日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
35 巻 , 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 小澤 利男
    1998 年 35 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者では多臓器に慢性疾患が併発し, 痴呆, 移動障害, 失禁, コミュニケーション障害, 転倒, うつ状態, 廃用性萎縮などを来して要介護となる. こうした生活機能障害に対しては身体的, 精神的, 社会的に総合評価し, これを適切な医療ケアにつなげることが必要である. その手法が総合的機能評価 comrehensive geriatric assessment (CGA) である. それは医学的診断治療に加えて, 日常生活動作ADL, 痴呆とうつ状態のスクリーニング, 必要な介護などの社会的な側面等の, 生活機能を包括的に評価するものである.
    CGAは記述的な内容をスコアで表現する. 使用する方法は, 妥当性, 信頼性, 感度, 特異度, 変化に対する反応性, 使いやすさなどの条件を満足するものでなければならない. 主たる対象は虚弱高齢者で, 個体もコミュニティも対象となる. チーム医療の取り組みを要し, 評価の結果は個別的に適正なケア計画となって実施に移される.
    評価法は様々であり, 英米でその発展がみられているが, ここでは英国老年医学会とロンドン医師会とが共同して刊行した標準化スケールを紹介した. CGAの効果は入院で大きく, 外来, 在宅では低い傾向があるといわれてきたが, それは適切なケア計画の作成と実施に問題があるためである. しかし最近では在宅CGAが積極的に施行される傾向があり, 入院頻度の減少, 入院日数の低下, 施設入所の減少, 生活の質QOLの向上などの面でよい成績が上げられている. また, うっ血性心不全など, 個々の疾患に固有の評価をすることによって, 高齢者の慢性疾患の長期在宅ケアの改善が得られている. 我が国ではこうした面の医療ケアが等閑となっている傾向があり, 今後の発展が望まれる.
  • 井出 利憲
    1998 年 35 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    ヒト体細胞の分裂回数の限界 (分裂寿命) は胎児期にプログラムされていると考えられる. 複製機構のもつ基本的な性質のために, 直鎖DNAの末端にあるテロメアDNAが複製毎に約100bp程度ずつ短縮することが, 分裂寿命の絶対的な有限性を決める. 正常体細胞の分裂寿命の限界 (細胞老化) では増殖抑制遺伝子が構成的に発現昂進するために増殖がとまる. テロメア短縮 (分裂時計) からのシグナルによって, これらの遺伝子変化が起きるものと考えられる. テロメアNAの短縮にともなって, 増殖停止遺伝子だけではなく, 種々の機能遺伝子, たとえばサイトカインなどの活性ペプチドの発現も変化する. 生理的再生あるいは病理的原因 (障害修復など) によって, 体内の各種細胞の分裂回数が増加するにとともにテロメアDNAが短縮し, これがシグナルとなって, 構成細胞の増殖能力低下だけではなく, 機能遺伝子の発現変化が体内の細胞・組織・臓器に機能不全をもたらすことが, 個体の老化を進行させるものと思われる.
    DNA癌ウイルスの癌遺伝子によるトランスフォーム細胞では, 分裂回数は延長する (延命) が, やがてほとんどすべて死滅する. テロメアDNAが限界まで短縮して染色体が不安定化するための死である. ヒト体細胞が無限分裂寿命になる (不死化する) ためには, テロメアDNAを延長するテロメラーゼの発現が不可欠である. 生殖巣では, テロメラーゼが発現しており, 無限分裂寿命を保証する. 胎生期にもテロメラーゼがあるが, 体細胞分化の段階でテロメラーゼの発現が抑制され, 分裂寿命がプログラムされると思われる. 成体でも増殖の幹細胞には弱いテロメラーゼ活性があってテロメア短縮を遅延させ, 生涯にわたる細胞供給を保証する. 大部分の癌組織には強いテロメラーゼ活性があることがわかったため, 癌診断と癌治療の新たなターゲットとして注目されている.
  • 平井 俊策
    1998 年 35 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 寺本 信嗣, 鈴木 正史, 松瀬 健, 大賀 栄次郎, 片山 弘文, 長瀬 隆英, 福地 義之助, 大内 尉義
    1998 年 35 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年女性に多くみられる亀背が呼吸機能の加齢変化に及ぼす影響を心肺疾患, 神経筋疾患がなく, FEV1/FVC>0.7で明らかな呼出障害を示さない20歳から94歳までの成人300名 (男性170名 (平均年齢53.9±1.5歳), 女性130名 (平均年齢56.2±1.6歳)) を対象として検討した. 胸部X線上で脊柱後彎の程度を Cobb 角として評価した. スパイロメトリー, 肺気量分画, 呼吸筋力を測定し, これら指標の加齢変化に及ぼす脊柱後彎 (Cobb 角) の影響を重回帰分析で検討した. 努力肺活量 (FVC), 一秒量 (FEV1), 全肺気量 (TLC), 最大吸気圧 (PImax), 最大呼気圧 (PEmax) は経年的に減少し, 残気量 (RV), 残気率 (RV/TLC) は増加した. 脊柱後彎の程度 (Cobb 角) は加齢とともに増加した. Cobb 角はTLC, VC, FEV1, PImax, PEmax と有意の負の相関を認め, RV, RV/TLCと正の相関を示した. さらに, Cobb 角は, PImax, RV/TLC, VCについて年齢とは独立した予測変数であった. したがって, 脊柱後彎の進行は, 吸気筋の発生圧を低下させ, 残気率を増加し, 肺活量を制限して, 加齢による呼吸機能の低下を一層悪化させる可能性が考えられた.
  • 倉林 均, 久保田 一雄, 田村 遵一, 村上 博和
    1998 年 35 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1985~95年に入院した54例の未治療の多発性骨髄腫患者の形質細胞の電子顕微鏡所見と臨床像を65歳以上の老年者 (20例; IgG型9例, IgA型8例, BJP型3例; 臨床病期I 5例, II 3例, III 12例) と65歳未満の若年者 (34例; IgG型16例, IgA型10例, IgD型1例, BJP型7例; 臨床病期15例, II 10例, III19例) で比較した. 老年者群と若年者群の5年生存率はそれぞれ41.5%, 60.5%で, 両群の生存曲線に有意差はなかった. 初回治療有効例は老年者群55%, 若年者群56%で, 両群間に有意差はなかった. 電顕的異常構造陽性の症例数を老年者群と若年者群とで比較すると, 細胞小器官配列異常は老年者群に有意に多かったが, 他の異常構造陽性の症例数は両群間で有意差はなかった. 骨髄形質細胞中の各異常構造の比率と初回治療有効性を老年者群と若年者群で比較すると, 老年者群の治療無効群で濃染小体, ミトコンドリア内顆粒, multilamellar body の比率が有意に高く, 若年者群の治療無効群では細胞小器官配列異常, single sac loop like structure, ミトコンドリア内顆粒の比率が有意に高かった. 老年者群と若年者群の治療反応性や生存率に有意差はないが, 老年者群と若年者群では細胞の超微細構造が若干異なり, 電顕で細胞形態異常を個々に分析することにより老年者および若年者それぞれにおいて治療有効性を予測しうることが示唆された.
  • 多施設共同研究
    羽根田 俊, 井門 明, 藤兼 俊明, 田中 秀一, 棚沢 哲, 森本 英雄, 加藤 淳一, 金谷 健一, 本田 肇, 酒井 博司, 秋田 ...
    1998 年 35 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    β遮断薬, 特に内因性交感神経刺激作用 (ISA) を有さないβ1選択性β遮断薬は老年高血圧患者の糖・脂質代謝およびQOLを損なう可能性もあり, その評価は完全には定まっていない. そこで, 本研究では, 老年本態性高血圧患者におけるISAを有さないβ1選択性β遮断薬 bisoprolol の血圧, 脈拍数, 脂質・糖代謝およびQOLに及ぼす効果を評価するために, 非老年高血圧患者における効果と比較検討した. 対象はWHO病期分類I~II期の本態性高血圧症の外来通院患者81例で, うち65歳未満の非老年者群は60例, 65歳以上の老年者群21例で, bisoprolol 5mgを1日1回, 朝食後に12週間投与した. 試験期間中, 2週間毎に血圧, 脈拍数を測定し, bisoprolol 投与前と投与12週間後に血清脂質値検査, 75g経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT) およびQOL質問表調査を施行した. bisoprolol 投与による降圧効果は非老年者群と老年者群の両群において同程度で, 血圧は12週間にわたり良好に維持された. 一方, 脈拍数は両群で bisoprolol 投与により有意に低下したが, 脈拍数50/分以下の徐脈は1例でのみ認めた. bisoprolol 投与は非老年者群および老年者群の両群で血清脂質値およびOGTTの血糖値パターンおよび血漿インスリン値パターンに悪影響を及ぼさなかった. bisoprolol 投与はQOL調査において非老年者群の「頭痛・頭重」,「肩こり」を, 老年者群の「肩こり」を有意に改善させた. 以上より, β1選択性β遮断薬 bisoprolol は老年本態性高血圧患者においても非老年患者と同等の有用性を示し, QOLを保持し得る薬剤であることが示唆された.
  • 新津 望, 梅田 正法
    1998 年 35 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1992年より1996年までの5年間に当科を受診した甲状腺原発非ホジキンリンパ腫10例の臨床的検討を行った. 男性3例, 女性7例, 年齢中央値75歳で, 橋本病の既往を7例に認めた. 全例甲状腺機能低下を伴い, マイクロゾーム・テストは全例, サイロイド・テストは6例に陽性であった. 組織型は全例瀰漫性で, B細胞性9例, T細胞性1例であった. 臨床病期は, I期5例, II期5例であった. 治療方法は原則としてCOP-BLAM療法4コース施行後放射線療法30Gyを追加した. 治療効果は全例完全寛解となり, 観察期間中央値40カ月で全例無病生存している. 超音波所見は, 全体に瀰漫性に低~無エコーの腫瘤影で境界は不鮮明で, 後方エコーが増強している症例が多かった.
    甲状腺原発非ホジキンリンパ腫は, 高齢者の女性に多く認められ, 早期に診断された症例では化学療法および放射線療法により治癒する可能性が示唆された.
  • 東京都老人医療センターにおける断面調査
    山田 英夫, 高橋 龍太郎, 小澤 利男
    1998 年 35 巻 1 号 p. 44-52
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1997年2月に東京都老人医療センターにおいて, 全入院患者を対象として Barthel Index (BAI) を用いて行った基本的日常生活動作 (ADL) についての断面調査の検討結果を報告する.
    対象は672名, 年齢77.2歳 (女性382名, 77.84歳. 男性290名, 76.39歳) であった. 疾患は脳神経 (N), 心循環器 (C), 悪性腫瘍 (M), 骨運動器 (B), 呼吸器 (P), 痴呆 (D) およびその他 (O) に分類した. BAIは看護観察度 (疾患の重症度を反映), コミュニケーション, 疾患区分, 年齢と有意の関係があった. 脳神経疾患, 痴呆はADLのすべての項目で他疾患に比べ有意に低下した. 骨運動器疾患は移動, 階段昇降, 入浴で, 慢性呼吸器疾患は階段, 入浴で低下し, それぞれ脳神経疾患, 痴呆と差が殆どなくなった. 慢性呼吸器疾患のADL低下は, 特に高齢になると顕著になった.
    ADLを構成する項目の内最も早く侵されるのが入浴と階段昇降であり, 起居はBAIとほぼ直線関係を保って低下した. 食事の介助が必要となる時には大部分のADLで自立が失われていた.
    QOLを重要視する医療においては, ADLの適正な評価が大切であり, 老年患者を対象とする診療に当たってはCGAの導入を考慮することが必要である.
  • 井上 勝次, 北見 裕, 佐伯 秀幸, 伊賀瀬 道也, 福岡 富和, 間口 元文, 大蔵 隆文, 小原 克彦, 児玉 光司, 日和田 邦男
    1998 年 35 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の消化管出血は日常診療でしばしば遭遇する. しかし, 老年者では無症状のことが少なくなく, 見逃される可能性があり注意が必要である. 我々は71歳女性で消化管出血による高度の貧血をきたした症例を経験した. 患者の出血源は上部消化管造影, 小腸造影, 注腸造影および内視鏡検査では発見できず, 腹部血管造影で初めて出血源と思われる小腸腫瘍を同定し得た. 小腸切除術の結果, 腫瘍は径4×3×3.5cm大の管外性に発育した迷入膵と診断した. 消化管出血の原因として小腸からの出血が疑われる場合, 小腸造影では診断因難な壁外発育性の腫瘍や血管性病変を考慮し, 一度は腹部血管造影を試みるべきであると思われた. 小腸腫瘍からの出血は消化管出血のなかでも比較的まれであり, 特に本症例のように出血源と考えられ外科的切除にいたった小腸腫瘍が病理組織学的に迷入膵と診断されることは非常にまれである.
  • 1998 年 35 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 1998 年 35 巻 1 号 p. 66-84
    発行日: 1998/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
feedback
Top