日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
37 巻, 6 号
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  • 松本 正幸, 岩井 邦充
    2000 年 37 巻 6 号 p. 439-443
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    近年, 高齢者心不全例が増加しており, 死亡率も急増しているため, その病態解明と適切な治療法の確立が急務となっている. 高齢者心不全の特徴は, 基礎疾患に虚血性心疾患が多く, 臨床症状が非特異的になりやすく発見が遅れ多臓器合併症も多いため, 重症になりやすいことである. 心不全では自己防衛機構として, 交感神経活性・レニン-アンギオテンシン系の活性が亢進するが, これが破綻し悪循環に陥りやすい. 急性心不全では, 利尿薬, 強心薬を中心として治療し, 心筋虚血が存在するときは積極的に冠動脈インターベンションを考慮する. 慢性心不全では大規模臨床治験によってACE阻害薬, β遮断薬, ジギタリスが病態の悪循環を断ち切り, 予後を改善することが明らかにされている.
  • 辻 省次
    2000 年 37 巻 6 号 p. 444-449
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 駒野 宏人
    2000 年 37 巻 6 号 p. 450-453
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 瓦林 毅
    2000 年 37 巻 6 号 p. 454-457
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    家族性アルツハイマー病の原因遺伝子であるアミロイドβ蛋白前駆体 (βAPP) およびプレセニリン1 (PS-1) 遺伝子変異を組み込んだトランスジェニックマウス (Tg) を用いて脳アミロイド沈着機序の検討を行った. 変異βAPP (K670N, M671L) を発現するTg2576では, Aβ40およびAβ42が脳アミロイドとして沈着し, アルツハイマー病 (AD) 患者脳の老人斑と酷似した光顕および電顕像を呈した. 脳を2% SDSと70%ギ酸の二段階で抽出し Sandwich ELISAによるAβ測定を行うと, 8月齢以前ではAβはSDS分画のみに認められ, 8月齢ではSDS可溶性Aβが一時的に減少すると共にギ酸可溶性Aβが出現した. この時期に組織学的にも脳アミロイド沈着が出現した. それ以降ではギ酸分画中にAβが急増した. このAβのSDS不溶性分画への移行がアミロイド沈着の重要な step と考えられた. 一方, 血漿中のAβはTg2576では非トランスジェニックマウスの約100倍に増加していたが, 脳Aβ沈着の出現以降は経時的に減少した. 以上の検討よりβAPPの過剰発現はAD脳と同様の脳アミロイド沈着を生じることが示され, Tg2576はアミロイド沈着機序を解明するモデルになりうると考えられた. 新たに作成した変異PS-1 (M146L, C410Y) を発現するTgでは, 脳に24kDのN末断片と16kDのC末断片が増加し, 脳および血漿中にAβの増加が認められた. これより変異PS-1が in vivo でAβの増加を起こして, ADを発症させる可能性が明らかにされた.
  • 内藤 通孝
    2000 年 37 巻 6 号 p. 458-463
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    The transition of fibrinogen to fibrin and to their degradation products within the arterial wall has been reported to be accompanied by atherosclerotic progression. A major step in the pathogenesis of atherosclerosis is the vectorial migration of vascular smooth muscle cells (SMCs) from the arterial media through the internal elastic lamina into the intima and their subsequent proliferation in the intima. I have been studying the effects of fibrinogen, fibrin and their degradation products on the behaviour, particularly migration, of SMCs.
    Fibrinogen/fibrin stimulates the adhesion and migration of SMCs and their effects are mediated by both the RGD-containing region of the α chain of fibrinogen/fibrin and integrin αvβ3 on the cell surface. SMCs migrate into fibrin gel even with no other chemotactic stimuli. SMCs displayed two-fold increase in migration into crosslinked fibrin gels compared to non-crosslinnked gels, suggesting the importance of fibrin crosslinking by factor XIIIa on its three-dimensional structure for the migration of SMCs. Fibrin gels prepared with batroxobin, which cleaves only fibrinopeptide A, with ACTS, which cleaves only fibrinopeptide B, and with protamine sulfate, which cleaves nothing, but forms a fibrin-like gel, induce migration of SMCs in a manner similar to the gel prepared with thrombin, suggesting that the cleavage of fibrinopeptides is not involved in the migration of SMCs. Both anti-fibrinogen fragment D and E antibodies inhibit the migration of SMCs into fibrin gel, suggesting that both D and E regions of fibrin are involved in the migration of SMCs into fibrin gel. The migration of SMCs into fibrin gel also depends on the RGD-containing region and integrin αvβ3. Both fibrinogen fragments D and E inhibit the migration of SMCs into fibrin gels, suggesting that these fragments may be involved in the regulation of SMC migration into fibrin gel as the result of fibrinolysis.
    Although subcultured SMCs usually show a synthetic phenotype, the behaviour of contractile SMCs may be crucial for the subsequent migration of the cells. We employed an in vitro assay system to evaluate the effects of fibrin gels on the migration of SMCs from explants taken from rabbit aorta. αvβ3 integrin and the RGD-containing region are involved in the migration of SMCs into the fibrin gels. SMCs which migrated from the explants showed positive staining with monoclonal antibodies against SMC myosin heavy chain isoforms, SMemb, SM1 and SM2, suggesting that they are in an intermediate state changing from a contractile to synthetic state.
    These findings show that fibrin (ogen) itself induces adhesion and migration of SMCs without other chemotactic or chemokinetic substances, suggesting a crucial role for fibrin (ogen) in the development and progression of such vascular diseases as atherosclerosis, thrombosis and restenosis following balloon angioplasty.
  • 山谷 睦雄, 佐々木 英忠
    2000 年 37 巻 6 号 p. 464-468
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    ウイルス感染誘発老人性喘息の病態と治療法を呼吸器ウイルス感染の主因であるライノウイルスと標的細胞である気道上皮細胞を用いて研究した. 剖検ヒト気管上皮細胞を培養し, ライノウイルスを感染させた. 感染後培養液中に炎症性サイトカイン (IL-1, IL-6, IL-8, TNF-α, GM-CSF) が増加し, 細胞内細胞接着分子ICAM-1 mRNA合成が増加した. また, 上皮細胞の物質透過性も上昇した. これらの上皮細胞の機能変化が気道炎症を生じ, 喘息の発症・増悪を惹起すると示唆された. グルココルチコイドとエリスロマイシンは気道上皮細胞のICAM-1合成を減少し, major type ライノウイルス14型の感染を抑制した. また, 炎症性サイトカイン合成も減少し, ライノウイルス感染による気道炎症を制御すると示唆された. H+ATPアーゼ阻害剤バフィロマイシンは14型および2型ライノウイルスの感染を阻止し, エンドゾームH+ATPアーゼを介したウイルスRNA侵入阻止がライノウイルス感染においても有効であると示唆された. これらの感染抑制方法は今後の治療法に発展すると考えられる.
  • 大内 尉義, 鳥羽 研二
    2000 年 37 巻 6 号 p. 469-471
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者の機能評価分類によるケアが生命予後や機能予後を改善するという報告においても, 痴呆や重症者の除外がされている. 本研究の目的は, 複数疾患を併せ持つ後期高齢者全体を評価する手法の開発である. 東大病院, 老人保健施設, 療養型病床群, 在宅看護症例を対象に老年症候群という自他覚症候の加齢変化を調査した. 老年症候群は, 加齢変化のないもの, 65歳以上から漸増するもの, 後期高齢者に著増するものの3群に分かれた. この分類を Geriatric Scale と名付け, Age Norm を再考した. 在宅, 施設介護では後期高齢者に著増する, うつ, 尿失禁, 低栄養, 椎体骨折など一群の症候群が多く, 自宅復帰の阻害要因であった.
  • 石崎 達郎, 甲斐 一郎
    2000 年 37 巻 6 号 p. 472-478
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    埼玉県内の某病院において, 1989年5月から1993年4月までの4年間に訪問医療 (訪問診療, 訪問看護) の対象となった患者 (59名) について, 訪問医療開始後1年間における急性期治療を目的とした入院 (以下, 急性期入院と略す) の有無を調べた. そして, この急性期入院発生の有無が患者の身体状況や訪問看護・訪問診療の内容等とどの様な関連があるか検討した. 主な調査項目は, 年齢, 性別, 疾患名, 日常生活動作 (以下, ADLと略す) の状況, 痴呆の有無, 訪問開始時における血清アルブミン値, 訪問開始日, 訪問医療の回数 (訪問看護, 訪問診療), 訪問時に実施した各種医療処置の有無等で, 情報収集には各患者の診療録を用いた.
    対象者は, 女性が63%, 平均年齢は77.4 (±9.7) 歳, 主な疾患は, 脳血管疾患が53%, 悪性腫瘍14%, 神経系疾患10%であった. 調査対象者に対する訪問医療の提供頻度は, 中央値10.7日 (レンジ: 2.0~21.1日) に一回の頻度であった. そして, 訪問医療開始後1年以内に急性期入院となった患者は全体の59% (35名) にのぼった.
    Cox 比例ハザードモデルを用いて, 訪問医療開始後1年間における急性期入院発生に関連する要因を検討した結果, 平均訪問頻度の影響を調整してもADLレベル (ランクC) (ハザード比 (HR)=3.13, 95%信頼区間 (CI)=1.34~7.35), 血清アルブミン値3.5g/dl未満 (HR=3.05, 95%CI=1.37~6.77) が急性期入院の発生と有意に関連していた. このようなリスクを有する者に対しては, 急性期治療を目的とした入院のタイミングを逃さないように, 全身状態の変化に充分注意する必要があろう.
  • 川本 龍一, 土井 貴明
    2000 年 37 巻 6 号 p. 479-485
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    平成7年9月から平成11年8月までの4年間の一連の入院患者における降圧剤および高脂血症治療剤非服用者で, 脂質・糖代謝, 血圧に影響を及ぼしうる栄養障害や心・腎機能障害のない者を対象として, 既知の動脈硬化危険因子に加えて平均血圧 (2/3拡張期血圧+1/3収縮期血圧) と脈圧 (収縮期血圧-拡張期血圧) との2つを加味し, 総頸動脈硬化性病変との関係を検討した. 総頸動脈硬化性病変については, 日立EUB-565の超音波断層装置と7.5MHzリニア型探触子を用いて総頸動脈の内膜中膜複合体の厚さ (以下頸動脈壁厚) を計測した. 高血圧群 (平均血圧≧107mmHg) は53人と少なかったことより, 以下の検討では, 正常血圧群 (平均血圧<107mmHg) 358人 (年齢: 67.8±15.1歳), 男性182人 (年齢: 65.2±15.9歳), 女性176人 (年齢: 70.4±13.7歳) のみを対象として行った. 脈圧3分位, すなわち50mmHg以下 (PP1), 51~65mmHg (PP2), 66mmHg以上 (PP3) 別に検討すると, 脈圧が大きい群ほど年齢は有意に高く (p: 0.0011), 女性の頻度が多かったが (p=0.0315), BMI, Brinkman index, 脂質代謝, 尿酸, 糖代謝といった背景因子には差異はなかった. 平均血圧と脈圧との関係では男女ともに正の相関を認め, 各々r=0.31 (p<0.001) であった. 脈圧と血圧パラメーターとの関係については, 脈圧が大きい群ほど収縮期血圧, 平均血圧, 脈圧は有意に大きかったが (各々p<0.001), 拡張期血圧では逆に小さかった (p=0.0275). 脈圧と頸動脈壁厚との関係では, 男女ともに脈圧が大きい群ほど頸動脈壁厚は有意に大きかった (各々p<0.001, p=0.0042). 頸動脈壁厚 (1.0mm以上を肥厚と定義) を目的変数とし, 平均血圧と脈圧を含めた各種危険因子を説明変数としたロジスティック回帰分析では, 男性では脈圧とLDL-C, 女性では年齢, Brinkman index, T-Chol, HDL-C, 全体では男性, 年齢, Brinkman index, 脈圧, TG, LDL-Cが有意な独立危険因子であった. これらより, 脈圧も頸動脈壁厚の危険因子として重要であると考えられる.
  • 静 和彦, 山家 智之, 福土 審, 仁田 新一
    2000 年 37 巻 6 号 p. 486-489
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1950年代後半に Freidman & Rosenman により提唱されたタイプA行動パターンは, 冠動脈疾患との親和性が多くの研究で確認されており, 本邦においても両者の関連性ついて種々の報告がなされている. 本研究では, 冠動脈疾患の最大の危険因子である高コレステロール血症に注目し, タイプA行動パターンと血清総コレステロール値の関係を性差および加齢による影響を考慮に入れて検討した. また, 血清トリグリセライド値およびBMI値も併せて検討を行った. 宮城県角田市の仙南病院に受診中の患者を対象に, 日本動脈硬化学会の基準に従い境界域を含む高コレステロール血症患者を選出し (109名, 男性30名, 女性79名), 前田らが作成したA型傾向判別表を用いてタイプA (51名, 年齢73.1±8.7) とタイプB (58名, 年齢71.3±8.7) の2群に分類した. 高脂血症治療中や二次性高コレステロール血症, 脂質代謝に影響のある薬剤投与中の症例は対象から除外した. タイプAでは, タイプBに比較し有意な血清総コレステロール高値 (233.0±22.8 vs 223.9±14.2 p<0.01) およびBMI低値 (24.0±3.9 vs 25.4±3.9 p<0.05) を認めたが, 血清トリグリセライド値は両群で有意差は確認できなかった (148.9±8.2 vs 134.0±48.8). 血清総コレステロール値は, 男女別の検討では女性で有意な高値を認め (232.6±19.3 vs 224.8±15.1 p<0.05), 年齢別の解析では60歳台のみで高値を認めた. Body mass index (BMI) は男女別および年齢別の検討では両群で有意差は認められなかった. 本研究によりA型行動パターンが脂質代謝に与える可能性が示唆されたが, 性差や加齢に伴う影響も十分に考慮に入れる必要性が考えられた.
  • 加藤 順一, 早川 みち子, 石原 健造, 鹿住 敏
    2000 年 37 巻 6 号 p. 490-494
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性. 左顔面しびれ感・歩行障害および構音・嚥下障害を主な症状とし, 頭部MRICTにて延髄左 (背) 外側部にT2 high density の梗塞巣を認め, 神経学的所見より Wallenberg 症候群と診断された. 歩行障害は発症2週後には改善傾向を認めたが, 嚥下障害は重篤で発症3カ月後, 誤嚥性肺炎を繰り返し経口摂取不能であった. その時点での Videofluorography (VF) 検査では咽頭部梨状窩で造影剤の貯留と下咽頭での反復嚥下を認め, 一部気道内へ流入し誤嚥を生じ, 輪状咽頭筋弛緩障害が疑われた. 嚥下リハビリテーションの訓練手技としてバルーン拡張引き抜き法を取り入れ, VF検査により経時的に嚥下障害の重症度を評価した. 嚥下訓練4週間後のVF検査では個体形状物の咽頭通過障害は軽減し, 間歇的経口経管栄養法と一部経口摂取併用が可能となった. 嚥下訓練8週間後には3食とも嚥下食の経口摂取が可能となり, 12週間後のVF検査では咽頭下部での反復嚥下および液体形状物の咽頭梨状窩での残留は軽減し, 個体形状物の咽頭通過障害は消失した. 本症例において, バルーン拡張引き抜き法による嚥下訓練とVF検査による嚥下障害の機能判定が嚥下リハビリテーションおよび経過の観察にきわめて有用であった.
  • 平沢 秀人, 浅川 理, 小山 恵子, 高橋 祥友, 渥美 義賢, 熊倉 徹雄
    2000 年 37 巻 6 号 p. 495-498
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    分裂病様症状を呈した Klinefelter 症候群の1老人例を報告した. 39歳時に精神分裂病と診断され外来にて治療を受けていた. 72歳の時母親の入院を契機に服薬が不規則となり躯幹・四肢に不随意運動が出現したため入院となった. 入院時には被害妄想, 妄想気分, 妄想知覚, 対話性幻聴がみられ, また精神運動性興奮も認めた. 抗精神病薬を始めたところ軽度幻聴が残ったものの全体的には精神症状は落ち着き, 無為・自閉といった人格変化はみられなかった. なお, 不随意運動は抗精神病薬を開始後徐々に減少した.
    入院時身体所見において長身, 女性化乳房, 薄い陰毛, 陰茎と睾丸の発育不良を認めた. また, 内分泌検査において, 黄体ホルモン (LH), 卵胞刺激ホルモン (FSH) の高値およびテストステロンの低値など原発性性腺機能不全の所見を認めた. さらに染色体分析を行ったところ47, XXYという染色体構成となっていたため Klinefelter 症候群と診断した.
    精神障害, 特に精神分裂病様症状を伴う Klinefelter 症候群の報告例は本邦においてもいくつかみられるが, 精神分裂病との関連では臨床症状や経過などの点において相違がみられるとする報告が多い. すなわち, Klinefelter 症候群における精神症状は, 幻覚を中心に多彩な症状を示す例が多く, 長期間経過しても人格的変化をきたす例は少ないといわれている. 一方, 最近の精神分裂病における性差の研究をみると, こうしたKlinefelter 症候群にみられる精神症状の特徴は女性精神分裂病例のそれに類似する点が多い. 精神分裂病の精神症状の性差には性ホルモンのうちエストロゲンの分泌時期, 周期などとの関連が示唆されているが, ゴナドトロピンやテストステロンなど他の性ホルモンとの関連についても注目する必要があると思われた.
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