日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
35 巻, 7 号
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  • 薬物動態学および薬力学の考え方
    山田 安彦, 伊賀 立二
    1998 年 35 巻 7 号 p. 515-520
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • その臨床における意義
    松本 昌泰, 堀 正二
    1998 年 35 巻 7 号 p. 521-529
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    生命は, その誕生以来様々な外部環境の変化に曝されながら, その変化に適応する戦略と戦術を構築してきた. 前者は個を越えた環境適応のための遺伝子変異を伴う多種多様な生命体への進化で代表されるが, 後者は有限の命を有する個のレベルでの応答現象であり通常大きな遺伝子変異は伴うことなく実践されなければならない. 1962年にショウジョウバエの熱ショック負荷時に初めて見いだされた熱ショック蛋白は, その後の研究の進展により原核生物から真核生物に至るまで見いだされるストレス蛋白として, まさに後者の遺伝子レベルでの発現調節によるストレス応答現象を担う中心的存在であることが明らかになった. なかでも画期的なことは, このストレス蛋白にはストレス負荷時のみならず正常状態においても,「分子シャペロン」という言葉で表現される重要な機能を担っていることが明らかとなったことである. シャペロン (chaperone) には介添役の意味があり, 分子シャペロンとは未成熟な合成直後の蛋白が正しく折りたたまれることを介助する機能を表わす用語として Ellis らにより提唱されたものである. すなわち, ストレス蛋白には分子シャペロンとして「蛋白質の揺りかごから墓場まで」を介添する機能があり, このような作用を通じて, 蛋白質に変異をもたらすような様々な細胞内外のストレスにも応答してその機能維持に努めているものと想定されている. 多くの疾病は, 細胞レベルでの異種蛋白や異常蛋白の生成を通じてホメオスターシスの破綻をもたらすものと考えられており, その意味でも臨床病態を細胞レベルで理解するためには, 細胞応答現象を担うストレス蛋白の動態に関する知識が必須となってきている. 本展望では, まず主なストレス蛋白の機能を解説し, 次に臨床との関わりについては, ダイナミックな細胞応答現象が見いだされその役割が注目されている脳虚血病態における研究を中心に紹介する.
  • 高齢化率25% (65歳以上) の町における疫学調査
    中島 健二, 上田 祥博, 狐野 一葉, 田中 直樹, 水野 敏樹, 牧野 雅弘, 岩本 一秀, 森 敏, 高梨 芳彰
    1998 年 35 巻 7 号 p. 530-534
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    京都府北部のK町の一般健康調査の一環として, 痴呆症の有病率を調べた. 65歳以上の在宅老人 (3,269人, 全町民の25.3%, 1994年) を対象にアンケート調査を実施した. 2,280人が神経内科医による診察に同意し, 回答を寄せた (回答率69.7%). アンケートの回答内容を分析し, (1)痴呆の疑いがある者435人, (2)痴呆の疑いがない者1,845人を得た. (1)は全員, (2)は1,845人中無作為抽出で100人を選び神経内科専門医の診察を勧めた. 痴呆の有無についてはDSM-III-Rを, アルツハイマー型老年痴呆 (SDAT) の診断にはアルツハイマー病の診断基準である NINCDS-ADRDA を便宜上用い, 血管性痴呆 (VaD) との鑑別には Hachinski Ischemic Score (HIS) を用いた.
    (1)からは106人が受診に応じ, そのうちの12人 (11.32%) が痴呆と診断された. (2)からは92人が受診し3人 (3.26%) が痴呆と診断された. したがってこの町の痴呆症患者数の推定は, (1)から435人の11.32%, 49.2人, (2)から1,845人の3.26%, 60.1人の合計109.3人となった. したがって痴呆の有病率は4.8% (109.3/2,280=0.048) と推定された. 痴呆と診断された15人のHISは7点以上が3人, 6点が1人, 2点以下が11人であった. すなわち15人中11人 (73%) が non-vascular Dementia と考えられ, その多くがSDATと推定された. 最近わが国でもSDATが増えつつあるとの報告が散見されるが, まだ圧倒的にVaDが多い. 本研究ではSDATが多いという結果が出たが, 未受診者の中にVaDが含まれていた可能性は否定できない. 高齢化が急速に進みつつあるわが国では, 高齢者, 特に痴呆症患者への支援と介護が大きな社会的, 医療経済的問題である. 適正な医療・福祉政策の立案のためにも正確なデータが必要であり, 今後も調査研究を進める予定である.
  • WST-1法による測定
    高松 範雄
    1998 年 35 巻 7 号 p. 535-542
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    WST-1法は, 細胞内の乳酸脱水素酵素などの関与する脱水素反応の活性を比色定量することを利用して, 間接的に細胞増殖能の程度を知る方法である.
    今回, このWST-1法を, 同種の比色定量法であるMTT法と比較したところ, 簡便性, 正確さ, 感度の点からWST-1法のほうが優れていることが明らかになった.
    そこで, WST-1法の使用例として, 健常者40例 (40~76歳) と Alzheimer 病患者16例 (47~74歳) を対象に, リンパ球をPHA-P刺激下で培養し, 幼若化の程度を測定した.
    その結果, 健常者群では, リンパ球幼若化能の程度を表す比色値 (Y) と年齢 (X) の間にY=-0.0085X+1.473 (r=-0.3108, p<0.05) の相関関係が成立することがわかった.
    また, Alzheimer 病患者では, 加齢とともに比色値が増大する傾向が認められた.
  • 蟹江 治郎, 河野 和彦, 山本 孝之, 赤津 裕康, 下方 浩史, 井口 昭久
    1998 年 35 巻 7 号 p. 543-547
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高度の痴呆や寝たきりの患者が中心のいわゆる老人病院において施行し管理された, 経皮内視鏡的胃瘻造設術の問題と有用性について検討した. 検討された項目は, 急性期合併症, 慢性期合併症, 施行前後の抑制処置の有無, 活動性の変化, そして経口摂取の可否である. その結果急性期, 慢性期とも合併症は稀なものではなかったが, 老人病院特有の問題はなかった. また施行前に抑制処置を行っていた症例の65.2%が抑制処置が軽減または中止し得, 55.5%の症例において活動性が改善, 胃瘻施行症例の14.0%に経口摂取が可能になるなどQOLの著明な改善が得られた. さらに経管栄養チューブ自己抜去の機会の減少や, 交換手技が容易になるなど, 管理面でも改善が得られた. よって, 老人病院においても必要な管理を行えば, 胃瘻の施行および管理は十分可能であり, 慢性期における管理の簡便化, そして患者のQOLの改善を考えれば, その実施はきわめて有用な行為である.
  • 武田 純枝, 野路 宏安, 広瀬 信義, 新井 康通, 山村 憲, 清水 健一郎, 本間 聡起, 海老原 良典, 高山 美智代
    1998 年 35 巻 7 号 p. 548-558
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    急速に進む高齢化社会をむかえいわゆる超高齢者も急増しておりこの年代の介護が重要な問題となっている. 超高齢者の実態調査の一環として超高齢者の食事摂取状況を検討した. まず1995年百寿者と米寿者の食事摂取状況を同年の対照群 (平成6年度国民栄養調査成績) と比較した. ついで年代変化を見る目的で過去に報告された1981年百寿者との比較も行った.
    1995年百寿者と米寿群における栄養摂取量は対照群の60%, 75%と低下した. しかし栄養良好な百寿者の栄養摂取量は米寿群と同等であった. 日常生活活動度が良好な百寿者では栄養摂取量が多く, また認知機能良好な百寿者でも栄養摂取量が多かった. 食品群摂取を百寿者と対照群で比較すると乳類, 菓子砂糖類, 果実類の摂取は対照群と同等であったが, 穀類, 肉類, 魚類, 油脂類は低下していた. 同様の傾向は1981年百寿者でも認められ, 超高齢者では柔らかく甘い食品が好まれることがうかがわれた. 単位体重あたりの栄養摂取量は一般栄養所要量を越えており, 栄養良好な百寿者では不良群に比較して多かった. 1981年と1995年百寿者での栄養量摂取を比較すると1995年群で多かった. 食品群摂取では穀類, 豆類, 卵類, 藻類は1995年群で少なかったが, 他の食品群は多く摂取していた. これは年代による食習慣の違いによるものと考えられた.
  • 和泉 唯信, 阪口 勝彦, 良河 光一, 三木 基子, 伏見 尚子, 亀山 正邦
    1998 年 35 巻 7 号 p. 559-565
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は79歳, 女性. 既往歴に高血圧, 無症候性の胆石症および便秘症がある. 嘔気, 腹痛, 血便のため平成8年7月19日近医に入院した. 便培養にて腸管出血性大腸菌 enterohemorrhagic Escherichia coli O157: H7が検出された. 抗生物質投与後血便は改善したが, 腹部膨満感が出現した. また, 末梢血でヘモグロビンが10.6g/dl, 血小板が2.8万/μlと低下してきたため溶血性尿毒症症候群 (HUS: hemolytic uremic syndrome) が疑われ, 7月23日当院に転院した. 治療は, 血漿交換療法, 抗生物質, γ-グロブリン大量療法, ハプトグロビン補充, 抗凝固療法を中心に行った. 血漿交換は合計6回施行した. 貧血および血小板減少は徐々に改善しはじめ, 約2週間後には, ヘモグロビン値, 血小板数, 血清LDHは正常化しHUSは離脱した. 血清クレアチニンは全経過を通じて異常を示さなかった. 腸管運動の低下は長期間遷延した. 8月23日に急性胆嚢炎を認めたため, 経皮経肝胆嚢ドレナージ (PTGBD: percutaneous transhepatic gall bladder drainage) を施行した. 10月13日にも再増悪を認めたため, 抗生物質点滴により状態の改善を待ち11月12日に全身麻酔下で開腹胆嚢摘出術を施行した. 手術所見では, 胆嚢壁の肥厚があり粘膜に多数のリンパ球をびまん性に認め, 慢性胆嚢炎を示唆した. 術後の経過は順調で12月15日に退院した. O157感染および続発したHUSにより腸管運動が著明に低下したことが, 胆汁排泄低下を惹起し急性胆嚢炎を起こした可能性がある. 消化器系に既往症の多い老年者では, O157感染およびそれに続発するHUSとともにその既往症の管理に注意が必要である.
  • 服部 英幸, 松本 正幸, 土屋 博, 岩井 邦充, 宮内 英二, 高崎 幹裕, 宗平 純一, 河西 研一
    1998 年 35 巻 7 号 p. 566-570
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    77歳女性. 主訴: 物忘れ. 2年前より次第に痴呆様症状が出現. 初診時, もうろう状態を呈していたが, 改訂長谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R) が12点であることと血糖値34mg/dlと低値である以外著変なし. 頭部MRIでは両側前頭葉白質および基底核に小梗塞巣散在. 入院後ブドウ糖の点滴を行ない血糖値の改善を認めたが痴呆様症状は改善せず, 管理困難のため退院となった. 退院後も痴呆様症状および不随意運動を認めたが空腹時とは限らなかった. 半年後再入院. 内分泌検査でインスリン・血糖比が0.3以上と高値を示し, 腹部エコーで膵尾部に1cm大の腫瘤を認めた. 再入院2カ月後に膵尾部切除術施行. 腫瘤には抗インスリン抗体で強陽性を示す腫瘍細胞の増殖を認め, インスリノーマと診断された. 術後20日後でも脳波に徐波混入がめだった. 1カ月後より精神症状の改善を認め, 40日後にHDS-R27点と正常範囲に復した. 5カ月後の脳波では徐波が著しく減少した. この症例で認められた痴呆様症状は Wieck の通過症候群と考えられた. 通過症候群は意識障害の回復あるいは増悪期に一過性に認められ, インスリノーマを含め, 高齢者の身体疾患に伴って出現することがあり, 痴呆に類似した症状を示すが治療可能である. 本症例はインスリノーマによる痴呆様症状が著明改善した1例と考えられる.
  • 吉田 英史, 井上 達秀, 袴田 康弘, 為清 博道, 榎本 哲也, 越村 修, 佐古 伊康
    1998 年 35 巻 7 号 p. 571-576
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は79歳女性. 橋本病と慢性関節リウマチ (以下RAと略す) の既往がある. 78歳時に初めて糖尿病を指摘され, グリベンクラミドとボグリボースで治療を受け, いったん良好な血糖コントロールとなったが, 16カ月後に血糖が再上昇し始めた. 抗 glutamic acid decarboxylase 抗体 (以下抗GAD抗体と略す) は16,400U/mlと強陽性. 抗ランゲルハンス島抗体, 抗インスリン抗体は陰性. 1日尿中CRPは22.5μgと低下しており, グルカゴン負荷試験ではインスリンは無反応であることなどから, slowly progressive IDDM (以下SPIDDMと略す) と診断した. 人工膵島で測定した糖取込率は9.5mg/kg/min. でインスリン感受性は良好. 1日20単位のインスリン治療で血糖コントロールは良好となった.
    橋本病はT4補充療法中で, 抗サイログロブリン抗体 (以下抗TG抗体と略す) 46.9U/ml, 抗サイロイドペルオキシダーゼ抗体 (以下抗TPO抗体と略す) 81.5U/mlと自己抗体は高値. RAは, リウマチ因子127.7IU/L, 抗核抗体80倍, 抗DNA抗体80倍. HLA typing では, DR9, A24, B51などを認めた. 文献では本邦における高齢者のSPIDDMの報告例はこれまでに5例あり, うち2例に甲状腺疾患の合併, ほか1例にRAの合併がみられるが, 甲状腺疾患とRAの合併例はなく, また後期高齢者での発症例は初めてである. 今後高齢者でも自己免疫疾患を合併する糖尿病については, SPIDDMの可能性について考慮すべきである.
  • 第27回日本老年医学会関東甲信越地方会
    1998 年 35 巻 7 号 p. 577-584
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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