目的: 比較的選択されていないと考えられる老年者食道癌の放射線治療による治療成績を調査し, その成績および予後に与える因子について, 特に放射線治療を完遂できない理由, 年齢と生存率の関係, 予後を悪くする原因などに重点をおいて, 検討した.
対象と方法: 放射線治療未完群27例, 治療完了群77例, 放射線治療+手術群24例, 計128例を対象とし, 生存率と年齢, 性別, 線量, 原発巣の大きさ, T分類, 手術の有無, 血清アルブミン濃度, 白血球数, 病理組織型, Performans Status (PS), 併存症合併症スコア (C-Score), 転移の有無, 化学療法など各種パラメーターとの関係を検討した.
成績: 全症例の生存中央値は6.4ヵ月, 3年生存率は8.5%, 5年生存率は3.3%であった. RT未完群, RT完了群, RT+手術群の中央値はそれぞれ1.3月, 7.7月, 11.3月であった. RT未完群と他の2群の間には Kaplan-Meier の生存曲線で有意差が認められたが, 手術の有無では有意差はなかった. RT未完群はPS, アルブミン濃度, 白血球数, C-Score などで不利な状態であり, 年齢も高い傾向があった. 原発巣の短いT1群でも治療を完了できないものが認められたが, それらにはC-Scoreが高く, アルブミン濃度が低く, PSが悪いと言う特徴があった. 60歳代, 70歳代, 80歳代の比較では Kaplan-Meier 法で60歳代と他の2群の間に有意の差が認められた. PSと C-Score は60歳代と80歳代の間に有意の差が見られた. 治療完了群について比較するとT1とT2群, 転移の有無により生存率に差が認められた. 従って予後を左右する因子としては, 癌の進行度のほかにPS, アルブミン濃度, 併存症合併症がある. PS, アルブミン濃度は癌の進行度と深く関係すると考えられるが, 高齢は併存症合併症の存在, 増加も含めてこれらの因子に対して不利に働くものと考えられる.
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