百寿者のホルター心電図検査から得られた心拍日内変動解析を通して, 超高齢者における概日リズムを抽出し, 検討した. 対象は百寿者50名と比較対照群50名 (65歳未満の人間ドッグ受診者, 平均年齢41±11歳) である. 24時間RR間隔時系列を, 24, 12, 8時間の3周期からなる余弦関数の和に最小二乗近似し, 各周期のパワーと位相を比較した. 周期パワー (周期の振幅の二乗の相対比) は調和解析のあてはめ具合で重み付けした. 次いで3つの周期パワーを変数として全対象をクラスター分析 (K-means 法) し, 各クラスターの発現頻度を比較した.
1) 百寿者では24時間周期パワーは有意に小さかった.
2) 百寿者では circadian acrophase (心拍数が低値を示す時刻) は, 通常みられる夜間睡眠中以外に位置する頻度が多い傾向にあった.
3) クラスター分析の結果, 心拍日内変動は24時間周期優位型58例, 24時間+12時間周期型15例, 周期パワー低値型13例, 24時間+8時間周期型および12時間周期優位型各7例, の5つに分類しえた.
4) 24時間周期優位型と24時間+12時間周期型を併せた, 24時間周期を主たる周期とする型は対象全体の約7割にみられた. これらは心拍日内変動において概日リズムの表現が保たれている例とみなせた.
5) 各クラスターの発現頻度は百寿者と対照群で有意に異なった. 百寿者では24時間周期を主たる周期とする型は有意に少なく, 24時間+8時間周期型, 周期パワー低値型が多くみられる傾向にあった.
以上より, 超高齢者では24時間周期パワーの減弱と8時間周期パワーの強調, 24時間周期リズムの位相のズレ, に代表される概日リズムの変容が多くみられるようになることが示唆された.
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