日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
32 巻, 7 号
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  • 野崎 宏幸, 安次富 郁哉, 比嘉 かおり, 秋坂 真史, 鈴木 信
    1995 年 32 巻 7 号 p. 471-477
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    近年, 百寿者の数の増加は著しく, 貧血を診断するために, 健康百寿者の赤血球パラメーターの標準値の確立が望まれている.
    対象は, 百歳に達した男性27名 (健常群17名, ADL低下群10名), 女性102名 (健常群33名, ADL低下群69名) の計129名の百寿者で, 末梢血の結果に影響を与える疾患を持つ百寿者は対象から除外した. 統計処理にはt検定を用いた.
    男性健常百寿者の赤血球数は, 403±54.7万/μl, ヘモグロビン値は12.4±1.3g/dl, ヘマトクリット値は38.2±3.9%, MCVは95.3±5.3fl, MCHは31.4±2.2pg, MCHCは32.6±1.1%であった. 女性健常百寿者の結果はそれぞれ次の通りであった: 375±43.9万/μl, 11.6±1.2g/dl, 36.3±3.6%, 97.1±5.3fl, 31.0±2.3pg, 32.0±1.3%. 健常百寿者の男女間の比較では, ヘモグロビン値は, 女性が男性より有意に低下していた.
    男性において健常群とADL低下群との比較では, ADL低下群は健常群に比べて, 赤血球数, ヘモグロビン値, ヘマトクリット値が有意に低下し, 逆にMCVは有意に増加していた. 女性において, 在宅の百寿者と老人ホームの百寿者との比較では, 全ての赤血球パラメーターにおいて有意差は認められなかった.
    今回の検討で, 健常百寿者における赤血球パラメーターの標準値が明らかになり, また男性のADL低下百寿者では赤血球数, ヘモグロビン値, ヘマトクリット値が低下していることが判明した.
  • 村松 俊哉, 矢部 喜正, 中野 元, 我妻 賢司, 内田 俊彦
    1995 年 32 巻 7 号 p. 478-484
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    目的: 高齢者に対する血栓溶解療法の効果と予後につき検討した. 対象: 対象は急性心筋梗塞に対しPTCAを含む再疎通療法を施行した70歳未満の若年群95例と70歳以上の高齢群17例とし, 初期及び遠隔期予後を検討した. 結果: 再開通率は若年群67.3%, 高齢群70.6%を示し, PTCAを追加する事により若年群86.3%, 高齢群82.3%に初期成功を得た. 退院的CAGにおける再閉塞率は若年群6.8%, 高齢群7.2%と差異はなかった. しかし, recurrent ischemia は若年群4.2%, 高齢群0%, 緊急CABGは若年群3.2%, 高齢群0%とやや若年群に高率を示したが, 院内死亡率は若年群4.2%, 高齢群5.9%と高齢群に高率であった. 出血性合併症は消化管出血を若年群3.2%, 高齢群5.9%に心タンポナーデを若年群0%, 高齢群5.9%に認めた. 結語: 高齢者に対する血栓溶解療法は初期成功率, 再閉塞率については若年者とほぼ同等であり, その有用性を支持するものと思われた. しかしながら, 院内死亡率,出血性合併症の頻度はやや高い傾向を示し, 注意を要すると思われた.
  • 岡本 和士, 佐々木 隆一郎
    1995 年 32 巻 7 号 p. 485-490
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1990年におけるわが国の百寿者数は全国で4,152人であった. 全国の百寿者率は21.6 (人口10万当たり) であり, 各都道府県別の百寿者率が全国に比べ, 有意に高率な府県は四国, 九州地方に, 逆に有意に低率な府県は東北, 関東地方に集中していた.
    百寿者率と各要因との関連では平均気温, 老人福祉費割合, 民生委員数, 病院数 (人口10万対), 医師数 (人口10万対), 余暇時間とは有意な正の相関を, 仕事時間とのみ有意な負の相関を認めた. 栄養摂取状況については蛋白質摂取割合とは有意な正の相関を, 総摂取エネルギー量とは有意な負の相関を認めた.
  • 石川 雄一, 藤岡 由夫, 北川 泰生, 延沢 彰, 高橋 明広, 谷口 隆弘, 横山 光宏
    1995 年 32 巻 7 号 p. 491-496
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    狭心症や心筋梗塞の治療に経皮的冠動脈形成術 (以下PTCA) が, 広く行われるようになり, 65歳以上の老年者においても技術の進歩と共に成功率は80%以上となった. しかし, 未解決の問題点としてPTCA後の再狭窄が挙げられ, 遠隔期再狭窄は25~43%と報告されている. 今回我々は老年者におけるPTCA後再狭窄と冠動脈疾患危険因子との関係について検討した. 対象は冠動脈疾患患者のうちPTCAを施行し, 3~6カ月後に再冠動脈造影を行った87名で, 65歳以上の老年者29名, 65歳未満者58名であった. American Heart Association の分類に従って冠動脈狭窄の評価を行い, Gensini の方法による冠動脈狭窄スコア (CS) を算出した. 再狭窄の判定はPTCAにより改善した度合の50%以上の進展を有するものとした.
    老年者の再狭窄率は29名中20名の69.0%で, 65歳未満者58名中26名の44.8%に比べ有意に高頻度であった. 総コレステロール, LDLコレステロール, アポ蛋白B及びアポ蛋白B/Al比はいずれも老年者で有意に低値を示した. HDLコレステロールはいずれも40mg/dl以下であったが有意差を認めなかった. 各年齢群の中で再狭窄, 非再狭窄群に分けて比較した検討では各因子で有意な差を示すものはなかったが, HDLコレステロール低値, リポ蛋白 (a) 高値の傾向を認めた. 病変枝数別に検討しても有意な差を示す因子はなく, CSと各危険因子との相関は認めなかった. 糖尿病, 高血圧, 喫煙の有無による再狭窄率の比較でも, 有意な差は認めなかった. 従って今回の検討では, 老年者において再狭窄率は高頻度であったが, 再狭窄をきたす有意な冠動脈疾患危険因子を認めず, 動脈硬化の程度によるものでもないと考えられた. このことから老年者のPTCA後の経過観察において, より注意深い検討の必要があると考えられた.
  • 中島 一夫, 一ノ瀬 正彦, 高田 進一
    1995 年 32 巻 7 号 p. 497-502
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    心房細動 (Af) 例における, (1) 虚血性脳血管障害 (iCVD) の発症高・低リスク群の抽出ならびに慢性非弁膜症性Af例における, (2) Af罹病期間とiCVD発症との関係, (3) 抗血小板剤のiCVD発症予防効果を検討した.
    対象は最近9年間でAfを指摘された479例で発作性Afが124例 (平均63.3歳), 発作性から慢性移行Afが30例 (平均64.5歳), 慢性Afが325例 (平均66.4歳). 慢性Af (慢性移行例を含む) 355例中, 弁膜症 (VHD) 群は59例 (平均62.3歳), 非弁膜症 (NVAf) 群は296例 (平均67.2歳) であった. NVAfの内訳は, 基礎心疾患を有しない (Lone) 群が130例, 高血圧性心臓病 (HHD) 群が107例, 虚血性心疾患 (IHD) 群が26例, 甲状腺機能亢進症 (Hyper) 群が11例, 心筋症 (CM) 群が9例, 僧帽弁逸脱症候群 (MVPS) が9例, 先天性心疾患群が4例であった.
    成績: (1) iCVD発症率 (後向きコホート研究にて回/100人・年で算出) は発作性群及び慢性群間で有意差はなかった. 慢性群では, VHD群は Lone 及び Hyper 群より有意にiCVD発症率が高率で, 脳塞栓発症率に限ると他のすべての心疾患群より有意に高率であった (p<0.005). NVAf内ではHHD群はHyper 群より有意に高率 (p<0.05), MVPS群は他の群より有意に低率であった (p<0.005). iCVD発症高リスク (>6回/100人・年) 群はVHD (8.43) 及びHHD (6.80) 群, 低リスク (<2回/100人・年) 群は60歳未満の発作性 (1.37), MVPS (0.00) 及び Hyper (1.36) 群であった. (2) 慢性NVAf群ではAf発症9年間でiCVD発症好発時期は存在しなかった. (2) 慢性NVAf群での抗血小板剤服用群 (90例) と非服用群 (269例) との比較では, iCVD発症率に有意差を認めなかったが, 脳血栓発症率に限ると服用群で有意な減少がみられた (p<0.005).
    弁膜症合併慢性心房細動群は脳塞栓症発症リスクが高く, 予防的抗凝固療法が必要であるが, 高血圧合併慢性心房細動群は虚血性脳血管障害発症のリスクが高く, 一部の症例には抗血小板剤の投与も有効と思われた.
  • 柿内 裕明, 生沼 利倫, 山田 勉
    1995 年 32 巻 7 号 p. 503-510
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    中心に陥凹を伴う大動脈の非潰瘍性動脈硬化性病変 (陥凹性病変) はこれまでに注目されておらず, 動脈硬化退縮の病理形態像の一つであることを報告してきた. この陥凹性病変は周囲とは明瞭にわけられる陥凹を持ち, その表面は平滑で組織欠損で特徴づけられる潰瘍とは異なる病変である. このような退縮とみなされる陥凹性病変の形態発生を明らかにするために, 大動脈剖検例より進行性の動脈硬化巣のうち肉眼的に明らかな潰瘍を伴う病変 (潰瘍性病変) についても, 組織学的, 免疫組織化学的に検討を行い, とくに潰瘍性病変と陥凹性病変との差異ならびに相互関連について検索した. その結果, 融合した複雑な病変を除くと潰瘍性病変の中には, 再生した内皮細胞による潰瘍表面の被覆や膠原線維増生による修復過程に相当する変化が認められ, 中膜の菲薄化や石灰化が生じなければ, このような潰瘍性病変は退縮の一形態である陥凹性病変に移行することが示された. 潰瘍性病変の修復がすべて退縮に至るものではないが, 進行した動脈硬化性病変のなかでも潰瘍性病変が修復される場合には陥凹性病変に移行するのもあり, 動脈硬化の退縮とみなされる変化の一つであることが示唆された.
  • 羽生 春夫, 清水 武志, 加納 広子, 宇野 雅宣, 久保 秀樹, 岩本 俊彦, 高崎 優
    1995 年 32 巻 7 号 p. 511-515
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    最近, MR技術の進歩から生体内の分子拡散を画像化することが可能となってきた. 今回, Binswanger 病にて加療中に新たな脳梗塞発作が発現した患者の拡散強調画像を得た. 本病の特徴的所見としての広範な白質病変から, 従来のCTやT2強調画像では責任病巣を同定することは必ずしも容易でなく, あるいは画像的に新旧病巣を鑑別することは困難であった. しかし, 拡散強調画像では, 発症2週後の梗塞巣は明らかな拡散係数の低下を示し, 周囲の慢性虚血巣とは明瞭に区別できる高信号域として描出された. 発症2カ月後には, 拡散係数の低下は回復傾向を示し, 高信号域は縮小した. 本検査は分子拡散という新しいパラメーターの測定であり, 組織性状診断としての役割が期待されている. 脳虚血巣については新旧病巣の鑑別に活用でき, 経時的変化の評価にも有用であった.
  • 藤野 俊, 河野 修興, 井上 義一, 藤岡 精二, 濱田 泰伸, 阿部 聖裕, 横山 彰仁, 日和田 邦男
    1995 年 32 巻 7 号 p. 516-519
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は, 76歳の女性. 食欲不振のため近医を受診した際, 胸部X線写真にて両側胸水貯留を認め, 同院に入院した. 両側胸腔から乳白色の胸水を排液したため, 精査加療目的で当科に転院した. 胸水穿刺液は, 乳白色を示し, エーテル混和にて透明化し, 中性脂肪が高値を呈し, リポ蛋白分画にてカイロミクロンが46.3%であった. この所見より乳糜胸と診断した. 全身検索において, 臍上部の腸間膜根部に5cm×6cmの腫瘤を認める以外, 異常所見は認められなかった. 乳糜胸に対して, 保存的治療を施行したが効果が不十分であったため開腹した. 開腹時に肉眼的に乳糜腹水を認め, 腹部腫瘤は腸間膜との癒着が強く剥離困難であったため, 生検のみ行った. 生検組織は脂肪織炎であった. 腸間膜脂肪織炎は1960年に Ogden 等により報告された腸間膜脂肪組織の慢性非特異性炎症であり, 本症例は, Kipfer らの肉眼分類の type 2腫瘤形成型に分類される. 乳糜腹水も認めたことから, 本症例において腹部脂肪織炎が乳糜胸の出現に関与していると考えられた貴重な症例と思われる.
  • 1995 年 32 巻 7 号 p. 520-532
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 32 巻 7 号 p. 533-545
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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