日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
31 巻, 6 号
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  • 須藤 英一, 福地 義之助, 石田 喜義, 松瀬 健, 長瀬 隆英, 寺本 信嗣, 徐 中宇, 松井 弘稔, 東本 有司, 岡 輝明, 折茂 ...
    1994 年 31 巻 6 号 p. 435-440
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者において嚥下性肺炎は特に頻度が高く, その発症要因として微量誤嚥の持つ重要性が指摘されている. 本研究では反復微量誤嚥により肺内に生じる生化学的, 形態学的反応を動物モデルにより検討した. 対象は8~10週齢, 体重200~250gのSD系, SPFラットを用いた. 予め予備実験により最適であることを確認したpH1.4, 0.4ml/kgの塩酸 (H群) または同量の生理食塩水 (S群) を隔日に2週間計7回気管内に経口注入した. 最終回注入1時間後に気管切開し気管支肺胞洗浄 (Bronchoalveolar-Lavage: BAL) を施行した. 気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中細胞の組成, BALF細胞によるTNFα産生能を測定した. またBALF中のエラスターゼ様活性, アルブミン値を測定した. 別に同様に処置した動物の肺を切除し25cmH2Oの定圧灌流法によりホルマリン固定しH-E染色に供した. 測定したBALF中の総細胞数, TNFα産生能, アルブミン値はS群, H群の両群間に有意差はなかった. エラスターゼ様活性は両群とも検出限界以下であった. 病理所見ではH群の一部の症例において BALT (bronchial-associated lymphoid tissue) 様のリンパ組織の発達や, ヘモジデリンを貪食する肺胞マクロファージの増加像が塩酸単回注入後の所見に比較し増強していた. さらに一部に細気管支周囲に限局した細胞浸潤が観察され, 肺胞の炎症を伴わない細気管支炎が形成された. この細気管支炎はびまん性に分布することが観察された.
  • Coxの比例ハザードモデル分析を用いて
    高橋 忠雄, 山城 守也, 橋本 肇, 野呂 俊夫, 日野 恭徳, 平島 得路, 黒岩 厚二郎
    1994 年 31 巻 6 号 p. 441-446
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    過去10年間の胃癌手術511例 (平均年齢75.6±7.9歳) においてCoxの比例ハザードモデル分析を用いて術後10年生存に対する危険因子を推定した. 有意の因子は, (1) 癌 Stage, (2) % IBW, (3) P因子, (4) 重複癌, (5) 術後肝障害, (6) 術後循環器系合併症の順でその他の因子はN.S.であった. 宿主・疾患側の要因はともかく, (5) (6) のような術後合併症の改善, 予防が予後の向上に必要と思われる.
  • 坂井 誠, 濱松 晶彦, 久保木 謙二, 蔵本 築, 黒澤 晋一郎
    1994 年 31 巻 6 号 p. 447-455
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    心房細動による塞栓症の一次予防の観点から老年者心房細動40例 (固定性33例, 発作性7例, 平均年齢76歳, 基礎疾患: 弁膜症15例, 非弁膜症25例) を対象に経食道心エコー (TEE) 法による心房内血栓の検出と凝固線溶分子マーカーの動態, 血栓のワーファリン溶解効果について検討した. 凝固線溶分子マーカーとして以下の9項目を測定した. FDP-E, Thrombin-ATIII複合体 (TAT), Plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1), α2PI複合体 (PIC), D-dimer, t-PA, free tPA, tPA・PAI-1複合体, Prothrombin fragment 1+2. また, 動脈硬化性疾患を有しない洞調律21例 (平均年齢75歳) を対照として同様にこれらのマーカーを測定した.
    TEEにて左房内血栓は心房細動例中14例, 35% (心耳内8例, 心房内6例) に認められ, 弁膜症 (57% vs 27%), 心房内モヤモヤエコー (79% vs 42%) を血栓を認めない例に比し高頻度に有した. 左房径, 左室収縮能と血栓の有無には関連がなかった. 心房内および大動脈壁在血栓 (6例) を有する例は対照群に比しFDP-E, D-dimer, PICの有意の上昇を認め, マーカー9項目中4項目以上の異常を有する頻度が高かった. マーカーからみた心房内と大動脈血栓に対する sensitivity 90%, specificity 65%, predictive accuracy 72%. 左房内に大血栓を有する6例中4例ではワーファリン投与後, 血栓の消失と凝固線溶分子マーカーの正常化を認めたが, 血栓非溶解例でも凝固線溶分子マーカーは低下した. 血栓非溶解例のワーファリン投与前のtPA, PAI-1, tPA・PAI-1複合体値は溶解例に比べ高かった.
    以上より, 心房内血栓例は凝固線溶分子マーカーの異常を有し, TEEによる心房内および大動脈壁在血栓の検出と凝固線溶分子マーカー測定の組合わせは心房細動例における塞栓症発現ならびに血栓のワーファリン溶解効果を早期にスクリーニングしうる可能性がある.
  • 朝田 隆, 木之下 徹
    1994 年 31 巻 6 号 p. 456-461
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    市街地の個人住宅に居住する平均年齢73.8±7.3歳の103名を対象に1年間にわたって転倒発生を前向きに調査した. 調査開始時にインタビュー, 心身機能検査, 血算・生化学・心電図検査を行い, さらに服用薬剤を確認した. また特に平衡機能に注目して開眼直立姿勢で重心動揺の測定を行った. 以後2カ月ごとに手渡した記録帳をもとにした本人の陳述により転倒発生の有無を確認した.
    この結果1年間に発生した転倒は54件, このうち3件が骨折に至り, 年間2回以上転倒した者は14名であった. ロジスティック回帰分析により年間2回以上転倒した者に寄与する要因を検討した. この結果, 調査開始時に測定した項目のうち「転倒の既往」,「単身生活でないこと」,「つぎ足歩行の拙劣」が転倒発生を予測する因子として指摘された. また重心動揺と転倒の関係については, 重心動揺の測定値は将来の転倒を直接には予測しないことが示唆されたが, 重心動揺の面積の測定値には転倒の既往が説明力をもっていることが明らかとなった.
  • 佐々木 明徳, 水谷 俊雄, 高崎 優, 山田 滋雄, 向井 雅美, 江崎 行芳
    1994 年 31 巻 6 号 p. 462-467
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    生前に明らかな神経症状の既往がなく, 神経病理学的に脊髄疾患の認められない140剖検例 (47~105歳) において, 脊髄長, 各髄節長, 第6頸髄と第3腰髄の全断面積, 白質面積, 灰白質面積と年齢の関係について検討した. 病的対照として頸髄に圧迫変形を認める40例を用いた. さらに3年以上の寝たきり11例にて寝たきりの脊髄への影響を検討した.
    脊髄全長は身長と正の相関関係にあり, 年齢と相関しなかった.
    脊髄全断面積は頸髄, 腰髄とも高齢ほど減少していたが, その変化は腰髄より頸髄にて著明であった. また, 白質, 灰白質面積では両者とも減少していたが, その変化は白質により著明であった. これらより脊髄の萎縮は白質の変化により関係していると思われた. しかしこれらの断面積の減少も, 病的対照と比べるとその程度は軽く, 加齢による純粋な萎縮は予想外に小さかった.
    一方, 寝たきり11例列はすべて90歳以上であり, この年代で非寝たきり16例と比較すると, 寝たきり例にて腰髄の断面積, 灰白質面積の有意な減少を認めた. これより“寝たきり”では, 腰髄に対して加齢と異なる機序が働いている可能性が考えられた.
  • 志越 顕, 志越 和子, 新津 望, 高田 雅史, 梅田 正法
    1994 年 31 巻 6 号 p. 468-471
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性. 平成3年2月肺癌にて手術後, Etoposide (VP-16) および Carboplatin (CBDCA) の併用化学療法を13カ月にわたって施行される. 平成4年11月頃より動悸, 息切れが出現し, 血液検査にて貧血および血小板減少を認め, 精査目的にて入院. 末梢血液像上16%, 骨髄像上41.2%のペルオキシダーゼ陽性の芽球を認め, 治療誘発性急性非リンパ性白血病 (t-ANLL), FAB分類, M2と診断した. 骨髄細胞の染色体分析では46, XX, t(7; 11) (p13; p15), 16p+の核型を呈した. Cytosine arabinoside (Ara-C) 少量療法, および Cytarabine ocfosfate (SPAC) の投与にて完全寛解を得た.
    本症例はトポイソメラーゼII阻害剤であるVP-16によるt-ANLLと考えられ, 染色体分析で転座型核型を呈していた. アルキル化剤誘発のt-ANLL症例では7番染色体短腕異常を含む不均衡型異常を呈することが多いとされており, 染色体所見の相違から両者の発症機序の相違が示唆され, 詳細な細胞遺伝学的検索がt-ANLLの発病メカニズム解明に寄与するものと考えられた. また, 切断点である11p15には癌遺伝子であるH-RAS1が局在しており, 転座による活性化が発症に関与した可能性も含め, 遺伝子学的検討も病因解明の上で必要と思われた.
    また, t-ANLLは治療抵抗性で予後不良とされるが, 高齢者は合併症の存在や, 骨髄抑制などの化学療法の副作用が出現しやすく寛解を得にくいことから, 高齢者t-ANLLに対しては本症例のようにAra-C少量およびSPACの経口投与などの副作用を軽減し, 分化誘導を期待できる治療を施行することが有用と考えられた.
  • 鵜飼 晴美, 中田 良, 高田 洋, 岡野 健一, 斎藤 慶一, 原口 義座, 大沢 寛行, 鈴木 恒道
    1994 年 31 巻 6 号 p. 472-476
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    結節性多発動脈炎 (Polyarteritis Nodosa: PN) による虚血性大腸炎の1例を経験した. 患者は78歳の女性で, 腹痛, 血便のため入院した. ガストログラフィンによる注腸で ascending colon に拡張不全, thumbprinting 所見を認めた. 虚血性大腸炎の疑いで手術を施行. 病理学的に, 中小動脈のフィブリノイド壊死と内弾性板の断裂を認めPNと診断した. なお腎臓, 肺臓, 中枢神経など他の臓器症状は現在のところ認められていない. 切除標本で, 病理学的に診断できたPNによる虚血性大腸炎の症例を経験したので報告する.
  • 1994 年 31 巻 6 号 p. 477-495
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2009/11/24
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