日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
24 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 木村 郁郎
    1987 年 24 巻 3 号 p. 197-203
    発行日: 1987/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者の悪性腫瘍は一般に進行の緩かな場合が多いが, その治療面では困難を伴うことが多くその対策は十分とはいえない. 即ち若年では強固な宿主の故に治療も十分に行うことが出来, 従って進行癌でも完全寛解が比較的容易にもたらされ治癒せしめうることもある. 一方高齢者では宿主の抵抗力が減退し十分な化学療法を行うことが出来ず, 経過は長いとはいえ完全寛解又は治癒を期待することは難しい. 何れにしても宿主の老化を防ぎ, 抵抗力乃至免疫能を上げることが必要となって来る.
    免疫能の低下した状態にある癌の宿主は化学療法を行うことにより更に低下を来すので, 免疫賦活療法は必要であるが, 特に完全寛解後には再発防止の意味から重要である. 更にこの処置は次に問題となるであろう2次癌, 3次癌の予防にも関係して来ることになる. そこで免疫の老化を防ぎ癌の発生を抑圧する意味からも免疫賦活療法剤乃至BRMを用いることは有意義であると考えて十数年前から免疫賦活剤 (溶連菌剤, 有機ゲルマニウムなど) を発癌操作の直前にこれらを用いた所明瞭な発癌の遅延を認めた. 従って将来治療に行きずまった高齢者の癌の対策として前癌状態或は更に健康状態から癌発生の予防のためにこの様な予防措置が必要となるのではないかと思われる.
    以上高齢者の癌の対策として治療面に理論的に厚い壁が存在する現在, 今後の問題として同時に予防面の重要であることを強調したい.
  • 古賀 義則, 井藤 英喜, 菅野 和治, 五島 雄一郎, 梶山 梧朗, 都島 基夫, 沼野 藤夫, 国府 達郎
    1987 年 24 巻 3 号 p. 204-251
    発行日: 1987/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • その横断的観察について
    山岡 三郎, 亀田 明, 全田 慶夫, 鈴木 潔, 野山 修, 松下 裕子
    1987 年 24 巻 3 号 p. 252-264
    発行日: 1987/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    横浜市西区医師会では昭和47年以来, 区内在住の65歳以上の老人健診を行っているが, 今回は健診体制の最終的に整った55年4月より57年5月迄の受診者のデータを横断的に分析した. 検査項目は, 血圧, 心電図, 胸部レ線, 末梢血液一式, 11項目に及ぶ生化学検査, 比体重である. 第1週に詳しい問診及び諸検査を行い, 2週間目には区内医師が診察, データの説明を行い, 引続いて保健婦は生活指導を, 糖尿病, 高血圧, 肥満等の栄養指導は栄養士があたった. 年齢を5歳毎に分け, 循環器疾患の既往無し群 (以後Aとする.), 高血圧非受診群 (B), 同受診群 (C), 心疾患群 (D), 脳血管障害群 (E) の5群に分けて検討した.
    1) 性, 年齢: いずれの年代, 疾病別でも女性の方が多かった. 高齢になるに従い, 受診者も減っている. 西区全体の人口年齢比率とほぼ平行する様である.
    2) 血圧: 男女共に, 最大, 最小血圧共, 良くコントロールされていて, 著しい高値の群は見られなかった. 両性の差も, 殆んど無い.
    3) (a) コレステロール: 明らかな性差が見られ, 女性の方が男性よりも各疾病共多かった. 特に (E) が有意に高かった.
    (b) HDL-コレステロール: 性, 年齢, 疾病別に差は無かった.
    (c) 中性脂肪: コレステロールとほぼ同じ結果であった.
    4) 赤血球, ヘマトクリット: 男性の方が女性より全体に高かった.
    5) 心電図: 加齢と共に, 有所見者が増えている. (A) でも男性で約40~45%, 女性でも30~35%にも及んでいる. 他の群では更に有所見者が多い.
    6) 死亡例: 40例中, 脳, 心疾患計16名と最も多い. 脳血管死5例は生前の検査項目15種の中, 7項目で各1名のみ, 異常であったので, 将来の予後判定の参考とならないが, 心疾患11名は全例心電図異常があり, 血圧, 心胸比, 比体重にも異常が多かった. 5), 6) から将来の管理の重点が示唆された.
  • 藤田 素樹
    1987 年 24 巻 3 号 p. 265-271
    発行日: 1987/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    加齢に伴い, 視床下部-下垂体-甲状腺系の機能に変化が起こることが知られており, 高齢者における Thyrotropin-releasing hormone (TRH) 負荷試験の報告は数多く見られる. しかし, 病的老化現象である痴呆患者におけるTRH負荷試験の報告は極めて少ない. そこで筆者は健常若年者 (若年群) 11名, 60歳以上の非痴呆健常老人 (老年群) 16名およびアルツハイマー型老年痴呆患者 (SDAT) 32名に早朝空腹時TRH-タナベ500μgを静注負荷し, 負荷前および負荷後30分, 60分, 120分に採血して血漿TSH値を測定した. 血漿TSH値を追跡した. TSHは2抗体法のラジオイムノアッセイのキットを用いて測定した.
    その結果,
    1. 若年群, 老年群, SDAT群ともに負荷後の反応は男性より女性の方が高反応を示した.
    2. TRH負荷後, 若年群は基礎値3.3±0.2μU/ml (mean±SE) が12.7±2.2μU/mlに, 老人群は基礎値4.7±0.5μU/mlが21.0±2.4μU/mlに, SDAT群は基礎値4.1±0.4μU/mlが18.4±1.7μU/mlに上昇した. 基礎値では各群間に有意の差はみられなかったが, 老年群は若年群よりも高反応を示し, SDAT群は老人群とほぼ同様の成績であった.
    3. SDAT群ではΔmax TSHが5μU/ml未満のTSH低反応が4名, 負荷後60分以降に最高値が出現する遅延反応が16名に見られた.
    以上の成績を神経内分泌学的見地より考察し, 生理的老化と病的老化 (SDAT) の差異についても検討した.
  • 宮田 学, 奥野 資夫, 島村 佳成, 三宅 健夫
    1987 年 24 巻 3 号 p. 272-277
    発行日: 1987/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    亜鉛は生体にとって重要な必須微量元素である. 加齢による亜鉛代謝の変化を検討する目的で, 血清亜鉛濃度の経年的変動, 亜鉛の吸収および排泄の老若差をしらべた.
    血液生化学多項目同時測定により, 肝機能, 血清総蛋白, 血清アルブミン, 総コレステロール, 尿酸, BUN, 血糖など14項目すべてが正常範囲にある男285例, 女380例, 計665例について血清亜鉛濃度をフレーム原子吸光法により測定した. 20歳代より70歳代までの10歳区切りの年代別血清亜鉛濃度は加齢による変動を示さなかった. 各年代とも男が女よりやや高値であったが有意の差ではなかった. 成人の血清亜鉛濃度の正常範囲は, 20歳より35歳の健常男女の平均±2標準偏差として60~120μg/dlであった.
    亜鉛の腸管吸収を経口亜鉛負荷試験により検討した. 早朝空腹時に硫酸亜鉛220mg (亜鉛50mg含有)を約300mlの水に溶かして飲用させ, 投与前および投与後30分, 60分, 120分, 180分後の血清亜鉛濃度を測定した. 45歳以下の若年健常者8例と70歳以上の老年健常者7例で比較すると, 前値は老若間に差異はなく, 負荷後30分 (p<0.01), 60分, 120分, 180分 (いずれもp<0.05) で有意に老年群で低値を示した.
    亜鉛の主要排泄経路である膵液中への分泌は, パンクレオザイミン・セクレチン試験中の70分間に平均0.18mgであり, 老若群間に総排出量および排出パターンの差異は認められなかった.
    老年者では, 亜鉛の腸管における吸収能に低下がみられ, 潜在的亜鉛欠乏状態に陥りやすいと考えられる. 亜鉛は免疫能や蛋白合成に重要な役割を果しており, 高齢者の栄養指標として注意をはらう必要がある.
  • 上部消化管出血に焦点をあわせて
    武藤 信美, 椎名 泰文, 瀬上 一誠, 原澤 茂, 三輪 剛
    1987 年 24 巻 3 号 p. 278-283
    発行日: 1987/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    目的: 老年者胃潰瘍の再発に関し, 上部消化管出血例と非出血例とで比較検討した.
    対象: 当院での過去5年間における胃潰瘍入院患者367例のうち, 65歳以上の胃潰瘍74例 (平均年齢74±6.07歳, 男性45例, 女性29例) について検討した.
    検討項目: 1. 胃潰瘍入院患者数に占める老年者胃潰瘍入院患者の年次的変化. 2. 老年者胃潰瘍の病態 (潰瘍占居部位, 胃酸分泌能, 胃排出能). 3. 上部消化管出血例と非出血例との病態の比較. 4. 1年以上5年以内の経過観察において再発をきたした群と非再発群との病態の比較. 5. 内視鏡下純エタノール局注法施行例の再発の有無. 6. 全年齢における胃潰瘍手術例に占める消化管出血による手術例の年次的変化を検討した.
    成績: 1. 胃潰瘍入院患者数は昭和56年, 1年間に84例であったのに対し, 昭和60年は54例と減少していたが, 老年者では減少がみられなかった. 2. 潰瘍占居部位は高位潰瘍であるC位潰瘍が53例 (71.6%) と最も多かった. 胃酸分泌能 (mEq/h) はBAO 1.27±1.77, MAO 6.86±5.84と低酸例が多かった. 3. 出血例と非出血例とでは病態に有意な差はなかった. 4. 経過観察中, 再発をきたした例は全体の16%で, 出血既往の面からは特に差はみられなかった. 再発例は全例男性であり, 潰瘍占居部位は, 老年者胃潰瘍全体で高位潰瘍が多かったのに対し, 再発例では胃角部が5例(50%)と最も多かった. また, 再発例はMAO 11.73±9.25と比較的良好な酸分泌能が保たれていた. 5. 出血に対して純エタノール局注法を行なった症例には再発は認められなかった. 6. 消化管出血による手術例は近年減少の傾向がみられた.
    結語: 今回の検討では, 老年者胃潰瘍は, 出血例も非出血例も病態に差はなく, 出血に対して純エタノール局注法を施行した症例には再発を認めなかった. また, 再発症例は胃角部の潰瘍が多く, 比較的良好な酸分泌能が保たれていた.
  • 岡田 和悟, 小林 祥泰, 山口 修平, 木谷 光博, 有元 佐多雄, 下手 公一, 勝部 知子, 恒松 徳五郎
    1987 年 24 巻 3 号 p. 284-288
    発行日: 1987/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    痴呆患者の予後は不良であり, 5年後の死亡率はほぼ80%と報告されている. また, 痴呆患者の脳血流量低下の経過はその病型によって異なることが報告されている. 我々はすでに痴呆患者のCT上の脳萎縮と133Xe吸入法による脳血流量を同時に検討し, 痴呆の程度に対するそれらの関係が病型により異なることを報告してきた. 今回は, 上記についてすでに検討した35例の痴呆患者 (多発梗塞性痴呆 (MID) 22例, アルツハイーマー型痴呆 (DAT) 13例) の平均18カ月後 (3~48カ月) の予後調査を行った.
    [結果] 1) 調査期間中にDATでは13例中3例が, MIDでは22例中8例が死亡した. 2) DATにおいては, 死亡例は生存例に比し有意に高齢であった. 3) DATの悪化, 死亡群は不変群に比し有意に脳萎縮が強く, また両側頭頂葉で不変群に比し有意な脳血流量低下が認められた. 4) MIDでは死亡例で生存例 (悪化+不変群) に比し有意な全脳血流量低下が認められたが, 脳萎縮に差はみられなかった. 以上より痴呆の予後と脳血流量, 脳萎縮の関係は病型により異なることが示唆された.
  • 1987 年 24 巻 3 号 p. 289-314
    発行日: 1987/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
feedback
Top