日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
23 巻, 6 号
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  • 豊倉 康夫
    1986 年 23 巻 6 号 p. 545-551
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 勝野 真人, 金森 雅夫, 佐藤 龍三郎, 高岡 幹夫, 新開 省二, 近藤 高明, 加藤 春樹, 里見 宏, 久保 奈佳子, 籏野 脩一, ...
    1986 年 23 巻 6 号 p. 552-558
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    大腿骨頸部骨折は, 老人の活動を長期間阻害し, ねたきり老人の一因ともなる. しかし, わが国ではそのリスクファクターに関する研究は極めて乏しい. そこで今回, 患者対照研究を行なった. 調査対象としては, 東京都養育院のホーム入所者及び同院付属病院整形外科の入院・外来患者の中から, 過去3年以内に大腿骨頸部骨折の既往のある女性40名を得て骨折群とし, これに施設・性・年齢をマッチさせて対照群40名を抽出した. 平均年齢は79歳であった.
    骨折に関連すると思われる要因として, 牛乳, パン, 肉, 魚, 豆腐の摂取習慣, 職業・余暇の運動量, 飲酒・喫煙習慣, 妊娠・月経歴, 転倒経験, 服装, はきもの, 性格, 痴呆の有無, 身長, 体重, 血圧, ヘモグロビン, 血清アルブミン, カルシウム, リン, アルカリフォスファターゼ, MCI (中手骨皮質幅指数) GSmax (骨皮質密度), 残存歯数, 握力, 開眼片足立ち持続時間, などに関して面接調査と既存の検査成績から得た情報を集計, 解析した.
    骨折群は対照群に比して, 有意に肉をよく食べる者が多く, 豆腐をよく食べる者が少ない, 体重が少なく, BROCA指数も小さい, 閉経年齢が低い, 頻回転倒者の割合が高い. 痴呆の者が多い, 血清アルブミンが低い, との結果を得た. MCI, GSmaxには差が認められなかった.
    老人の骨折は, 骨粗鬆症を背景として, 転倒などを契機に起こることが多いと考えられるが, 痴呆とも関連が深い. 女性では早い閉経, やせはリスクを高める. 骨粗鬆症は, 加齢に従い生理的にもカルシウム代謝平衡が負に傾くために起こるが, 肉などの高蛋白食は負に, 牛乳, 豆腐などの高カルシウム食は正に作用するものと考えられる. しかし, 全身の骨量が一様に減少するわけではなく, 中手骨の骨量は必ずしも大腿骨頸部骨折のリスクを表わさない可能性がある.
  • 古賀 英俊, 森 秀樹, 厨 平, 賀来 俊, 橋場 邦武
    1986 年 23 巻 6 号 p. 559-564
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の急性心筋梗塞におけるカテコールアミン分泌に関して, 急性心筋梗塞初回発作で, 発症より12時間以内に入院した41例を対象として検討し, 以下の成績を得た.
    (1) 血中アドレナリンは測定した33例中51.5%, 血中ノルアドレナリンは87.9%と高率に異常高値が認められたが, 65歳以上の老年群は, アドレナリン20%, ノルアドレナリン70%と64歳以下の壮年群のそれの65.2%, 91.3%に比較して低頻度であった. 尿中カテコールアミンの異常高値出現頻度も, ほぼ同様の結果が得られた.
    (2) 血中アドレナリンの最高値も, 老年群は92.2±76.5pg/mlと, 壮年群の215.5±130.9pg/mlに比較して有意に低値 (p<0.01) であったが, 血中ノルアドレナリンの最高値には両群間に有意差は認められなかった.
    (3) 第1病日から第7病日までの尿中アドレナリンの総排泄量は, 壮年群の107.0±69.4μgに比較して, 老年群は60.6±31.5μgと有意に低値 (p<0.05) であった. 尿中ノルアドレナリンの総排泄量も,老年群は有意に低値であった (p<0.05).
    (4) 老年群の入院時の心拍数は, 平均63.2/分であり, 壮年群の75.7/分に比較して有意に少なく (p<0.05), 入院時の収縮期血圧には両群間に有意差は認められなかった. これは, 第1病日の血中アドレナリンは老年群で有意に低値であるが, 血中ノルアドレナリンは, 両群間に有意差がなかったことと関連しているものと考えられる.
    (5) 老年群と壮年群では, CPKmax, 肺動脈拡張期圧, および心係数には有意差は認められなかった. 以上の成績より, 老年者では交感神経系, とくに副腎髄質の反応が低下している可能性が示唆された.
  • 江本 二郎
    1986 年 23 巻 6 号 p. 565-572
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞発症3日以内に収容され, 直ちに Swan-Ganz カテーテルを挿入し得た100例を対象に60歳以上の老年者の梗塞部位, 合併症, 死亡率, CCU入室時の血行動態の特徴ならびにこれらの血行動態諸因子を用い, 多変量解析の一法である判別分析を行い, 入院1カ月以内の生命予後を検討した.
    前壁梗塞は加齢とともに漸減し, 下壁梗塞は各年代を通じほぼ同程度であった. 70歳以上では前壁, 下壁梗塞の合併が他の年代に比し多かった. 主な合併症では, 心不全が各年代を通じほぼ同程度であったが, 加齢とともにショックが増加し, 70歳以上では特に心破裂が多かった. 院内死亡率は70歳以上群が32.3%, 60歳代18.5%, 60歳未満群7.6%と老年者は有意に高率であった. 急性期血行動態では, 老年群は壮年群に比しMBP, CI, LVSWIが有意に低下し, HR, TPRIは有意に高値を示した. 右室機能 (RV slope) は老年群が壮年群に比し有意に低値を, 左室機能 (LV slope) は老年群が低い傾向にあったが有意ではなかった. 老年群における院内死亡例では, 生存例に比しMBP, CI, LVSWIが有意に低値を, HR, TPRIは高値を示した. 老年者の急性期血行動態諸因子より求めた判別式はZ (判別関数値)=-0.00219+(SBP×0.00133)+(DBP×0.00195)+(-MBP×0.00154)+(-PASP×0.00038)+(-PAEDP×0.002)+(-RAP×0.00019)+(HR×0.00125)+(-CI×0.01446)+(LVSWI×0.00087)+(-RVSWI×0.00165)であり, Mahalanobis の平方距離は5.30413, F値は4.24449であった. 求めた判別関数値が0.00219より大であれば生存に, それより小であれば死亡に予測でき, 本法による誤分類は13.1%であった. external sample 19例を同様の分析を行った結果, 誤分類は5.3%であった.
    以上より老年者急性心筋梗塞は壮年者に比し合併症, 死亡率は高頻度であり, 左右両心室の予備力および収縮力の低下が示唆された. また, 入院時血行動態諸因子による判別分析を用いた早期予後診断は臨床上有用であると考えられた.
  • 三木 治, 岩崎 有良, 松尾 裕, 大友 英一
    1986 年 23 巻 6 号 p. 573-578
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の消化性潰瘍について社会福祉法人浴風園および浴風会病院における臨床例, 剖検例について調査し比較検討した. 対象は同施設の65歳以上の男女で老人ホームの検診例113例, 院内内視鏡施行例133例, 剖検例318例について調べ以下の結果を得た.
    消化性潰瘍の頻度は検診例113例中4例 (3.6%), 院内内視鏡施行例133例中26例 (19.5%), 剖検318例中49例 (15.4%) であった. 十二指腸潰瘍は老年者でも比較的頻度が高く, 検診例113例中2例 (1.8%), 院内内視鏡施行例133例中9例 (6.8%), 剖検318例中17例 (5.3%) であった. 男女比では胃潰瘍で男性に多く認められるのに対して, 十二指腸潰瘍では女性に多い傾向であった. 胃潰瘍の部位別頻度では, 内視鏡施行例で体部に47%と最も多かったのに対し, 剖検例では胃角部に56%と多く, 両者に相違が見られた. 臨床例における自覚症状は老年者では乏しく, 他覚所見により発見される場合が多かった. 消化管出血の合併は, 胃潰瘍で46.8%, 十二指腸潰瘍で64.7%と高頻度であった. また, 剖検318例中41例 (12.8%) は消化管出血による死亡であり, そのうち15例 (36.5%) は消化性潰瘍によるものであった. さらに剖検における49例の消化性潰瘍のうち, 21例 (42.9%) に脳卒中が合併し, 新鮮な脳出血に限れば12例 (24.5%) に合併していた. またこれは十二指腸潰瘍に特に頻度が高かった.
    以上より, 老年者の消化性潰瘍は頻度も高く, 重篤で死亡率が高いことが理解でき, これは老年者の病態特異性のみならず, 合併症および基礎疾患に大きく影響されることが示唆された.
  • 発見時生存例の解析
    入來 正躬, 田中 正敏
    1986 年 23 巻 6 号 p. 579-587
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    偶発性低体温症 accidental hypothermia の日本における現況を把握するため, 昭和58, 59年度に, 北海道, 青森, 岩手, 山形, 新潟, 東京, 神奈川, 山梨の8地区を選び, アンケート調査を行った. アンケート発送数5743通, 回答数1697通, 症例数74例であった. 症例の中から, 発見時生存例30例について検討し, 次の結果を得た. 30例中改善21例, 不変2例, 死亡7例であった. 60歳以上8例中改善5例, 不変2例, 死亡1例であった.
    1. 発症の状況
    年齢: 60歳以上は30例中8例で26.7%を占める. 人口比から比べ老人に起こりやすいと言えよう. 性別: 若齢で男性に多く, 加齢とともに女性の占める割合が増す. 60歳以上では8例中7例が女性であった. 環境温度条件: 屋外での発症15例中13例は雪, 雨, 池に落ちるなど湿った状態で起こった. 屋内での発症は15例であった. 60歳以上の発症は1例を除き7例が屋内であった.
    2. 発症の原因
    事故と遭難13例, 酩酊7例, 自殺企図と疾病10例であった. 60歳以上では事故1例を除き他の例は何らかの疾患と関連していた.
    3. 発見時の所見
    発見時体温: 全例20℃以上であった. 20℃以上で改善例がみられた. 60歳以上の発見時体温は全例30℃以上であった. 意識: 30℃以下の全例で, また死亡例全例で意識が異常であった. 循環機能 (脈拍数と血圧): 35℃以下で血圧低下例や徐脈例が報告され, 25℃以下では全例で強い血圧低下と徐脈が報告された.
    4. 処置
    保温, 輸液, 呼吸確保が主な治療法として併用されている. 保温には電気毛布 (+湯たんぽ), 温水ブランケットなどが使用されている.
    5. 合併症, 予後: 合併症は4例で報告された. 改善例21例では退院まで1週以内の退院9例, 1~3週3例, 3週以上7例, 不明2例であった. 死亡例では8例中7例が10日以内に死亡した. 60歳以上では退院までの期間が長い.
  • 70歳以上の連続剖検例についての臨床病理学的検討
    今村 司, 西原 康雄, 石井 惟友
    1986 年 23 巻 6 号 p. 588-593
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    鞍手共立病院において, 昭和39年11月より昭和55年10月までの16年間に1,000例の剖検が行なわれ, うち70歳以上の例が631例 (男284例, 女347例) あった. うち悪性新生物を有していたものが126例 (男68例, 女58例) あり, 悪性新生物にて死亡した群と, 死因に関与しなかった群に大別して臨床病理学的に検討し, 以下の結果を得た.
    1) 悪性新生物にて死亡した例は男43例, 女40例の計83例であった. 男では肺癌と胃癌の例が最も多く, それぞれ11例であり, 次いで前立腺癌4例, 胆嚢癌, 結腸直腸癌, 食道癌が各々3例であった. 女では肺癌が13例と最も多く, 次いで胃癌8例, 担嚢癌, 結腸直腸癌が各々4例, 腎癌3例であった.
    2) 悪性新生物にて死亡した例のうち, 主たる癌について, それらの組織型をみると, 肺癌では男11例中6例が扁平上皮癌で, 次いで腺癌2例であった. 女は13例中5例が扁平上皮癌で, 腺癌が4例あった. 胃癌では男11例中8例が腺癌で, 3例が未分化癌であった. 女は8例中5例が腺癌であり, 3例が未分化癌であった. 胆嚢癌と結腸直腸癌は男女ともすべて腺癌であり, 腎癌は全例腎細胞癌であった.
    3) 死因に関与しなかった悪性新生物を有していた例は男25例, 女18例の計43例であった. 男では前立腺癌が10例で最も多く, 次いで胃癌5例, 肺癌4例, 甲状腺癌3例であった. 女では甲状腺癌が9例と最も多く, 次いで胃癌, 肺癌, 膵癌が各々2例であった.
    4) 重複癌の例が10例あったが, 肺癌と胃癌の組み合わせが, 術後の例も含めると5例と最も多かった.
    高齢者の疾患は複数の病気を有していたり, 症状が乏しかったり, 非定型的であったりして, つい診断が遅れがちであるが, 今後悪性新生物による死亡が増加すると考えられるので, 老人の悪性新生物に対しては早期診断と適切な治療が必要と考えられる.
  • 中村 慎一, 秋口 一郎, 亀山 正邦, 中村 紀子, 木村 宏
    1986 年 23 巻 6 号 p. 594-599
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    近年, アルツハイマー病 (以下AD) やアルツハイマー型老年痴呆 (以下SDAT) の病態と関連して, コリン神経系の変化が注目されている. その他, モノアミン, ソマトスタチン (以下SOM), P物質などの各種神経伝達物質または神経調節物質とされる内因性物質がAD/SDATでその含量が低下すると報告されている. 本研究では, そのうち, 大脳皮質の介在ニューロンとされるSOM陽性ニューロンについて免疫組織化学的にSDATと正常老人脳の大脳皮質を検討した. また, ヒト大脳皮質において, SOM陽性ニューロンの一部に共存するとされるニューロペプチドY (以下NPY) についても検討を試みた.
    対象はSDAT3例と正常老人3例で, 死後12時間以内に, Nagai らの方法により摘出後灌流固定された脳を用いた. 検索した部位は前頭極 (Area 10), 中前頭回 (Area 9), 中心前回 (Area 4), 上側頭回(Area 22), Area 17である. 凍結切片について, 抗SOMモノクローナル抗体と抗NPY抗体を用い, ABC法で染色した. すべての切片をチオフラビンSで重染色を行い, 老人斑との関連を観察した. 抗SOM抗体で染色した切片については, そのSOM陽性ニューロンの細胞密度を調べた. その結果, (1) ヒト大脳皮質のSOM陽性細胞は大部分が多極性で, 一部双極性細胞, 錐体細胞がみられた. (2) SDATでは, 腫大したSOM陽性線維が多く観察された. この腫大した線維の20~30%が老人斑にみられた. また全老人斑の1~2%にSOM陽性の腫大した線維が観察された. (3) SOM陽性細胞の密度は, 検討した皮質領野のいずれについても, SDATと正常老人脳に明らかな差がみられなかった. (4) NPY陽性線維はSDATにおいて, SOM陽性線維と同様に腫大し, その20~30%が老人斑内に観察された.
    以上より, SOM陽性線維とNPY陽性線維は, 老人斑の neurite の形成に関与していると推測される.
  • 無痛性梗塞について
    小田 修爾, 松下 哲, 戸田 源二, 坂井 誠, 大川 真一郎, 上田 慶二, 蔵本 築
    1986 年 23 巻 6 号 p. 600-604
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞の初発症状を検討し, 中でも特に胸痛の有無について臨床的な背景ならびに剖検所見の特徴について比較検討した.
    老年者連続剖検例より急性心筋梗塞153例 (男70例, 女83例, 平均年齢78.5歳) を対象にした. (1) 高齢者の急性心筋梗塞の初発症状において胸痛は56例 (36%) に認められるにすぎなかった. 次いで呼吸困難29例 (19%), ショック26例 (17%), 意識障害20例 (13%) が多く非特異的症状のみを示すものも認められた. (2) 無胸痛群は胸痛群に比して有意に平均年齢が高かった. (80.8vs76.1歳, p<0.01). (3) 無胸痛群は基礎合併疾患として脳血管障害が有意に高頻度であった (45例, 46.3%vs12例, 21.4%, p<0.01). また血管内凝固症候群, 癌も多い傾向にあったが糖尿病は差を認めなかった. また後壁梗塞が高頻度であった (33例, 36.3%vs11例, 19.6%, p<0.05). (4) 責任冠動脈病変は胸痛群では無胸痛群に比べて左冠動脈が有意に高頻度であった. (31例, 55.4%vs33例, 34.0%, p<0.01). 再梗塞は胸痛群が無胸痛群よりも多く認められた. (35例, 62.5%vs48例, 49.5%, p<0.05). (5) 梗塞サイズは両群共長径5cm以上の大梗塞が高頻度であったが, 無胸痛群は胸痛群に比べて中小梗塞がやや多い傾向にあった.
  • 松久 威史, 大島 博
    1986 年 23 巻 6 号 p. 605-610
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    胃内視鏡の反転法により観察される噴門形態を7型に分類し, 60歳以上の老年者の噴門形態の特徴を検討した.
    噴門形態を年齢別にみると, 噴門の閉じたI, II型は老年者において他の年齢層より少ない. それとは逆に, 噴門の開大したIV, V, VI型の症例は老年者に多くなる傾向がある.
    食道, 胃内圧および下部食道括約部圧をトランジューサー (Gaeltec 社製) を用いて測定し, それらの成績を噴門形態別に観察した. 下部食道静止圧を測定した老年者の平均値 (-1.6±0.4(SE)cmH2O) は, 若, 中年者のそれに比べわずかに低い傾向を示した. また, 噴門形態がI型 (鋭角型), II型 (円形閉鎖型) を示す老年者の残留胃内圧平均値 (8.8±0.9(SE)cmH2O) は, 若, 中年者の平均値よりやや低かった (p<0.1). 一方, 下部食道括約部圧を測定した老年者のうち, 噴門形態がIV, V, VI型の平均値 (35.3±3.7(SE)cmH2O) は若, 中年者の平均値より低値を示した (p<0.1). さらに, 老年者の下部食道括約部圧平均値 (36.9±2.5(SE)cmH2O) も若, 中年者のそれより低く有意差を認めた (p<0.02).
    他方, 早朝空腹時の血中ガストリン, セクレチン値を測定し, それらを対照群, 胃・十二指腸潰瘍群に分け, 各々について年齢別, 噴門形態別に検討した. 対照群の血中ガストリン値を60歳代と70歳以上に分けて観察すると両群とも中年者の平均値よりわずかに低値 (各々75.0±17.5(SE)pg/ml, 73.5±11.7(SE)pg/ml) を示した. また, 胃・十二指腸潰瘍患者の血中ガストリン値は若, 中年者の平均値よりも老年者の方がわずかに低かった (73.4±9.2(SE)pg/ml). これは, ガストリンのいわゆる下部食道括約部圧上昇作用ともよく一致している. さらに, これらの症例を噴門形態別にみても対照群, 胃・十二指腸潰瘍群とも形態との間に有意差を示さなかった. 一方, 血中セクレチン値は対照群, 胃・十二指腸潰瘍例とも各々年齢, 噴門各型の間に相関関係あるいは有意差を示さなかった.
  • 中野 博司, 南 順文, 武内 寛, 野崎 太矩祠, 大庭 建三, 妻鳥 昌平, 盤若 博司, 高田 加寿子, 高野 照夫, 本多 一義
    1986 年 23 巻 6 号 p. 611-615
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例86歳, 男性. 前立腺癌術後7年. 右下肢の浮腫を主訴に入院. 入院時, 右下肢の軽度の浮腫および皮膚温の低下を認めた. 前立腺癌は, 被膜を越えた浸潤および胸腰椎への転移を認めた. 入院中歩行時に突然に心悸亢進が出現, 頻脈および頻呼吸を伴った. 心電図は洞性頻脈で, I誘導のS波, V1~V3誘導でR波の減高, V1~V5誘導でT波の逆転を認めた. 右心カテーテル検査で軽度の肺高血圧および右心負荷を認めた. 血清諸酵素値の上昇は認めなかった. 肺血栓塞栓症を疑い肺血流スキャンを施行, 右上および中肺野に血流欠損部を認めた. 急性期に urokinase の少量投与を行い, 以後 ticlopidine を投与した. 血流欠損部は経過とともに縮小した. 下肢静脈スキャンで深部静脈血栓症を認めた.
    肺血栓塞栓症の発生頻度は, 加齢と伴に増加するが, その生前の診断率はいまだ低い. 本症の自, 他覚所見および検査所見の非特異性に加え, 老年者の多病性がその診断を困難にする. 深部静脈血栓症の risk を有する老年者が急性の非特異的な心肺系の症状を呈した場合は, 本症を考慮する必要がある.
  • 非高齢者との比較
    平木 俊吉, 大熨 泰亮, 河原 伸, 田村 亮, 米井 敏郎, 山下 英敏, 石井 純一, 木村 郁郎
    1986 年 23 巻 6 号 p. 616-617
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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