日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
35 巻, 10 号
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  • 松田 保
    1998 年 35 巻 10 号 p. 703-712
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    抗血小板療法は, 薬剤により血小板の機能を低下させることにより, 血栓症の発現を阻止しようとする治療法である. 当然, このときには出血性素因を呈することが予想されるが, ヒトの止血機序には大きな余裕があるので, 著明な出血症状をきたすことはない. これが抗血小板療法の根拠である. 動脈血栓中には静脈血栓に比べ多量の血小板が含まれ, このため, 血栓の発現には血小板が比較的大きな役割を演ずることが予想される. したがって動脈の血栓の予防には抗血小板療法が理論的には有効である可能性が大きい. したがって, 冠動脈疾患, 虚血性脳血管障害など動脈硬化を基盤とする疾患が主として抗血小板療法の対象となる. ただし, 高齢者で動脈硬化の強い例では, 血栓予防にはより強力な抗血小板薬が必要であることが予想され, このときには出血性素因が強くなる可能性がある点が問題である. 理想的には血栓を生じ易い例を血液検査である程度選び出すことができ, また抗血小板薬の投与によりそのような傾向を改善できたことを証明できればよいが, 現状では不可能である. この点で, 抗血小板薬の効果判定には, 条件の比較的一致した2群を選び, 一方には効果を調べたい抗血小板薬を, 一方には偽薬または効果がある程度知られている薬剤を投与し, 両群の予後を比較する方法がとられる. ただし, この方法は膨大な症例数と時間が必要であり, 費用のかかる点が欠点である. 現在, わが国で用いられている抗血小板薬は, 抗凝固薬とは異なり, その効果に個人差が少なく, また経口投与が可能である上に比較的効果の持続時間も長く, また副作用としての出血も少ない点で理想に近い. ただし, 最近, 欧米では, 血小板の凝集に関与する血小板膜の glycoprotein IIb/IIIa複合体の受容体を阻止する新しい薬剤 (経口投与可能な薬剤も開発された) が登場し, 新しい発展がみられつつある.
  • 岡山 博人
    1998 年 35 巻 10 号 p. 713-716
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 山口 武典, 山之内 博
    1998 年 35 巻 10 号 p. 717
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 中島 健二, 渡邊 能行, 鈴木 一夫
    1998 年 35 巻 10 号 p. 718-720
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 小林 祥泰
    1998 年 35 巻 10 号 p. 721-725
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 名倉 博史
    1998 年 35 巻 10 号 p. 726-729
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    65歳以上の老年者4490連続剖検例を老年前期; 65~74歳, 老年後期; 75~84歳, 超高齢者; 85歳以上の3群に分類し加齢と脳血管障害との関係につき検討し以下の結果を得た.
    1) 加齢により脳血管性病変を有する頻度は増加し, その主要なものは小病変の増加であった. その原因として加齢による高血圧, 動脈硬化高度例の増加が推定された.
    2) 病理所見の検討では出血性病変と梗塞性病変の頻度, 梗塞性病変における深部梗塞と皮質梗塞の頻度は加齢により殆ど変化しなかったが初回発作例の検討では加齢に伴い脳出血, 皮質梗塞で初発する頻度が増加した.
    3) 皮質梗塞に占める塞栓性梗塞の頻度は加齢とともに増加し, その原因としては加齢による心房細動の増加が推定された.
    高齢者の脳血管障害では今後塞栓性梗塞の予防が重要なことを指摘した.
  • 井林 雪郎, 渡邊 義将, 尾前 豪, 藤島 正敏
    1998 年 35 巻 10 号 p. 730-734
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 矢坂 正弘, 横田 千晶, 峰松 一夫, 山口 武典
    1998 年 35 巻 10 号 p. 735-740
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    目的: 高齢者における心原性脳塞栓症の病態を明らかにし, 適切な治療方針を探ることを目的として, 当センターに入院した心原性脳塞栓症例の年齢別解析を試みた.
    方法: 対象は当センターに発症7日以内に入院した心原性脳塞栓症連続120例 (男性77例, 女性43例, 65±13歳) である. 対象を非老年期 (64歳以下, 57例), 老年前期 (65~74歳, 30例) および老年後期 (75歳以上, 33例) に分け, 基礎心疾患, 入院時神経脱落症候 (NIH Stroke Scale), 梗塞巣の大きさ, 抗凝血薬療法の有無と再発や出血性合併症との関連性, 入院中の合併症, 退院時ADL, 及び経過観察期間における再発や死亡の有無を調べた.
    結果: 基礎心疾患は非老年期群ではリウマチ性弁膜症 (19例, 33.3%) が, 老年後期群では非弁膜性心房細動 (NVAF) (25例, 75.8%) が最も多かった. 老年後期群における入院時のNIH Stroke Scale (median 11点) と頭部CT上の最大径が3cm以上の梗塞を有する割合 (51.5%) は, ともに他群より高かった. 急性期 (発症14日以内) 抗凝血薬療法は非老年期群と老年前期群で7割以上に行われたが, 老年後期群では57.6%と少なかった. 急性期の再発は抗凝血薬療法非施行34例中4例 (11.8%), 施行86例中2例 (2.3%) にみられ, 非施行例で多い傾向であった (Chi square test, p=0.053). 老年期の2群で急性期抗凝血薬療法中の出血が2例, 他の合併症 (感染症や肺塞栓) が14例に見られたが, 非老年期群では見られなかった. 退院時に独歩もしくは杖歩行の症例は非老年期群 (78.9%) と比較し老年期の2群 (57.1%) では少なかった (Chi square test, p<0.01). 慢性期の抗凝血薬療法は非老年期群と老年前期群では8割以上に行われたが, 老年後期群では3割弱に行われたのみであった. 全経過観察期間中の再発もしくは死亡は, 明らかに老年後期群で多かった (Log rank test, p=0.0091).
    結論: 高齢者における心原性脳塞栓症の特徴は, 基礎心疾患としてNVAFが多く, 再発や死亡率が高く予後不良である. その要因として, 発症時の神経脱落症状が重い, 梗塞巣が大きい, 入院中の合併症が多い, および急性期と慢性期における抗凝血薬療法施行率が低いことがあげられる. 従って, NVAFからの脳塞栓症の発症や再発の防止を目的とした抗凝血薬療法の適応や入院中の合併症への対策が必要と考えられた.
  • 野崎 宏幸, 野原 由美子, 瑞慶覧 涼子, 安次富 郁哉, 稲福 徹也, 秋坂 真史, 鈴木 信
    1998 年 35 巻 10 号 p. 741-747
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    女性73名, 男性22名の百歳以上の高齢者 (百寿者) 95名を対象として日常生活自立度と血清アルブミン濃度との関連について検討した. 百寿者の日常生活自立度は, 女性はランクJ (生活自立) が12名, ランクA (準寝たきり) 18名, ランクB (寝たきりではあるが座位可能) 20名, ランクC (寝たきり) 23名であった. 男性はランクJ9名, ランクA7名, 寝たきり (ランクB+ランクC) 6名であった.
    女性では自立百寿者の血清アルブミン濃度の平均±標準偏差は4.0±0.4g/dlで, 成人の基準値の下限であった. 各ランクの血清アルブミン濃度はそれぞれランクA3.7±0.4g/dl, ランクB3.5±0.3g/dl, ランクC3.4±0.4g/dlで, ランクBとランクCでは自立百寿者より血清アルブミン濃度は有意に低下していた. 男性では自立百寿者の血清アルブミン濃度は3.9±0.3g/dlと成人の基準値の下限よりやや低く, 自立度の低い寝たきり (ランクB+C) 百寿者の血清アルブミン濃度は3.1±0.3g/dlと自立百寿者より有意に低下していた.血清蛋白電気泳動によるA/G比およびアルブミン分画の検討でも, 男女共に血清アルブミン濃度とほぼ同様の成績が得られた. 血清総蛋白濃度および末梢血ヘモグロビン濃度に関しては, 自立百寿者と寝たきり百寿者との間に有意な差はなかった.
    血清アルブミン濃度は百寿者の日常生活自立度をよく反映し, 予後の推測にも役立つ可能性を持つ有用な指標であった.
  • 佐藤 恒久, 大塚 一興, 櫻井 伊三
    1998 年 35 巻 10 号 p. 748-756
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    20名の volunteers と89名の虚血性心疾患患者 (以下IHDPと略す) の platelet-rich plasma (以下PRPと略す) を用いて, 血小板凝集能の定量的測定法を検討した. 凝集惹起物質ADP (1.0μM) と epinephrine (0.1μM) 溶液を対象者のPRPに添加すると, 血小板凝集能は volunteers も IHDPも全く同様に明白に2群に別れた. そこで, 1.0μM ADP溶液添加の場合は最大凝集時間を測定して, 統計処理を行った. 0.1μM epinephrine 溶液添加の場合は, 最大凝集率を測定し, 統計処理を行った. その結果, ADPによる凝集反応では, 正常な凝集を示した症例は, volunteers 13名0.71±0.12min (mean±SD), IHDP50名0.91±0.49min, 凝集能亢進を示した症例は volunteers 7名5.34±1.18min, IHDP39名6.01±1.22min, epinephrine による凝集反応では, 正常な凝集を示した症例は volunteers 14名8.04±4.14%, IHDP52名13.74±5.75%, 凝集能亢進を示した症例では Volunteers 6名76.33±9.91%, IHDP37名77.26±13.39%であった. 以上, 正常な凝集を示した群と凝集能亢進を示した群については統計学的にすべて有意差があった (p<0.001).
    つぎに, IHDPでADP溶液による血小板凝集能亢進患者の中から15名を選び抗血小板剤 (dipyridamole, aspirin) 投与による治療効果の有無を上記の方法で測定した. 治療前には, ADP溶液添加では, 最大凝集時間 (15名) 5.98±1.24min, であったが, epinephrine 溶液添加では最大凝集率は10名: 78.90±11.60%, 5名: 20.00±3.24%の2群に分かれた. 治療後にはADP溶液添加では10名: 0.94±0.21min (正常化), 5名: 5.90±1.09min (亢進: 無効), epinephrine 溶液添加では, 10名: 14.11±5.88% (正常), 5名: 75.00±9.51% (亢進) であった. つぎに, 血小板凝集能亢進患者6名に対し種々の抗血小板剤を長期間投与し, 血小板凝集能の推移を定量的に観察し, 全例について良好な治療結果が得られた.
  • 蛍光測光法による検討
    杉山 克樹
    1998 年 35 巻 10 号 p. 757-764
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    加齢は如何に評価されるのか. 本論文は, リンパ球幼若化反応を利用して, 加齢の程度をDNAレベルで評価した報告である.
    健常者39例 (40~70歳) と Alzheimer 病患者17例 (47~74歳) を被験対象とし, 被験対象者の末梢血中のリンパ球を培養し, phytohemagglutinin P (以下PHA-P) を作用させて, 細胞増殖を誘導した. その後, 蛍光プローブ, Ethidium Bromide (以下EB) によるDNAへの intercalation 結合を利用して, 上述した細胞増殖能をこのプローブの蛍光値で評価した.
    その結果, 個体の暦年齢 (X) と蛍光値 (Y) との間には, 健常者でY=-0.0405X+7.164 (r=-0.135, P<0.05), Alzheimer 病患者では, Y=-0.121X+11.258 (r=-0.443, P<0.10) で示される有意な逆相関関係があった. また年齢構成を等しくした両群の回帰直線を比較すると, 統計学的には有意の差を認めなかったが, Alzheimer 病患者群のリンパ球幼若化能は健常者群に比べてやや低いことが示された.
  • 事象関連電位P3による検討
    須山 信夫, 小林 祥泰, 山口 修平, 岡田 和悟, 山下 一也, 足立 智英
    1998 年 35 巻 10 号 p. 765-770
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    脳の老化に及ぼす社会的環境因子の影響について事象関連電位P3を用いて検討を行った. 社会的環境の異なる老人ホーム在住健常高齢者22名 (平均年齢76.5±5.6歳, 平均HDS-R27.4±2.5点) と地域在住健常高齢者73名 (平均年齢74.1±5.4歳, 平均HDS-R28.3±2.3点) を対象とし, 事象関連電位P3は, 新奇刺激を含む聴覚オドボール課題を用いて誘発した. 結果: 高血圧などの脳卒中の危険因子については両群間に有意差を認めず, 頭部MRI所見でも潜在性脳梗塞, 白質障害に差は認めなかった. 認知機能に関してはHDS-Rでは両群間に差は認められなかった. しかし, 岡部式簡易知的尺度, Koh's Block Design Test の成績では地域在住群が45.0±7.1, 89.7±18.6, 老人ホーム群が34.7±10.0, 69.7±13.5と地域在住群が老人ホーム群に比べ有意に高かった. 事象関連電位では標的刺激, 新奇刺激においてN1は振幅, 潜時ともに両群間に差は認めなかった. P3は振幅には差を認めなかったが, 潜時は老人ホーム群で延長を認めた.
    結論: 社会的環境因子の違いにより老化が促進され認知機能の低下を招き, P3潜時の延長をもたらすことが推測された.
  • 市川 和夫, 金子 剛, 鈴木 悟, 駒津 光久, 山内 恵史, 相澤 徹, 橋爪 潔志
    1998 年 35 巻 10 号 p. 771-776
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    橋本病患者の臨床所見の年齢に伴う変化を分析する目的で, 橋本病患者を年齢および甲状腺機能別に分類し解析を行った. 高齢の橋本病患者の特徴として小さな甲状腺腫が多く, また持続性甲状腺機能低下症が多くバセドウ病が少なかった. 甲状腺がTSHまたはTSH受容体抗体で刺激されているほど未治療時の血中トリヨードチロニン (T3)/チロキシン (T4) 比 (ng/μg) が高かったが, 年齢による差はなかった. 実際の臨床において血中T3/T4比は破壊性甲状腺中毒症とバセドウ病の鑑別に有用である. 持続性甲状腺機能低下症のT4補充療法で投与T4量に対する血中T4濃度上昇の程度が高齢者ほど大きかった. しかし投与T4量に対する血中T3濃度上昇および血中TSH濃度低下の程度は年齢による差はなかった. 従って血中T3濃度上昇に対する血中TSH濃度の低下は年齢により影響されないが, 血中T4濃度上昇に対する血中TSH濃度低下の程度は高齢者では低下していた. 高齢者ではT4の代謝および脱ヨード酵素活性 (DI) (脳下垂体の type 2DIと他臓器の type 1 DI) の低下が考えられた. 高齢者の橋本病患者において血中TSHを指標とする限り投与T4量は若年者と変わらなかった.
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