埼玉県内の某病院において, 1989年5月から1993年4月までの4年間に訪問医療 (訪問診療, 訪問看護) の対象となった患者 (59名) について, 訪問医療開始後1年間における急性期治療を目的とした入院 (以下, 急性期入院と略す) の有無を調べた. そして, この急性期入院発生の有無が患者の身体状況や訪問看護・訪問診療の内容等とどの様な関連があるか検討した. 主な調査項目は, 年齢, 性別, 疾患名, 日常生活動作 (以下, ADLと略す) の状況, 痴呆の有無, 訪問開始時における血清アルブミン値, 訪問開始日, 訪問医療の回数 (訪問看護, 訪問診療), 訪問時に実施した各種医療処置の有無等で, 情報収集には各患者の診療録を用いた.
対象者は, 女性が63%, 平均年齢は77.4 (±9.7) 歳, 主な疾患は, 脳血管疾患が53%, 悪性腫瘍14%, 神経系疾患10%であった. 調査対象者に対する訪問医療の提供頻度は, 中央値10.7日 (レンジ: 2.0~21.1日) に一回の頻度であった. そして, 訪問医療開始後1年以内に急性期入院となった患者は全体の59% (35名) にのぼった.
Cox 比例ハザードモデルを用いて, 訪問医療開始後1年間における急性期入院発生に関連する要因を検討した結果, 平均訪問頻度の影響を調整してもADLレベル (ランクC) (ハザード比 (HR)=3.13, 95%信頼区間 (CI)=1.34~7.35), 血清アルブミン値3.5g/d
l未満 (HR=3.05, 95%CI=1.37~6.77) が急性期入院の発生と有意に関連していた. このようなリスクを有する者に対しては, 急性期治療を目的とした入院のタイミングを逃さないように, 全身状態の変化に充分注意する必要があろう.
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