日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
24 巻, 5 号
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  • 2. 好塩基球の反応性
    谷崎 勝朗, 駒越 春樹, 周藤 真康, 貴谷 光, 多田 慎也, 高橋 清, 木村 郁郎
    1987 年 24 巻 5 号 p. 421-426
    発行日: 1987/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    気管支喘息86例 (男32例, 女54例) を対象に, 抗ヒトIgEおよび特異抗原 (ハウスダスト,カンジダ) による好塩基球からのヒスタミン遊離におよぼす加齢の影響について検討を加えた. ヒスタミン遊離の結果は%ヒスタミン遊離で表わされたが, その程度は0~19%を低反応, 20~29%を中等度反応, 30%以上を高度反応として3段階に分類した.
    1. 抗ヒトIgEによる好塩基球からのヒスタミン遊離は, 血清IgE値が501IU/ml以上の場合は年齢と関係なくIgE値依存性であった.
    一方血清IgE値が低い症例 (300IU/ml以下) の好塩基球では, 年齢が高い群ほど反応性が低い例の比率が大きい傾向がみられ, 加齢との関連がより明らかに観察された. また発症年齢別検討では, 40歳以前発症症例の平均%ヒスタミン遊離は30.5±5.6%, 40歳以後の発症症例では18.6±2.8%であり, 40歳以前発症症例の好塩基球は, 40歳以後発症例に比べ有意に高い反応性を示した.
    2. ハウスダストに対する好塩基球の反応性は, 全般的には特異的IgE抗体依存性であり, RAST score 2+以上の症例の多くが中等度以上の好塩基球の反応性を示した. 一方このようなRAST score 2+以上の症例においても, 61歳以上の年齢層では好塩基球が低反応を示す症例もみられ, 加齢にともないハウスダストに対する好塩基球の反応性は低下する可能性が示唆された.
    3. カンジダに対する好塩基球の反応性も, RAST score 2+以上の症例においてより高度であったが, 0+または1+の症例においても中等度以上の反応性を示す症例がみられた. また中等度以上の反応性を示す好塩基球は, 41~50歳および61歳以上の年齢層においてより高頻度にみられた.
  • 坪井 成美, 西村 泰司, 秋元 成太
    1987 年 24 巻 5 号 p. 427-431
    発行日: 1987/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1982年5月以来172例に対し, 経皮的腎尿管結石摘出術を施行し, 60歳以上の症例は14例であった. 60歳未満の症例と比較し高齢者に対して本法を施行するうえでの問題点を検討した. 硬膜外麻酔下に患者をレントゲン透視台に腹臥位にねかせる. 側背部から腎盂まで経皮的に腎瘻を造設し, 内視鏡を挿入し結石を分割, 摘出する.
    対象となった患者は男性121名, 女性51名, 性比2.4:1であった. 60歳以上の症例では, 男性9名, 女性5名, 性比1.8:1とやや女性の比率が増加していた. 14症例のうち1名の尿管結石症例では本法で結石摘出が出来ず, 従来の尿管切石術を施行した. 基礎疾患として高血圧症と心房細動を有していた腎盂結石症例では術後心不全にて死亡した. 5mm以上の残石を認めた症例は3例 (23%) であった.
    入院期間は平均27.8日, 本法を開始してから退院までは平均21.5日で, 若年者に比して入院期間で5日, 本法開始から退院までで3.5日長かった.
    体外式超音波結石破砕装置が稼動を始め, 尿管鏡による尿管結石摘出術と本法とにより従来の手術は激減している. しかしどの方法を選択するにしても麻酔は不可欠であり, 麻酔に対する Risk は変わらない. 本法では腹臥位で施行するため呼吸抑制を引き起こしやすく, また内視鏡操作時の灌流液が静脈や粘膜から吸収され循環動態に対して負荷をかける可能性もある. 心肺機能及び腎機能の低下, もしくは予備力の低下している高齢者に対し本法を施行する場合, これらの Risk を考慮し基礎疾患との関連で適応を厳重に選択すべきである.
  • 特に胆石症との関連について
    木村 理, 大坪 浩一郎, 嶋田 裕之, 黒田 慧, 森岡 恭彦
    1987 年 24 巻 5 号 p. 432-436
    発行日: 1987/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌および胆管癌の剖検例における頻度を解析し, 特に胆石症との関連について検討した. 高齢者主体の剖検例4,482例 (男2,237例, 女2,245例, 平均年齢77.7歳) について剖検記録を調査し, 以下の結果を得た. 1. 胆嚢癌は94例, 2.1% (男24例, 女70例, 69~98歳, 平均年齢80.5歳) にみられ, 女性例が男性例に比べ有意に高率であった (p<0.01). 2. 男性における胆嚢癌および胆嚢結石の頻度は60歳から94歳までは加齢とともに増加する傾向が認められた (それぞれp<0.01, p<0.05) が, 胆嚢結石例における胆嚢癌合併頻度は60歳台以降では有意差がなかった. 3. 女性では胆嚢癌および胆嚢結石の頻度, 胆嚢結石例における胆嚢癌合併頻度はいずれも60歳台以降有意差がなかった. 4. 胆嚢癌は胆嚢結石保有例において非保有例に比べ有意に高く, さらに比較的早期の胆嚢癌には非胆嚢癌例に比べ, 有意に高率の胆嚢結石の合併を認めた (p<0.01). また胆嚢結石の種類では, 胆嚢癌非合併例に比し合併例においてコレステロール石が有意に高率に認められた (p<0.05). これらは胆嚢癌の背景因子としての胆石症, ことにコレステロール石の重要性を示唆するものである. 5. 胆管癌 (乳頭部癌および肝内胆管細胞癌は除く) は33例, 0.7% (男19例, 女14例, 66~91歳, 平均年齢78.2歳) にみられた. 胆管癌には性差はみられず, 胆管結石保有例には非保有例に比し有意に高率の胆管癌合併を認めた (p<0.01) が,多くの症例で胆管閉塞部位よりも上流に小さな結石を認めたことや, 胆道手術例11例では手術時に胆管結石がみられていないことから, 胆管癌に伴う二次的な胆石形成も否定し得なかった.
  • 武田 俊平, 松沢 大樹, 山田 健嗣
    1987 年 24 巻 5 号 p. 437-443
    発行日: 1987/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    神経学的異常のない10歳から88歳までの男536人, 女529人に対し頭部CT検査を行ない頭蓋腔容積と脳脊髄液腔容積を測定し脳萎縮指数BAI (脳脊髄液腔容積/頭蓋腔容積×100%) を算出し脳萎縮の加齢性変化を調べた. BAIは男女共25-34歳群が最小でそれ以降加齢の進行と共に指数函数的に増加した: 男; logBAI=-0.260+0.0150×年齢, r=0.707, n=493, p<0.001; 女; logBAI=-0.434+0.0162×年齢, r=0.757, n=504, p<0.001. 従ってBAIは男では20.1年, 女では18.5年で倍加する事になる. 同様に神経学的に異常のない19歳から88歳までの男197人, 女238人に対しゼノン133吸入法を用いて局所脳血流量rISIを測定し加齢性変化を調べた. 女では60歳代から有意にrISIの低下が始まり80歳にいたるまで加齢の進行に伴い略々直線的に低下したのに対し, 男では50歳代からrISIが有意に低下し始め60歳代にいたるが, それ以降80歳代にいたるまでは有意の低下を示さなくなり一定の閾値の存在がうかがえた. そこで一定の閾値 (rISI) 以下の脳血流量を示す脳局所が脱落して萎縮すると仮定して, 各年代において萎縮した脳体積と一致するrISIの度数分布を計算して閾値となるrISIを算出した所, 50歳代から70歳代において男で約32, 女で約37と各々一定した値が得られた. 従ってrISIは全体として正規分布をしながら, 平均として加齢に伴い直線的に低下するとすると, 一定の閾値以下の脳血流量を示す脳組織は加齢に対し略々指数函数的に増加するので, 脳萎縮が指数函数的に進行する結果となる.
  • 久保田 一雄, 田村 遵一, 白倉 卓夫, 中里 享美, 桜井 敏雄
    1987 年 24 巻 5 号 p. 444-447
    発行日: 1987/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    我々は前報で老年者脊柱後弯症には鉄欠乏性貧血が高頻度に合併することを報告した. このような患者では経口鉄剤が有効であったので, 鉄欠乏性貧血の原因は恐らく脊柱後弯症に合併した食道裂孔ヘルニア, 胃潰瘍, 慢性胃炎, 十二指腸潰瘍などの胃十二指腸病変からの慢性出血で, 消化管における鉄の吸収障害ではないと推定した. この点をさらに明らかにする目的で脊柱後弯症と食道裂孔ヘルニアを有する4例の老年者を対象として鉄吸収試験を行った. その結果, これらの患者では鉄吸収は障害されていないことが明らかになった.
  • 鈴木 孝弘, 佐藤 孝一, 青木 久三, 山本 正彦
    1987 年 24 巻 5 号 p. 448-456
    発行日: 1987/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者高血圧におけるCa拮抗剤の降圧剤としての特徴と高血圧の病態に対応した薬剤の選択基準を明らかにする目的で, 70~85歳の高血圧者 (36例) および正常血圧者 (24例) を対象にニフェジピン, ジルチアゼム, ベラパミルを投与し, それぞれの薬剤の血行動態に対する効果を検討した. 血圧を上腕動脈穿刺による観血的方法により, 心拍数を心電図記録により, 心拍出量をキュベットを用いた色素希釈法により測定し, 一回拍出量と総末梢血管抵抗を算出した.
    ニフェジピン10mgの舌下投与は心拍数, 心拍出量, 一回拍出量を増加し, 総末梢血管抵抗を減少し, 降圧した. ジルチアゼムおよびベラパミルの0.1と0.2mg/分×30分の静注投与は心拍出量, 一回拍出量を 軽度増加し, 心拍数, 総末梢血管抵抗を減少し, 降圧した. ニフェジピンは心電図P-R間隔を変化しな かった. ジルチアゼムとベラパミルはこれを軽度延長したが, 重篤な房室伝導障害は生じなかった. Ca 拮抗剤による収縮期血圧降下量は, いずれも投与前の収縮期血圧および総末梢血管抵抗と正相関したが, 心拍出量とは相関しなかった. ニフェジピンとジルチアゼムの効果を両者の収縮期血圧降下量がほぼ等しい時点で比較すると, ニフェジピンにおいて総末梢血管抵抗の減少量が大きく, 反応性の心拍出量の増加量も大きかった. ジルチアゼムとベラパミルの効果を両者の0.2mg/分×30分の投与終了時で比較すると, ベラパミルにおいて血圧の降下量が大きく, 総末梢血管抵抗の減少量も大きかった.
    3種のCa拮抗剤はいずれも末梢血管抵抗を減少して血圧を降下し, 心拍出量を増加する降圧剤として老年者高血圧の治療に適している可能性がある. また, 血行動態に対する薬効の差異からニフェジピンは重症高血圧に, ジルチアゼムとベラパミルは軽・中等症高血圧に効果的に使用し得ると考えられた.
  • 戸田 源二, 松下 哲, 蔵本 築, 坂井 誠, 小田 修爾, 江崎 宏典, 服部 明徳, 大川 真一郎
    1987 年 24 巻 5 号 p. 457-462
    発行日: 1987/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞患者の死因の変遷を剖検例にて検討したところ, 近年心破裂の頻度が減少する傾向にあるのに注目し, 心破裂と急性期の血行動態や治療法との関係について検討した.
    昭和49年から昭和59年までの11年間, 剖検上心筋梗塞を有した574例を対象として死因および病理所見の検討を行った. その結果, 全剖検例に占める心筋梗塞の割合は19.3%でほぼ一定であり, 発症1カ月以内の例の94.5%は心死で占められた. 急性心筋梗塞 (AMI) に占める心自由壁破裂, 中隔穿孔, 乳頭筋断裂の割合は12.2%で心自由壁破裂のみの割合は9.5%であった. 発症から心破裂までの期間は発症後2日以内が82%を占め, 最長8日であった. 心破裂例の50%は前壁の大梗塞で占められた.
    年度別では心破裂例は昭和56年から有意に減少した. そこで, 同期間内にCCUに入室したAMI 320例を対象として, 心破裂と急性期の使用薬剤や血行動態などについて検討した. 内訳は心自由壁破裂17例, 中隔穿孔6例, 乳頭筋断裂2例の計25例を破裂群, その他の295例を非破裂群とし, 破裂群にCCU以外の心自由壁破裂例を加えた38例を総破裂群 (男19例, 女19例, 平均年齢78.1歳) とした. その結果,心破裂の減少がみられた時期よりカルシウム拮抗薬を含む血管拡張薬や硝酸薬の使用頻度が増加しており, 総破裂群に比して非破裂群において有意に利尿薬 (χ2=5.84, p<0.05), 硝酸薬(χ2=9, 62, p<0.01), 血管拡張薬 (χ2=7.06, p<0.01) の使用が多いという結果が得られた. 急性期の血行動態や血圧に関しては破裂群と非破裂群とで有意差は認められなかったが, 心自由壁破裂の53%は Killip I群, 43%は Forrester I群で占められた.
    我々の成績は, 心破裂の予防に対する減負荷療法の有効性を示す所見であるが, 後負荷のみならず前負荷の軽減も心破裂の予防に寄与していると思われる.
  • 今鷹 耕二, 天野 晶夫, 中岡 秀光, 藤井 潤
    1987 年 24 巻 5 号 p. 463-466
    発行日: 1987/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    明らかな貧血者を除いた30歳以上の外来通院患者2,010名 (男1,268, 女742) を対象に赤血球量を調査し, このうち935名については10年前の値とも比較した. この結果Htについては男では30歳代, 40歳代で46%, 50歳代, 60歳代で45%, 70歳代44%, 80歳代42%であり, 70歳代から80歳代にかけての減少は有意であった(p<0.01). 女では30歳代, 40歳代で40%, 50歳代で41.5%と有意に上昇し(p<0.01), その後徐々に低下するが, 80歳代でも40%であった. 10年前と比較した成績でも男の加齢に伴うHtの低下, 女の中高年でのHtの上昇など断面調査での成績が確認された. 本研究は健常者を対象としたものではないが, 老人ホーム居住者を対象とした白倉らの成績と対比すると60歳代, 70歳代, 80歳代のいづれの年代でも筆者らのHtレベルが高く, 男では3.4~4.5%もの差があった. このことは, 従来の赤血球量の正常値に関する報告では加齢に伴う減少が強調されすぎている可能性があることを示している. これは社会生活環境の相違によるものと判断される.
  • 横浜市住宅地の一医院における最近50年間の死亡患者についての検討
    今井 波吉, 佐々木 順子, 稲田 紘, 土井 光徳, 嶋本 喬, 小町 喜男, 大谷 篤, 木村 香須美
    1987 年 24 巻 5 号 p. 467-475
    発行日: 1987/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    近年の社会環境, 医療環境の変遷に伴い, 今後の診療所の機能や果すべき役割を検討すべく, 首都圏の都市住宅地における一内科診療所の50年間の死亡患者について, 診療録及び死亡診断書をもとに疾病の動向を分析した. その結果, 感染症の減少と非感染性慢性疾患の増加, 死亡年齢の高齢化が明確に認められたが, 非感染性の慢性疾患のうちでも, 最近では悪性新生物による死亡患者は少なく, 脳卒中, 心疾患によるものが圧倒的に多い. 高齢者の脳心疾患では, 急性期に専門機関を受診したり, 家庭医から専門機関へ紹介したものも, 最終的には家庭医にかかるものが多いことが認められた. この結果は, 老人保健法の下で, 脳心疾患の予防, 再発防止のための管理に果す診療所の役割の重要性を示している.
  • 船迫 真人, 寒川 明宣, 西尾 和人, 谷地 雅宏, 駿田 直俊, 中居 靖治, 小林 尚, 角谷 明彦, 西川 治, 駿田 英俊, 太田 ...
    1987 年 24 巻 5 号 p. 476-477
    発行日: 1987/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 24 巻 5 号 p. 478-512
    発行日: 1987/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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