日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
35 巻, 12 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 井口 昭久, 葛谷 雅文, 鈴木 祐介, 梅垣 宏行
    1998 年 35 巻 12 号 p. 867-872
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 内分泌撹乱化学物質による障害機構の考え方
    平林 容子, 井上 達
    1998 年 35 巻 12 号 p. 873-879
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    内分泌撹乱化学物質, いわゆる「環境ホルモン」の生体作用の特徴, その対象として想定されている化学物質, ならびに現時点での問題点について概説した.“内分泌ホルモン様の機能”をもつ化学物質としてのこれらの物質の生体作用の特徴は, 受容体原性の作用に性質が集約される. そこにある問題点は, まず第1に閾値問題, すなわち受容体原性の障害発症機構に起因する極微量反応性の問題, 第2に低用量問題, すなわちおそらく受容体のリダンダンシーなどの分子機構に関わると思われる, 低用量域ではっきりしない用量相関問題, 第3に受容体シグナルの伝達機構に関わる「相乗・相加効果」の問題, そして, 第4に, 胎生期の特定な時期に高い感受性を呈して後世代影響へとつながる, いわゆる「胎生期ウィンドウ」の問題である. この他, 受容体のプレイオトロピズムとも関連した, 神経系や免疫系などの高次調節系に関わる影響も, 重要な位置を占めており, 神経形成, 薬物アレルギーなどとの関連で新たな課題を構成している. 従って, 寿命や加齢との関連でこれらの物質が接点を持つ可能性は充分考えられるが, 現段階での研究成果は乏しい. この方面での取り組みの方向性などについても若干考察した.
  • 加齢と新しい危険因子
    田中 健藏
    1998 年 35 巻 12 号 p. 880-890
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 川原田 信, 佐藤 保則
    1998 年 35 巻 12 号 p. 891-897
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    目的: 近年, 剖検率の低下が著しく剖検の意義に再検討がせまられている. 当院は成人・老年病の専門病院として診療しているので当院の老年者剖検例を対象にその臨床的有用性について検討する.
    対象と方法: 対象は1986~1995年までの10年間の当院における総死亡609例のうち剖検231例 (剖検率37.9%: 男性95例, 女性136例, 平均年齢80.5歳) である. これらの症例について臨床診断と剖検診断の比較, 老年者剖検例の特徴などを検討した. 尚, 臨床診断名の分類は Merck Manual (第15版) によった.
    結果: 剖検231例のうち剖検によりその主死因を明らかにしたえたのは218例 (94.4%) であり, 残る13例 (5.6%) は主死因は明らかにしえなかった. この13例の臨床診断による主死因は呼吸器疾患6例 (肺炎5, 気管支喘息1例) と最も多かった. 主死因からみた臨床診断と病理診断との比較では両者が一致した疾患は呼吸器疾患 (肺炎など), 悪性腫瘍, 心・血管系疾患 (心筋梗塞など), 中枢神経疾患 (脳梗塞など) に多かった. 一方, 不一致の疾患は臨床診断に関係なく剖検により心・血管系疾患 (心筋梗塞, 腹部動脈瘤破裂, うっ血性心不全など), 悪性腫瘍, 感染症 (敗血症, 肺膿瘍, 横隔膜下膿瘍など), 呼吸器系疾患 (肺炎, 肺梗塞など) と診断された症例が多かった. また潜在癌, 多重癌については潜在癌28例 (12.1%), 多重癌3例 (1.3%) が剖検により発見された. 剖検の目的別検討成績では, その目的に応じ種々の病態生理を明らかにし得, 臨床への有用なフィードバックとなった.
    考察: 老年者に臨床診断を的確に行うことのむずかしさは今回の剖検成績との対比により明らかであり, 加齢に伴う全身の動脈硬化の進展, 免疫能の著しい低下にその基礎があるものと思われ, 老年者の臨床に有用な所見を得ることが出来た.
  • 荒井 敏, 粟屋 透, 青野 治朗, 三宅 良彦, 村山 正博
    1998 年 35 巻 12 号 p. 898-904
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1994年7月~1997年6月に聖マリアンナ医科大学ハートセンターにおいて primary PTCAを施行した85歳以上のAMI連続6名 (86~92歳, 平均88±3歳) を対象とし, 初期成績, 院内予後および長期予後について retrospective に検討した. (1) 85歳以上のAMI患者のうち, 16名が発症24時間以内で再灌流療法の適応があった. 緊急CAGを7名 (43.8%) に施行, うち6名 (37.5%) に primary PTCAを施行し, 例に成功した. (2) 急性期にうっ血性心不全4名 (66.7%), 心原性ショック1名 (16.7%) を認めたが院内死亡はなかった. (3) 鼠径部の巨大血腫を伴った仮性動脈瘤を1名 (16.7%) に認め, 輸血と外科的切除を要した. (4) PTCA後に全例でクレアチニンの上昇を認めたが透析が必要な症例はなかった. (5) 平均16.5カ月 (6~30カ月) の観察期間中に狭心症の再発, 死亡は認めなかった.
    85歳以上の超高齢AMIは急性期に心臓合併症を高率に認めたが, primary PTCAの成功率, 院内予後, 長期予後とも良好であったことより, 85歳以上のAMIに対しても primary PTCAの有用性が示唆された.
  • 田代 和也, 古田 昭, 大石 幸彦, 岸本 幸一, 和田 鉄郎, 長谷川 倫男
    1998 年 35 巻 12 号 p. 905-909
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    86例の初診時80歳を越えた膀胱癌患者の臨床的解析を行った. 80歳以上の患者は増加していた. 初発症状は血尿が最も多くみられたが, 排尿異常を認める症例も数多く認めた. PS1以上の全身状態に問題のあるの患者は39.6%で, 患者ひとりで通院できなかった. また, 重複癌を有したものも11.6%に認めた. 腫瘍は異型度が高く, 浸潤性で, 大きな腫瘍が多くみられた. 治療法は表在性腫瘍では経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TUR-Bt) が94.6%に施行された. 浸潤性膀胱癌ではTUR-Btが55.5%に施行され, 根治的膀胱全摘術はわずか2例 (7.4%) のみであった. 全く治療できなかったものが4例 (14.8%) あった. 表在性膀胱癌のTUR-Bt後の非再発率は1年51.7%, 3年36.5%, 5年11.4%で, 79歳以下に比べ有意に不良であった. 癌特異的生存率は86例で1年86.5%, 3年59.7%, 5年55.5%で, 79歳以下の症例に比べ有意に低かった. 80歳以上の症例は手術や麻酔, 経過観察などに多くの問題があり, 泌尿器科医の努力のみならず, 他科の医師や家族の協力の必要性が感じられた.
  • 〈第1報〉急性心筋梗塞の発症率とその背景因子の検討
    藤沢 潤一, 斉藤 重幸, 高木 覚, 田中 繁道, 島本 和明
    1998 年 35 巻 12 号 p. 910-917
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    北海道帯広市において1990年10月1日から1993年9月30日までの3年間に悉皆性を考慮した循環器疾患発症登録を行い, この登録より急性心筋梗塞の発症率とその背景因子について検討した. 3年間で登録された新規発症の急性心筋梗塞は114例で, 同時期に調査した新規発症の脳卒中との比は脳卒中発症率/心筋梗塞発症率で4.5:1であった. 心筋梗塞の年齢調整発症率は男性33.4人/年 (対人口10万人), 女性で13.7人/年 (対人口10万人), 両性で23.2人/年 (対人口10万人) であった. 発症時の平均年齢は男性60.0±11.8歳,女性71.1±9.4歳と女性で11歳高齢であり, 男性では70歳代の発症が多く, 女性では閉経後に加齢に従い増加する傾向であった. 心筋梗塞発症率を同時期に調査された本邦7地区と比較すると他地域とに差異を認めなかった.
    急性心筋梗塞発症者の背景因子を検討する目的で, 北海道の一般住民検診における成績との比較を行った.その結果, 心筋梗塞発症者では明らかに高血圧, 糖尿病罹病者が多く, 肥満, 喫煙者の頻度が多かったが, 高コレステロール血症の頻度は両者に有意な差が認められず, 飲酒者は発症者で少ない傾向にあった.
    本研究では, 加齢, 高血圧, 糖尿病, 肥満, 喫煙が心筋梗塞発症の危険因子であることが確認された. 食生活・ライフスタイルの変化に伴い, 本邦における循環器疾患の疾病構造の変化が指摘されているが, これらの危険因子の早期発見を含めた管理が急性心筋梗塞発症の予防上重要であると推察された.
  • 金子 厚, 野村 恭一, 大野 良三, 栗原 一浩, 吉田 裕, 大貫 学, 富岳 亮, 細川 武, 濱口 勝彦, 島津 邦男
    1998 年 35 巻 12 号 p. 918-923
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    リウマチ性多発筋痛症に合併した脊髄炎の1例を経験した. 症例は78歳の女性. 全身の筋痛とこわばり, 関節痛, 歩行困難を主訴に来院した. 身体所見上関節の腫脹・変形や皮膚所見は認めず, 神経学的には右下肢筋力の軽度低下, 左頸髄C4レベル以下のしびれと痛覚鈍麻, 右上下肢の腱反射亢進, 右 Babinski 徴候陽性であった. 検査成績では赤沈100mm/hr, CRP2.94mg/dlと炎症所見を認め, 抗核抗体および抗カルジオリピンIgG抗体は軽度陽性であったが, RFは陰性, CKは正常範囲であった. 頸髄MRI画像では上部頸髄にT1強調低信号, T2強調高信号の境界不明瞭な紡錘状領域, およびC1からC4にかけGd-DTPAで増強される結節状病巣を4カ所認めた. 発症年齢, 筋痛・こわばりなどの臨床症状と赤沈値はリウマチ性多発筋痛症の診断基準を満たし, 副腎皮質ステロイド薬の投与により改善をみた. 脊髄病変を合併するリウマチ性多発筋痛症はこれまでのところ報告がない. 抗カルジオリピン抗体はリウマチ性多発筋痛症にみられることがあり, 本症例の脊髄病変においても微小血栓の形成や血管炎を介して発症に関与していると考えた.
  • 中村 智実, 牧野 雅弘, 上田 祥博, 中島 健二
    1998 年 35 巻 12 号 p. 924-928
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    髄液の細胞増多と糖の著明な低下を認め, 当初, 化膿性髄膜炎や出血性脳炎との鑑別が困難であった脊髄クモ膜下出血の1例を報告した. 症例は84歳女性. 主訴は意識障害で, 神経学的に項部硬直があり, 髄液は血性であった. 胸腰髄MRIにて第1腰椎レベル付近に血腫を認め, 脊髄クモ膜下出血と診断した, 頭蓋内クモ膜下出血では軽度, 髄液糖の低下することが知られているが, 脊髄クモ膜下出血においても同様に, 髄液糖が低下することが示唆された. 髄液糖の低下がある場合, 化膿性髄膜炎や出血性脳炎との鑑別が困難となる. さらに脊髄クモ膜下出血では意識障害を伴うため, 突然の腰痛や背部痛など本症に特徴的な病歴を聴取できない場合があるので注意を要する.
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