日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
25 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 戸田 源二, 松下 哲, 坂井 誠, 服部 明徳, 小田 修爾, 江崎 宏典, 大川 真一郎, 蔵本 築
    1988 年 25 巻 5 号 p. 463-468
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者心筋梗塞例を対象として, 再梗塞を起こした例とそうでない例とを臨床的 (再梗塞を起こした心筋梗塞例53例, 平均74歳, 一回梗塞例64例, 平均74歳) および病理学的 (生前2回以上梗塞を繰り返した剖検例64例, 平均78歳, 一回梗塞例232例, 平均79歳) に比較検討した.
    梗塞部位別では, 再梗塞時には心内膜下梗塞の比率が多い傾向が認められた. 梗塞急性期の血行動態は, 再梗塞例ではCPK最高値で表した梗塞量は小さいが, 初回梗塞と合わせるとより強い心ポンプ機能の低下をきたした. また初回梗塞と再梗塞とで梗塞部位が異なる例では, 同部位例より悪い血行動態を示した. 慢性期における主な薬剤の使用率には両群で有意差は認められなかった. 再梗塞例の初回梗塞後に出現した狭心症の頻度は60%に達し, 同時期の一回梗塞例と比較すると有意に高い出現率を示した(χ2=17.5, p<0.01). 初回梗塞後に存在した冠疾患危険因子のうち, 高血圧では再梗塞例の方が有意に高い存在率を示した (χ2=6.13, p<0.05). 各危険因子の個数の和の合計を総のべ数で表すと, 初回梗塞後では再梗塞例の方が有意に高い数値を示した (χ2=10.36, p<0.01).
    剖検所見による梗塞サイズでは, 再梗塞64例中52例 (81.3%) は梗塞長径5cm以上の大梗塞で占められた. また, 再梗塞例では冠動脈狭窄指数で表した狭窄度が強く, その62.5%は3枝病変であった.
    以上より, 心筋梗塞患者の予後を考える上で再梗塞の予防は重要な課題であり, そのために梗塞後狭心症の防止や高血圧をはじめとする危険因子の是正にはとくに留意する必要があると思われる.
  • それ以下の年齢層との比較
    黒川 洋, 柴田 好, 男澤 伸一, 山野 三紀, 林 朋子, 林 憲雄, 小原 剛, 原田 一道, 岡村 毅與志, 並木 正義
    1988 年 25 巻 5 号 p. 469-473
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の胃癌の特徴をみるため, 過去10年間, 当科に入院した胃癌症例を65歳以上の群 (A群) と65歳未満の群 (B群) の2群に分け, 以下の検討を行った.
    胃癌症例225例 (男160例, 女65例) を対象とし, これをA群120例, B群105例とに分け, 1) 各群平均年齢, 2) 性別, 年齢別構成, 3) 初発症状, 4) 発見動機, 5) 癌占居部位 (CMA分類), 6) 癌の大きさ, 7) 早期胃癌肉眼型分類, 8) 進行胃癌肉眼型分類, 9) 癌深達度, 10) 癌組織型分類-以上10項目について胃癌取扱い規約に基づき検討を行った. なお, 7)~10) までは, 手術例153例 (男112例, 女41例) について検討した.
    この結果, 1) 全症例の平均年齢は63.1歳, A群74.0歳, B群51.0歳であった. 2) 70歳~79歳の年齢層が最も多く, この年代では男性は女性の2倍以上を占める. 3) 初発症状では, 両群ともに腹痛が最も多く, ついで無症状例が多かった. 従って症状がなくとも積極的に胃の検査を行うべきである. 4) 発見動機では症状があって受診する例が両群ともに約40%にみられ最も多かった. 5) 癌占居部位では両群ともにM→A→C→CMAの順となっており, 各領域の比率は両群でほぼ同様である. 6) 癌の大きさではA群でB群より大きなものの多い傾向にあった. 7) 早期胃癌の手術例では両群ともにIIcが最も多かった (A群54.8%, B群71.2%). 8) 進行胃癌の手術例ではA群で限局型が, B群で浸潤型が多かった. 9) 早期癌手術例ではA群でmとsmがほぼ同率, B群ではmの率がsmに比し高かった. 進行癌では両群に大差はなかった. 10) 手術例での組織型はA群で分化型が, B群では未分化型が多く, 特にB群では印環細胞癌が多かった.
  • 年齢と合併症の関連性
    土居 義典, 小田原 弘明, 楠目 修, 近森 大志郎, 米沢 嘉啓, 小沢 利男
    1988 年 25 巻 5 号 p. 474-479
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    目的・方法: 僧帽弁逸脱症 (MVP) は若年者に多い予後良好の疾患とされているが, 重症僧帽弁閉鎖不全症 (MR), 脳血栓症, 突然死などをきたす症例もあり, 必ずしも予後良好とも言いきれない. そこで, これらの重大合併症をきたす因子の一つとして, 年齢を考慮し, 以下の検討を行なった. 対象は過去4年間に断層心エコー法にてMVPと診断された53例 (男22例, 女31例, 年齢21~77歳) である. これらを39歳以下の19例 (若年群), 40~59歳の18例 (中年群), 60歳以上の16例 (高年群) の3群に分け, 臨床所見を比較検討し, 平均24.7±15.4カ月の経過観察を行なった.
    結果: (1)症状: 若年群では6例に動悸を認めたが, 8例は無症状であった. 中年群では8例に動悸, 4例に息切れ, 高年群では8例に動悸, 6例に息切れを認めた. (2)心雑音: 若年群では収縮後期雑音12例に対し, 中年群, 高年群では汎収縮期雑音が各々10例, 8例を占めていた. (3)心胸比は若年47.4±5.5%に対し, 中年54.6±6.4%, 高年57.4±9.6%と拡大を示した. (4)心エコー上左房径は若年3.1±0.5cmに対し, 中年4.0±0.7cm, 高年4.4±0.7cmであり, 左室拡張末期径は若年4.7±0.5cmに対し, 中年5.5±0.7cm, 高年5.4±0.4cmとともに中高年群で有意の高値を示した. (5)経過観察中, 心不全の進行は, 若年1例, 中年2例, 高年4例の計7例にみられ, うち2例が死亡, 4例に僧帽弁置換術が施行された.
    結語: 中高年群では息切れ, 動悸を訴える頻度が高く, 心胸比も有意に拡大し, 潜在性心不全の存在が疑われた. さらに汎収縮期雑音が多く, 左房・左室径とも有意に拡大し, 若年群に比しより高度のMRの存在が示唆された. 高年群では経過中, 重症MRのため心不全の進行する例も比較的多く, 外科治療も含め注意深い経過観察が必要である.
  • 福田 準, 吉村 正博, 河崎 博, 山之内 博, 葛原 茂樹, 嶋田 裕之, 朝長 正徳
    1988 年 25 巻 5 号 p. 480-485
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    連続する約800例の剖検脳の中から, 臨床上及び病理学的に Alzheimer 型老年痴呆 (以下SDATと略す) と診断した75歳から97歳まで (平均年齢84.3歳) の男3例女6例の計9例と, 対照群として生前に痴呆なく, 精神神経疾患を有さず, 病理学的観察にて大脳萎縮以外の異常を示さなかった, SDAT群とほぼ年齢を合わせた, 75歳から91歳まで (平均年齢81.6歳) の男11例女14例の計25例を選び, 脳葉萎縮度, 皮質厚, 白質比の比較検討を行った. 剖検脳の一断面における脳溝開大および脳室拡大を定量的に求めるため, 脳溝指数 (sulcal index: 以下SIと略す) を新たに定義した. 大脳の乳頭体を通る冠状断面を用いて, 電磁ペン計測装置により側頭葉及び前頭頭頂葉において, 脳溝, 脳室, 脳白質及び脳皮質断面積を測定し, (脳溝+脳室) 断面積の (脳溝+脳室+脳皮質+脳白質) 断面積に対する比をもってSIとした. また白質断面積の (白質+皮質) 断面積に対する比をもって白質比とした. 側頭葉SI,側頭葉皮質厚, 前頭頭頂葉 (中心溝近傍) SI, 前頭頭頂葉白質比を算出し, SDAT群の大脳の形態学的特徴について検討した. 成績: 1) SDAT群では対照群と比較して, 前頭頭頂葉より側頭葉でのSIの差が著明であった. 2) 側頭葉皮質厚はSDAT群が対照群より薄く, 皮質容積の減少が示唆された. 3) 前頭頭頂葉白質比では, SDAT群と対照群に有意差はみられなかった. 4) SDAT群では, 年齢と大脳重量, 側頭葉SI, 側頭葉断面積との間に有意な相関がえられた. 結語: 正常老人と比較すると, SDAT群では側頭葉の萎縮が著明で, かつ皮質容積の減少が大きい事が推測された.
  • 森 聖二郎, 森崎 信尋, 村野 俊一, 白井 厚治, 斎藤 康, 吉田 尚, 秋草 文四郎
    1988 年 25 巻 5 号 p. 486-490
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    当科にて経験した Werner 症候群の一剖検例を呈示し, さらに通院中の本症候群患者7例も含めて動脈硬化症の評価とその危険因子の検討を行った. その結果, (1)この一剖検例では, 大動脈, 冠動脈, 脳底動脈に中等度の atheroma (内膜の脂質蓄積, 細胞と線維の増生, 石灰沈着) を認め, それらは通常みられる粥状硬化症と本質的な差違はなかった. (2)本症候群8例とも, 動脈硬化の危険因子 (脂質代謝異常8例, 糖尿病5例, 高尿酸血症2例. 高血圧症2例, 喫煙歴2例) を最低一項目以上合併しており, 臨床的指標でとらえた動脈硬化症も進行していると考えられた.
    Werner 症候群にみられる動脈硬化症が, 本症候群に合併する上述の危険因子の関与のみによるものか, あるいはさらにまた別の因子が存在するのかは, 今後の検討を要する.
  • 松尾 武文, 粟田 哲司, 門脇 誠三
    1988 年 25 巻 5 号 p. 491-494
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者35名を対象として in vivo における血小板活性化の指標としてβ-トロンボグロブリン (BTG) を測定した. また糖尿病の血小板が in vivo で活性化され易いかどうかを知る目的で, ヘパリン100単位/kg 1回静注して, ヘパリン誘発性のβTGの上昇反応を観察した. その結果, 非血管合併群では安静時のβTGは正常であるが, ヘパリンによりβTGは有意に上昇した. 増殖性網膜症群では, 安静時のβTGは増加していたが, ヘパリンによるβTGの上昇はみとめなかった. 脳血栓と心筋梗塞の既往のある動脈硬化群では, 安静時のβTGの増加とヘパリンによる刺激によってさらに上昇した. このように, 糖尿病における血小板由来のβTGは血管合併症の種類や程度によって異なることが判明し, ヘパリンで刺激することによってより明確になった. とくに, 動脈硬化群の血小板は, 安静時βTGも高く, ヘパリンにより活性化され易い状態であった. 続いて, アスピリン81mg/日の投与を行い, 6~8週後に安静時のβTGとヘパリン誘発性のβTGの上昇反応を再検した. その結果, 上昇していた安静時のβTGは低下しており, 非血管合併群のヘパリンによるβTGの増加も抑制された. しかし, 動脈硬化群では安静時のβTGは低下したが, ヘパリン刺激によるβTGの上昇反応はまったく抑制されなかった. 以上のことから, 糖尿病における in vivo の血小板の活性化の状態やアスピリンの有効性を判定するためには, 安静時のβTGの測定とならんでヘパリン誘発性のβTGの上昇反応も有用であった.
  • 野倉 一也, 三竹 重久, 稲垣 俊明, 新美 達司, 山本 俊幸, 前田 甲子郎, 松原 充隆, 小鹿 幸生, 山本 正彦
    1988 年 25 巻 5 号 p. 495-502
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    名古屋市厚生院及びその関連施設は軽費老人ホーム, 養護老人ホーム, 特別養護老人ホーム, そして病院から成立っており, その入所者のうち60歳以上を対象として老年期痴呆の疫学的臨床的検討を試みた. 一次調査で精神発達障害及び全身状態の悪い症例を除いた747名に長谷川式痴呆診査スケールを実施し20点以下及び, 20点以上でもDSM-IIIによる痴呆の診断基準に合致する例を選択した. 次に神経内科医が診察し現病歴, 神経学的所見, 頭部CT, 看護者からの聴取等をもとに総合的に痴呆の診断を下した. 最終的に痴呆と診断されたのは316名 (42.3%) であった. 各施設毎に痴呆の頻度を求めると軽費老人ホーム: 17.1%, 養護老人ホーム: 14.0%, 特別養護老人ホーム: 56.1%, 老人病院: 61.1%であった. 痴呆重症度別では軽費老人ホームでは軽症者の率が高く, 病院や特別養護老人ホームでは重症者の率が高かった. また加齢につれて痴呆の出現率が上昇した. どの年齢でも女性の頻度が高かった. 痴呆とADLの関係についてはADLが低いほど痴呆の出現率は高かった. 原因疾患によって4つの群に分類するとそれぞれの頻度は脳血管性痴呆; 51.6%と最も高く, 以下アルツハイマー型痴呆; 21.8%, 混合型痴呆; 9.2%, その他; 17.4%であった. アルツハイマー型痴呆ではどの年齢でも女性の頻度が高く, 70~80歳台で統計学的に有意な差を認めた. 長谷川式痴呆診査スケールで10点以上の得点者に限り, 各設問の正答率をアルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆で比較した.“今日は何月何日”に対しては脳血管性痴呆で, 100からの引算, 及び数字の逆唱はアルツハイマー型痴呆で有意に高い正答率が得られた. 精神神経症候に関してはほぼ従来と同様の両疾患に特徴的な所見が得られたが, 全身の合併症は両者に高率に見られ痴呆と全身の老化に密接な関係が有ることが示唆された.
  • 加藤 明彦, 深山 牧子, 稲松 孝思, 力丸 徹
    1988 年 25 巻 5 号 p. 503-507
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    血清クレアチニン値からクレアチニンクリアランスを推定する4種の方法を, 実際に投薬の機会の多い各種基礎疾患を有する老年者に適応し, クレアチニンクリアランス推定値と実測値の比較検討を行った. 安田の式による推定値は実測値と最も良い相関を示した. 長期臥床, 経口摂取不良, 感染症極期の各群では, クレアチニンクリアランス実測値は推定値の約8割と低下していた. これらの群では, 同時に測定した尿中3-メチルヒスチジン排泄量が低値を示し, 全身筋肉量の減少に伴い, 尿中クレアチニン排泄量が減少するためと推定された.
  • 河野 和彦, 早川 道彦, 浅井 幹一, 葛谷 文男, 原田 敬志
    1988 年 25 巻 5 号 p. 508-514
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    ODSラットは, 先天的にビタミンC合成が不能のため, ビタミンC欠乏の病態を検討するのに適当な実験動物であると考えられる. 老年者ではビタミンCが不足しているとされるため, この動物における急性および慢性のビタミンC欠乏の各病態において, 老年期に発症する疾患に類似した病態が観察できるか否かを検討した. 実験1: 生後63日齢で壊血病症状を呈したODSラットのホモ接合体8匹の各臓器重量を年齢を一致させた同一ストレインの正常個体10匹と比較した. 体重は対照ラットの136±16.2gに対して65.1±6.0g (p<0.001) と減少しており, 胸腺, 心, 肝, 脾, 大腿骨が著明な減少(p<0.001) を示した. 実験2: 対照ラット7匹が体重を400g程度を維持する飼育環境において, ホモ接合体8匹の平均体重が200g前後を推移するようにビタミンCを経口投与して延命させ, 生後約300日齢の慢性ビタミンC欠乏状態を作成し, 各臓器の病理組織を検討した. その結果, 骨粗鬆症様変化, 汎小葉性肺気腫様病変, 角膜混濁, 免疫担当臓器の萎縮とT細胞, B細胞の消失を疑わせる所見が観察され, 老年期の疾患や老人の変化に類似する所見を得た.
  • 1988 年 25 巻 5 号 p. 515-554
    発行日: 1988/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
feedback
Top