日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
28 巻, 5 号
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  • 新しく提案されたセクレチン静注法を用いて
    石橋 忠明, 松本 秀次, 原田 英雄, 越智 浩二, 田中 淳太郎, 妹尾 敏伸, 岡 浩郎, 三宅 啓文, 木村 郁郎
    1991 年 28 巻 5 号 p. 599-605
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    膵外分泌機能の標準的検査法として1985年に日本消化器病学会が提案した secretin 試験を用いて膵外分泌機能の加齢変化を検討した. Double balloon 付四重管を十二指腸に挿入し, secretin 100単位 (secretin unit) を静注して10分毎に60分間, 十二指腸液を採取した. (1)液量, (2)最高重炭酸塩濃度または重炭酸塩分泌量, (3)膵酵素 (アミラーゼ, リパーゼ) 分泌量の3因子で膵外分泌機能を評価した. 対象は軽度の上腹部不定愁訴で来院した患者のうち, (1)全身状態が良好で併存疾患を認めず, (2)血液生化学検査, 糞便・尿検査, 上部消化管造影, 膵画像検査所見に異常を認めず, (3)アルコール摂取量や1日25g未満の65名である. 対象を39歳以下群15名, 40~64歳群32名, 65歳以上群18名の3群にわけて比較検討し, 以下の結論を得た.
    1) 液量, 重炭酸塩分泌量, 酵素分泌量のいずれについても, 65歳以上群は他の2群よりも有意の低値を示した. すなわち, 高齢者においては膵外分泌機能は低下する.
    2) 酵素分泌量が加齢とともに徐々に低下するパターンを示すのに反し, 液量と重炭酸塩分泌量は40歳代をピークとする convex curve を示し, 50歳代後半から比較的急速に低下するパターンを示す. そして, 65歳以上群における機能低下は酵素分泌よりも液量と重炭酸塩分泌量においてより高度となる.
    3) 日本消化器病学会の「慢性膵炎臨床診断基準」に該当する程度の膵外分泌機能の低下を65歳以上群18名中10名 (55.6%) に認めた.
    4) 65歳以上群と慢性膵炎19名との比較検討も行ったが, 両者における膵外分泌機能の低下を鑑別する特性は発見できなかった. したがって, 高齢者における慢性膵炎の診断は膵外分泌機能検査のみに依存せず, 臨床所見や画像検査所見を含めて総合的に行う必要がある.
  • 胃排出を中心に
    笠野 哲夫, 吉田 行雄, 木平 健, 木村 健
    1991 年 28 巻 5 号 p. 606-610
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    加齢に伴う胃の形態的変化と機能的変化の関連を, 胃排出を中心に, 同一対象92例にて検討した. まず, 対象の質を検討するために, 今回の対象における暦年齢と胃年齢との間の偏倚の有無を評価した. 形態的変化は萎縮性胃炎の拡がりで, 機能的変化は胃液検査による最高酸分泌量で検討し, 加齢と共に萎縮性胃炎は進展し, 最高酸分泌量は有意な低下が認められ, 対象における暦年齢と胃年齢との間に偏倚が存在しないことが確認された. これらの対象において, 加齢に伴う胃排出の変化を, acetaminophen 法にて検討したところ, 胃排出は加齢にかかわらずほぼ一定であった.
  • 鳥羽 研二, 原田 信行, 井上 剛輔, 折茂 肇, 島田 馨, 佐賀 宗彦, 澤田 皓史, 星野 忠義, 大畑 信子
    1991 年 28 巻 5 号 p. 611-618
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者再発性尿路感染症に対する抗菌剤少量長期予防投与療法を評価するため, 過去12カ月に尿培養で証明された尿路感染症歴を1回以上有する20名の女性入院患者を対象に検討を行った. 対象症例を無作意に2群に分け, 一方には Norfloxacin 200mgを1日1回投与し (投与群), 他方は顕性尿路感染症発現時以外は抗菌剤を投与せず (非投与群), 6カ月間観察した. その後4カ月の休薬期間を経て, 両群を入れ替え同様に6カ月の試験を行った. 終了後も最低4カ月間観察を続けた. 尿培養, 尿沈渣, 血液所見を定期的に施行し, 2群間の差を検討した. 尿細菌≧104/ml, 膿尿>5/HPF, 炎症所見陽性により定義された顕性尿路感染症の発現頻度は, 予防投与群では0.267/patient・year であったのに対し, 非投与群では2.97/patient・year で, 両群間にはχ2検定にて有意差を認めた (p<0.01). 予防投薬中止後の顕性尿路感染症発現の有無を Kaplan-Meier 法にて予後検定を行うと, 4カ月まで予防投薬の効果持続が認められた. 一方細菌学的には, 予防投与群においても, 半数以上に細菌尿の持続を認めた. 最小発育阻止濃度から耐性菌の出現頻度を検討したところ, 予防投与後4~6カ月に耐性菌が急増し, 休薬後4カ月で消失した. これらの所見から, 最適な予防投薬期間や休薬期間を設定する必要性が示唆された.
  • 松本 正幸, 関本 博, 鮴谷 佳和, 松本 幹生, 林 光義, 土屋 博, 滝澤 哲, 中谷 彰男, 宗平 純一
    1991 年 28 巻 5 号 p. 619-626
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    左室拡張期および収縮期機能に対する加齢の影響を心エコー図法を用い60歳以上の高年者と60歳以下の若年者につき以下の如く検討した. (1) ディジタルMモード心エコー図法により左室円周方向線維最大伸展速度 (negative peak Vcf) と最大短縮速度 (peak Vcf) を健常若年者20例と健常高齢者26例にて検討した. negative peak Vcf (-circ/sec) は20歳代-3.87±0.85, 30歳代-4.48±1.14, 40歳代-3.71±1.21, 60歳代-2.70±0.90, 70歳代-2.57±0.64, 80歳代-2.33±0.77, 90歳代-2.57±0.65で若年者に比し高齢者群で有意 (p<0.005~p<0.05) に低下していた. peak Vcf は30歳代群が他群に比し高値を示したが, その他の群間では有意差を認めなかった. (2) 通常のMモード心エコー図法により左室収縮期および拡張期機能に関する指標を5歳から94歳までの健常例227例につき検討した. 60歳以下の若年者は5歳から60歳までの対象を5~10歳 (50例), 10~20歳 (60例), 20~60歳 (74例) の3群に分けて1983年に検討した成績であり, 60歳以上の高齢者群は1986年以降に60歳代 (6例), 70歳代 (16例), 80歳代 (14例), 90歳代 (7例) について検討した成績であるが, 左室内径は拡張末期径が高齢者群内で増加する傾向を示した. 左室径短縮率は若年3群で36.2~36.7%なのに対し高齢者4群では36.9~40.8%で加齢による低下は認められず, 心拍出量も高齢者群間で加齢に伴う低下を認めなかった. 僧帽弁E-F勾配は若年3群の93.6~108.7mm/secに対し高齢者4群では30.7~39.5mm/secと低下を示した. 以上から加齢により左室収縮期機能は低下しないが, 拡張期機能は低下する事が示された.
  • 羽生 春夫, 阿部 晋衛, 新井 久之, 金谷 潔史, 久保 秀樹, 羽田野 展由, 勝沼 英宇
    1991 年 28 巻 5 号 p. 627-633
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    大脳深部領域に限局した脳血管障害20例 (脳血管撮影上異常を認めない中大脳動脈穿通枝領域の小梗塞L群7例, 主幹部脳動脈の閉塞性病変による深部脳梗塞NL群6例, 被殻または視床出血H群7例) を対象に, 123I-IMP SPECTを用い患側大脳半球皮質や対側小脳半球における血流低下について, その臨床的意義を含め検討した.
    L群の一部にも軽度の患側皮質血流低下がみられたが, NL群やH群の多くでは中等度から高度の血流低下がより広範囲にみられた. この機序として, 脳浮腫, 主幹動脈病変による潅流圧低下に伴う虚血, CT等では検出されないような不完全な組織障害の存在, 投射線維を介した機能抑制などが推測され, 各要因の関与によって皮質血流低下の程度も異なると考えられた. 対側小脳半球の血流低下 (CCD) は, NL群やH群でより高率かつ高度に認められ, 病巣部位との関連から皮質橋小脳路の遮断による抑制機序が推測された.
    臨床的に, 患側皮質血流低下と失語や失認等の神経心理症状とは密接な関連がみられ, また患側皮質, 対側小脳半球の血流低下と運動麻痺との間にもある程度の関連が推測された. しかし, 対側小脳半球の血流低下と小脳症状との関連については明らかでなかった.
    大脳深部領域に限局した病変でもさまざまな機序により遠隔部位に血流低下がみられ, その臨床的意義は少なくない. したがって, 病巣局所の他に遠隔部位にみられる病態についても考慮する必要がある.
  • 西田 宏二, 加地 正英, 古野 浩秋, 緋田 めぐみ, 栗山 正己, 牟田口 義隆, 東島 正泰, 高木 維彦, 野尻 五千穂
    1991 年 28 巻 5 号 p. 634-639
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    経鼻経管栄養法 (以下NGF) や完全静脈栄養法 (以下TPN) を施行中の症例に対し, 経皮内視鏡的胃瘻造設術 (以下PEG) を施行した. 症例は食事摂取困難な痴呆10例, 脳梗塞8例, 脳出血8例, 進行胃癌3例, 脊髄損傷1例, 胸膜炎1例, パーキンソン病かつ呼吸不全1例, 計32症例であった. PEGに短期間TPNを併用することにより, 合併症は皮下膿瘍1例とTPNカテーテル感染1例であった. 本法は短時間で安全に施行でき苦痛の軽減, 全身状態改善, 美容上の改善, 在宅療法への移行等多くの有用性があり, quality of life を著しく向上させた.
  • 加齢, 血行動態および交感神経・副腎髄質機能との関連より
    島崎 優, 菊池 健次郎, 小早川 洋, 山本 真根夫, 工藤 千佳, 和田 篤志, 坂本 孝志, 沢井 仁郎, 向 博也, 飯村 攻
    1991 年 28 巻 5 号 p. 640-645
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    本態性高血圧患者 (EHT) における副交感神経機能を検索すべく, 安静臥床下の心電図RR間隔変動係数 (CVRR) を測定し, これも正常血圧者 (NT) のそれと対比, さらに, CVRRと加齢, 血行動態, 交感神経活動との相互関連性をも検討した. NT 37例 (33.8±2.0歳) 及びWHO I, II期EHT47例 (51.3±1.5歳) を対象とし, 早朝空腹安静臥床下に平均血圧 (MAP), 心拍数 (HR), 血漿 noradrenaline 濃度 (pNA), 血漿 adrenaline 濃度 (pAd), CVRRを同時測定した. CVRRはNT, EHTのいずれにおいても年齢と有意に逆相関したが, MAP, HR, pAdとは相関しなかった. 一方, CVRRはpNAとNTでのみ負の相関傾向を示し, EHTではかかる傾向を認めなかった. 次に, 年齢をマッチしたNT, EHT群間の対比ではCVRRはNTに比しEHTで有意な低値を示した.
    以上の成績より, CVRRから推測される副交感神経機能は加齢や交感神経機能と関連して変動すること, EHTでは副交感神経機能の異常が推測されることが強く示唆された.
  • 渡邊 哲彦
    1991 年 28 巻 5 号 p. 646-656
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Postheparin lipolytic activity (PHLA) の生理的変動の一つとして成人健常者に対して絶食下での昼夜変化を検討した. さらに肥満男性を対象にPHLAおよび血清脂質を測定し, 肥満にともなう高トリグリセライド (TG) 血症の成因をTGの異化の面を中心に検討した.
    PHLAの昼夜変化を想定し, 肥満のない成人健常者8名を対象に測定を行ったところ, リポ蛋白リパーゼ (LPL) 活性は昼夜変化を認めず絶食の時間経過で低下し, 肝性トリグリセライドリパーゼ (HTGL) 活性は朝高く夜低いという昼夜変化の存在が認められた.
    高TG血症をしばしばともなう単純肥満について, 幼少時より肥満がみられた若年肥満者と成人以降に肥満となった中高年肥満者の代謝の相違に着目し, 若年者40名: 17~27歳 (正常体重者15名, 肥満者25名), 中高年者40名: 35~62歳 (正常体重者15名, 肥満者25名) を対象としPHLAを測定し, 同時に測定した血清脂質とともにTGの異化の面より検討した. 総コレステロール, 低比重リポ蛋白コレステロールは若年, 中高年者とも肥満の有無による差は認められなかったが, 高比重リポ蛋白コレステロールは中高年においてのみ肥満者で有意に低下していた. 血清TG, インスリンは若年, 中高年とも正常体重者に比し肥満者で有意に上昇していた. また若年肥満者, 中高年肥満者ともに血清TGとインスリンの間に正の相関が認められ, インスリンの持つ lipogenesis の立場から, 高インスリン血症にともなうTG産生亢進が示唆された. 一方, 若年肥満者において血清TGとLPL活性およびHTGL活性の間に正の相関を認めたのに対し, 中高年肥満者では血清TGとLPL活性の間にのみ負の相関がみられ, 肥満の高TG血症において若年肥満, 中高年肥満でTGの異化に相違が認められた.
  • MRI, 超音波診断法による観察
    山内 喜夫, 甲田 英一, 久 直史
    1991 年 28 巻 5 号 p. 657-663
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高コレステロール血症が老年者の動脈硬化の発現に対する寄与の度合いを検討するために, 老年者高コレステロール血症例の胸部大動脈・頸動脈をMRI, 超音波診断法を用い, 非侵襲的に観察した. 年齢60歳以上の老年者53例を血清総コレステロール (TC) レベルにより, H群 (n=26, TC>220mg/dl), H-I群 (n=11, 220mg/dl<TC<250mg/dl), H-II群 (n=15, TC≧250mg/dl), NL群(n=27, 正脂血症例) に分類し検討した.
    胸部大動脈硬化所見はNL群の37%に対し, H-I群27%, H-II群60%, H群46%であり, 頸動脈硬化所見は, NL群の18%に対し, H-I群9%, H-II群27%, H群19%であった. H-I群ではNL群と同等, もしくは低率の動脈硬化所見発現率であったが, TC<250mg/dlの例をApo B/Apo A1≧1, Apo B/Apo A1<1の例にわけて検討すると, Apo B/Apo A1≧1の例では胸部大動脈硬化所見43%, 頸動脈硬化所見29%であり, Apo B/Apo A1<1の胸部大動脈硬化所見32%, 頸動脈硬化所見13%に比し高く, Apo B/Apo A1≧1の例では, TC<250mg/dlの例でも高率に動脈硬化所見を認めることが明らかとなった.
    老年者の動脈硬化成立に対する脂質の関わりを検討する場合, コレステロールレベルのみの検討では不充分であり, Apo B/Apo A1を検討することが必要である.
  • 竹越 忠美, 平井 淳一, 島田 敏實, 嵯峨 孝, 木藤 知佳志
    1991 年 28 巻 5 号 p. 664-667
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者における大動脈脈波伝達速度 (以下PWV) に影響する因子につき検討し以下の結果を得た.
    (1) 糖尿病患者40例を治療法別に分けて検討するとコントロール不良例ではPWVは高値傾向で特に経口血糖降下剤投与群では他の群に比して有意に高値だった. 経口剤投与群の内でも虚血性心疾患を有する例でPWVは特に高値であった.
    (2) 網膜症を有する群 (特に Scott I~III) では網膜症を有しない群に比してPWVは高値傾向だった.
    (3) PWVは年齢, 収縮期血圧, 尿中微量アルブミンとの間に有意の正相関を示した.
    (4) 尿中アルブミン指数により30mg/g・Cr以下 (Normoalbuminuria 群) と30~300mg/g・Cr (Microalbuminuria 群) に分けてみると年齢差はないがPWVは後者で高く虚血性変化や網膜症を有する例も高頻度に認め腎症のPWVへの関与が示唆された.
    以上よりPWVは糖尿病におけるマクロ, ミクロアンギオパチーともに関連性があるものと考えられた.
  • 苅尾 七臣, 松尾 武文
    1991 年 28 巻 5 号 p. 668-671
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    血清尿酸が冠動脈危険因子と成り得るかどうかについては議論の多いところである. 高尿酸血症はしばしば高脂血症ともなうことが知られている. 近年, 高凝固第VII因子血症は虚血性心疾患の一危険因子と考えられはじめており, 血清脂質の関連も報告がある. 我々は高齢者における血清尿酸と血清脂質, 凝固第VII因子との関係を調べるために60歳以上のアルコール非飲者138名を対象に尿酸, 第VII因子凝固活性, 第VII因子抗原量, 及びアポ蛋白を含む血清脂質を測定し, 以下の結果を得た. 血清尿酸値は, 男性では第VII因子活性, 第VII因子抗原量, VLDLコレステロール, トリグリセライド, LDLコレステロール, 総コレステロール, アポ蛋白Bと正相関し, HDLコレステロールと負の相関を示した. 一方, 女性ではアポ蛋白Eのみと正相関を認めただけであった. 男性において血清尿酸値を6.04mg/dl(mean±SD) 以上と未満のグループに分けて検討したところ, 第VII因子は高尿酸血症グループに高値であった. しかし, 第VII因子活性を目的変数に, 総コレステロール, トリグリセライド, HDLコレステロール, 尿酸, コリンエステラーゼを説明変数とし, 重回帰分析を行ったところ, トリグリセライドとHDLコレステロールは第VII因子活性と有意の関連があったが, 尿酸と第VII因子活性との関連は有意ではなかった. 以上の結果は男性の高尿酸血症はVLDLコレステロール, トリグリセライド血症と関連する高第VII因子血症によって冠動脈危険因子と成り得る可能性を示唆する.
  • 新井 望, 原 明博, 金子 晴生, 梅田 正法, 白井 達男
    1991 年 28 巻 5 号 p. 672-677
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    65歳以上の高齢者非ホジキンリンパ腫について, CHOP療法およびCOP-BLAM療法を施行し, 両療法間の治療成績, 副作用などを比較検討したので報告する.
    対象症例は, 1979年9月より1990年2月までの間にCHOP療法及びCOP-BLAM療法を施行した65歳以上の未治療非ホジキンリンパ腫症例33例である. CHOP療法施行症例は15例で, 年齢中央値70歳, 病理組織分類は, びまん性大細胞型 (D. large) 8例, びまん性中細胞型 (D. medium) 5例, びまん性混合細胞型 (D. mixed) 2例. 臨床病期 (Ann Arbor 分類) は, II期2例, III期4例, IV期9例である. COP-BLAM療法症例は18例で年齢中央値68歳, 病理組織分類は, D. large 8例, D. medium 10例, 臨床病期は, II期5例, III期4例, IV期9例である.
    CHOP療法は, Mckelvey らの方法に準じ, COP-BLAM療法は, Laurence らの方法に準じて行い, 年齢による用法の考慮は行わなかった.
    治療効果は, CHOP療法症例全例では, 15例中7例 (46.7%), III, IV期では13例中5例 (38.5%) にCRが得られた. COP-BLAM療法症例全例では18例中15例 (83.3%), III, IV期では13例中11例 (84.6%) にCRが得られた.
    Bulky mass (φ8cm以上) の有無, 骨髄浸潤の有無, B症状, 血清LDH値 (400U/L以上) について有意差を検討したが5%の危険率では有意差はみられなかった. 副作用については, 1,000/μl以下の白血球減少はCHOP療法例26.7%, COP-BLAM療法例22.2%, 5×104l以下の血小板減少はそれぞれ20.0%, 11.1%であった. その他, 吐気嘔吐, 脱毛末梢神経障害などがみられた.
    高齢者非ホジキンリンパ腫に対し, COP-BLAM療法はCHOP療法に比較し有効率が高く, 副作用は同程度であった.
  • 野垣 宏, 大庭 幸生, 松本 香, 森松 光紀, 福岡 善平
    1991 年 28 巻 5 号 p. 678-682
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    リハビリテーション専門病院における脳卒中後遺症患者について調査, 検討をおこなった. 対象および方法は, 山口リハビリテーション病院入院中あるいはすでに退院した脳卒中後遺症患者312例 (男200例, 女112例, 平均年齢65歳) について発症から入院までの期間, 入院期間, 入院前にいた所 (入院前), 退院先, 入退院時 Barthel index を調べた. その結果, 発症から入院までの期間は平均433日, 入院期間は244日であった. 約半数が総合病院からの転院患者で, 退院患者225例のうち約2/3が自宅復帰していた. 入院時の Barthel index は平均59点であり, 退院時の Barthel index は平均76点であった. 入院時年齢別の検討では, 高齢になるにつれて自宅退院率が低くなり, 特に80歳以上の群は他の群に比べ自宅退院率が有意に低かった. 退院先別の検討では, 自宅退院者は他の群に比べ, 入院時および退院時 Barthel index が有意に高かった. 入院期間別の検討では, 入院期間が短い群ほど入院時 Barthel index は有意に高く, 退院時 Barthel index に関しては, 入院期間が2年以上の群は2年以内の各群に比べ, 有意に低かった. 従来, 退院時 Barthel index が高いことが自宅退院の重要な条件であることは報告されているが, 今回の調査では自宅退院者は退院時 Barthel index のみならず入院時 Barthel index も他の群に比べ有意に高く, また入院時 Barthel index が高いほど入院期間が有意に短かった. 以上より, リハビリテーション専門病院入院の時点で, 年齢, 機能障害の大きさ, 合併症の大きさ, handicap などともに入院時 Barthel index を参考にして脳卒中後遺症患者のゴール, 訓練プログラムを設定し, リハビリテーションをおこなっていくことが重要である.
  • とくに血清脂質, 胃粘膜組織像との関係について
    内藤 通孝, 三浦 悟, 舟木 千明, 建石 徹, 葛谷 文男
    1991 年 28 巻 5 号 p. 683-687
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    I. 当科関連病院において胃内視鏡を施行し, 同時に血清脂質を検査できた131例 (男性42例, 女性89例; 年齢48~96歳, 平均75.6±S. D. 12.3歳) について胃黄色腫の有無と血清脂質との関連を中心に検討した. 1) 男性17例 (40.5%), 女性23例 (25.8%) の計40例 (30.5%) に胃黄色腫を認めた. 2) 年齢別では60歳代から80歳代にかけて多く見られ, 70歳代で40.0%と最大頻度を示した. 3) 単発例は42.5%で, 5個以上の多発例が17.5%みられた. 4) 部位別では70.2%が幽門前庭部に見られた. 5) 血清脂質 (総コレステロール, エステル型コレステロール, 遊離コレステロール, HDL-コレステロール, β-リポ蛋白, 中性脂肪, 遊離脂肪酸, リン脂質, アポ蛋白, 過酸化脂質), 総蛋白, アルブミン, 空腹時血糖, ヘモグロビン, ヘマトクリットはいずれも胃黄色腫の有無と相関を示さなかった.
    II. 胃黄色腫部および佐野らの4点法の胃生検を施行した94例 (胃黄色腫有45例, 年齢56~88歳, 平均76.0±8.2歳; 胃黄色腫無49例, 年齢52~93歳, 平均75.6±10.7歳) について, 胃黄色腫の有無と胃粘膜組織像との関連を検討した. 1) 組織学的には胃黄色腫の76%が幽門腺領域に見られた. 2) 黄色腫近傍胃粘膜には強い萎縮性変化を伴う例が89%と圧倒的に高く, 腺窩上皮の過形成, 腸上皮化生も高率にみられた. 3) 胃黄色腫を有する例では背景胃粘膜の萎縮および腸上皮化生の程度の強いものが多かった.
    III. 老年者における胃黄色腫の発生は血清脂質とは関係がなく, 胃粘膜局所における要因, とくに胃粘膜の萎縮性変化に伴う局所脂質代謝の異常が関与すると考えられる. 胃黄色腫の発生は胃粘膜老化の指標となる可能性が示唆される.
  • 宮田 靖志, 藤井 靖久, 北出 公洋, 原 雅道
    1991 年 28 巻 5 号 p. 688-692
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高浸透圧性非ケトン性糖尿病昏睡にて来院した腎盂癌による高齢者腸腰筋膿瘍の1症例につき, 腸腰筋膿瘍に関する若干の文献的考察を加えて報告する. 患者は, 85歳男性, 昏睡を主訴に入院. 入院時検査成績で血糖823mg/dl, 血清浸透圧345mos/kg, 尿中ケトン体陰性にて高浸透圧性非ケトン性糖尿病昏睡と診断した. インスリン持続点滴と生理食塩水を中心とした大量輸液によりすみやかに意識障害の改善をみた. 腹部エコー検査により左腎膿瘍, 右腸腰筋膿瘍が疑われたが, 腹部CTにて左副腎の腫張も認め左腎は悪性腫瘍の可能性も否定できなかった. 右上腹部から側腹部, 背部に及ぶ疼痛に加え右股関節の運動痛, 右大腿部痛を訴え37℃台の発熱も続いたが, 全身状態不良にて膿瘍のドレナージはできず抗生剤による保存的治療を行った. 全身状態不良のまま不慮の転帰となる. 剖検所見で右腸腰筋膿瘍は左腎盂癌の転移と左副腎, 肝, 両側肺, リンパ節への転移を認めた. 腸腰筋膿瘍は比較的稀な疾患であり, 病因別に原発性と二次性に分類されるが本邦では二次性が多いと考えられる. 最近の報告では, 腸疾患による腸腰筋膿瘍の頻度が高く, 特に, クローン病によるものがその半数以上を占めている. その他, 大腸の悪性腫瘍によるものも少数ながら報告されており, 高齢者の腸腰筋膿瘍を考える上では悪性腫瘍を考慮する必要がある. 本例のような腎盂癌による腸腰筋膿瘍の報告例は私たちの検索した範囲ではなく稀な症例であるので報告した.
  • 岡本 潔, 久保田 一雄, 川田 悦夫, 倉林 均, 白倉 卓夫
    1991 年 28 巻 5 号 p. 693-696
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性で, 1989年12月発熱と呼吸困難を主訴に入院. 患者は既に4年前に肺線維症による二次性多血症の診断を受け, 以後繰り返し潟血療法を受けて, ヘマトクリット (Ht) 値は44.5~62.9%に維持されていた. 患者は入院直後より激しい下痢を併発しHt値は61.5%に達した. 入院3日目午前1時30分頃, 意識障害が出現しHt値は78.5%に急増し, 同時に筋由来のLDH, CPK, アルドラーゼ, ミオグロビンの増加も認められた. 直ちに600mlの瀉血と1,500mlの輸液が行われ意識レベルは改善したが, 構音障害と片麻痺が顕著になった. 同日早朝のHt値は59.4%に低下していた. 症状発現後74日目に施行した頭部CT及び15カ月後に施行したMRI検査では明らかな病巣を確認できなかったが, 臨床的に脳梗塞と診断された. Ht値または血液粘度の急激な上昇は脳梗塞の引き金となる可能性があり, 特に老年者ではその予防にHt値の適正な管理が望まれる.
  • 三根生 和明, 藤岡 精二, 市木 拓, 岩田 猛, 河野 修興, 日和田 邦男
    1991 年 28 巻 5 号 p. 697-701
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性. 幼小児期より鼻出血を頻回に認め, 35歳時頃から Hugh-Jones II度の労作性呼吸困難を自覚していた. 同時期に胸部X線写真上, 異常陰影を指摘されたが放置していた. 1990年9月旅行中, 呼吸困難の増悪を認め, 歩行時に急激な呼吸困難を自覚した直後, 意識消失し, 救急車にて近医に入院した. その際胸部X線写真・CT・DSA等で肺動静脈瘻と診断された. 加療目的で10月1日, 当院に紹介され入院した. 肺動静脈瘻は6個存在し, 濃厚な鼻出血の家族歴を認めたため Rendu-Osler-Weber 病に伴う肺動静脈瘻と診断した. 100%酸素投与下で, 簡便法を用いて求めたシャント率は56.5%であった. 入院時には, room air 呼吸下でPaO2 39.8Torr, SaO2 75.4%と高度の低酸素血症を示し, その後も急速に増悪をきたしたため, 肺動静脈瘻切除目的で10月5日左肺部分切除術 (S3, 4, 5, 8) を施行した. 術後経過は良好で, 11月2日の退院時の動脈血ガス分析 (room air 呼吸下) はPaO2 76.4Torr, SaO2 95.7%を示した. 100%酸素投与下で, 簡便法を用いて求めたシャント率は24.6%と改善を示した.
  • 1991 年 28 巻 5 号 p. 702-736
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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