横浜市西区医師会では昭和47年以来, 区内在住の65歳以上の老人健診を行っているが, 今回は健診体制の最終的に整った55年4月より57年5月迄の受診者のデータを横断的に分析した. 検査項目は, 血圧, 心電図, 胸部レ線, 末梢血液一式, 11項目に及ぶ生化学検査, 比体重である. 第1週に詳しい問診及び諸検査を行い, 2週間目には区内医師が診察, データの説明を行い, 引続いて保健婦は生活指導を, 糖尿病, 高血圧, 肥満等の栄養指導は栄養士があたった. 年齢を5歳毎に分け, 循環器疾患の既往無し群 (以後Aとする.), 高血圧非受診群 (B), 同受診群 (C), 心疾患群 (D), 脳血管障害群 (E) の5群に分けて検討した.
1) 性, 年齢: いずれの年代, 疾病別でも女性の方が多かった. 高齢になるに従い, 受診者も減っている. 西区全体の人口年齢比率とほぼ平行する様である.
2) 血圧: 男女共に, 最大, 最小血圧共, 良くコントロールされていて, 著しい高値の群は見られなかった. 両性の差も, 殆んど無い.
3) (a) コレステロール: 明らかな性差が見られ, 女性の方が男性よりも各疾病共多かった. 特に (E) が有意に高かった.
(b) HDL-コレステロール: 性, 年齢, 疾病別に差は無かった.
(c) 中性脂肪: コレステロールとほぼ同じ結果であった.
4) 赤血球, ヘマトクリット: 男性の方が女性より全体に高かった.
5) 心電図: 加齢と共に, 有所見者が増えている. (A) でも男性で約40~45%, 女性でも30~35%にも及んでいる. 他の群では更に有所見者が多い.
6) 死亡例: 40例中, 脳, 心疾患計16名と最も多い. 脳血管死5例は生前の検査項目15種の中, 7項目で各1名のみ, 異常であったので, 将来の予後判定の参考とならないが, 心疾患11名は全例心電図異常があり, 血圧, 心胸比, 比体重にも異常が多かった. 5), 6) から将来の管理の重点が示唆された.
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