高齢者の医療に関する意識を国立療養所中部病院に外来受診または入院中の患者を対象にアンケート法により検討した. 調査対数262名のうち有効回答数は250であった. 調査時点でがん患者に対し, がんの告知は行われていなかった. 調査項目総数31項目のうち, 自分の病気に関する理解度, 当院での診断と病状・検査・治療・処方薬・治療法の選択の判断などに関して, 60歳未満, 60歳台, 70歳台, 80歳以上の年齢階層別, および基礎疾患ががんか非がんかで比較検討した.
自分の病気を, おおよそ, 理解している人の割合は, 70歳台までは, 42~48%であったが, 80歳以上では22%と低下傾向を認め, 「まったく知らない」患者は, 80歳以上は17%と高率であったが統計的には有意ではなかった. 疾患の診断名を知りたいと希望する人は, 年代の上昇とともに有意の低下を認めなかったが, もしがんであった場合, がんなのかどうかの質問に対し, 「知りたい」と希望する者は, 年代の上昇とともに有意に低下し, 「教えてほしくない」と答える者は, 60歳未満6%, 60歳台4%, 70歳台14%, 80歳以上では28%と有意の増加を認めた. その他の質問で, 年代の上昇とともに説明の希望者の率が有意に低下したのは, 今後の病状の変化, 検査の目的・方法・結果, 治療の方法・副作用, および処方薬の名前・効果・副作用についであり, 希望者の率は, 60歳未満は93~99%, 60歳台は78~89%, 70歳台は69~90%, 80歳以上は60~80%であった. しかし, がん患者と非がん患者との間には有意の差を認めなかった.
以上より, 70歳以上の高齢患者は, がんに対しより不安感を持ち, 60歳以上の患者の60~90%は医療の内容について説明を希望するが, この割合は年代の上昇とともに有意に低下することが明らかとなった.
抄録全体を表示