老年者高血圧において, 各種降圧薬が心血行動態へ及ぼす影響について検討する目的で, 老年者本態性高血圧42例 (平均72±5歳) にACE阻害薬 (A群: perindopril 10例, captopril 徐放錠4例), β遮断薬 (B群: arotinolol 15例), Ca拮抗薬 (C群: nifedipine 徐放錠3例, nitrendipine 10例) のいずれかの薬剤を投与し, 治療前及び治療8~12週後の左室機能を心エコーを用いて測定し, ハンドグリップ負荷, メンタルストレスの二種類の昇圧負荷に対する反応性の違いについても検討した.
3群間には治療前の血圧値に有意な差がなく, 治療後, 外来血圧, 安静臥位血圧ともに有意に低下した. 心拍数はA群では不変, B群で有意に減少, C群では増加傾向を示した. 治療後の左室内径短縮率は3群とも有意に増加し, 増加の程度は3群間で差がなかった. しかし心係数はA群では不変, B群では有意に減少, C群では増加傾向を認めた. 安静時血中カテコールアミン値はいずれの群も治療前後で有意な変化はなかった. ハンドグリップ負荷では, 治療後の負荷時血圧は3群とも低下した. 治療後の負荷時心拍数はA群では不変, B群では減少, C群では増加傾向が認められた. 心係数はA群では不変, B群では有意に減少, C群では増加傾向が認められた. 血中カテコールアミン値は3群とも有意な変化は認めなかった. メンタルストレスでは, 治療後3群とも血圧は有意に低下した. 心拍数はA群, C群で不変であったのに対し, B群では減少した. 左室内径短縮率は, A群, C群で有意に増加したが, B群では不変であり, 心係数も有意に減少した. 血中ノルエピネフリン値は, C群で有意に増加した.
以上より, いずれの降圧薬も良好な降圧が得られたが, その心血行動態や, 負荷時の昇圧反応に及ぼす影響は薬剤の種類により異なっていた.
抄録全体を表示