日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
37 巻, 12 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 植木 彰
    2000 年 37 巻 12 号 p. 939-948
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 信友 浩一
    2000 年 37 巻 12 号 p. 949-953
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 犬塚 貴
    2000 年 37 巻 12 号 p. 954-957
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 三上 洋
    2000 年 37 巻 12 号 p. 958-960
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
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  • 難波 吉雄, 馬原 孝彦
    2000 年 37 巻 12 号 p. 961
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 櫻井 孝, 楊 波, 高田 俊宏, 横野 浩一
    2000 年 37 巻 12 号 p. 962-965
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー病脳ではグルコース代謝率の低下, 乳酸代謝率の上昇が知られている. そこで細胞外液のグルコース濃度を調節し, 或いは乳酸に置換した時の神経活動, シナプスの可塑性および神経の生存について検討を行なった. 神経活動は海馬の貫通線維を刺激して歯状回で記録される集合電位の振幅で評価した. 細胞外液のグルコースを除くと神経活動は非可逆性に抑制されたが, グルコースを乳酸に置換すると神経活動は一過性に抑制されたが自然に回復した. 一旦無グルコースから回復した海馬切片では乳酸による神経活動の抑制は見られなかった. シナプスの可塑性は長期増強現象の発現について検討した. 細胞外液に10mMグルコースが存在する時は高頻度刺激により約140%の長期増強現象を誘発したが, 乳酸では神経活動の増強は約110%に留まった. 次に海馬スライス培養系を用いて乳酸の神経生存に及ぼす作用を検討した. 培養24~48時間では Propidium iodide の取り込み, LDHの分泌は乳酸栄養での培養ではグルコース栄養での培養と同程度に抑制した. 以上の結果より神経細胞でグルコースの利用が障害された時, 乳酸は神経活動の維持に利用され, 神経細胞の生存にも寄与するが, シナプス可塑的現象 (長期増強現象) の発現には十分でないことが示された.
  • 梅垣 宏行
    2000 年 37 巻 12 号 p. 966-969
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Several lines of evidence suggest that the cholinergic system in the hippocampus plays a pivotal roll in regulating the peripheral metabolism of glucose and catecholamines. The injection of cholinergic stimulators including neostigmine, the acetylcholine esterase inhibitor, into the third ventricle or the hippocampus induces the elevation of glucose or catecholamines in plasma in rats. Under stress conditions, release of acetylcholine in the hippocampus increases, which coincides with the elevation of plasma glucose and catecholamines. Age-related reduction in responsivity of the cholinergic system in the hippocampus has been well-documented. The intrahippocampal neostigmine injection induces significantly attenuated responses in plasma glucose and catecholamines in rats, which finding suggested that changes in cholinergic system activity in the hippocampus could result in alteration of the peripheral metabolism of glucose and catecholamines. In Alzheimer's disease, the most common type of dementia, degeneration of the hippocampal cholinergic system is one of the most robust pathological features. Measurement of plasma catecholamines during a fasting state in groups of Alzheimer's disease subjects, vascular dementia subjects, and non-demented control subjects showed significantly lower plasma epinephrine levels in the Alzheimer's disease subjects.
  • 大塚 美恵子
    2000 年 37 巻 12 号 p. 970-973
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー病 (AD) の発症に関与している環境的因子のなかで食事因子に着目して食事栄養調査を行った. AD患者では魚と緑黄色野菜の摂取が低く, 栄養素的には魚に多く含まれるn-3系 (ω3) 多価不飽和脂肪酸 (PUFA), および野菜に多く含まれるカルシウム, ビタミンC, カロチンなどのビタミンとミネラルの摂取が有意に低いことを報告した. これらの結果はADの発症に食事因子が関係し, 栄養学的介入が痴呆の予防や治療に応用出来る可能性を示している. 今回我々はAD患者の食事栄養調査を行うとともに, 痴呆の発症と食行動異常の発症の時間的前後関係を明らかにするため食事歴, 生活歴を詳細に聴取した. AD患者では若いころから偏食が強く魚や野菜嫌いが多く, 痴呆の発症によってさらに食行動異常が激しくなる傾向にあり, 食行動異常は痴呆の結果ではなく発症に密接に関係したものと考えられる. 特に幼少時期からの食行動異常の見られた例, 単身赴任, 長期海外滞在, 外食, 高齢になってからの急激な食事環境の変化のあとに痴呆が発症した例が多かった点はこれを支持するものと考える. 次に, AD患者に対して, 食事指導ならびにn-3系PUFAであるエイコサペンタエン酸エチル (ethyl EPA) 製剤を投与し, 認知機能と日常生活の活動能力の改善効果を解析した. AD患者の自然経過ではMMSEが6カ月で平均2点, 12カ月で平均4点下がるとされるが, 71.4%の例でこの自然経過よりは得点の低下を遅くさせることができた. 特に開始後6カ月までは開始時点の得点を上回った. しかし, 栄養学的介入だけでは痴呆の治療に限界があり, 6カ月以降は進行を抑えることはできなかった. 以上の結果はADが食事に密接に関連した生活習慣病の可能性を示唆し, 食事指導は痴呆の一次予防として重要であるだけでなく, すでに発症した場合にも治療に応用できる可能性を示すと考える.
  • 岡村 信行, 新川 光俊, 荒井 啓行, 松井 敏史, 中條 和志, 丸山 将浩, 胡 夏生, 佐々木 英忠
    2000 年 37 巻 12 号 p. 974-978
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    記憶障害が存在するもののその他の認知機能はおおむね正常で, 自立した日常生活が継続できるような段階は, Mild cognitive impairment (MCI) という名称で, 近年定義づけられ, Alzheimer 病 (AD)の発症予備群と考えられている. そこでMCIと正常加齢の脳機能画像上の違いを明らかにする目的で, 19名のMCI患者, 23名のAD患者, 15名の正常高齢者において, IMP-SPECTを用いて局所脳血流の測定を行った. 平均MMSEスコアは, MCI群が25.3±1.2 (mean±SD), AD群が17.5±3.3であった. 後帯状回, 前頭葉, 側頭葉, 頭頂葉に関心領域 (ROI) を設定し, 小脳のROI値に基づいて標準化して, 脳血流比を算出した. また Statistical Parametric Mapping (SPM) を使用して, ボクセル単位での画像比較も行った. その結果, 後帯状回における局所脳血流比は正常高齢者群と比較して, MCI群 (0.956±0.080), AD群 (0.833±0.118) ともに有意に低下していた. その他の領域の局所脳血流比は, AD群と正常高齢者群との間でのみ有意差を認めた. 後帯状回局所脳血流比を用いて正常高齢者とMCI患者を鑑別する場合, 特異度を80%に設定した際の感度は80.5%であった. SPMにより, 正常高齢者とMCI患者の脳血流画像を比較すると, ROI解析と同様に, 後帯状回においてのみ有意差を認めた. 以上の結果から, 後帯状回の脳血流低下を示すMCI患者はADへ進行する危険性が高いことが示唆され, 脳血流画像からMCI患者のADへの進行を予測可能であることが確認された.
  • 越阪部 徹, 岡田 なぎさ, 輪千 浩史, 佐藤 成, 佐々木 茂, 和田 直文, 瀬山 義幸
    2000 年 37 巻 12 号 p. 979-983
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    破裂性腹部大動脈瘤 (RAAA) と炎症性腹部大動脈瘤 (IAAA) および非破裂性非炎症性腹部大動脈瘤 (AAA) のそれぞれから得た腹部大動脈のエラスチンとフィブリリンおよびコラーゲンの量的変化を知るため, 動脈当たりのエラスチン含量 (Desmosine 1), エラスチン当たりの架橋含量 (Desmosine 2), 動脈当たりのフィブリリンまたはコラーゲン含量, 動脈中エラスチンまたはコラーゲンの割合 (%), カルシウム (Ca) およびリン (P) 含量について対照と比較し, 以下の結果を得た.
    1) RAAAとIAAAおよびAAAの架橋含量は対照と比較して低下した.
    2) IAAAとAAAでは動脈のカルシウム含量の多少にかかわらず, 架橋含量が低下した.
    3) RAAAとIAAAおよびAAAのフィブリリン含量は対照と比較して増加した.
    4) RAAAのコラーゲン含量は対照と比較して増加した.
    5) フィブリリンと各エラスチン成分 (Desmosine 1, 2または Elastin%) の比およびコラーゲンと各エラスチン成分 (Desmosine 1, 2または Elastin%) の比との間には正の相関関係が認められた.
    以上から, 動脈瘤において相対的にエラスチン含量または架橋含量は低下し, これに対し, 代償的にフィブリリンとコラーゲンは増加したと推測される. 特にこの傾向はRAAAで著しい特徴が認められた.
  • 藤巻 博, 粕谷 豊, 古賀 史郎, 平島 得路, 各務 志野, 高橋 祥子, 高橋 忠雄, 水野 正一
    2000 年 37 巻 12 号 p. 984-989
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢の透析導入例における入院期間の規定因子を明らかにするために, 年齢60歳以上の慢性腎不全血液透析導入例 (98例) を対象として統計学的検討を行った. 男性例は59例, 女性例は39例, 年齢は73±7歳 (平均±標準偏差) であった. 個々の症例において, 腎不全の基礎疾患 (非糖尿病/糖尿病), 体格指数, 脳血管障害の有無, 虚血性心疾患の有無, 歩行の可否, 認知機能の良否, 透析導入の緊急度 (非緊急/緊急), アクセス不全発症の有無, 配偶者同居の有無, 子供世代同居の有無等の背景因子と透析導入後の入院日数について調査した.
    入院日数の中央値は37日であり, 平均値は49日であった. 入院日数そのものは正規分布を示さなかったが, 対数変換することにより, 正規分布を得ることができた. 統計学的検討においては, 対数変換された入院日数を用いた.
    各背景因子の相違が入院期間に及ぼす影響を最初に検討した. 背景因子毎に二通りのカテゴリーを設け, それに基づいて対象を二群に分けた. 両群で入院期間を算出し, それらの値をt検定により比較した. 統計学的有意差を認めた背景因子は8項目にのぼった. 次いで, 背景因子を説明変数とし, 入院期間を目的変数として, 重回帰分析を行った. 名義尺度で表された背景因子はダミー変数に置き換えられた. 重回帰分析では7項目の背景因子が統計学的に有意であった. 両分析で得られた項目は共通していたが, 性は二群比較でのみ, 統計学的に有意であった. その理由として, 性と配偶者同居の有無との相関が疑われた. アクセス不全発症と緊急透析導入が入院期間を延長させる決定的な要因であった. また, 虚血性心疾患合併, 糖尿病, 歩行不可, 認知機能不良, および配偶者不在も入院期間長期化の要因としてあげられた. 歩行の可否, 認知機能の良否, さらに配偶者の有無も規定因子となったことが高齢者の特徴と考えられた.
  • 高齢群と若年群の比較検討
    田中 資子, 川村 昌嗣, 谷 正人
    2000 年 37 巻 12 号 p. 990-994
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    【目的】近年, 高齢者に対しても大腸癌の精査・治療目的の下部消化管内視鏡検査が頻繁に行われるようになってきました. われわれは, 下部消化管内視鏡を施行された症例を若年群と高齢群に分け, 合併症の発生頻度及びその内容について検討を行いました.
    【対象者および方法】1996年に財) 慶應がんセンターにおいて大腸内視鏡を施行された症例のうち, カルテにてその後の経過が確認された565人を65歳未満の若年群 (436人) と, 65歳以上の高齢群 (176人) との2群に分けて検討しました. 二群間比較は Mann-Whitney U-test, 百分率の検定はχ2検定を用い, 危険率5%未満を有意としました.
    【結果】癌および腺腫を認めた頻度は, 両群間で統計上有意差を認めませんでしたが, 高齢群で多い傾向にありました. 下部消化管内視鏡検査施行時に出現した疼痛に対して鎮静薬などの追加投与を必要とした症例は, 若年群および高齢群で, それぞれ9.4%, 10.2%であり, 有意差を認めませんでした. また止血処置を必要とした出血は, 若年群で0.7%, 高齢群で3.8%と若年群に比し高齢群で有意に多く認めました. また高齢群では2例に潰瘍を認めました.
    【結語】高齢群ではポリペクトミー後の出血の頻度が高く, 熱傷性潰瘍や創部の治癒機転の遷延化が示唆され, 下部消化管内視鏡検査終了後に, 腹圧のかかる動作や刺激物の摂取を避けるなどの比較的長期間の安静が必要と考えられました.
  • 神経内科疾患患者について
    柿沼 進, 野垣 宏, 森松 光紀
    2000 年 37 巻 12 号 p. 995-998
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    リハビリテーション病院にリハビリテーションを目的として入院中の神経内科疾患患者に発生した合併症を検討した. また症例を65歳未満群, 65歳以上群に分類して合併症を検討した. 合併症の発生した人数は65歳以上群が有意に多かった. 65歳以上群では発生件数も多く, 同一患者に重複して起こりやすかった. 患者全体では, 感染性疾患の発生件数が多く, 臓器別にみた疾患の種類としては呼吸器, 泌尿・生殖器, 精神・神経系疾患が多かったが, 65歳以上群では65歳未満群に比べ泌尿. 生殖器疾患が有意に多く, 特に尿路感染症が多かった. また, 65歳未満群では脳血管障害の再発や脳血管障害後てんかん発作が多く, 一方, 65歳以上群では転倒による外傷・骨折が多かった. すなわち, 65歳未満群では基礎疾患と直接関連のある合併症が多かったのに対し, 65歳以上群では基礎疾患と直接関連のない合併症が多かった. リハビリテーション目的で入院中の高齢患者では, 感染症をはじめとした合併症が少なくなく, 常に全身状態の管理に配慮することが重要であることが示された.
  • 金藤 公人, 宮下 光太郎, 緒方 絢, 由谷 親夫, 山脇 健盛, 成冨 博章
    2000 年 37 巻 12 号 p. 999-1003
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は76歳, 男性. 69歳時に安静時振戦で発症し徐々に易転倒性, 寡動や固縮が加わったが L-Dopa の内服が奏功し, 幻覚や認知機能の低下は明らかでなく, 仕事に就いていた. 74歳時に脱水, 発熱による入院後, 意欲や活動性, 知的機能の低下が出現し幻視もみられるようになった. その後は比較的早い経過で痴呆が進行し, ほぼ寝たきりとなって, 重症の肺炎などにより死亡した. 頭部CT上, 進行性の大脳萎縮が認められた. 剖検上黒質や青斑核の色素細胞の脱落および Lewy 小体の出現を認め, Meynert 基底核でも神経細胞脱落と Lewy 小体がみられた. 他に大脳皮質にも Lewy 小体が出現していることから, consensus guideline (Neurology, 1996) に基づき Dementia with Lewy bodies (DLB) と病理診断した. 一方, 中等度の老人斑と少数の神経原線維変化がみられたが, アルツハイマー病の合併による痴呆の例とは言い難かった. 本例は病理所見の定量性を重視した国際的診断基準に則り, 神経細胞の変性, Lewy 小体, 老人斑, 神経原線維変化の程度からDLBと病理診断し得たが, 発症後約5年余りの期間に典型的なパーキンソン病と考えられる経過をとった点で貴重な症例と考え報告した.
  • 田中 裕之, 長嶋 淳三, 信岡 祐彦, 粟屋 透, 小澤 泰典, 柴本 昌昭, 足立 久信, 三廼 信之, 三宅 良彦, 村山 正博
    2000 年 37 巻 12 号 p. 1004-1008
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 女性. 1959年, 32歳時に他院で心室中隔欠損症・Eisenmenger 症候群と診断され手術適応なしと判定された. 1984年, 60歳時に当院に転医し以後70歳の現在まで外来通院を続けている. この間 NYHA 心機能分類は第II-M度で経過しており, 心不全による入院歴はない. 血液検査所見では, 赤血球数535×104/mm3, ヘモグロビン値17.29/dlと軽度の多血症の所見を認めた. 断層心エコー図では左室の圧排, 扁平化がみられ, 三尖弁逆流から推定した右室収縮期圧は105mmHgであった. 本症例の場合, 心エコー・超音波 Doppler 所見より, 右室圧は左室圧とほぼ同程度に上昇していると考えられることや, 心室中隔欠損孔を通過する右→左シャントの出現時相などから血行動態的には比較的重症の肺血管閉塞性病変を合併した Eisenmenger 症候群と考えられた. 本症例の経過が比較的良好であった要因として多血症の程度が軽度であり, 合併する肺血管閉塞性病変の進行が緩徐であったことが推察された.
  • 在宅患者と施設入所者における検討
    繁信 和恵, 池田 学, 牧 徳彦, 田辺 敬貴, 松浦 千枝子
    2000 年 37 巻 12 号 p. 1009-1011
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 発見契機の検討から
    金 京子, 岩本 俊彦, 小山 哲央, 阿美 宗伯, 杉山 壮, 高崎 優
    2000 年 37 巻 12 号 p. 1012-1013
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 2. 診断と症状, とくに要介護状態の主要な基礎疾患
    中川 翼, 志渡 晃一, 峯廻 攻守, 川畑 雅之, 岩坂 信子, 阿蘇 貴久子, 大浦 武彦, 加藤 隆正, 近藤 喜代太郎
    2000 年 37 巻 12 号 p. 1014-1021
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    MDSのE項-(診断と症状) は1~4から成り, すべての項目を医師が記録する. E1は28種の病名があらかじめ印刷された選択肢 (不動文字) から成る欄, E2はそれがない場合, 具体的な病名を書く欄, E3, E4は過去7日の「問題状態など」と「状態安定性」に関する欄である.
    本報では, ある高齢者医療施設の1,735名の患者について, 医師をふくむ全職種が連携してケアを行った経緯に基いて, E項の有用性と, 日本で使用したときの不利な点を展望し, 分析の結果を資料として示す.
    私共はE1をなるべくA-(要介護状態の基礎疾患), B-(Aの症候・続発状態), C-(合併症) に分けて分析したが, 骨・関節の疾患は充分に分析できなかった. Aを2個以上もつほとんどの場合は, アルツハイマー型 (ア型) 以外の痴呆と脳血管の損傷の2つのみかけの合併で, 病歴, CT上, 多発性ラクナ梗塞が痴呆化した例など, 実際は単一の疾患であり, 米国の実情による不動文字の用意のされ方によるみかけの合併で, それらを除くと, 要介護状態の出発点となる基礎疾患は原則として1個であった. 骨・関節の疾患を除いて, 1) ア型痴呆, 2) パーキンソン病, 3) ビンスワンガー病など神経症候の乏しい血管性痴呆, 4) 痴呆をもつ脳血管障害, 5) 痴呆のない脳血管障害の5種で, それらの合計は男女の順に要介護入院患者の94.3%, 91.6%を占めていた.
    「問題状況・症候・症状」の過去7日間の発生は不動文字が存在する範囲で1,000人1日当たり189.7件で, 障害高齢者が問題をかかえる状況が定量的に示された. また過去180日間の大腿骨骨折は女は年間で5%弱となった.「状態の安定性」については, 過去7日間で男は5.9%, 女は4.2%に急性発作・再発をみた.
    E項の利点は, 1) 要介護患者の医療的問題点を簡潔に示せる, 2) 記録時点の状態と, 先行する7日間の動態を分けて記録できる, 3) 情報を多職種で共有できる. 一方, 不利な点は, 1) 不動文字が少なく, 米国の実情のままである, 2) 要介護状態の出発点が明記できない, 3) 症状の程度を示す方法がない, などである.
  • 2000 年 37 巻 12 号 p. 1022-1029
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2009/11/24
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