日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
34 巻, 3 号
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  • 高崎 優, 鶴見 信男, 近喰 桜, 桜井 博文, 加納 広子, 柳川 清尊, 勝沼 英宇
    1997 年 34 巻 3 号 p. 171-179
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    健康老年者であっても加齢に伴って軽度の貧血が出現してくる事はよく知られている. 当大学病院で1988年より8年間の人間ドッグ受診者の中から収集した65歳以上の健常老人3,583例 (男性1,590例, 女性1,993例) の末梢血液データを5歳間隔の年齢層別で集計し, その平均値の推移をみると, 男女ともに, 赤血球数, 血色素量及びヘマトクリット値は年代が進むにつれて, 軽度の低下が観察された. この主な原因は造血幹細胞の減少と造血微小環境の加齢による退行性変化の進行と関連していると考えられる. 高齢者の脊椎骨の骨髄組織標本にて造血髄内の動脈を観察したところ, 内膜の肥厚よりも中膜の肥大と外膜の線維性肥厚を特徴とした血管硬化性所見を認め, 静脈洞は減少し, それに変わって脂肪組織面積の増加が観察された. 造血野と脂肪面積の比率及び細胞密度は共に加齢に伴って減少傾向を示した.
    又, 健康高齢者32例のEPO含有培養液にて14日間培養後のBFU-E形成の数は, 高齢者28±19個, 若年者54±30個で, 高齢者が有意に低下していた (p<0.005). 更に健康高齢者8例のCFU-Eのコロニー形成能は, 高齢者は170±67個, 若年者は276±54個と高齢者に明らかな低下を認めた. 一方, 鉄回転は高齢者では血漿鉄消失速度 (PIDT/2) は60~80分 (平均71.9分) と若年者と差は無かったが, 赤血球鉄利用率 (%RCU) は67.6~84.9% (平均79.7%) と若年に比し軽度の鉄利用の低下を認めた.
    老年者の貧血診断基準値をHb11.0g/dl未満とすると, 本学附属病院老年科外来患者の約13%に貧血が見られた. その大部分は基礎疾患の本来の病態に由来した二次性貧血である. しかし老年者に発生するこれら貧血は, 加齢に伴う各種臓器の機能低下, 予備能低下などによる修飾を受けやすく, 複雑な病因, 病態を呈するのが特徴であり, 診断が困難な場合が少なくない. これらの点に留意して, 老年者にしばしば認められる原発性貧血と二次性貧血についてその診断のポイントと対策について概説する.
  • 病態の特徴と治療上の問題点
    木田 厚瑞
    1997 年 34 巻 3 号 p. 180-184
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 宮尾 益理子, 荒木 厚, 服部 明徳, 宮地 隆史, 井上 潤一郎, 堀内 敏行, 中村 哲郎, 上田 清悟, 中原 賢一, 松下 哲, ...
    1997 年 34 巻 3 号 p. 185-191
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Lipoprotein (a) [Lp (a)] は, 動脈硬化性血管障害の独立した危険因子として注目されているが, 糖尿病患者, あるいは高齢者での意義は明らかでない. そこで, 今回高齢者糖尿病患者において血清Lp (a) 値と脳血管障害 (CVD), 虚血性心疾患 (IHD) との関連を検討した. 対象は外来通院中の60歳以上の糖尿病患者354例 (男性131例, 女性223例, 平均年齢74.1歳) で, 血清Lp (a) 値を測定し, 性別, 加療の影響を検討した. さらに血清脂質 (総コレステロール: TC, 中性脂肪: TG, HDLコレステロール: HDL-C, アポ蛋白) を測定し, Lp (a) 値との関連を検討した.
    Lp (a) の平均値は21.1±19.6mg/dl, 中央値は14.0mg/dlで, 性別, 加齢の影響はなかった. 脂質では, Lp (a) 値とTC (r=0.152, p<0.05). リポ蛋白B (r=0.168, p<0.05) 間で有意な正の相関が認められた.
    次に対象をLp (a) 値に従いLp (a) 高値群 (≧30mg/dl) と低値群 (<30mg/dl) に分けIHD, CVDの合併頻度を比較したところ, Lp (a) 高値群のCVDの頻度は低値群に比し有意に高く (21.1% vs 11.9%, p<0.05), 一方, IHDの頻度は高値群と低値群間に有意差はなかった (20.0% vs 16.8%).
    さらに年齢, 性別, Body Mass Index, 高血圧 (HT), HbAlc, TC, HDL-C, Lp (a) の8変数を独立変数とし, IHD, CVDの独立した危険因子となるか否かについて多変量解析を用いて検討した. Lp (a) 高値は, 男性, HT, HbAlc高値, HDL低値とともに, CVDの独立した有意な (p=0.008) 危険因子であることが明らかとなったが, IHDの独立した有意な危険因子とはいえなかった.
    今回の検討により, 血清Lp (a) 高値は高齢者糖尿病患者においても, 脳血管障害の独立した危険因子となることが示された.
  • 高橋 忠雄, 橋本 肇, 野呂 俊夫, 日野 恭徳, 平島 得路, 黒岩 厚二郎
    1997 年 34 巻 3 号 p. 192-195
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者手術の術前併存症のひとつであるパーキンソニズムが術後合併症発生および手術死亡に与える影響について検討を行った. 60歳以上の消化器手術症例のうちパーキンソニズム併存症例 (以下PK群) 36例, および年齢・性別により補正した脳血管障害併存症例 (CVD群) 77例, 無併存症症例 (ND群) 120例を対照として比較検討した. 手術死亡率・院内死亡率はPK群, CVD群ともにND群とは明らかな差が認められた. 術後合併症罹患率はPK群, CVD群, ND群の順で高く, 呼吸器障害でPK群, CVD群; 消化器系障害でPK群; 術後譫妄でPK群, CVD群が有意に高かった. PK群における手術死亡率はCVD群とともに高く, 手術死亡に寄与する危険因子は多変量解析の結果, 術後呼吸器系障害が最も重要な因子であった. パーキンソニズム併存症例においては, 肺炎などの呼吸器合併症の予防が特に重要と考えられた. また消化器系合併症はパーキンソニズムの術後治療とも関連していると考えられ, 術後の治療薬の非経口的投与法の改善の必要性が示唆された.
  • 村松 慎一, 大塚 美恵子, 植木 彰
    1997 年 34 巻 3 号 p. 196-201
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    群馬県山間部地域の高齢健常者141名を対象にアルツハイマー病 (AD) の危険因子であるアポリポ蛋白E (アポE) のε4遺伝子頻度とその年代別推移, 血清コレステロール値とアポE表現型との相関, およびアポE受容体であるLDL関連蛋白 (LRP) に結合するα2-macroglobulin (α2M) と plasminogen activator inhibitor 1 (PAI-1) の血中濃度とアポE表現型との相関を検討した. アポE遺伝子頻度はε2; 0.04, ε3; 0.85, ε4; 0.11で, これまでの日本人の報告とほぼ一致していた. ε4遺伝子頻度は60歳代で0.06と最も低く, 80歳以上の高齢者では0.17とむしろ高かった。血清総コレステロール値, LDLコレステロール値, HDLコレステロール値はアポE表現型と相関しなかった. 血中α2M濃度は加齢とともに増加し女性の方が男性より高かった. 血中PAI-1濃度は男性の方が女性より高かったが, 加齢による変化はなかった. 血中α2MとPAI-1濃度はいずれもアポE表現型とは相関しなかった. 欧米白人では60歳以降ε4遺伝子頻度が減少すると言われるが, 今回の調査では80歳以上の高齢健常者でもε4保有者が相当数存在することが示された. 今回調査した地域に特異な点か否かさらに検討を要する. また血中α2MとPAI-1濃度の測定は健常人ではアポE受容体側の状態を推測する示標にはならないと考えられる. 今後はADでの検討が必要である.
  • 低アポB血症と比較的HDL2-C高値 TOKYO CENTENARIAN STUDY I
    新井 康通, 広瀬 信義, 川村 昌嗣, 本間 聡起, 長谷川 浩, 石田 浩之, 小薗 康範, 清水 健一郎, 中村 芳郎, 阪本 琢也, ...
    1997 年 34 巻 3 号 p. 202-208
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    東京都在住の百寿者45名 (男15例, 女30例, 平均年齢101.1±1.4歳, mean±SD, 以下同じ) の血清脂質値, アポ蛋白A1 (以下アポA1と略す), アポ蛋白B (以下アポBと略す), リポ蛋白分画, 低比重リポ蛋白 (以下LDLと略す) 分画の被酸化能を測定し, 健常な若年対照群と比較検討した.
    百寿者では対照群に比べ, 総コレステロール (以下TCと略す), 高比重リポ蛋白コレステロール (以下HDL-Cと略す), アポA1, アポBが有意に低値を示した. アポBが60mg/dl以下の低アポB血症の頻度は対照群の2.3%に対し, 百寿者では23%と有意に高かった. 各リポ蛋白分画中のコレステロール濃度は超低比重リポ蛋白コレステロール (以下VLDL-Cと略す), LDL-C, HDL-C, のいずれにおいても百寿者で有意に低かった. HDLの亜分画を比べると百寿者で低下していたのはHDL3-Cであり, 抗動脈硬化作用を持つHDL2-Cは両群で差がなく, 百寿者の脂質分画中に占めるHDL2-Cの割合は有意に増加していた. LDLの被酸化能の指標である lag time には有意差を認めなかった (百寿者44.7分±31.8対対照群49.9±26.0分). 百寿者を日常生活動度 (以下ADLと略す) の良好な群と低下している群に分け, 脂質パラメータを比較したところ, ADLが良好な群でHDL3-Cが有意に高値を示していた. 認知機能を Clinical Dementia Rating (以下CDRと略す) によって正常から重度痴呆まで5段階に評価し, 各群の脂質パラメータを比較したところ, 中等度以上の痴呆群でHDL-Cが正常群に比べ有意に低下していた.
    百寿者はアポBが低く, HDL2-Cが比較的高値であり, 遺伝的に動脈硬化を促進しにくい脂質組成を示すことが明らかとなった.
  • 塩見 利明, 岡田 啓, 真田 進, 黒野 俊介, 小林 正
    1997 年 34 巻 3 号 p. 209-214
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢の外来患者が処方された薬剤を自分で管理し, 正確に服薬する能力を有するのかは疑問である. そこで我々は, 有病高齢者における服薬能力を評価し, 適切な服薬指導を行うために, 薬袋による質問形式の簡易試験を用いて服薬理解能力評価スケール (regimen comprehension scale; RCS) の作成を試みた. 対象は, 若年健常者21例と有病高齢者17例の計38例であった. RCSでは服用方法の異なった5種類の薬剤と薬袋を用い, 面接法で, 5つの服用方法に関する質問を行った. RCSは10点満点 (最低-10点) であり, 得点によって正常能力 (10点), 要注意 (9, 8点), 要訓練 (7, 6点), 要介助 (5点以下) の4段階に分類した. その結果, 若年健常者8例 (38.1%), 有病高齢者13例 (76.5%) では薬袋の服用方法の理解に何らかの間違いがあった. RCS得点の分類では, 5点以下の要介助は有病高齢考者5例に認められ, その5例の改訂長谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R) 得点は21点もしくはそれ末満の痴呆の疑いありの患者であった. HDS-RとRCSの両スケールの間には有意な正相関 (r=0.797, p<0.001) を認めた. 以上, 高齢者の薬物治療上, RCSを用いることは服薬能力 (主に薬袋の理解能力) を評価でき, 服薬指導の有無の判定あるいは服薬指導方法の指針が得られることから有用であると思われた.
  • 佐藤 澄子, 横山 彰仁, 大塚 知明, 野本 高彦, 阿部 聖裕, 河野 修興, 日和田 邦男
    1997 年 34 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 男性. 咳・痰を主訴とし, 胸部X線写真上, 腫瘤陰影を指摘され入院した. 入院時, 満月様顔貌, 中心性肥満, 顔面・下腿の浮腫とクッシング症候群の所見を認め, 内分泌学的検査上, 血漿中のACTH, コルチゾール, PTHの高値, ACTHおよびコルチゾールの日内変動消失, 胸水中のACTH, PTHの高値を認めた. 肺小細胞癌 stage IV (T4N2M1) と診断し, 化学療法および放射線療法を施行した. 2度の complete response (CR) が得られたが, 3度目の入院では化学療法に対して no change (NC) であり, 肺小細胞癌診断後, 2年2カ月で呼吸不全のため死亡した. 高齢者の肺癌では, 身体的・精神的機能低下のため治療困難な場合が少なくない. また, 初診時から臨床的にクッシング症候群を合併している肺小細胞癌は稀で, 予後も不良である. 本症例は腫瘍随伴症候群を呈し, 高齢ながら quality of life (QOL) を維持し, 2年以上の長期生存が可能であった.
  • 石川 くみ子, 平井 真希子, 堤 久, 熊川 寿郎, 森 真由美, 中津 雅美
    1997 年 34 巻 3 号 p. 221-225
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    稀な疾患であり, かつ難治性とされているγ-chain disease に少量 Etoposide 長期間経口投与療法が有効であった症例を報告する. 症例は79歳男性. 1992年4月より発熱あり. 1993年3月全身リンパ節腫脹と著明な肝脾腫が認められ, 悪性リンパ腫を疑われ当科に入院した. IgGの増加 (4,150mg/dl) を認め, 血清蛋白電気泳動でM蛋白陽性, 血清及び尿の免疫電気泳動でIgG-Fcフラグメント陽性であった. リンパ節生検にて Plasmacytoid cell, リンパ球の浸潤を認め, これらの細胞は, 免疫組織化学染色で抗IgG抗体陽性, 抗κ及び抗λ抗体陰性であった. 以上よりγ-chain disease と診断した. 多剤併用化学療法を開始したがあまり効果なく, 少量 Etoposide の長期間経口投与へ変更したところ, 解熱し, 表在及び深部リンパ節とも消失, 肝脾腫も縮小し, 完全寛解となった. Etoposide の長期間経口投与は, 治療に抵抗性であると言われている重鎖病に今後試みるべき治療法であろう.
  • 寺本 信嗣, 須貝 正夫, 斎藤 恵理香, 松瀬 健, 江頭 正人, 鳥羽 研二, 大内 尉義
    1997 年 34 巻 3 号 p. 226-229
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    過換気症候群は, 発作的な過換気によって身体, 精神機能異常をきたす機能的疾患であるが, 老年者では比較的稀と報告されている. 我々は, 超高齢者に典型的な過換気症候群を認めたので, 文献的考察を加えて報告した. 症例は, 92歳女性で基礎疾患として高血圧, 緑内障があり, 血圧上昇, 嘔気, 上腹部不快感, 前胸部不快感, 頻呼吸で救急外来を受診した. 収縮期血圧236mmHgであったため, Nifedipine 10mgを舌下して採血などの検査を進めていたところ, 両手のしびれ, 意味不明の大声を発し, 興奮状態となり, 点滴針をはずそうとするため, 鎮静目的に Hydroxyzing 25mgを投与した. この間, 呼吸数が36 (回/分) 前後と多かったため, 過換気症候群を疑い, 動脈血ガス分析を行い, pH 7.590, PO2 95.1mmHg, PCO2 24.1mmHgであったため, 紙袋再呼吸を行った結果, 症状は次第に回復し, 40分後には血液ガスもpH 7.469, PCO2 36.1mmHgへと改善した. その後の検索の結果, 痴呆はなく, 明らかな脳幹の病変もなく, 脳波上も異常はなかった. 過換気テストでは, 今回外来時にみられたような症状は再現されなかったが, その他の検査所見と臨床所見から, 明らかな器質的な病変がないにもかかわらず, 過換気による著しい二酸化炭素分圧の低下とともに多彩な症状を示す典型的な急性の過換気症候群と考えられた.
    本症例については誘因, 原因について必ずしも明らかにできなかったが, 90歳を超える超高齢者においても典型的な過換気症候群を認めることがあることから, 老年者の意識障害の鑑別疾患として, 稀ではあるが過換気症候群も念頭に置くべきと考えられた.
  • 1997 年 34 巻 3 号 p. 230-241
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 34 巻 3 号 p. 242-259
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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