日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
32 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 杉村 隆
    1995 年 32 巻 4 号 p. 243-249
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 平井 俊策
    1995 年 32 巻 4 号 p. 250-258
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年期痴呆は多数の疾患により起こるが, アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆によってその90%以上が占められる. 群馬県における最近の疫学調査では両者の比率はほぼ同じで, むしろアルツハイマー型痴呆の方がやや多くなっており, これは最近の脳血管性痴呆の減少によるものと考えられる. アルツハイマー型痴呆は, その形態的特徴である神経原線維変化や老人斑の形成過程からの成因の解明が行われているが, 特にβ蛋白との関連が注目されている. 遺伝的にも多様であることが知られており, その成因は heterogeneous であるが, β蛋白が沈着し, 次いでタウ蛋白が沈着して神経細胞死をきたし痴呆に至るという過程では共通している. 本症については, さらに診断マーカーならびに治療の試みについての現状をまとめて報告した. 一方, 脳血管性痴呆は責任病巣からいくつかのタイプに分類できるが, ポジトロンCTからは前頭葉の両側性の脳代謝率の低下が最も重要な共通した所見である. また一部のタイプでは記憶の回路に病巣があることが原因となっている. 診断上は痴呆の発症と脳血管障害の発症との間の時間的関連すなわち temporal profile に注意することが大切である. 治療面では脳血管性痴呆は既に treatable ないし preventable dementia の範疇に入りつつあるといえよう.
  • 藤原 美定
    1995 年 32 巻 4 号 p. 259-265
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老化機構として遺伝プログラムとエラー蓄積が実証されつつある. 老化期では細胞の増殖抑制や数的減少が見られる. ウエルナーやプロジェリア早老症候群では個体と細胞の老化が平行促進する.in vitro 老化細胞も in vivo で観察され, 細胞増殖抑制の発現機構が老化発現の1プログラム機構である. 増殖・DNA合成の刺激不応答性抑制という細胞老化形質は遺伝的に優性であり, 増殖抑制膜タンパクの産生, 初期反応遺伝子 (c-fos, c-myc), 転写因子 (E2F1) と cyclin Eの転写抑制や cyclin/CDK阻害物質p21の老化発現とともにpRBの非リン酸化が細胞老化の分子要因と機構の1面を構成することが明らかになった.
  • 気管支鏡検査の有用性
    新津 望, 梅田 正法
    1995 年 32 巻 4 号 p. 266-269
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者非ホジキンリンパ腫 (NHL) の肺合併症の診断に対する気管支鏡検査の有用性を検討した. 対象は65歳以上のNHL12例で, 経気管支的肺生検 (TBLB) を2例, 気管支肺胞洗浄 (BAL) を全例に行い, また腫瘤を認めた2例では経気管支的腫瘤生検を行った. 全体の診断率は12例中8例 (66.7%) であった. 2例はリンパ腫細胞浸潤, 2例は cytomegalovirus (CMV) 感染症, 1例は Pneumocystis carinii (P. carinii), 2例は真菌感染症, 1例は細菌感染症であった. 血小板数が5×104/μl以上であった2例では, TBLBを行いうち1例はリンパ腫細胞浸潤, 1例は真菌感染症と診断した. また12例はBALを施行し, 2例はPCR法によりCMVを検出し, 1例はP. carinii を検出, 1例はaspergillus, 1例は Klebsiella pneumonia と診断した. NHLにおける呼吸器合併症は, 重篤なものが多く早期診断・治療が予後を左右するため, 高齢者でも気管支鏡検査を積極的に行い診断を確定することが大切と思われた.
  • 嵯峨 孝, 青山 隆彦, 竹越 忠美
    1995 年 32 巻 4 号 p. 270-276
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    血小板は脳血栓や心筋梗塞などの血栓症発症に深い関係をもつ. 特にサイズが大きい血小板は血小板内酵素活性が高く, 粘着・放出さらに凝集能も亢進しており, 血栓形成に積極的に関与する. すなわち, 血小板数 (PLT) と平均血小板容積 (MPV) の変動は血栓形成状態を反映すると思われる. 高齢者では血栓症が多発するが, 高齢者のPLTやMPVについての検索は比較的少ない. そこで, 血栓性疾患, 血液疾患, 肝疾患あるいは悪性腫瘍などが認められない男性の血小板パラメーターを測定し, 高齢男性のPLTおよびMPVの変化ならびにそれらの変化に及ぼす諸因子 (高血圧, 高脂血症, 糖尿病, 肥満, 喫煙・飲酒習慣) の影響を検討した. 対象は30~83歳の男2,061例 (30歳代264例, 40歳代810例, 50歳代742例, 60歳代209例, 70歳代32例および80歳代3例) である. なお, 30~34歳の36名 (平均年齢32.6±1.2歳) を低齢群, 70歳以上の35名 (73.0±3.5歳) を高齢群とした. 高齢群は低齢群に比し高血圧および糖尿病の頻度は有意に大あるいは大なる傾向, 喫煙習慣の頻度は小なる傾向であった.
    年齢の増加とともにPLTおよび血小板クリットの平均値は有意に減少, 血小板サイズ分布幅およびMPVの平均値は有意に増加もしくは増加傾向を認めた. 高血圧者, 糖尿病者および肥満者はPLT減少傾向およびMPVの有意の増加ないし増加傾向, 高脂血者はPLT増加傾向, 喫煙者はMPVの減少傾向, 低齢群飲酒者はPLT減少傾向を示した. そして, PLTおよびMPVの増減に及ぼす年齢, 平均血圧値, 中性脂肪値, HDL-コレステロール値, LDL-コレステロール値, 空腹時血糖値, 喫煙・飲酒習慣の影響を解析すると, PLTの増減には中性脂肪値と年齢の影響が大きく, MPVの増減には平均血圧値の影響が大であった.
    PLTは血清中性脂肪値の影響を受けるが, 加齢に伴い減少する. 高齢者のMPVは低齢者に比し増加傾向にあるが, これは単に生理的加齢に伴う変化ではなく, むしろ高血圧合併が高齢者に高頻度であることによると考えられた.
  • 神奈川県在住のA自動車製造会社定年退職者における車の役割と運転継続意思
    吉本 照子
    1995 年 32 巻 4 号 p. 277-285
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢運転者対策は, 1) 交通事故率の増加に対する安全対策, 2) 生活の質向上のための交通手段改善の2つの観点から検討する必要がある. 2つの観点から高齢者自身が期待する対策の内容を明らかにするために, 高齢運転者における車の役割, 運動継続意思および車の安全装備への期待に関し, 企業の定年退職者 (神奈川県在住, 60歳以上の男性) 500名を対象に郵送によるアンケート調査を行った. 回答者298名 (回収率: 59.6%) のうち, 運転免許所有者は196名, 現在運転している者 (継続者) は149名であった. クロス表, 数量化法III類を用いて分析した結果, I) 継続者の75%が日常の買い物, 50%以上が治療・健康診断, 友人訪問に車を利用し, これらの利用目的は相互に関連している (p<0.05: φ係数による検定). 運転頻度は80%近くが週に3回以上であり, 利用目的・頻度の点から主な交通手段である, II) 車の役割は, 93%が日常の足, 48%が家族・友人を乗せることが張り合い, としている, III) 運転継続意思と車の安全装備に対する期待は, 61%が車の安全装備を使いこなして長く運転を続けたいと考える一方, 安全装備に対する費用負担を避けたい者は22%と比較的少ない, IV) 車の役割, 運転継続意思, 車の安全装備への期待の関連を明らかにするために, 数量化法III類により分析した結果, 高齢運転者の安全装備に対する考え方を形づくる因子として, 安全装備に対する関心に関連する問題と, 車や安全装備を使いこなすことへの自信に関連する問題の2つが重要であることが明らかとなった. 家族・友人を乗せることの張り合いは, 安全装備に対する関心と安全装備を利用して運転を継続することへの願望と関連がある.
    高齢運転者対策は, 安全性とともに, 家族・友人を乗せることが張り合いという公共交通機関では代替困難な車の役割, 同乗する非運転者の利益, 運転継続のために車の安全装備に大きく期待している高齢運転者の実態を考慮し, 高齢者も運転しやすい道路環境整備等も含めて検討する必要がある.
  • 白石 賢子, 高橋 忠雄, 橋本 肇, 野呂 俊夫, 日野 恭徳, 平島 得路, 黒岩 厚二郎, 山城 守也, 田久保 海誉
    1995 年 32 巻 4 号 p. 286-291
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は比較的まれな疾患である食道平滑筋肉腫を経験したので報告する. 症例は73歳の男性で, 嚥下障害と嘔吐を主訴に1988年10月当センター入院し, 食道造影, CT, 内視鏡検査等にて食道下部に隆起性腫瘍病変を認め, 同年12月右開胸開腹食道切除, 頚部食道胃吻合術施行. 腫瘍は食道内腔および食道壁外へ腫瘤を形成し, 腫瘍の大きさは11×9×5cmであった. 病理組織学的には腫瘍細胞が束状・渦状に密に配列し, 核分裂像が散見された. また, 腫瘍の静脈浸潤像も認められ食道平滑筋肉腫と診断した. 術後に左第4肋骨, 右胸壁に転移を認め, それぞれ radiation を施行し, 腫瘍痛の消失をみた. しかし, その後右腸骨転移, 腰椎々体に次々に多発性に転移が出現し, 術後3年4カ月で死亡した. 剖検時局所再発はなく, 肝, 横隔膜, 両腎, 肋骨, 腸骨, 胸骨および全脊椎骨にそれぞれ血行性転移が認められた. 食道平滑筋肉腫の転移例の報告は少ないが, 肝転移が最も多い. 血行性転移への何らかの有効な術後補助療法が必要と考えられた.
  • 竹内 邦夫, 岡村 明彦, 長嶋 起久雄
    1995 年 32 巻 4 号 p. 292-295
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    今回興味ある経過をたどった高齢者大腿ヘルニア嵌頓の1治験例を経験したので報告する. 症例は, 94歳, 女性. 左大腿骨頭置換術後リハビリ目的にて近医入院中, 平成5年10月27日腹部不快感あり, 10月28日腹満, 嘔吐出現. 10月29日イレウスと診断され当科に紹介された. 腹満著明で, 右鼠径部にピンポン玉大の弾性軟の有痛性腫瘤を触知し, 右大腿ヘルニア嵌頓によるイレウスの診断にて入院となった. 緊急手術を勧めるも本人がかたくなに拒否をしたため, イレウス管, 輸液等にて保存的に治療を進めつつ, 説得を続けた. イレウスは改善せず全身状態にも大きな変化はなかったが, 第19病日ようやく説得に応じ, 腰麻下にて手術を施行した. 開腹すると, 血性の腹水を中等量認めた. 回腸が大腿管を通って嵌頓し, 完全に閉塞していた. 嵌頓した腸管は虚血性の変化を起こしていたが, 壊死には陥っていなかった. 嵌頓した腸管を約10cm切除し端々吻合を行いヘルニア門を閉鎖した. 術後第7病日より経口摂取を開始した. 経過は良好だったが, 高齢でなおかつ右大腿骨頚部骨折術後故, 離床不可能となり, 術後第77病日に紹介医に転院となった. ヘルニア嵌頓が還納できなければ一般的には緊急手術の適応である. しかし本症例では患者自身が手術を拒否したため保存的に経過観察をせざるを得なかったが, ねばり強い説得により入院後第19病日に手術を承諾したため直ちに手術を施行した. 嵌頓した腸管は壊死には陥っていなかった. そのため全身状態はそれ程悪化せず救命し得たと思われた. 本症例は医師と患者との間のインフォームド・コンセントの確立に苦労したが, 示唆に富む症例と考え若干の文献的考察を加え報告した.
  • 緒方 めぐみ, 神野 悟, 水内 知子, 木田 厚瑞
    1995 年 32 巻 4 号 p. 296-300
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の播種型結核症は, 複数の基礎疾患を有し, 症状が非定型であることによる臨床診断の遅れなどが理由となり予後不良であることが多い. 筆者らは重症の呼吸不全, 汎血球減少, 播種性血管内凝固症候群 (DIC), 薬物性発熱, 気胸と多彩な合併症を伴った老年女性 (78歳) の播種型結核症の1治癒例を経験した. 食欲不振, 腰痛を主訴とし, 胸部X線上両肺野にび漫性粟粒陰影, 低酸素血症を認め入院. 肺胞洗浄液より Gaffky 8号, 後の胃液及び尿培養より抗酸菌検出し, 播種型結核症と診断. 直ちにINH, RFP, PZA, SMによる4者併用療法を開始した. 経過中に多彩な合併症を伴ったがいずれも治癒しえた. 播種型結核症における多彩な合併症は比較的稀であり, 若干の文献的報告を加え考察した. 老年者でも気管支肺胞洗浄による早期診断が有力であり, 早期治療が重要であることを強調した.
  • 1995 年 32 巻 4 号 p. 301-320
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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