日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
24 巻, 6 号
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  • 下手 公一, 朝長 正徳, 葛原 茂樹, 山之内 博, 吉村 正博, 小林 祥泰, 木谷 光博, 山下 一也, 村田 昭博, 藤原 茂芳, ...
    1987 年 24 巻 6 号 p. 513-518
    発行日: 1987/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    小脳の加齢に伴う萎縮に関する報告はいくつかあり, すでに我々も, 20歳代から70歳代の正常人でCTにおける小脳の加齢性萎縮は, 大脳に比べて軽度認められることを報告している. 今回は, 臨床的及び病理学的に痴呆, 中枢神経系の病変を有さない60歳から102歳の正常老年者の剖検脳142例を対象として, 小脳の加齢性萎縮及び動脈硬化と小脳萎縮との関係について検討した.
    脳切時に小脳虫部, 小脳半球断面をコピーし, パーソナルコンピューターに接続した Digitizer で断面積を計測し, さらに, 小脳半球のプルキンエ細胞数や脳重量, 小脳重量も計測して, それぞれ年齢との関係を検討した. また, 椎骨脳底動脈系の動脈硬化を(-)から(2+)に分類して, 小脳萎縮との関係を検討した. 結果は, 脳重量, 小脳重量, 小脳虫部断面積, 小脳半球断面積のいずれにおいても年齢と有意の負の相関を示し, 特に80歳を越えてから小脳の萎縮が著明になった. プルキンエ細胞数は, 小脳萎縮よりも早期から加齢に伴い著明に減少した. また, 椎骨脳底動脈系の動脈硬化が強くなるにつれて, 小脳萎縮も強くなり, プルキンエ細胞数も著明に減少した.
    以上より, 老年者において加齢及び動脈硬化は, 小脳萎縮の重要な因子であることが示唆された.
  • 板垣 晃之, 春山 勝, 吉田 亮一, 鈴木 孝臣, 早川 道夫, 大友 英一, 盤若 博司
    1987 年 24 巻 6 号 p. 519-524
    発行日: 1987/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老人ホームに在住していた60歳以上の男女, 590例に経口ブドウ糖負荷試験を施行し, 糖尿病 (DM), 非糖尿病に分類し, 耐糖能別及びDMの治療法別で脳の大梗塞 (全例剖検にて確認) との関連を Retoro-spective に検討した. 又, 脳梗塞の発症に関連があると考えられる背景因子についても比較した.
    1: 大梗塞はDMと非DMで頻度の差は認めなかったが, DMの治療との関連をみると大梗塞はスルフォニールウレア (SU) 群22.5%で最も高率で食事単独 (F) 群の約6.8倍 (p<0.001), 非DMの2.6倍(p<0.01) であった. 高血圧の合併の頻度でみても, ほぼ同様で, 特に高血圧合併例ではDMのSU群はF群の7.2倍 (p<0.01), 非DMの2.5倍 (p<0.02) と高率であった.
    2: 背景因子としての死亡時年齢, 高血圧合併の頻度, 心房細動の頻度にはDMのSU群とF群の間で有意差を認めなかった. 初回検査時年齢 (発症年齢) および初回検査時の空腹時血糖が140mg/dl以上の例の頻度はSU群で有意に (p<0.01) 高く, 脳動脈硬化高度例の頻度は高い傾向 (p<0.1) であった.
    3: DMのSU群で大梗塞の有無により背景因子を比較すると低血糖は大梗塞例に有意 (p<0.05) に多く, 初回検査時空腹時血糖140mg/dl以上の症例の頻度は大梗塞例に多い傾向 (p<0.1) を認めた.
    以上の結果から脳動脈硬化が進展していると考えられる高齢者のDM例にSU剤を使用する場合, 低血糖の発生が脳の大梗塞の発症と何等かの形で関連している可能性も考えられるので, 特に注意を要する.
  • 集団検診受診者における検討より
    小林 陽二, 福生 吉裕, 中沢 良寿, 加藤 仁志, 渋谷 敏道, 赫 彰郎, 金川 卓郎
    1987 年 24 巻 6 号 p. 525-531
    発行日: 1987/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    768名の集団検診受診者を対象として, 耳朶皺襞 (Ear lobe crease, ELC) の有無と動脈硬化の危険因子である肥満, 高血圧, 心電図異常そしてアポ蛋白まで含めた血清脂質代謝との関連性について検討し, 下記の結果を得た.
    1. ELC有所見者は, 男性67名, 女性42名の計109名で, 50~80歳で高出現率であった.
    2. ELC (+) は男性で出現率が有意に高かった (p<0.01).
    3. ELC (+) 群中, 標準体重に比して20%以上の肥満者よりの出現率と±20%以内の正常体重群よりの出現率との間には有意の差は認めなかった.
    4. ELC (+) 群における高血圧者の頻度は, ELC (-) 群における頻度より有意に高値であった (p<0.01).
    5. ELC (+) 群における心電図異常者の頻度は, ELC (-) 群における頻度より有意に高値であった(p<0.01).
    6. TC, β-LpはELC (+) 群で有意に高値であったが, TRG, HDLCでは有意な差は認めなかった (p<0.05).
    7. TC, HDLCより計算した Atherogenic Index はELC (+) 群で有意に高値であった (p<0.02).
    8. アポ蛋白の検討では, ELC (+) 群で Apo AI, AIIそして Apo AI/B ratio も有意に低値であった (p<0.1, p<0.05, p<0.1).
    9. 年齢, 性を matching させ同様な検討を行った結果, ELC (+) 群で脂質代謝異常, 高血圧者の頻度は有意に高かった (p<0.01).
    10. 危険因子同士の組み合わせによる検討では, ELC (+) 群で脂質代謝異常, 心電図異常高血圧の組み合わせおよび脂質代謝異常, 高血圧の組み合わせを有する例が有意に高かった (p<0.01, p<0.05).
    以上の結果より, ELCは動脈硬化の一つの徴候であるものと考えられ, ELCの有無判定は動脈硬化の臨床的他覚所見の一つとして有用である. 特に短時間で多数の対象者を診察せねばならない集団検診などで, 動脈硬化のスクリーニングとして有用であると考えられた.
  • HbA1よりの検討
    大庭 建三, 春山 勝, 南 順文, 中野 博司, 山下 直博, 渕上 正章, 高尾 嘉興, 野崎 太矩祠, 志賀 幸雄, 妻鳥 昌平, 盤 ...
    1987 年 24 巻 6 号 p. 532-537
    発行日: 1987/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年糖尿病患者の血糖コントロールの指標としての朝食前血糖値 (FPG) および朝食後2~3時間血糖値 (PPG) の信頼性が若壮年者と同一であるか否かを検討する目的で, 外来受診中の血糖コントロールの比較的安定しているインスリン非依存型糖尿病患者 (NIDDM) の頻回に測定したFPGおよびPPGをHbA1およびHbA1C値の面より検討した. FPGおよびPPGとその4, 8および12週間後のHbA1およびHbA1C値とは全て有意の正の相関を認めたが, 食事療法群および薬物療法群 (経口血糖降下剤およびインスリン治療) のいずれも4週後との相関が最も良好であった. そこで, 4週間後のHbA1およびHbA1C値との相関関係を年代別, 治療法別に検討したところ, 老年群 (60歳以上) のPPGの相関係数は, 食事および薬物療法群のいずれも, 老年群のFPGや若壮年群のFPGおよびPPGに比し有意に低値であった. ついで, HbA1値を1%ごとの層別に分け, その各々の群の平均血糖値とその分散を老年群と若壮年群で比較した. FPGの両値には全群で差がなかったが, PPGは食事療法群の6, 7%台, 薬物療法群の6, 7, 8%台で, いずれも老年群が若壮年群に比して有意に高値であった. 以上から, 老年群のPPGの相関係数の低値は, 比較的コントロールの良好な範囲でHbA1値に対するPPGのばらつきが若壮年群に比較して大きいことが主なる要因と考えられた. そこで, 3~6カ月間に連続3回測定したHbA1値が9%未満かつその変動幅が0.2%未満と血糖コントロールの極めて安定していた例の各々1カ月前のPPGの変動係数を若壮年群と老年群で比較したところ, その平均値に有意の差はなかった. 以上の成績は, 老年NIDDM患者のPPGは, FPGや若壮年者のFPGおよびPPGに較べるとその高さに個人差が大きく, 血糖コントロールの指標としての信頼性が低いことを示しており, 臨床上留意すべき事実と考えられた.
  • 上條 桂一, 佐藤 美也子, 川崎 君王, 谷内 昭
    1987 年 24 巻 6 号 p. 538-543
    発行日: 1987/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    健常対照群109例を対象として高齢者における甲状腺機能の変化及び153例の癌患者を対象に疾患による low T3 syndrome の発生機序と加齢との関係を特に低栄養状態との関係で検討した.
    また, 高齢軽症入院患者70例を対象に長谷川式スケールを指標に老人性痴呆と甲状腺機能との関係, performance status と甲状腺機能との関係を検討することにより高齢者における甲状腺機能を病態生理学的に研究せんとした. 正常対照群では血清T3, T4, rT3値及びT3/T4は有意の変化を認めず, 血清TBG, FT4値は70歳代・80歳代で有意 (p<0.01) の低下をみた. 癌患者では血清T3値は60歳代で有意(p<0.05) に低下し, 70歳代・80歳代においても低下傾向を認めたが, 血清T4・rT3・FT4値に有意の変化はみられなかった.
    低栄養状態との関係について体重減少率を (I) 5%未満, (II) 5%以上10%未満, (III) 10%以上に分けて検討した. 血中T3及びT3/T4値は49歳以下・50歳代では体重減少の異なる3群の間に有意の差異は認めないが, 60歳代・70歳以上では体重減少10%以上の群で (I)・(II) 群に比較して有意に低下した. また血清rT3値は60歳代・70歳以上で10%以上の体重減少群で (I)・(II) に比較して有意 (p<0.01) の上昇を示したが, 血清TBG・FT4値には差異を認めなかった. 知的精神機能の老化と甲状腺機能との関係については血中T3・T3/T4は dementia ないし predementia 群で有意 (p<0.05) の低下がみられた. T4・TBG・TSH値は各群の間に差異を認めない. また, T3, T3/T4は長谷川式スケールとr=0.53, 0.52で有意 (p<0.01) の相関を示した. 5段階法を用いたperformance status と甲状腺機能との関係では血中T3・T3/T4は grade 3ないし4で有意の低下が認められたが, T4・TBG・TSH値には差異を認めなかった. 以上の結果から疾患自体による extrathyroidal conversion によるT3産生の抑制はより高齢者で著明であり, 特に体重減少の著明な癌患者において典型的な low T3 syndrome を呈することを明らかにし, また高齢入院患者では low T3 syndrome と老人性痴呆・performance status と相関することを示した.
  • カルシウム摂取及び身体活動の影響
    七田 恵子
    1987 年 24 巻 6 号 p. 544-554
    発行日: 1987/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の骨塩量に対する栄養素摂取及び日常身体活動の影響について検討した. 対象は東京都老人ホーム健康寮に在住する老人85名 (男性39名, 女性46名) で, その年齢範囲は65歳から96歳, 平均77.8±6.0歳である. 骨塩量測定にはMD法を用い, 骨密度 (GSmin.) と骨皮質幅 (MCI) を測定した. 3日間の全給食残量を秤り, カルシウム, リン, 蛋白質および脂肪の1日当たり摂取量を算出した. 身体活動状況は生活習慣, 歩行動作等について聞取り調査を行い, 身体活動スコアを求めた.
    年齢で補正したカルシウム摂取量と GSmin. の関係は男女ともに有意な正相関がみられ, MCIについては男性に有意な関連が見られた. 牛乳摂取群における GSmin. 平均値は非摂取群のそれに比し高値を示した. リン, 蛋白質, 脂肪の各摂取量が増加すると骨塩量も高値を示す傾向が見られたが, これは偏相関係数による分析により, これらの栄養素を含む食品中にはカルシウムが豊富に含まれ, そのカルシウムの影響であると示唆された. 日常身体活動と骨塩量間に有意な正相関が認められ, 老年者においては, 軽い運動は骨代謝のバミランスを維持するよう作用し, さらに身体活動を高めることにより体力, 食事量を増し, 結果的に体重, 筋力を介して骨塩量に好影響を及ぼすものと推察された. この種の調査にあってはいずれが原因でいずれが結果であると論じ難い面があるが, 老年者の骨塩量減少防止には, カルシウムを多く含む食物の摂取と日常の適度な運動が重要であると考えられた.
  • 齊藤 昇
    1987 年 24 巻 6 号 p. 555-560
    発行日: 1987/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    地域住民479例 (男性226例, 女性253例) を対象に心電図検診を行った成績では, 加齢によりRRは延長し, 心拍数は減少し, QTは延長した. 心電図のQRS電気軸は生後より10歳代迄で大となり, その後加齢と共に小となり, 左軸偏位に傾いた. PQは男性では30歳代迄, 女性で20歳代迄に比較的急速に延長し, それ以後軽度の延長にとどまり, この傾向は心拍数を1分間55~75に限っても同様であった. 男性ではPQと加齢との間でγ=0.582, RRと加齢との間でγ=0.638, QTと加齢との間でr=0.632の有意の正相関がみられ, 女性ではPQと加齢との間でr=0.593, RRと加齢との間でr=0.471, QTと加齢との間でr=0.564の有意の正相関があった. 収縮期および拡張期血圧は男性では20歳代迄, 女性では10歳代迄急速に上昇し, それ以後加齢により軽度の上昇傾向であった. Sv1+Rv5は男女共5~9歳代に1つのピークを形成し, その後20~30歳代で減少し, それ以後加齢により再び増加する傾向であった. 但し, 80歳代の男性例では血圧は正常で, そのためかSv1+Rv5は小となっていた.
    心電図の正常例は男女共加齢により減少し, Sv1+Rv5により判定された左室肥大は加齢により増加する傾向で, ST水平低下やT逆転も増加する傾向であった.
  • 池田 裕, 清水 映二, 前田 次郎, 虎谷 佳幸, 坂本 健一
    1987 年 24 巻 6 号 p. 561-566
    発行日: 1987/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Mahley らは高比重リポ蛋白質 (以下HDL) の抗動脈硬化作用にはHDL-with apo Eが重要な役割を果していると提唱したが, Bittolo Bon らは心筋硬塞生存者のHDLの apo E (以下HDL-E) が有意に低濃度であることを示して, この説を臨床面から支持した. ところで陳旧性脳硬塞患者 (以下OCI) のHDL-Eについての報告はないようである. そこで, OCIを対象に免疫固定電気泳動法を応用して開発した定量法でHDL-Eを測定した. 対照との比較で, OCIのHDLのコレステロール (以下HDL-C) と apo A-Iは低く, apo B, apo B/apo A-I (以下B/A-I) および atherogenic index (以下A.I.) は高い. そしてOCIのHDL-Eは, その濃度も全 apo Eに対する比 (以下HDL-E比) も, HDLの蛋白質や脂質に対する相対含量比も対照より有意に低くて, Bittolo Bon らの成績に一致した. この成績から, apo Eが異常に減少したHDLではその抗動脈硬化機能が減弱している可能性が示唆された. さらに新たな知見として, HDL-E比と動脈硬化の risk factor の指標とされているB/A-IやA.I.との間に負の相関関係が, negative-risk factor の指標とされているHDL-Cや apo A-Iとの間に相関関係が認められた. また, HDL-E比と apo Bとの間に負の相関関係をみいだしたことから, HDL-with apo Eが低比重リポ蛋白質 (以下LDL) レセプターに競合結合する結果, 高LDL血症を惹起するかも知れないという危惧は解消した. 以上から, HDL-E比が臨床的な negative-atherogenic index として有用であることが示唆された.
  • SPECT腎断層イメージによる測定
    大石 幸彦, 町田 豊平, 田代 和也, 木戸 晃, 和田 鉄郎, 鳥居 伸一郎, 吉越 富久夫, 山田 英夫, 丹野 宗彦, 外山 比南子
    1987 年 24 巻 6 号 p. 567-574
    発行日: 1987/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Single photon emission computed tomography (SPECT) で得られた99mTc-DMSA腎横断々層イメージから腎摂取率, 腎容積を求める腎機能検査法を試み, 老年者の腎機能について検討した. 対象は健常成人対照例20例, 年齢60歳~87歳, 平均70歳の老年者43例 (健常老年者13例, 各種老年腎疾患30例) の計63例である.
    腎容積は吸収補正を用い再構成した各横断々層イメージ上で, 最適いき値法により決定した腎辺縁内の voxel 数を加算し算出した. 腎断層画像は重畳積分法により再構成し, 吸収補正は Sorrenson による前補正法を用いたGE-STAR法により行い, 最適いき値は42%を使用した. 腎摂取率は腎容積内の総放射能を算出, 投与量に対する百分率で表した.
    健常老年者13例26腎の99mTc-DMSA腎摂取率23±5%は健常成人20例40腎27±2%と比較し, 有意(p<0.01) に低値を示した. 老年者43症例79腎の腎容積と腎摂取率, 43例の総腎容積および総腎摂取率と Ccr 値の相関はおのおのr=0.5081 (p<0.01), r=0.3592 (p<0.01), r=0.6417 (p<0.01) で, 総腎摂取率と Ccr 値は比較的よく相関した.
    本検査法は採血, 採尿を必要とせず, 腎断層イージも得られ老年者の分腎機能検査法として臨床的に有用と考えられた.
  • 山田 健嗣, 松澤 大樹, 小野 修一, 川島 隆太, 松井 博滋, 山田 進, 菱沼 隆
    1987 年 24 巻 6 号 p. 575-579
    発行日: 1987/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    MRIを用いて加齢による脳の萎縮を脳室系, 脳溝系に分けて評価し, 同時にMRIで描出される脳室周囲高信号域 (以下PVHと略す) と萎縮との関係を調べた. 眼窩外耳孔線から約70mm上の側脳室を通る一断面で頭蓋腔に占める脳実質, 脳室, 脳溝およびPVHの割合を計側し, それぞれ脳体積指数, 脳室指数, 脳溝指数, PVH指数とした. 対象は46歳から82歳の神経学的に異常を認めない47例について調べた. 加齢により脳体積指数は減少し, 脳室指数, 脳溝指数は増加したが, 脳室指数と脳溝指数の比, 即ち脳室脳溝比は加齢とともに有意に増加した (p<0.01, r=0.38). 脳室脳溝比と脳体積指数は負の相関を認めた. PVH指数は60歳代以降急激に増加し, 脳体積指数とは負の相関を認めた. 脳室脳溝比とPVH指数とは正の相関を示した. 以上より加齢による脳萎縮では脳室拡大がより萎縮に寄与していることがわかった. 又, 60代以降急増するPVHは脳萎縮, 脳室拡大と相関を認め, 脳萎縮に脳脊髄液の灌流が何らかの関係をもっている可能性が示唆された.
  • 田村 遵一, 久保田 一雄, 倉林 均, 白倉 卓夫, 中里 享美, 桜井 敏雄, 西野 和良, 中沢 真平
    1987 年 24 巻 6 号 p. 580-585
    発行日: 1987/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    70歳, 女性. 1981年3月著明な赤沈の亢進と高γグロブリン血症の精査目的で入院. 身体所見は両側頚部, 腋窩部のリンパ節腫大を除き異常はなかった. 赤沈149mm/hr, Hb11.5g/dl, WBC5,400, Plt13.3万. TP9.8g/dl, Alb38.0%, α13.0%, α27.8%, β8.0%, γ43.2%, IgG6,240mg/dl, IgA172mg/dl, IgM96mg/dl. 免疫電気泳動でIgGの多クローン性増加を認めた. CRP (-), RA (-), ANA (-), anti-DNA (-). 骨髄では異型性のない形質細胞の軽度の増加がみられた (8.6%). 左腋窩部リンパ節の生検組織像では軸索を中心に著明な形質細胞の増生が認められたが, 構造破壊はなかった. 無治療のまま経過観察していたが, 1985年6月IgGの増化傾向を認めたためプレドニソロンの経口投与 (25mg/day) を試みたところ, IgGは一過性に減少した. その後無治療であるが特に症状の出現や検査所見の増悪はみられない. リンパ節単核細胞は52.8%がEロゼット陽性のT細胞で, 表面γ, κ, λ鎖陽性細胞はそれぞれ39.2%, 13.5%, 11.0%であった. このことはIgG産生細胞の多クローン性増殖を示唆し, また組織のPAP染色の結果とも一致した. In vitro での末梢血液リンパ球のIgG, IL-2産生能はそれぞれ正常対照者に比べ亢進していた. 単クローン性抗体を用いたリンパ球細胞表面形質の検索結果は次の通りであった. OKT8+, Leu2a+/Leu15+(suppressor), Leu4+/HLA-DR+(activated T) 細胞は減少し, OKT9+, OKT10+, OKIa1+, HLA-DR+, Leu7-/Leullc+ (natural killer) 細胞は増加していた. 末梢血液単核細胞による, in vitro でのIgG産生能は亢進していたが, 末梢血液中では表面γ鎖陽性細胞の増加はみられなかった. PHA, Cor-A, PWMに対する反応性は正常であった. IPLの既報告例のほとんどが40歳以下の若年層であり, 通常は肝・脾腫が認められるが, 本例は70歳の高齢者であり肝・脾腫がないことなど, 様々な相違点がみられた.
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