日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
34 巻, 6 号
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  • 疫学, 原因, 治療, 合併症
    井上 哲郎
    1997 年 34 巻 6 号 p. 451-452
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 第一報: 各睡眠パラメータの変化について
    平沢 秀人, 渥美 義賢
    1997 年 34 巻 6 号 p. 453-460
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    睡眠の加齢による変化を検討するために10歳から97歳までの健常者105例を対象に連続3夜の睡眠ポリグラフィを行った.
    睡眠時間は, 10代から30代までは年代に従い短くなったが, 40代以降は概ね420分 (7時間) で推移した. 睡眠効率は, 加齢に伴い低下したが, 特に50代以降の低下が目立った. 入眠潜時は, 年代が高くなるに従い廷長する傾向がみられた. REM潜時は年代間には差はみられなかったが, 入眠後最初のREM睡眠が現れるまでに15分以上覚醒がみられた場合, その覚醒の時点からREM潜時を算出したところ, 加齢に従い短縮する傾向がみられた.
    睡眠段階の出現率では, 覚醒段階 (中途覚醒) は年代を通して増加傾向がみられ, 特に60代以降の増加が顕著であった. REM睡眠は, 10代から90代まで緩やかに比較的一定の割合で減少する変化がみられた. 浅睡眠期の睡眠段階は1, 2はともに加齢とともに増加する傾向がみられた. 特に, 睡眠段階1は, 10代から70代までやや目立って増加したが, 70代以降は変化が少なかった. 睡眠段階2では, 10代から30代まではやや目立って増加したが, 30代以降の増加は緩徐であった. 深睡眠期の睡眠段階3, 4は, 年代を通して減少する変化がみられたが, 10代から40代まで比較的急峻に減少した. これらの睡眠パラメータのうち, 睡眠効率と深睡眠期 (睡眠段階3+4) が年齢と有意な関連が認められ, この2つの因子から各対象例の年齢を統計的に算出したところ実際の年齢に比較的近似した値を得た.
    これまで老年期になると浅い睡眠や中途覚醒が多くなり, 深い睡眠が減少するといわれ, これらが老年者の睡眠特徴であると考えられていた. しかし, 本研究によりこれらの変化は老年期に限った特徴ではなく, 比較的若い年代からすでにみられる現象であることがわかった.
  • 清水 一, 佐藤 茂, 大石 一二三, 森 修, 森 隆, 大網 弘
    1997 年 34 巻 6 号 p. 461-467
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー型老年痴呆者脳25例 (60~97歳) と非痴呆老年者脳10例 (75~101歳) のプロテオグリカン量を測定した. プロテオグリカンはヒアルロン酸, ヘパラン硫酸, デルマタン硫酸, コンドロイチン硫酸について測定した. アルツハイマー型老年痴呆者脳の総プロテオグリカン量は, 非痴呆老年者脳と比較して海馬回で約2倍, 上前頭回で約4倍であった. 特に, ヘパラン硫酸量の増加が顕著であり, 海馬回で約9倍, 上前頭回で7倍であった. 免疫電顕法でヘパラン硫酸の局在を検索したところ毛細血管基底膜と老人斑の一部に観察された.
    アルツハイマー型老年痴呆患者脳のヘパラン硫酸量の増加は, 毛細血管基底膜と老人斑の一部に由来すると考えられた.
  • 羽生 春夫, 浅野 哲一, 阿部 晋衛, 新井 久之, 岩本 俊彦, 高崎 優, 新藤 博明, 阿部 公彦
    1997 年 34 巻 6 号 p. 468-473
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    SPECT検査による側頭頭頂葉の血流低下所見からアルツハイマー病 (以下AD) を診断, 鑑別する際の問題点を検討した.
    対象は123I-IMPによるSPECT検査がなされた連続症例302例で, AD 51例を含む. 臨床歴の知らない判定医が定性的に「一側または両側の側頭頭頂葉の血流低下所見」を認めた症例を抽出し, retrospective にAD例で本所見を認めなかった症例, 非AD例で本所見を認めた症例のSPECT像を判定医とは異なる医師が解析した. AD 51例のうち本所見が認められたのは44例であったが, 軽症例の多い possible 例で検出率はやや低く (5/8例, 62.5%), 明らかな血流異常を認めないものが稀ではなかった. 非AD例で本所見が認められたのは23例で, このうち側頭頭頂葉以外の血流分布をも併せて評価することによってADとは鑑別可能となる場合もみられたが, パーキンソン病や加齢性記銘力障害などとの鑑別はほとんど困難であった.
    本所見の診断精度を求めると, 感度86.3% (44/51例), 特異度91.2% (229/251例), 正確度90.4% (273/302例) となったが, 軽症例では検出されない場合があること, 及び同様の所見がAD以外の疾患でも認められる場合があること, を考慮して画像診断を活用していく必要があると考えられた.
  • 菅沼 由佳子, 新村 健, 長谷川 浩, 谷 正人, 中村 芳郎
    1997 年 34 巻 6 号 p. 474-481
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    目的: 心尖部肥大型心筋症 (Apical HCM) は, 壮年以降の男性に多く無症状に経過し予後良好であるとされていたが, 近年60歳以下の症例に約10%の心事故発生が報告されている. 一方高齢者 Apical HCMはこれまで心事故や突然死例の報告はなく予後良好との説が支配的であるが, 充分な根拠があるとは言い難い. 本研究は61歳以上の高齢者 Apical HCMの心事故発生の有無と, 心事故発生群におけるその予測因子を推定する事を目的とした. 方法: 1994年以前に当院心機能室にて心エコー図上の心尖部肥大と, 心電図上巨大陰性T波により Apical HCMと診断された61歳以上の男性13例, 女性7例 (74±7歳) の計20例を対象とし, 1990~95年まで (平均観察年数4.3±1.7年) の臨床経過・予後と合併症, 心エコー図・心電図変化について検討した. 結果: 経過中心事故例を3例 (15%, 突然死1例, 発作性心房粗動合併心不全例1例, 胸痛例1例), 心房細動合併脳梗塞を2例, 非心臓死を2例認めた. 心事故発生例では他の症例と比較して, 年齢分布, 性, 罹患年数, 治療内容, 合併症 (高血圧, 糖尿病), 心電図計測値に差はなかった. 診断時の心エコー図計測では左房径がわずかに大きい傾向であった (33 vs. 38mm) が, すべての指標に差はなかった. 一方最終の計測では, 左室収縮末期径が有意に増大 (26 vs. 34mm, p<0.05) していた. 総括: これまで Apical HCMの長期観察中における心事故発生例の報告は60歳以下に限られていたが, 今回我々は61歳以上の高齢者を対象とした検討を行い, 3例で突然死を含む心事故が発生したことを確認した. 更にこれらの例では診断時の心エコー図計測値と比して, 最終の左室収縮末期径が有意に増大しており, 心事故推定の指標となる可能性が示唆された.
  • 緊急入院症例の解析
    水内 知子, 木田 厚瑞
    1997 年 34 巻 6 号 p. 482-485
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者の閉塞性肺疾患に対し, self-management を中心とした重点的な患者教育により急性増悪の回避となる治療効果が認められるか否かにつき検討した. 移行期の2年間をはさみ, 重点的な患者教育を行った時期 (1991年4月~1993年3月) としからざる時期 (1987年4月~1989年3月) において急性増悪により当センターに緊急入院となった患者数, その理由, 転帰につき検討し, 以下の結論を得た.
    前期の喘息発作による緊急入院数は82例 (11.7%), 後期は62例 (8.8%) であった. 重症度の内訳では後期は前期に比して軽度, 中等度の症例は減少傾向にあったが, near fatal 症例の減少は認められなかった. 転帰をみると, 安定期に準呼吸不全で喘息症状を伴う症例は near fatal に到ることが示唆された. 増悪原因としての気道感染は20~43%であった.
  • 宮島 良夫, 浅野 哲一, 前畑 幸彦, 松田 ひろし, 福本 一朗
    1997 年 34 巻 6 号 p. 486-491
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    褥瘡好発部位である仙骨部が圧迫された場合, 除圧媒体の有無が皮膚血流量に与える変化, そして患者の栄養状態を反映すると思われる臨床生化学検査値と褥瘡併発の関係を知る目的として研究を行った.
    対象は病棟入院患者13例 (おむつ不使用・褥瘡無し6例, 布おむつ使用・褥瘡あり5例, 紙おむつ使用・褥瘡あり2例, 平均年齢77.2±7.2歳), 褥瘡ありについては測定部位である仙骨部以外の箇所に発生している患者で, 除圧媒体 (ポリウレタン) 使用の有無による皮膚血流量変化をレーザードップラー血流計で測定した. 生化学データについては入院患者の中でアルブミン (Alb), 総コレステロール (T-chol), 中性脂肪 (TG) の3項目について過去3カ月のデータの揃っていたもの (男性3例, 女性16例, 平均年齢73.6±11.9歳) を抽出した.
    その結果, ポリウレタンを敷くことで体位交換前後の皮膚血流量変化に有意差が見られたのは紙おむつ使用群であった. 生化学データでは褥瘡の有無に対してAlb, T-chol に有意差が見られた.
    褥瘡予防の観点に立ち, 物理・生化学的な要因の両面から褥瘡併発患者の特性について検討したところ, 褥瘡無しの患者群と比較してAlb, T-chol が有意に低く, 布おむつ自体が圧迫因子として作用するため布おむつの外から除圧目的の媒体を用いても皮膚血流量減少の抑制効果が減ずると考えられた.
  • 小川 公啓, 前畑 幸彦, 浅野 哲一, 杉山 壮, 櫻井 博文, 参木 保至, 勝沼 英宇, 高崎 優
    1997 年 34 巻 6 号 p. 492-498
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    臨床症状や各種検査データーが生命予後にどの程度影響を及ぼしているかを知ることは重要なことである. そこで今回我々は, 各種慢性疾患を有する高齢者の生命予後に及ぼす因子について検討した.
    対象は, 柏崎厚生病院に入院し1年以内に死亡した慢性疾患を有する70~97歳の168症例で, 予後因子としては, 痴呆, 寝たきり状態, 食欲不振, 下腿浮腫, 尿失禁, 呼吸苦, 発熱, 肝障害, 腎障害, 貧血, 低アルブミン血症, 炎症反応, 心電図異常の13項目を取り上げた.
    解析方法としては, Kaplan-Meier 生存曲線の理論にもとづき, 先ず各因子の陽性者と陰性者における生存日数の有意差を, Log-rank 法, Wilcoxon 法にて検討し, 次いで非線形多変量解析法の一つであるCoxの比例ハザードモデルを用いて回帰分析を行い, 寄与率の高い因子を抽出した.
    その結果, 寝たきり状態, 食欲不振, 尿失禁, 低アルブミン血症, 炎症反応といった因子陽性者が, 陰性者に比し有意に (p<0.005) 生存日数が短かった. また比例ハザードモデルによる解析では, 寝たきり状態, 食欲不振, 尿失禁, 発熱, 肝障害, 低アルブミン血症, 炎症反応, 心電図異常といった因子に有意な (p<0.05) 寄与率を認め, これらを変数とした比例ハザードモデルから推定した生存関数による生存曲線は, Kaplan-Meier 生存曲線とほぼ一致した.
    以上により, 慢性疾患を有する高齢者においては, 特に寝たきり状態, 食欲不振, 炎症反応などの因子が, 生命予後に大きな影響を及ぼしていることが示唆された.
  • 剖検例による肉眼型と組織型の対応の検討
    橋本 肇, 江崎 行芳, 紀 健二, 高橋 忠雄, 田久保 海誉
    1997 年 34 巻 6 号 p. 499-505
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    目的: 従来高齢者胃癌は手術例から検討されている論文が多い. しかし高齢者では手術されない胃癌例も少なくないので, 手術例のみの検討では全体像がとらえられないと考え, 剖検例から検討した.
    症例: 東京都老人医療センターで剖検され胃癌が診断された518例について病理学的に検討した.
    方法: 高齢者を前期 (65~74歳), 中期 (75~84歳), 後期 (85歳~) に分けた. 年齢と組織像, 肉眼形態と組織像, 組織像と深達度, 組織像と占居部位などの関係を検討した.
    結果: 高齢者間において加齢により管状腺癌は増加し低分化腺癌は減少していた. 早期癌I型は乳頭腺癌, 管状腺癌で, 加齢により乳頭腺癌の比率が減少していた. 早期癌IIc型は管状腺癌が多く, 印環細胞癌は少なかった. 加齢でボールマン1型では乳頭腺癌の比率は減少し, 2型では増加していた. ボールマン4型で分化型癌が16.2%見られた. 組織型別の深達度では乳頭腺癌, 管状腺癌が同程度であり, 低分化腺癌, 印環細胞癌が同程度であった. 占居部位では加齢により下部の頻度が増加していた.
    結論: 剖検例では手術例と違って後期高齢者が多く, またより進行した癌が多かった. また組織型でも低分化腺癌, 印環細胞癌の比率が多く見られた. 従って高齢者胃癌を問題にするときには剖検例も含めて検討する必要があると考えられた.
  • 危険因子を含めた検討
    金谷 英夫, 北野 昇一, 新居延 忠昭, 中島 正好, 森本 茂人, 大西 利夫, 荻原 俊男
    1997 年 34 巻 6 号 p. 506-511
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者における脳梗塞と無症候性の閉塞性動脈硬化症 (ASO) の関係について危険因子を含めて検討した. 対象は高齢者67例 (男性11例, 女性56例, 平均年齢±標準偏差: 79.6±8.5歳). 脳梗塞 (44例) の診断は頭部CTを用い, 皮質梗塞 (23例) とラクナ梗塞 (21例) に分類した. 無症候性のASOの診断方法はドップラー血流計を用いて下肢血圧を測定し, ankle pressure index (API) を算出し, API<0.9を無症候性のASO 41例とした. 動脈硬化性疾患の危険因子と考えられる高血圧 (収縮期血圧≧140mmHg, または拡張期血圧≧90mmHg), 高総コレステロール (TC) 血症 (TC≧220mg/dl), 高トリグリセリド (TG) 血症 (TG≧150mg/dl), 血清高比重リポ蛋白コレステロール低値 (HDL-C<40mg/dl), 血清低比重リポ蛋白コレステロール高値 (LDL-C≧150mg/dl), 耐糖能異常 (空腹時血糖≧110mg/dl) について, 2疾患との関連を検討した. 脳梗塞群において無症候性のASOを有する例が, 非脳梗塞群に比し有意に多く認められた (p<0.05, odds 比: 5.6). この傾向はラクナ梗塞群 (p<0.05, odds 比: 3.8) に比し, 皮質梗塞群において顕著であった (p<0.05, odds 比: 8.9). 各危険因子の脳梗塞またはAPI低値との関係は, 高血圧がラクナ梗塞に, 低HDL-C血症と高LDL-C血症がAPI低値に有意な (p<0.05) 関連を示したが, いずれの危険因子も皮質梗塞と有意な関連は示さなかった. 高齢者においては脳梗塞と無症候性のASOの合併頻度は高く, このことを念頭において診断・治療を行う必要がある. 成人期に動脈硬化性疾患に対し危険因子と考えられている因子の皮質梗塞に対する関与は高齢者では明らかでなく, このことは加齢そのものの関与が大きくなるためと考えられる.
  • 園田 紀之, 西田 宏二, 東島 正泰, 矢永 尚士, 高木 維彦
    1997 年 34 巻 6 号 p. 512-515
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は82歳女性. 元来健康であったが, 鯛料理を食べて以来, 喉につかえる様な違和感があった. さらに1週間後に突然吐血したため緊急入院となった. 来院時発熱, 貧血, 炎症反応の強陽性, 両側胸水を認めた. 緊急上部消化管内視鏡検査にて胸部上部食道より胸部下部食道までの長い一条の縦走する深い裂創と, その口側縁より著しい出血を認めた. 以上より鯛の魚骨による食道損傷及び縦隔炎と診断した. 同部に対して広範に内視鏡的クリップ法にて縫縮及び止血を施行し治癒しえた.
  • 西田 宏二, 川添 聖治, 東島 正泰, 矢永 尚士, 高木 維彦, 明石 隆吉
    1997 年 34 巻 6 号 p. 516-520
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は79歳男性で主訴は下血. 緊急上部内視鏡検査にて十二指腸球後部より噴出性の出血を認めた. 明瞭な潰瘍はなく Dieulafoy 潰瘍と診断し, 直ちにクリップ法にて止血した. その後も同病変に新鮮血付着と溢出性出血を認めたため, 計3回のクリップ止血を施行した. 4回目の内視鏡検査時 (入院7日後) にも同様に新鮮血付着と溢出性出血を認めたため, クリップ法では止血が不完全と判断し, 高張 Na-Epinephrine 液 (hypertonic saline epinephrine solution) 局注療法を加えた. その結果良好の止血効果をえたので若干の文献的考察もふまえて報告した.
  • 深津 良子, 田村 忠正, 宮地 隆史, 野田 公一, 渡辺 千種, 片山 禎夫, 加世田 ゆみ子, 中村 重信
    1997 年 34 巻 6 号 p. 521-528
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は67歳女性. 64歳より体重減少, 66歳時より自発性低下, 筋萎縮・筋力低下, 排尿障害が約1年の経過で徐々に増強した. 入院時に軽度意識障害を認めた. 四肢筋萎縮・筋力低下のため起立歩行不能で下肢深部腱反射は消失していた. 血中ビタミンB1濃度は1.9μg/dl (正常2.0~7.2), 葉酸0.7ng/ml (正常4.0~12.0) で, 髄液圧は正常で, 蛋白467mg/dl, 細胞数2/3mm3と蛋白細胞解離を認めた. 末梢神経伝導検査で運動・感覚神経とも活動電位振幅および伝導速度が低下し, 腓腹神経生検で髄鞘の崩壊, onion bulb formation を認め軸索が萎縮していた. 頭部MRIにて側脳室拡大とT2強調画像で側脳室周囲高信号域および中脳水道の flow void sign がみられ, 脳槽シンチで放射能が脳室へ逆流し, 大脳クモ膜下腔への移動が遅延していた. 以上より本例はビタミンB1・葉酸欠乏性および慢性炎症性脱髄性ニューロパシーに正常圧水頭症が合併し複雑な病像を呈した1例であり, 本例の正常圧水頭症の発症には髄液蛋白高値の関与が推察された.
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