日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
36 巻, 5 号
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  • 池上 直己, 池田 俊也
    1999 年 36 巻 5 号 p. 299-307
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 靖史
    1999 年 36 巻 5 号 p. 308-316
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    血管新生とは既存の血管から新しい血管ネットワークが形成される現象であり, 成熟個体においては, 通常, 子宮内膜, 卵胞, 創傷治癒など限られた時期・部位でしか観察されない. ところが, 固型腫瘍の発育と遠隔転移, 糖尿病性網膜症をはじめとする眼科疾患, 関節リウマチをはじめとする炎症性疾患, 粥状動脈硬化, 尋常性乾癬などにおいて血管新生が惹起され, それぞれの病態の進展と密接に関連する. 他方, 血管新生は, 閉塞性動脈硬化症や狭心症・心筋梗塞などにおいて, 虚血を解除するために重要である.
    血管新生の発生する細小血管は, 血管内皮細胞とその周囲を取り囲むペリサイトの2種類の細胞によって構築されており, ペリサイトが取り囲むことによって血管は安定化している. 血管新生は, まずペリサイトが内皮細胞から離解することで開始する. 次ぎに内皮細胞は種々のプロテアーゼを産生して血管基底膜やその周囲の細胞外マトリックスを消化し, 刺激の方向へと遊走・増殖管腔構造物を形成する. 最後に, いったん離解したペリサイトも内皮細胞に続いて遊走・増殖し, 内皮細胞からなる管腔構造物の周囲を取り囲んで成熟した血管が構築される.
    血管新生は抑制因子と促進因子のバランスによって制御されており, 促進因子の作用が抑制因子を凌駕したときにはじめて開始する. また, 促進因子といっても単一ではなく, 作用の異なる複数の因子が共同的に作用するものと考えられている. 最近の研究から, 血管内皮細胞に特異的に作用するVEGFファミリーおよびアンジオポイエチンファミリーの重要性が指摘されている.
  • 細井 孝之
    1999 年 36 巻 5 号 p. 317-322
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 高崎 優, 鶴見 信男, 原田 充由, 六郷 則仁, 新井 久之, 勝沼 英宇, 海老原 善郎, 若杉 恵介
    1999 年 36 巻 5 号 p. 323-327
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者の貧血を特徴づけている重要な背景になっているものに加齢に伴う造血機能の低下がある. 造血能に関与する要素としては, 造血組織の分布の変化, 造血幹細胞の変化, 造血微小環境の変化等が挙げられる. 今回は, 骨髄の加齢による変化をみる目的で, 骨髄の脂肪組織面積, 有核細胞数, 細胞密度を測定し, 更にこの変化への重要な鍵を握っていると考えられている骨髄主幹動脈の硬化性変化に伴う血管内腔面積の変化を年代別に観測した. その結果, 何れも加齢に伴って有意な変化が認められた. 次に, 高齢者に高頻度にみられる2次性貧血の中で慢性炎症に伴う貧血として知られているACDの症例について, 炎症性サイトカイン (IL-1, IL-6, TNFα), ラクトフェリン及びトランスフェリンレセプターの定量を行った結果について述べた.
  • 隆 孝太郎, 生沼 利倫, 山田 勉
    1999 年 36 巻 5 号 p. 328-334
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者剖検例大動脈には粥状動脈硬化巣の中央部が明瞭に陥凹する動脈硬化性病変 (以下, 陥凹性病変) が存在する. これらのうち非融合性の陥凹性病変のあるものは動脈硬化巣退縮の一形態像であることを明らかにしてきた. この陥凹性病変の中央は類円形に明瞭に陥凹し, その周囲堤との移行は平滑で, 陥凹性病変の表層全体は内皮細胞により被覆されている形態学的特徴を有している. また, 家兎の動脈硬化退縮モデルでも, 高齢者剖検例に認められたと同様の形態を呈する陥凹性病変の再現を認めた. この陥凹性病変の成因を明らかにするために, 家兎大動脈退縮モデルにおける陥凹性病変の構成細胞についてアポトーシスや細胞増殖能を検索し, 陥凹性病変形成の機序との関連について検討した. その結果, 家兎の陥凹性病変におけるアポトーシス発現率は対照群動脈硬化性病変よりも高値であり, 陥凹性病変の中央の陥凹部は陥凹性病変の周堤部よりも高値であった. 対照群動脈硬化性病変にはKi-67陽性細胞発現をみたが, 陥凹性病変ではki-67陽性細胞は認められなかった. 以上により, 家兎退縮モデルにおける大動脈の陥凹性病変の出現はアポトーシスと関連していることが示された.
  • 柳川 清尊, 武田 弘志, 松宮 輝彦, 高崎 優
    1999 年 36 巻 5 号 p. 335-341
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 老化のメカニズムを考究する一環として, ラットの加齢および若齢グループの血漿および赤血球膜内 tocopherol (Toc) の酸化-還元動態を比較検討し, 加齢に伴う赤血球膜内α-tocopherolquinone (α-TocQ)/α-Toc 値の変動とその意義について考究した. Sprageu-Dawley 系雄性ラットの加齢 (66週齢) および若齢 (10週齢) グループの全血から抗酸化剤の存在下にて常法に従い血漿を分離した. また, 赤血球膜は Dodge の方法に従い分離しエタノール, ヘキサン抽出を行い測定用サンプルを作製した. 我々が開発した酸化-還元検出モードを導入した多重クーロメトリー高速液体クロマトグラフィー (HPLC) システムにより Toc 同族体 (α-, β-, γ-, δ-Toc) およびα-TocQ濃度を高感度に同時測定した.このシステムでは, 回路を閉鎖系にし, 測定中は常時窒素を送気した. 測定化合物の分離には逆相カラムC18を用い, 4つのクーロメトリー作用電極を直列に連結し, 電気化学検出器にて検出した. 移動相は40mM過塩素酸ナトリウム (NaClO4) を含む96%メタノール溶液を用い, 流速は1ml/分で測定した. 測定には約8分間を要し, かつ測定限界は50~100pgであった. 加齢グループは, 若齢グループに比較して血漿 total およびα-Toc 濃度は増加傾向であったが, β+γ-, δ-Toc およびα-TocQ濃度は減少傾向であった. 一方, 赤血球膜内 total, α-, β+γ-, δ-Toc およびα-TocQ濃度はすべて減少もしくは減少傾向であった. また, 赤血球膜内α-TocQ/α-Toc 値は, 加齢グループにおいて低値を示す傾向にあった. 以上の成績から, 加齢に伴いToc 同族体の血漿から赤血球膜への移行が減少すると共に, 赤血球膜内におけるα-Toc の利用率の低下が生じることが明らかになった. このα-Toc の関与する抗酸化機能低下が, 膜脂質過酸化の進行および酸化的ストレスに関連する老化のメカニズムに一部関与する可能性が推察された.
  • 脳心血管疾患および悪性疾患の発症・死亡について
    荻原 俊男, 森本 茂人, 中橋 毅, 日和田 邦男, 松岡 博昭, 松本 正幸, 島本 和明, 大内 尉義, 阿部 功, 三上 洋, 石光 ...
    1999 年 36 巻 5 号 p. 342-352
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者高血圧例に対する降圧薬治療において, 本邦では欧米に比べCa拮抗薬やACE阻害薬の使用頻度は高いが, 我が国においてこれらの降圧薬による治療例の長期予後については十分に明らかにされていない. 長寿科学総合研究事業「老年者の高血圧治療ガイドライン作成に関する研究」班による共同研究として, 60歳以上の降圧薬治療下の老年者高血圧例700例の3年間にわたる予後追跡調査を実施した. 観察期間中に脱落した58例を除く642例におけるジヒドロピリジン系Ca拮抗薬, β遮断薬, ACE阻害薬, 利尿薬, ジルチアゼム, α1遮断薬はそれぞれ全体の71.3%, 30.4%, 26.2%, 14.0%, 8.6%, 6.4%に投与されていた. これら642例において54例の新規心脳血管疾患発症および15例の同死亡を認め (発症率・死亡率は27.6例・7.81例/千人・年), このうち脳血管事故および心事故の発症率・死亡率はそれぞれ15.1・3.6例/千人・年および10.4・4.2例/千人・年であり, 主にβ遮断薬や利尿薬が用いられた過去の欧米の大規模試験とほぼ同等あるいはこれより低い結果であった. また心脳血管疾患の発症は男性, 高齢, 拡張期血圧高値, および既存心血管合併症を有する例で高率であり, 旧タイプの血管拡張薬あるいは中枢作用性交感神経抑制薬使用例で高率であった. また22例の新規悪性疾患発症 (うち死亡7例) を認めたが, 使用降圧薬の有意な関与は認められなかった. これらの結果はCa拮抗薬を中心とする我国の老年者高血圧に対する薬物療法に対して否定的な見解を与えるものではなかった.
  • 無症候性脳梗塞の関与
    山口 喜移, 小笠原 正彦, 堤 孝一, 平田 幸一, 片山 宗一
    1999 年 36 巻 5 号 p. 353-357
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    無症候性脳梗塞 (SCI: silent cerebral infarction) が核上性の構音障害 (DA)・嚥下障害 (DP) の発症に及ぼす潜在的な影響について解析した報告は少ない. われわれは, SCIの存在が核上性のDA・DPの発症に関与するかどうかについて多発性脳梗塞患者のMRI画像の詳細な分析により検討した. 初回発作で持続性DA+DPを発症した14例 (DA+DP群), 持続性DAのみを呈した9例 (DA群) についてMRIを天幕上・下にわたり検討した. 信号強度変化, 症状出現側から, DA+DP出現誘因病巣が判明し得たのは6例であり, 対側のSCIと病巣間を結んで, 左右皮質枝・線条体・橋病変のうち3カ所関与が4例 (67%) に認められた (DA群: 40%). このうち, SCIの存在が核上性のDA・DPの発症に一次的な影響を及ぼしていると思われる症例が各群各1例認められ, このような症例では, SCIを積極的に治療する必要性があるものと思われた.
  • 老人性痴呆疾患センターでの追跡調査から
    植木 昭紀, 真城 英孝, 中島 貴也, 三和 千徳, 守田 嘉男
    1999 年 36 巻 5 号 p. 358-364
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    兵庫県老人性痴呆疾患センターで平成2年2月から平成5年2月までに鑑別診断を受けた65歳以降発病のアルツハイマー型老年痴呆126名, 脳血管性痴呆129名を対象に平成10年1月に生命予後について調査したところ, 鑑別診断から5年後にはアルツハイマー型老年痴呆62名, 脳血管性痴呆71名が死亡していた. それらの死亡患者について鑑別診断時の精神的, 身体的機能状態を示す指標の中で生命予後に関連する要因を検討した. 5年後の死亡率はアルツハイマー型老年痴呆と脳血管性痴呆の間に有意差はみられなかった. また平均発病年齢, 鑑別診断時の平均年齢にも有意差はみられなかった. しかし脳血管性痴呆はアルツハイマー型老年痴呆に較べて平均死亡年齢が低く, 発病から死亡までの平均期間, 75%生存率を示す発病からの期間が有意に短かった. 死因としてアルツハイマー型老年痴呆では肺炎が最も多く, 老衰, 心疾患の順であった. 脳血管性痴呆では心疾患が最も多く, 肺炎, 脳血管疾患の順であった. アルツハイマー型老年痴呆では痴呆の重症度, 知的機能障害, 大脳皮質萎縮のそれぞれと, 脳血管性痴呆では身体合併症, 運動機能障害, 低蛋白血症のそれぞれと生命予後に関連性を認めた. アルツハイマー型老年痴呆では脳の進行性の変性過程に伴う痴呆の進行が死亡と関わっているのに対して, 脳血管性痴呆では心血管系をはじめとした様々な身体合併症が生命予後に影響を与えている可能性があると考えられた.
  • 揖場 和子, 川崎 勲, 山本 秀樹, 魚井 孝悦, 木下 迪男
    1999 年 36 巻 5 号 p. 365-368
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    銅を含まない濃厚流動食を経鼻にて数年間投与され血清銅の著減を示した三症例のうち二症例が白血球減少を合併した. 銅を豊富に含む流動食に変更後, 血清銅は正常範囲に上昇し, 白血球数は正常化した. その結果, 白血球減少が銅の欠乏による可能性が高いと考えられた. 経口摂取不可の寝たきり症例はチューブによる強制的な栄養に依存する. 管理栄養下ではカロリーだけでなく, 銅をはじめとする微量元素の内容にも配慮することが重要である.
  • 山口 寛, 大庭 建三, 矢野 誠, 岡崎 恭次, 猪狩 吉雅, 鯉渕 仁, 佐藤 周三, 鈴木 達也, 中野 博司, 妻鳥 昌平
    1999 年 36 巻 5 号 p. 369-372
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 女性. 67歳時に糖尿病および肝嚢胞を指摘される. 69歳時, 胆石症と急性胆嚢炎にて加療, この時の肝嚢胞は径6cmであった. 平成9年12月11日, 発熱および右季肋部痛にて入院, 急性胆嚢炎の診断で抗生剤投与を受け1週間で軽快退院. 平成10年1月13日, 精査目的に当科入院. 右季肋部に表面平滑, 弾性硬の肝を3横指触知, 同部に圧痛を認め, CRPおよびALP, γ-GTP, LAPの軽度の高値を認めた. 入院時より微熱が持続していたが, 1月26日白血球増多とともにGPT 45IU/l, ALP 1399IU/l, γ-GTP 333IU/l, LAP 249IU/lと上昇し, CTで肝嚢胞壁にリング状濃染を認め感染性肝嚢胞と診断した. セフォゾプランの投与にて諸所見は改善し, 2月16日退院となった. 逆行性胆管造影では嚢胞と胆管の交通は認めなかった. 6月30日のCTおよびエコー所見で肝嚢胞は径1cm程度に縮小し, 腹部の肝腫大所見も消失していた, 感染性肝嚢胞が外科的ドレナージなしに抗生剤投与のみで改善ならびに嚢胞の著明な縮小を認めた報告はない.
  • 林 信太郎, 岡田 豊博, 堤 久, 熊川 寿郎, 森 眞由美
    1999 年 36 巻 5 号 p. 373-376
    発行日: 1999/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性. 1991年頃より膝関節痛が出現しNSAIDsが投与された. 同時期に軽い腎障害を指摘された. 1993年に貧血 (Hb 9g/dl台) を指摘された. 1996年7月に下腿の浮腫と息切れを主訴に当院に受診し, 貧血の進行 (Hb 6.9g/dl) と腎障害 (Cr 1.5mg/dl) を認め入院となった. 貧血の主因として骨髄異形成症候群 (以下MDS) が, 腎障害の精査で行った腎生検でIgA腎症が確認された. また10月下旬には両側手, 膝関節に関節炎が出現した. このためプレドニン20mg/日を開始したところ, すみやかに関節炎は消失し, 貧血と腎機能にも改善傾向がみられた.
    本例は経過中にMDS, 腎障害, 関節炎と多彩な臨床像を呈したが特にMDSと成因の一つに骨髄異常を指摘されているIgA腎症の合併例はこれまでになく, 本報告が一例目と思われる.
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