高年高血圧症の血行動態的特徴を明らかにするために, 65歳以上の高年者の, 正常血圧者 (NT) 15名, 境界型高血圧症 (BH) 10名, 固定型高血圧症 (EH) 20名を対象とし, 同様に分類した35~64歳の中年者の, NT23名, BH112名, EH79名と比較検討した. さらに, 高年高血圧症を, 心肥大を有する群 (心肥大+群) と, 心肥大を有しない群 (心肥大-群) に分類, 比較検討することにより, 心肥大に関与する因子を考察した.
その結果, 加齢により, 心拍出量と一回拍出量は減少 (p<0.05), 全末梢抵抗と血管容積弾性率は増加 (p<0.05), 圧受容体勾配は低下 (p<0.05) しており, 高年者ではこれらの傾向は高血圧により増強 (p<0.05) していた. また, noradrenaline 負荷に対する昇圧反応は加齢で大であったが (p<0.05), 運動負荷に対する昇圧反応は, 各群内での variation が大きく, 加齢, 高血圧による差異は明らかでなかった.
心肥大+群と心肥大-群で, 高血圧遺伝素因, 高血圧罹病期間, 心以外の臓器合併症および血圧関連 hormone には明らかな差異を認めなかった. 安静時血行動態は, むしろ, 心肥大-群で血圧が高く, 全末梢抵抗, 血管容積弾性率も高値を示す傾向にあったが, 運動負荷時の血圧は心肥大+群で高く, 左室心筋量と運動終了直前収縮期圧の間にr=0.563 (p<0.01) の相関を認めた. そこで, ΔSBP/ΔHRを運動負荷に対する昇圧反応性の指標とすると, 心肥大+群は1例を除いて他の全例が1.0以上と昇圧反応性が強く, 心肥大-群は全例1.0未満と昇圧反応性が弱かった. また, noradrenaline 負荷に対する昇圧反応性も, 心肥大-群に比し心肥大+群で強い傾向にあった.
以上より, stress 時の昇圧反応性亢進が心肥大に関与しており, その機序として, 交感神経α-反応性亢進が考えられた.
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