日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
31 巻, 10 号
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  • 坂野 章吾, 仁田 正和, 菊地 基雄, 高田 勝利, 御供 泰治, 新美 達司, 山本 俊幸
    1994 年 31 巻 10 号 p. 747-751
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者は潜在的に血栓準備状態にあることが多く, 容易に敗血症からDICおよびDIC準備状態になり, 致死的になりやすい. 我々は重症感染症によりDICおよびDIC準備状態を併発した31例を検討した. 31例を2群, すなわち14例の早期死亡群 (14日以内に死亡) と17例の長期生存群 (15日以上生存) に分けた. また, 31例の血栓性疾患群, および25例の健常高齢者群を対照とした. DICスコアは有意に早期死亡群が長期生存群より高値であり, DICスコアと生存日数には有意の相関関係を認めた. また, 長期臥床状態の症例が早期死亡群には多かった. 血清BUN, Cre 値は有意に早期死亡群が長期生存群より高値であった. TAT, PIC, Dダイマーは血栓性疾患群は健常高齢者より有意に高値であり, またTAT, Dダイマーは早期死亡群, 長期生存群ともに血栓性疾患群より高値であった. Dダイマーは早期死亡群が長期生存群より高値であった. DICは分子マーカーによる早期診断が重要で, Dダイマー高値は予後不良と考えられた.
  • 香北町研究
    松林 公蔵, 奥宮 清人, 河本 昭子, 木村 茂昭, 和田 知子, 藤沢 道子, 土居 義典, 島田 和幸, 小澤 利男
    1994 年 31 巻 10 号 p. 752-758
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の日常生活機能を包括的に評価し, 老年者の機能衰退を最大限予防することを目的とする, 縦断的検診事業「香北町健康長寿研究」(KAHOKU LONGITUDINAL AGING STUDY; “KLAS”) の概要を報告した. 本研究は1990年に着手され, 高知県香北町 (人口約6,000人, 高齢化率32%) 在住の全老年者を対象としたものである. 65歳以上の全員に日常生活機能や社会生活状況, ライフスタイルに関するアンケート調査を行い, さらに75歳以上の老年者については, 包括的機能を中心とした検診を実施した. 65歳以上の全老年者にしめる日常生活動作 (ADL) 完全自立者の割合は1991年度 (71%), 1993年度 (74%) と, 2年間で有意の増加を示していた. また, ADL完全自立者の年齢階層別頻度の割合は加齢とともに低下するが, 1993年度は1991年度と比較して, その傾きはゆるやかとなっていた. とくに, 85~89歳, 90歳以上の年齢階層では, 自立者の割合が2年間で有意に上昇していた. 一方, 全老年者にしめる情報関連機能自立者の割合は, 1991年度 (58%), 1993年度 (58%) と2年間で変化は認めなかった. 情報関連機能自立者の年齢階層別の割合の低下は, 1993年度が1991年度に比してやはり緩慢とはなっているものの, ADLほど顕著なものではなかった. 毎年受診している75歳以上の後期老年者における神経行動機能の経年変化では, 2年間の間に一部の指標で成績の低下をみたものの, その差はわずかで, 指標によっては改善を示したものも認められた. 以上の結果から, 毎年の検診事業と結果を還元しライフスタイルを指導する啓蒙活動が, 老年者住民の健康意識の向上に貢献し, 加齢にともなう機能劣化を予防し得る可能性が示唆された.
  • 日常生活機能とライフスタイル
    松林 公蔵, 奥宮 清人, 和田 知子, 藤沢 道子, 田岡 尚, 木村 茂昭, 土居 義典
    1994 年 31 巻 10 号 p. 759-767
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高知県香北町 (人口: 5,961人, 高齢化率32%) と鹿児島県上屋久町 (人口: 6,398人, 高齢化率: 21%) に住む65歳以上の老年者について, 日常生活機能 (以下“機能”と略す) とライフスタイルとの関係を検討した. 日常生活機能は, アンケートによりADL 8項目 (歩行, 階段昇降, 食事, 更衣, 排泄, 入浴, 整容, 服薬) と情報関連機能5項目 (視力, 聴力, 会話, 記憶, 電話) についてスコア化した. ライフスタイルとして, 同居形態, 婚姻状況, 毎日の歩行, 飲酒, 服薬などを検討した. 香北と屋久の両地域に共通する所見として, (1)加齢にともない機能は低下する. (2)情報関連機能については地域差ならびに男女差が少ない. (3)男性の婚姻状況は両地域でほぼ同様. (4)経済的に自立している老年者の方が, 要援助者よりも機能が優れている. (5)女性では配偶者健在群の方が配偶者死別群よりも機能が優れていたが, 男性では有意差とはならない. (6)毎日歩く群の方が歩かない群よりも機能は優れている. (7)なんらかの薬を毎日服用している老年者は, 非服用群に比して機能が低下していたが, 薬を降圧剤に限ると機能に差はない. (8)飲酒する老年者は全く飲酒しない群に比して機能が優れている. 等の事実が判明した. これに対し, 香北と屋久で異なる点は, 主として子供世代の職・住条件の影響を大きく受けているものと考えられた. これらを総合すると, 両町の老年者の機能に関する実態は比較的類似しており, 香北の高齢化群32%と屋久の高齢化率21%を考えあわせると, 老年者の増加がただちに老年者全体の平均的機能の低下にはつながらないこと, また, 情報関連機能に較べて, ADLはライフスタイルの影響を受けやすく, ADLについては, 生活習慣などの改善によってその劣化を予防し得る可能性が示唆された.
  • 高血圧の頻度と血圧変動
    奥宮 清人, 松林 公蔵, 和田 知子, 藤沢 道子, 田岡 尚, 木村 茂昭, 土居 義典
    1994 年 31 巻 10 号 p. 768-775
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高知県香北町 (香北) と鹿児島県上屋久町 (屋久) の75歳以上の後期老年者について, 地域比較的に, 高血圧の頻度と降圧薬の服用状況, 姿勢変化や白衣効果などによる血圧の変動について検討した. 血圧は両地域とも有意に女性が高値を示し, 起立により男性では血圧が低下し, 女性は上昇する傾向を示した. この現象はとくに屋久において顕著であった. 高血圧と境界域高血圧をあわせた割合は屋久の女性は72.1%で男性の52.9%に比べて有意に高値を示し, 特に降圧薬非服用者において顕著であった. 起立性低血圧の割合は香北と屋久においてそれぞれ, 8.5%, 12.0%であり, 降圧薬の服用には関係なかった. 保健婦による手動血圧計と医師による自動血圧計の測定較差については, 医師の計測した収縮期血圧値が高いほど保健婦計測との血圧較差は大きくなり, 医師計測により分類した高血圧群では医師の計測した血圧は保健婦の計測に比べて, 収縮期血圧が約20mmHg, 拡張期血圧は約10mmHgの高値を認めた. 医師測定により高血圧と分類された者の中で, 保健婦測定により高血圧であった者の割合は香北40.6%, 屋久45.2%と半分弱であり, 医師により血圧高値を示した者には“白衣効果”と同様の機序が含まれることが示唆された.
  • 血清脂質と血液生化学
    和田 知子, 松林 公蔵, 奥宮 清人, 藤沢 道子, 田岡 尚, 木村 茂昭, 土居 義典
    1994 年 31 巻 10 号 p. 776-780
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    血液生化学検査値の地域差を検討することを目的に, 高知県香北町 (以後香北と略す) と鹿児島県上屋久町 (以後屋久と略す) の2つの地域で調査を行った. 対象は平成3年度の長寿検診に参加した香北在住の75歳以上の高齢者312名 (男:女=147:165, 平均年齢79.8±4.2歳) と屋久在住の75歳以上の高齢者172名 (男:女=61:111, 平均年齢79.0±3.7歳) である. 血清総蛋白, アルブミン, 血糖, 尿素窒素, クレアチニン, 尿酸, 総コレステロール, HDL-コレステロール, リポ蛋白 (a) の9項目を測定し, 両地域で比較検討した. 香北では屋久と比較して, HDL-コレステロールは有意に低値であり, リポ蛋白 (a) は有意に高値であった. 総コレステロール値は両地域間で有意の差はなかったが, 220mg/dlを越える例の割合は香北が屋久より有意に高かった. 以上の結果より血清脂質からみるかぎり, 香北のほうが屋久より動脈硬化の危険因子が高いことが示唆された. 各種血液検査値の地域差を検討することは動脈硬化性疾患をはじめとする種々の疾患の予防をより効果的に進めるうえで有益と考えられた.
  • 神経行動機能
    和田 知子, 松林 公蔵, 奥宮 清人, 藤沢 道子, 田岡 尚, 木村 茂昭, 土居 義典
    1994 年 31 巻 10 号 p. 781-789
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    地域在住高齢者の総括的機能評価を行うことを目的に, Mini Mental State (MMS), 長谷川式簡易痴呆スケール改訂版 (HDSR), Kohs 立方体テスト簡易版 (Kohs), コンピュータを用いた視空間認知・運動協応動作テスト (VCPS), ボタンテスト (Button-S), Up & Go, Functional reach (FR) の7項目の神経行動機能の評価を行った. 対象は高知県香北町 (香北) 在住の75歳以上の高齢者332名 (男:女=137:195, 平均年齢80.5歳) および鹿児島県上屋久町 (屋久) 在住の75歳以上の高齢者194名 (男:女=68:126, 平均年齢79.0歳) である. 同時にADL (歩行, 階段昇降, 食事, 更衣, 排泄, 入浴, 整容, 服薬の8項目), 情報関連機能 (視力, 聴力, 会話, 記憶, 電話の5項目), およびライフスタイルに関するアンケート調査を実施し, 神経行動機能との関連を検討した. 神経行動機能の各項目は香北では加齢にともなって有意に低下したが, 屋久におけるMMS, HDSR, Button-S, FRは, 年齢と相関しなかった. 地域間比較では, 香北がMMS, Kohs, VCPSなど認知機能を反映する項目が屋久より有意に成績がよく, FRは, 屋久の方が優れていた. 両地域に共通して, Button-S, Up & Go, FRはADLの状態を良く反映し, MMS, HDSR, Kohs の項目は情報関連機能の状態をよく反映した. ライフスタイルとの関連では, 香北では独居群, 仕事を持っている群が有意に神経行動機能が優れていたが, 屋久では両者の差は有意差に達しなかった. 一部の神経行動機能は有意な地域差を認め, 高齢者の知的, 身体的機能は環境や生活習慣の影響も大きいと考えられた. このような地域比較研究は, 高齢者の機能との関連で, よりよき環境, 生活習慣を考察するうえで, 重要な基礎データとなるものと考えられた.
  • 情緒ならびに Quality of Life (QOL)
    松林 公蔵, 和田 知子, 奥宮 清人, 藤沢 道子, 田岡 尚, 木村 茂昭, 土居 義典
    1994 年 31 巻 10 号 p. 790-799
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高知県香北町と鹿児島県上屋久町に住む75歳以上の老年者の Quality of Life (QOL) に関する実態を明らかにするために, Visual Analogue Scale (VAS) を用いて, 主観的健康度, 食欲, 睡眠, 気分, 記憶, 家族関係, 友人関係, 経済状態, 生活満足度, 幸福度, を評価し, あわせて Geriatric Depression Scale (GDS) と日常生活動作 (ADL), ライフスタイルとの関連を検討した. VASの再現性はすでに標準化されているGDSの再現性よりも優れていた. 生活満足度と幸福度は, 家族関係, 友人関係, 経済状態, 気分などとよい相関を示した. ライフスタイルとGDS, VAS (主観的健康度, 生活満足度, 幸福度) との関係では, 家族関係, 集団行動への積極的参加, 経済的自立, 薬の服用, がVASと有意の相関を示したが, 年齢階層による違いは認められなかった. また, 健康度はADLと相関を示し,神経行動機能指標の中ではとくに, 足腰の安定度を示す指標が, 健康度のみならず生活満足度や幸福度と関連していた. 男性では, 同居形態がVASに影響していたが, 女性では婚姻状況や同居形態とVASとの関連は乏しかった. VASに関する香北と屋久の比較では, 屋久の方が, 家族関係, 友人関係, 経済状態, 生活満足度, 幸福度のすべてにおいて, 有意に高い得点を示した. 両地域の老年者が最も忌避する疾患の頻度集計では, 1) 老人ぼけ, 2) 癌, 3) 脳卒中, 4) 心臓病の順であった. 老年者のQOLには, 疾患はもとより, ADLや足腰に関する神経行動機能, それに性別やライフスタイル, さらにはその背景となる自然環境や文化的土壌も影響している可能性が示唆された.
  • 血中 osteocalcin 濃度と尿中 pyridinoline 排泄量の変化
    斉藤 博幸, 山初 順一, 田村 泰, 吉田 尚
    1994 年 31 巻 10 号 p. 800-804
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    lysyl pyridinoline (以下LPと略す) および hydroxylysyl pyridinoline (以下HLと略す) ともに高齢者ほど僅かながら増加しており, 年齢との間に弱いながら有意な正の相関関係が認められた(それぞれr=0.24, p<0.05; r=0.35, p<0.005). 血清 osteocalcin (以下BGPと略す) も年齢との間に同様な有意な正の相関関係が認められた (r=0.39, p<0.005). 90歳代後半のLP, HLおよびBGPは50歳代前半に比べて20~30%増加していた.
    LP或いはHLとBGPとの間に三次曲線で表せる有意な正の相関関係が認められた (それぞれr=0.51, p<0.005; r=0.44, p<0.005). 各年齢層におけるLP或いはHLとBGPとの相関を検討すると, 50歳および60歳代では有意な相関が認められたが, 70歳代および80歳代においては有意な相関は認められなかった.
    今回の結果は限られた地域住民の分析から得られたものであり, また用いた生化学的指標に限界はあるものの, 今回の対象をこれらの指標でみた限りでは, 閉経後の骨塩量減少の原因として, 加齢にともなう骨代謝の coupling 機構の破綻が一部関与する可能性が示唆された.
  • 近喰 櫻, 深谷 修一, 加納 広子, 今村 敏治, 岩本 俊彦, 高崎 優
    1994 年 31 巻 10 号 p. 805-810
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は, 81歳, 女性. 平成元年12月25日肺炎にて入院. 平成3年2月に腎不全による骨代謝障害が疑われたため, 骨生検を施行. 生検部位より出血が続き, 貧血を来したため, 同年3月より含糖酸化鉄を投与した. 投与開始後23日目の血液検査で, 低リン血症を認めた. 骨軟化症の危険性が存在したため, 活性型ビタミンDの効果に期待したが, 低リン血症は持続した. そこでEDTA-2Na負荷試験を行い, 尿細管でのリンの再吸収能を調べた. その結果, 本症例には副甲状腺機能障害と腎尿細管のリン再吸収障害が存在していると考えられた. また組織において代謝されるショ糖並びに貯蔵された鉄によりリンの分布異常が生じ, これらが含糖酸化鉄の投与による低リン血症を引きおこしたと考えられた. なお乳酸カルシウムが腸管でのリンの吸収を抑制した可能性も無視できない.
  • 平沢 秀人, 浅川 理, 小山 恵子, 高橋 祥友, 渥美 義賢, 熊倉 徹雄
    1994 年 31 巻 10 号 p. 811-814
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は, 59歳男性, もの忘れ・性格変化を主訴に受診. 神経学的には眼症状を含め特に異常なく, 精神医学的には落着きのなさ, まとまりのない会話, 記銘力低下を主とした痴呆などを認めた. 血清, 髄液のTPHA陽性, 髄液の細胞数, 蛋白量増加, FTA-ABS陽性などから進行麻痺と診断. ペニシリン治療は, 2クール行ったが, 2クール目は大量療法を行った. 治療後, 髄液所見は改善, 軽度痴呆が残遺したものの精神症状も著しく改善した.
  • 新津 望, 梅田 正法
    1994 年 31 巻 10 号 p. 815-820
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    70歳以上の甲状腺悪性リンパ腫に対し化学療法, 放射線療法を施行し完全寛解となった3例を経験したので報告する.
    〔症例1〕87歳, 女性. 10年前より橋本病にて当院通院中. 左頸部腫瘤にて甲状腺吸引生検を施行し瀰漫性小細胞型 (B細胞型) と診断. COP-BLAM療法および放射線療法にて完全寛解となり, 外来通院中.〔症例2〕71歳, 女性. 右頸部腫瘤にて当院受診. 生検の結果瀰漫性中細胞型, B細胞型と診断. 同時に甲状腺機能低下を認めた. COP-BLAM療法および放射線療法にてCRとなり, 現在外来通院中である.〔症例3〕76歳, 男性. 12年前より橋本病にて他院通院中. 右頸部腫瘤にて来院し, 甲状腺吸引細胞診にてB細胞性リンパ腫と診断し, COP-BLAM療法および放射線療法にて完全寛解となり, 外来通院中. 3症例とも化学療法と放射線療法の併用により完全寛解となり, 治療によりマイクロゾーム, サイロイドテストが陰性または低倍率となった.
    今後, 高齢者と共に甲状腺悪性リンパ腫の増加が見られると思われ, 診断および治療方法の更なる確立が必要と思われ報告した.
  • 1994 年 31 巻 10 号 p. 821-827
    発行日: 1994/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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