標として, 若, 中, 老年者の三群で平均値を求めたところ, この有意差は見られなかった. またVEスロープと年齢の間には有意な相関関係は成立したがP
0.1スロープと年齢の間には有意な相関はなかった.
2) 運動負荷時の呼吸中枢の応答: 安静負荷時と同様に健常者の中で若年者22例, 中年者15例, 老年者13例を対象とした. 自転車エルゴメータにより漸増法負荷試験を行い, 安静時と同様の指標とV
O2, V
CO2の間の直線回帰式のスロープを換気応答性の指標とした. V
O2, V
CO2に対する換気応答の平均値を算出して, 若, 中, 老年者を比較すると, 老年者は若, 中年者より大きかった. V
O2, V
CO2に対する換気応答, 75watt負荷時のP
0.1と年齢の間に有意な正相関が認められた.
3) 安静時及び運動負荷時の呼吸中枢応答性の相互関係: 安静時の中枢応答の指標であるP
0.1スロープと運動時の換気応答の諸指標を同一個体で比較すると, 若, 中, 老年者とも両者の間には有意な相関関係は認められなかった.
以上より, つぎのように結論した.
(1) 呼吸中枢機能の加齢変化は安静時と運動負荷時とは異なっていた.
(2) 安静時CO
2負荷に対する呼吸中枢応答は加齢とともに軽度の減衰を示したが, この変化は有意ではなかった. これに対し運動負荷時には老年者呼吸中枢応答が有意に増強し, 呼吸器インピダンスおよび死腔換気率の増大にうちかって, 動脈血の恒常性を保持していた.
(3) 安静時の呼吸中枢機能と運動負荷時のそれとの間には相関関係はなく, この点に関する加齢変化は認められなかった.
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