日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
37 巻, 10 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 鷲尾 昌一, 藤島 正敏
    2000 年 37 巻 10 号 p. 759-762
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    メチシリン耐性黄色ぶどう球菌 (MRSA) は代表的な日和見感染の病原菌であるが, 有効かつ安全な抗生剤がほとんどないため, 医学的にも社会的にも大きな問題となっている. 特に多くの易感染者を抱える老人病院や老人ホームではMRSA感染を防ぐことは緊急の課題である. 日常生活動作 (ADL) の障害や低アルブミン血症, 抗生剤の使用 (第三世代のセフェム系抗生物質の使用や多剤の使用) はMRSA感染の関連要因である. ADL障害を持ち, 栄養状態の悪い高齢者を介護する場合, 介護者は交差感染を起こさないように, 十分な交差感染対策をとる必要がある. また, 抗生剤の使用にあたっては最も効果が期待できる抗菌スペクトラムの狭い抗生剤を短期間投与し, 予防的投与などの不要な抗生剤の投与は避けるべきである. 抗生剤の使用に関するガイドラインの策定が望まれる. その一方で, MRSA感染の脅威があまりに強調されるあまり, MRSAの保菌者が, 医療・福祉サービスにおいて不当に差別されている. 医療・福祉関係者がMRSAの保菌者に対する正しい知識を持つための教育が必要である.
  • 柴田 護, 岡野 栄之
    2000 年 37 巻 10 号 p. 763-770
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    神経幹細胞は自己複製能とニューロン・アストロサイト・オリゴデンドロサイトへの分化能を併せ持つ細胞である. この性質から, 脳卒中や神経変性疾患で失われた細胞を補充して, 治療に役立てられるのではないかと考えられている. 成体の中枢神経系でも海馬や嗅球などの特定の部位ではニューロンの新生が存続し, 成体にも神経幹細胞が存在することが明らかになった. 主に齧歯類を用いて, 胎児あるいは成体脳から得た神経幹細胞を成体脳に移植する研究が精力的に行われている. 最近ではヒトの胎児から得た神経幹細胞をクローン化したり, 手術で摘出された脳組織から神経幹細胞を同定することに成功し, ヒトの神経幹細胞についての研究もめざましい発展を遂げている. また, 成体中枢神経系では軸索損傷が起きても軸索の再伸展は抑制される. その機序は, 長い間不明であったが最近になり Nogo と呼ばれるタンパクが軸索伸展抑制因子として重要な働きをしていることが明らかになった. このような因子の作用を抑制できれば, 脊髄損傷などで起きた軸索損傷の新規の治療法開発も可能になると考えられる. このように, 神経細胞再生をターゲットにした研究は着実に進歩している. 本稿では, その現状と問題点について概説したい.
  • 柳沢 信夫, 東儀 英夫
    2000 年 37 巻 10 号 p. 771
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 森 悦朗
    2000 年 37 巻 10 号 p. 772-776
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    レビー小体を伴う痴呆 (Dementia with Lewy bodies, DLB) は, 変性性痴呆の中でアルツハイマー病に次いで多い疾患であり, DLBという包括的疾患名と臨床診断基準が提唱されてから急速に認知されるようになった. DLBは臨床的に, 病理学的に, また遺伝子的にアルツハイマー病およびパーキンソン病と重なる部分があるが, DLBは脳幹と大脳皮質におけるレビー小体の存在が必須な特徴とした疾患として理解することができる. 臨床的には, 認知障害の大きな変動, 具体的な反復する幻視, パーキンソニズムを伴う早期には重篤な記憶障害を欠く進行性の痴呆が特徴である. ここでは我々自身の一連の研究成果を中心に最近の臨床的および研究的知見を総説し, DLBの臨床的認知を進めたい. DLBの診断基準で診断を支持する所見とされている転倒や抗精神病薬に対する過敏性などの他に, 我々の研究から比較的強い視覚構成障害や視覚認知障害, 重複現象, 誤認妄想, 非失語性呼称障害を伴う一過性の意識の変化が多いことが分かった. また神経画像検査では海馬の萎縮が軽いこと, 後頭葉でブドウ糖代謝や脳循環が低下していることが特徴的であった. DLBの正しい診断は, 適切な治療を行うため, 重篤な抗精導病薬の副作用を避けるため, および正確に予後を判断するために重要である. ここにあげたいくつかの所見は正しい診断を行うために役立つことと考えられる. 治療的な観点からはコリンエステラーゼ阻害剤が行動異常に対していくぶん有効なように思われるが, 診断法および治療法の確立のためにはさらに精力的な研究を要する.
  • パーキンソン病を中心として
    丸山 哲弘
    2000 年 37 巻 10 号 p. 777-779
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 北本 哲之
    2000 年 37 巻 10 号 p. 780-781
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 緒方 絢, 山口 武典, 脇田 政之, 多賀谷 昌史
    2000 年 37 巻 10 号 p. 782-784
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    脳血管性痴呆の代表的病型である Binswanger 病の病変の原因となる small-vessel disease の種々のステージにおける臨床および病理像について我々が検索した成果を示した. Small-vessel disease の初期病変と考えられる初発ラクナおよび皮質下白質障害を示す高血圧患者の認知機能を始めに示した. 次に, 剖検例において, small-vessel disease の痴呆発症への関与, 最後に Binswanger 病における他の型の脳血管障害の合併, 特にアテローム血栓性の大脳皮質梗塞についてのべた. ここに示した臨床および病理所見は, 高血圧を始めとする危険因子の脳血管性痴呆発症への深刻な関与を示すものである.
  • 鎌田 ケイ子, 村井 淳志
    2000 年 37 巻 10 号 p. 785
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • ケアプランの取り組み
    阿蘇 貴久子
    2000 年 37 巻 10 号 p. 786-789
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 浜砂 貴美子
    2000 年 37 巻 10 号 p. 790-792
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 櫻井 紀子
    2000 年 37 巻 10 号 p. 793-795
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 田中 友二
    2000 年 37 巻 10 号 p. 796-798
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 老年者の Basic ADLと家族負担度との関連
    服部 明徳, 大内 綾子, 渋谷 清子, 佐藤 和子, 中原 賢一, 西永 正典, 亀田 典佳, 土持 英嗣, 深山 牧子, 松下 哲, 折 ...
    2000 年 37 巻 10 号 p. 799-804
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の介護における家族の負担度を重くしている要因を解明するために, 介護負担度をバーンアウト・スケールを用いた数値化により検討した. 対象は当院総合内科に入院した65歳以上の患者のうち, 家族が何らかの介護をしていた73例 (男性31例, 女性42例, 平均年齢82.7±6.9歳) で, 主たる介護者にアンケートによって介護の負担度について調査した. このアンケートには Pines のバーンアウト質問項目が含まれ, 計算式からバーンアウト・スコアを算出し, 家族の介護負担感との関連や患者の状態との関連について検討した. 家族の自己申告した介護負担感とバーンアウト・スコアとの間には有意の相関を認めた (r=-0.517; p<0.001). 患者のBADLとバーンアウト・スコアとの間にはr=-0.307 (p=0.01) の相関を認めた. BADLのうち洗顔, 排泄, 食事, 座位, 移動, 階段の介助の有無とバーンアウト・スコアとの間に有意の関連を認めたが, 入浴や更衣の介助の有無とは関連がなかった. バーンアウト・スコアを説明変数とする重回帰解析ではBADLのうち食事介助と座位介助が独立した因子でバーンアウト・スコアの約3割を説明し得た.
    老年者介護の家族の負担度を検討するのにバーンアウト・スケールは非常に有用であり, 介護保険サービスの導入によってバーンアウト・スコアがどう変化するか今後検討することが必要と考える.
  • 扇谷 茂樹, 藤田 拓男
    2000 年 37 巻 10 号 p. 805-810
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    従来, カルシウムの過量摂取は尿中カルシウム排泄増加をきたすため, 腎臓結石形成の危険因子のひとつであると, 漠然と考えられてきた. しかし, 近年, カルシウム摂取が結石の発生を抑制するという一見逆説的な報告がみられる. この機序の詳細は不明であるが, カルシウムが消化管内で蓚酸と結合して蓚酸の吸収を阻害している可能性が考えられている. このため, カルシウム摂取の蓚酸代謝に与える影響と結石形成抑制作用との関係を明らかにする必要があると考えた. 9名の健常者 (男性4名, 女性5名, 23~49歳) を対象として, クロスオーバー法により3日間連続で夕食直後に800mgのカルシウムを健康食品である活性吸収型海草カルシウム (AAACa), および炭酸カルシウム (CaCO3), プラセボを経口的に服用させ, 翌日早朝安静第一尿を3日間連続採取した. これらのカルシウムと蓚酸, 浸透圧, クレアチニン濃度を測定し, 更に鏡検で尿沈渣中蓚酸カルシウム (CaOx) 結晶の析出状態を観察した. その結果, 800mgのカルシウムの経口摂取後, 翌日の早朝第一尿中のカルシウム排泄は, コントロールに比べてAAACaおよびCaCO3共に増加した. AAACa服用群の尿中蓚酸値はコントロール, CaCO3に較べ有意ではないものの低値を示し, また, CaCO3とコントロールでは, 尿中蓚酸排泄量に差は認められなかった. CaCO3服用では, コントロールに比べて尿沈渣中蓚酸カルシウム結晶析出率が高くなる傾向が認められたが, 有意差はなかった. 一方, AAACaではこのような傾向は認められない. AAACaは溶液中でのイオン化率が高いため, ヒト腸管から吸収されやすいと共に, 腸管腔内で蓚酸と結合して, 吸収され難い沈殿を形成すると考えられる. すなわち, AAACaは他のカルシウム素材よりも更に腎臓結石の形成を誘発するリスクが低いのみならず, 却ってこれを予防しうる可能性が認められた.
  • 岩本 俊彦, 阿美 宗伯, 清水 武志, 田中 由利子, 西村 恒夫, 高崎 優
    2000 年 37 巻 10 号 p. 811-818
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    動脈硬化性病変と血中リポ蛋白(a) [Lp(a)] 濃度との関係を加齢という観点から明らかにする目的で, 60歳以上の受診者354例 (男167例) を年齢毎に3群, すなわち60歳台 (I群: n=73), 70歳台 (II群: n=144), 80歳以上 (III群: n=137) に分類し, 血中Lp (a) 濃度, 危険因子および血管合併症を横断的に検討した. 各臓器における血管合併症の評価は頭部CT所見, 頸動脈超音波断層 (US) 所見, 心電図所見, ankle pressure index (API) 計測値に基づいた. このうち頭部CT所見は大・小血管病変型および多発性病巣型に, 頸動脈US所見は病変 (plaque, 閉塞) の有無, plaque の形態および輝度より細分類した. I群の背景因子には男性の脳卒中例が多く, 糖尿病, 高脂血症, 喫煙, 大血管病変型の頻度が高かった点で選択 bias がみられた. しかし, 血清Lp(a) 濃度に群間差はなく, US所見でも頸動脈病変, 特に両側性病変はIII群に多かった. そのほとんどは plaque で, 高さも大きく, API値も低かったが, 心筋虚血の頻度に差はみられなかった. 因子解析で頸動脈病変は加齢に関連し, さらに年齢毎に頸動脈病変に影響する危険因子をみると, I群では特定されず, II群で高血圧, III群でLp(a) 値が採択された. 一方, Lp(a) 値はADL低下, 高脂血症, 頸動脈病変, 特に低輝度 plaque に関連し, 平均Lp(a) 値はいずれも高かった. 以上より, 選択 bias がみられたが, 加齢とともに頸動脈および下肢動脈病変は進展していた. 特に, 頸動脈病変の進展には年齢毎に危険因子の関与する度合は異なり, Lp(a) 濃度は80歳以降でより強く関与していた. Lp(a) は一生を通じて血管壁に作用し, Lp(a) 高値の暴露時間の延長, すなわち加齢によって頸動脈病変の中でも低輝度 plaque の形成を促進する可能性が示唆された. また, Lp(a) 高値は若年では他の多くの危険因子と相乗的に動脈硬化を促進すると考えられた.
  • 伊賀瀬 道也, 山本 善邦, 小原 克彦, 三木 哲郎
    2000 年 37 巻 10 号 p. 819-822
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は84歳, 男性. 平成6年6月に甲状腺分化癌 (乳頭腺癌) と診断され, 右葉切除術を施行された. 平成8年4月に右鎖骨上リンパ節への転移が, 平成9年6月に甲状腺左葉への再発が認められたため2度の再手術を施行された. 転移時および再発時の組織学的所見はいずれも乳頭腺癌であった. 平成11年3月に右肩痛が出現し, CT上右頸部への腫瘍転移が考えられたが, 保存的に経過観察をしたところ腫瘤が急速に増大し平成11年9月18日に呼吸不全で死亡した. 剖検にて右頸部腫瘤は甲状腺未分化癌と診断された.
    一般に甲状腺乳頭腺癌は10年生存率が90%をこえる予後良好な癌の一つと考えられているが, まれに予後の悪い未分化癌への転化例がある. 60歳以上の高齢男性や分化癌の再発を繰り返す症例は注意が必要である.
  • 満岡 恭子, 村田 芳夫, 原田 俊英, 石崎 文子, 中村 重信
    2000 年 37 巻 10 号 p. 823-827
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    呼吸不全によりバリスム様四肢不随意運動が増悪した75歳, 男性例を報告する. 症例は75歳の長期間に及ぶ慢性呼吸不全状態にあった男性. 70歳時より四肢に不規則で短く早い不随意運動が出現した. 不随意運動は徐々に増悪し, バリスム様の粗大な動きに変化したが, 酸素吸入により症状は改善した. 入院時には, 軽度の低酸素血症, 高炭酸ガス血症を認めた. 頭部MRI T2強調画像にて皮質下のラクナ梗塞と両側淡蒼球にT2強調画像で高信号を呈する病変を認めた. 本症例では40歳時より肺気腫があり, 慢性呼吸不全の状態であった. 呼吸不全の増悪とともに不随意運動が増悪し, 酸素療法により不随意運動が改善したことから, 肺性脳症による症状の増悪と考えられた.
  • 2000 年 37 巻 10 号 p. 828-836
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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