臨床症状や各種検査データーが生命予後にどの程度影響を及ぼしているかを知ることは重要なことである. そこで今回我々は, 各種慢性疾患を有する高齢者の生命予後に及ぼす因子について検討した.
対象は, 柏崎厚生病院に入院し1年以内に死亡した慢性疾患を有する70~97歳の168症例で, 予後因子としては, 痴呆, 寝たきり状態, 食欲不振, 下腿浮腫, 尿失禁, 呼吸苦, 発熱, 肝障害, 腎障害, 貧血, 低アルブミン血症, 炎症反応, 心電図異常の13項目を取り上げた.
解析方法としては, Kaplan-Meier 生存曲線の理論にもとづき, 先ず各因子の陽性者と陰性者における生存日数の有意差を, Log-rank 法, Wilcoxon 法にて検討し, 次いで非線形多変量解析法の一つであるCoxの比例ハザードモデルを用いて回帰分析を行い, 寄与率の高い因子を抽出した.
その結果, 寝たきり状態, 食欲不振, 尿失禁, 低アルブミン血症, 炎症反応といった因子陽性者が, 陰性者に比し有意に (p<0.005) 生存日数が短かった. また比例ハザードモデルによる解析では, 寝たきり状態, 食欲不振, 尿失禁, 発熱, 肝障害, 低アルブミン血症, 炎症反応, 心電図異常といった因子に有意な (p<0.05) 寄与率を認め, これらを変数とした比例ハザードモデルから推定した生存関数による生存曲線は, Kaplan-Meier 生存曲線とほぼ一致した.
以上により, 慢性疾患を有する高齢者においては, 特に寝たきり状態, 食欲不振, 炎症反応などの因子が, 生命予後に大きな影響を及ぼしていることが示唆された.
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