日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
31 巻, 11 号
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  • 核医学的方法と食道内pHモニタリングの比較
    小川 滋彦, 小市 勝之, 東福 要平
    1994 年 31 巻 11 号 p. 829-834
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    脳血管障害を有する経鼻胃管患者11例 (平均79.8歳) において, 胃食道逆流を定量評価することにより, 呼吸器感染症との関連を検討した. 胃食道逆流は, 核医学的方法と24時間食道内pHモニタリングの両者で比較し, さらに胃液pHと胃内細菌についても検討した. 呼吸器感染症の程度は, 核医学的方法による胃食道逆流と有意 (p<0.05) に相関したが, 食道内pHモニタリングによる胃食道逆流とは関連を認めなかった. 胃液pHは, 胃内グラム陰性桿菌の細菌数の対数と有意 (p<0.001) な相関を示したが, 呼吸器感染症の程度とは相関しなかった. 以上より, 胃食道逆流は経管栄養患者の呼吸器感染症の発生に重要な関わりを有することが示唆され, その評価方法としては, 食道内pHモニタリングよりも核医学的方法がすぐれていることが明らかにされた.
  • 水島 和雄, 蘆田 知史, 柴田 好
    1994 年 31 巻 11 号 p. 835-848
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    人口の老齢化と食生活の欧米化にともない, 虚血性心疾患や大動脈瘤, ASOなどの動脈硬化性疾患は増加しており, 外科的治療が選択されることも多い. 腹部大動脈の置換や遮断を伴う手術後には高頻度に虚血性腸病変の発生することが知られており, しかもこれには不可逆性の腸管壊死をきたす割合が高いと報告されている. 本研究ではこの血管手術後の虚血性腸病変の診断および治療方針の決定に重要な意味をもつ内視鏡所見の特徴を把握する目的で, イヌを用いて種々の腸管虚血状態を実験的に作成してその病像を解析し, 実際の臨床例と対比しながら検討を行った.
    その結果, イヌの大腸を栄養する動脈を様々な組み合わせで結紮しても腸管の壊死をともなう虚血性病変は作成されず, Gelfoam を用いて栄養動脈を塞栓したモデルで高率に潰瘍形成や壊死病変が出現した. この血管塞栓モデルの内視鏡像は, 腸管全周におよぶ潰瘍性病変を主体とするものが高頻度にみられた. また, 虚血性大腸炎に典型的とされる縦走性の潰瘍やびらんは, 血管を一時的に遮断した後再灌流したモデルで高率に認められた.
    一方, 1988年4月より1993年8月までに当院で経験した血管手術後の虚血性腸病変症例は9例で, これらの症例では一般的な虚血性大腸炎に比較して年齢分布がより高齢で重症例が多く予後が悪い傾向がみられた. 9例中3例が腸管の広汎な壊死を示す壊死型であった. これらの症例の内視鏡所見は, 下部直腸病変の存在, 腸管全周に認められる潰瘍形成や壊死性変化を特徴としており, 血管塞栓実験モデルの内視鏡像に類似していた. これらの結果から, 血管手術後の虚血性腸病変重症例の成因として, 腸管壁内の細動脈の塞栓の関与が大きいと考えられた.
  • 宮尾 益理子, 桑島 厳, 宇野 彩子, 蔵本 築, 小澤 利男
    1994 年 31 巻 11 号 p. 849-853
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    寝たきり老年者における入浴中および24時間血圧に及ぼす影響を検討するために10例 (男性4, 女性6例, 平均年齢78.7歳) の寝たきり老年者について以下の検討を行った. 短期変動の検討のため, 入浴10分前および洗髪洗体時, 入浴中 (38℃・5分間), および入浴後14分まで血圧, 脈拍を2分毎に測定した. 入浴前後の血中カテコラミン, 血漿レニン活性 (PRA) も測定した. ついで24時間血圧に及ぼす影響を検討するために, 出浴後15分より携帯型自動血圧計 (TM2421) を装着, 30分毎に血圧, 脈拍を24時間測定し, 出浴時間を基準に, 非入浴日と6時間毎の平均値を比較した. その結果, 1) 受動的洗体洗髪時に収縮期, 拡張期血圧ともに上昇し, その後, 入浴により低下, 出浴直後に一過性に上昇した後, 出浴14分後には入浴前よりさらに低値を示す血圧変動をした. 2) 血中カテコラミン, PRAは有意な変化を示さなかった. 3) 24時間変動の入浴日と非入浴日の比較では, 収縮期, 拡張期血圧とも出浴後12時間まで, 入浴日が有意に低値を示し, 入浴による降圧効果の遷延が示唆された.
  • 東本 有司, 大畑 雅洋, 上谷 光作, 藤本 尚, 中村 嘉典, 駿田 直俊, 船迫 真人, 島田 義也, 福地 義之助
    1994 年 31 巻 11 号 p. 854-859
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    肺胞マクロファージ (以下AM) のほとんどは骨髄前単球由来といわれているが, その一部は肺局所で自己増殖している. 3系統のマウスを用い, AM及び骨髄付着細胞のコロニー形成能の老化による変化を検討した. C57BL/6NマウスAMのコロニー形成単位 (以下CFU) は, 24カ月齢で4カ月齢に比べ約50%の低値であった (p<0.05). また, 老化促進モデルマウス (以下SAM) SAMP6系 (老化促進系) とSAMR1系 (SAMの対照系) を用いて, 加齢に伴うAMのCFUの変化を検討したところ, SAMP6系ではCFUは加齢に伴って低下し, 12カ月齢では4カ月齢の約50%に低下した (p<0.05). SAMR1系でも加齢に伴ってCFUが低下し, 4カ月齢に比べて7カ月齢で約65%, 12カ月齢で16%に低下した (p<0.001). 老化に伴うAMのCFU低下の機序を検討するため骨髄細胞のCFUの老化による変化を検討した. SAMR1系骨髄細胞のCFUは4カ月齢と12カ月齢両群にほとんど差はなかった. SAMP6系骨髄細胞のコロニー形成単位は4カ月齢に比べて12カ月齢で約2倍の高値であった (p<0.05). したがって, AMと骨髄単球系付着細胞のコロニー形成能の老化による変化は異なっており, 骨髄細胞の変化がそのまま肺胞マクロファージで反映されるのではないことが明かとなった.
    本研究で明らかにしたマウスAMのCFUの加齢に伴なう低下は, 老年者の免疫機能の低下を少なくとも一部を説明しうるものと思われる.
  • 栗田 正, 磯貝 行秀, 栗田 正文
    1994 年 31 巻 11 号 p. 860-864
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    痴呆に伴う問題行動と認知機能障害との関係を老人保健施設に入所中の Alzheimer 型痴呆 (DAT) 患者57名と混合型痴呆 (MIX) 患者31名を対象に検討した. DATの診断はDSM-III-Rに従い, MIXの診断はDSM-III-Rと Hachinski の虚血スコアーを参考にした. 認知機能は Mini-Mental State (MMS) で, 問題行動は Baumgarten らの Dementia Behavior Disturbance (DBD) スケールで評価した. DAT群では, MMSとDBD得点は有意に相関したのに対し, MIX群では両者は相関しなかった. MMSが20点以上の認知機能障害の軽度な患者に対象を限定すると, DAT, MIX群のMMS平均得点は同等であるにも拘らず, DBD得点はMIX群のほうが高値であった. 以上のことから, DAT患者では問題行動は認知機能障害の進行に並行して出現, 増加することが示唆された. しかし, そこに脳血管性病変が重なると両者の障害は並行せず, 認知機能障害の軽い時点から問題行動が目立つ傾向にあると思われた.
  • 加齢およびパーキンソン病を中心に
    高橋 智, 高橋 純子, 大澤 典子, 阿部 隆志, 米沢 久司, 世良 耕一郎, 東儀 英夫
    1994 年 31 巻 11 号 p. 865-871
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    PIXE法 (荷電粒子励起X線法) により正常対照例25例, パーキンソン病未治療例13例および治療例7例の血清中微量元素 (Br, Cu, Fe, Mg, Se, Zn), 髄液中微量元素 (Br, Cu, Fe, Mg, Zn) 濃度を分析し, 血清中濃度と髄液中濃度の相関, 加齢変化, パーキンソン病における変化を検討した.
    正常対照例における各微量元素の血清中濃度と髄液中濃度の相関の検討では, Br, Cu, Feで有意な正の相関を認め, Znでも正の相関傾向を認めた. 正常対照例における加齢変化の検討では, 血清中Cu濃度は加齢と正の相関傾向を示し, 血清Cu/Zn比は加齢とともに有意に増加した. またBrの髄液中濃度/血清中濃度比は加齢とともに有意に増加した. パーキンソン病未治療例および治療例において髄液中Mg濃度は正常対照例に比して有意に低下していた. その他の血清および髄液中微量元素濃度では有意な変化は認めなかった.
  • 稲垣 俊明, 山本 俊幸, 吉田 達也, 橋詰 良夫, 稲垣 亜紀, 新美 達司, 小鹿 幸生
    1994 年 31 巻 11 号 p. 872-878
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1992年11月より1993年10月末までに, 名古屋市厚生院の特別養護老人ホーム (以下特養と略す) に入所した81例 (男20例, 女61例, 平均年齢81.4歳) について, 入所後1カ月以内に痴呆の診断を施行し, 痴呆例と非痴呆例に分類して実態調査を実施した. 痴呆の出現率は45.7%であり, 痴呆の程度は軽度32.4%, 中等度27.0%, 高度が40.6%であった. 老年者の総合的機能評価法を用いて痴呆との関係を検討したところ, 痴呆の程度は年齢と正の相関, HDS, ADL, 身体情報機能と負の相関を示した. さらに1993年11月中旬に入所時および入所後の身体疾患による入院の有無についても検討し, 以下の結果を得た.
    1) 特養入所時の身体疾患〔()内は非痴呆例の成績〕について, 痴呆例では脳梗塞48.6% (20.5%), 脳の変性疾患は54.1% (2.3%) と非痴呆例に比し有意 (p<0.01) に高率であった. その他の疾患では心疾患, 高血圧症, 運動器疾患が高率にみられたが有意差はなかった. 特養入所時, 入所後に身体疾患により入院治療を必要とした症例では, 痴呆例は15例; 40.5% (10例; 22.7%) と高率な傾向 (p<0.1) がみられた.
    2) 痴呆例の特養への入所経路について検討すると, 老人保健施設, 軽費老人ホーム, 養護老人ホーム, 老人病院等の老人施設からが86.5% (68.3%) と高率であり, 自宅からは5.4% (9.1%) と低率であった. 家族が今後の生活について最初に相談した機関は, 痴呆例では福祉事務所45.9% (43.2%), 特養入所前の施設の職員48.7% (50.0%), 民生委員5.4% (6.8%) であった.
    以上より, 痴呆例に対する医療供給システムにおける特養の役割は, 痴呆例に対して身体疾患によく注意をしながら日常生活の介護をし, 医療, 保健, 福祉機関との連携が重要であると考えられた.
  • 特に随伴所見と加齢, 痴呆との関連
    岩本 俊彦, 岡田 豊博, 小川 公啓, 柳川 清尊, 宇野 雅宣, 高崎 優
    1994 年 31 巻 11 号 p. 879-888
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者脳血栓症患者のMR画像でみられる変化と加齢, 痴呆との関連を知る目的で, 初発脳血栓103例 (脳血栓群) のMR画像を age-match した危険因子群 (脳梗塞の既往がなく, 高血圧/糖尿病を有する37例), 非危険因子群 (いずれもない78例) の3群で比較検討した. 脳血栓群は発作後3カ月以内のMR (T2強調) 画像で, 検討項目は, (1)責任病巣 (分布より大脳皮質型, 半卵円中心型, 内包-放線冠型, 脳幹・小脳型), (2)脳室周囲高信号 (PVH: 広がりより Rims/Caps, Patchy, Diffuse), (3)深部点状病変 (SL: 出現数より0, 1~3個, 4個以上), (4)無症候性脳梗塞, (5)脳室拡大, (6)皮質萎縮 (視覚的に mild, moderate, severe) であった. 脳血栓群の責任病巣では内包-放線冠型 (46例) が最も多く, 非危険因子群との比較ではPVHの広がり, 無症候性脳梗塞の頻度, 皮質萎縮の程度に関して有意差を認めた. 年代別にみると加齢とともに脳血栓群では広範なPVH, 多発SLが増加し, 高度な皮質萎縮は非危険因子群でも有意に増加した. 無症候性脳梗塞, 脳室拡大は60歳代より漸増傾向を示したが, 有意でなかった. 痴呆の有無, 程度をDSM-IIIRおよび改訂長谷川式痴呆スケールで評価すると, 痴呆は40例 (78例中) にみられ, その頻度は加齢とともに増加した. 多変量解析数量化II類より痴呆に影響するMRI変化は, 強い順からPVH, 脳萎縮 (脳室拡大と皮質萎縮を含む), 責任病巣, SLとなった. 以上より, 加齢とともに広範なPVHが出現し, 脳萎縮が進行した結果, 血管病変を有する高齢者では痴呆を来しやすいことが示された. また既に多彩な変化をもつ老人脳では脳血栓症に随伴する変化が痴呆のごとき症状を修飾する可能性のあることが示唆された.
  • 名倉 英一, 木村 昌之, 細川 武彦, 大石 和美, 遠藤 英俊, 山田 英雄, 井形 昭弘
    1994 年 31 巻 11 号 p. 889-898
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者の医療に関する意識を国立療養所中部病院に外来受診または入院中の患者を対象にアンケート法により検討した. 調査対数262名のうち有効回答数は250であった. 調査時点でがん患者に対し, がんの告知は行われていなかった. 調査項目総数31項目のうち, 自分の病気に関する理解度, 当院での診断と病状・検査・治療・処方薬・治療法の選択の判断などに関して, 60歳未満, 60歳台, 70歳台, 80歳以上の年齢階層別, および基礎疾患ががんか非がんかで比較検討した.
    自分の病気を, おおよそ, 理解している人の割合は, 70歳台までは, 42~48%であったが, 80歳以上では22%と低下傾向を認め, 「まったく知らない」患者は, 80歳以上は17%と高率であったが統計的には有意ではなかった. 疾患の診断名を知りたいと希望する人は, 年代の上昇とともに有意の低下を認めなかったが, もしがんであった場合, がんなのかどうかの質問に対し, 「知りたい」と希望する者は, 年代の上昇とともに有意に低下し, 「教えてほしくない」と答える者は, 60歳未満6%, 60歳台4%, 70歳台14%, 80歳以上では28%と有意の増加を認めた. その他の質問で, 年代の上昇とともに説明の希望者の率が有意に低下したのは, 今後の病状の変化, 検査の目的・方法・結果, 治療の方法・副作用, および処方薬の名前・効果・副作用についであり, 希望者の率は, 60歳未満は93~99%, 60歳台は78~89%, 70歳台は69~90%, 80歳以上は60~80%であった. しかし, がん患者と非がん患者との間には有意の差を認めなかった.
    以上より, 70歳以上の高齢患者は, がんに対しより不安感を持ち, 60歳以上の患者の60~90%は医療の内容について説明を希望するが, この割合は年代の上昇とともに有意に低下することが明らかとなった.
  • 誘発例と悪化例の報告
    内藤 寛, 葛原 茂樹
    1994 年 31 巻 11 号 p. 899-902
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Cisapride によって誘発されたパーキンソニズム, およびそれによって悪化したパーキンソン病の各1例を報告する. 症例1: 75歳女性. 便秘と食欲不振に対し cisapride を投与され, 約1年後にパーキンソニズムが出現, 前傾姿勢, 後方突進などの歩行障害, 歯車様の筋固縮, 振戦, 強い抑うつを認めた. 薬剤の中止後, 約2カ月でほぼ病前の状態に回復した. 症例2: 66歳女性, パーキンソン病の便秘症状の治療目的で cisapride を投与され, 2カ月後に無動と固縮が悪化して嚥下困難と呼吸困難が出現し, 気管切開, レスピレーター管理を必要とした. Cisapride 中止後, 約3カ月で歩行可能になった. 本薬剤は, コリン系のみに作用してドパミン系の阻害作用を欠き, 脳内への移行は少ないとされてきた. しかし, 実際にはパーキンソニズム誘発性があることに留意し, パーキンソン病患者や高齢者に投与する場合には, 副作用出現に十分注意する必要がある.
  • 1994 年 31 巻 11 号 p. 903-907
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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