日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
38 巻, 3 号
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  • 小澤 利男
    2001 年 38 巻 3 号 p. 263-268
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年医学における総括的な用語に関して, 検討を加えた. その主なものは(1)老年医学 (geriatrics または geriatric medicine), (2)老年学 (gerontology), (3)我が国における老年医学講座と診療科の名称, (4)加齢と老化 (aging), (5)老年者・高齢者, (6)その他の老年医学的用語の6項目である.
    老年医学については, その用語の創始者として我が国における入沢達吉と米国の Nascher を紹介して, その語源を検索した. また我が国の老年医学講座と診療科の多様な名称を指摘して, 英語との整合性を問題とした. 加齢・老化に関しては, 用語 aging の意味する内容, 老年者・高齢者では和英の対比と高齢の呼称に言及した. その他, 老年医学に関する特殊な用語を紹介した.
    老年医学の和英対比は, その対応が必ずしも一致するわけではない. 我が国は, 漢字で用語が新規に造成される嫌いがあるが, 医学用語はある程度統一されることが望ましい.
  • 腹部大動脈瘤の病態と治療
    重松 宏, 大城 秀巳, 宮田 哲郎
    2001 年 38 巻 3 号 p. 269-276
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    我が国では, 食生活や生活様式の欧米化, 高齢化社会の出現により腹部大動脈瘤が急増している. 成因については動脈硬化を背景としているものの, 加齢による変性あるいは非特異性変化と考えられ, 動脈壁を構成する細胞外マトリックスの変化や matrix metalloproteinases-9活性の高値が瘤発生や進展の要因として注目され, 薬物治療も試みられている. 腹部大動脈瘤の臨床病態は様々で, 特徴的な画像所見を呈する炎症性腹部大動脈瘤や感染性大動脈瘤, 十二指腸や下大静脈などの他臓器への穿破, 凝固線溶系の異常など, 臨床像は多彩である. 一般的に, 最大瘤横径が5cm以上のものが手術適応となるが, 凝固線溶系の異常, 末梢側への塞栓源などの瘤に起因する障害や瘤の拡大速度なども適応として考慮しなければならない. 瘤破裂の予測は困難であるが, 3次元的解析から瘤破裂は最大瘤横径拡張速度, 拡張期血圧, 瘤横径と縦径との比, 瘤断面積, 年齢などと相関しており, aortic bleb の存在や嚢状瘤などの形態学的観察と併せて注意を要する. 大動脈瘤は瘤径の拡大とともに指数関数的に破裂危険度は上昇すること, 80歳以上の例であっても手術後患者の生命予後は良好で, 3年, 5年生存率はそれぞれ70%, 50%程度であること, 待期例での手術成績は向上しており術後の病院死亡率は1%以下であり, 成績に年齢による差を認めないが破裂例での成績に改善が得られていないことなどから, 80歳以上の高齢者であっても適応のある例では破裂に至る前に積極的な治療が望まれる.
  • 黒石川 泰, 喜多村 健
    2001 年 38 巻 3 号 p. 277-280
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    遺伝性難聴を症候群性難聴と非症候群性難聴と二つに大別することができるが, 耳鼻咽喉科領域では, 難聴のみが症状としてある非症候群性難聴について研究成果が上がっており, 70以上の難聴の遺伝子座が判明している. こうした分野の研究では, 患者の末梢血から採取したDNAを用いた連鎖解析, 側頭骨病理の検討や聴覚障害モデルマウスを用いた研究などによって原因遺伝子の同定と内耳内での遺伝子発現と病態解明が精力的になされている. 本稿では, 主に, 日常の臨床で遺伝性難聴を診断するために必要な基礎的知識と知っておくべき遺伝性難聴疾患を紹介した. 遺伝性難聴をしめす難聴者の数は多く, 様々な特徴を示すが, 早期に遺伝子異常を診断できるスクリーニングの手法も開発されつつあり, これが確立すれば難聴の予防や治療が可能になってくると思われる.
  • 近森 大志郎, 矢部 敏和, 土居 義典
    2001 年 38 巻 3 号 p. 281-284
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    かつて, 高い死亡率を示していた感染性心内膜炎も, 心エコー法を中心とする診断技術の発展や抗生剤治療および外科手術の進歩により, 治癒可能となる症例の頻度が増加してきている. しかしながら, 高齢者においては感染性心内膜炎の死亡率は依然として高率である. 自験例50例においても, 高齢者の死亡率は25%で若中年者の3%よりも有意に高くなっている. たしかに高齢者は心臓手術の適応が困難となる慢性疾患を有していることが多い. しかし, 高齢者では若中年者と比較して, 感染性心内膜炎の確定診断が遅れることが多く, この間題点については改善可能である. 以上を踏まえて, 自験例を中心に高齢者の感染性心内膜炎の特徴につき検討し, 文献的に考察を加える.
  • 遺伝子治療の可能性
    森下 竜一, 荻原 俊男
    2001 年 38 巻 3 号 p. 285-287
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の治療法選択における特徴は, 手術などの侵襲的治療がとりにくいことである. また, 若年者に比べQOLを重視した視点での治療法選択も重要である. たとえば, 閉塞性動脈硬化症による下肢切断は著しいQOL悪化をもたらすが, 手術不能例においては現在治療法がない. 欧米を中心に血管新生因子であるVEGF遺伝子の筋肉内投与により閉塞性動脈硬化症の治療が可能であることが明らかにされ, 我々もまた国内で発見されたHGF (肝細胞増殖因子) による血管新生と治療の可能性を明らかにしている. 血管新生を利用した遺伝子治療は, 心筋梗塞や脳梗塞の治療として有効である可能性も報告されており, 外科的治療の対象となり得ない老年者に対する低侵襲の治療法として期待される. 本総説では, 老年者に対する血管新生を利用した遺伝子治療の可能性について述べる.
  • 大庭 建三
    2001 年 38 巻 3 号 p. 288-290
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 生物学的診断マーカー
    東海林 幹夫
    2001 年 38 巻 3 号 p. 291-292
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    痴呆患者の急速な増加に対して, 医療や介護などの社会制度の整備がもとめられている. このためには痴呆が出現する前にアルツハイマー病を診断し, 症状の進行や薬物療法の効果を客観的に評価できる生物学的マーカーが必要であり, 本稿ではアルツハイマー病の生物学的マーカー研究の現状を批判的にまとめ, 現在, 臨床応用されつつある脳脊髄液 tau とAβ測定の意義について述べた.
  • 樋口 進
    2001 年 38 巻 3 号 p. 293-295
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 横出 正之
    2001 年 38 巻 3 号 p. 296-299
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 小原 克彦
    2001 年 38 巻 3 号 p. 300-303
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 包括的呼吸リハビリテーションの現状と課題
    桂 秀樹
    2001 年 38 巻 3 号 p. 304-307
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 川合 明彦
    2001 年 38 巻 3 号 p. 308-309
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 矢内 勝
    2001 年 38 巻 3 号 p. 310-311
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 小橋 吉博, 沖本 二郎, 松島 敏春, 副島 林造
    2001 年 38 巻 3 号 p. 312-316
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者の市中肺炎は非典型的症状をとり, 基礎疾患を有し, ADL, 栄養状態も不良なため, 10%と高い死亡率を呈していた. また, 最近2年間での高齢者市中肺炎の検討では, 起炎菌としてS. pneumoniae, Virus, Gram-negative bacilli, H. influenzae, M. tuberculosis が多く, 特にウイルスと細菌の混合感染が冬の市中肺炎の増加に関与していた. 治療はワクチン接種の普及, 抗菌薬が軽症~中等症: ペニシリン系もしくは第2世代セファロスポリン系±マクロライド系抗菌薬, 重症: カルバペネム系±マクロライド系抗菌薬の投与が有用と思われた. 高齢者肺結核の現状は高齢者の比率の漸次増加, 塗抹陽性率が低いため Doctor's delay もみられたが, 耐性化は進行していなかった. 治療は, 強力な抗結核作用を有するリファマイシン系, キノロン系が開発されているが, 高齢者は副作用出現率も高いため, 抗結核薬の減感作療法も念頭におき, 安全性を重視した治療が有用と考えられた.
  • 矢野 聖二, 曽根 三郎
    2001 年 38 巻 3 号 p. 317-319
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者肺癌の治療方針の決定においては, 暦年齢よりも臓器年齢が重要であり, 臓器予備能が十分な早期癌患者には手術療法が推奨される. 進行肺癌患者においては従来のプラチナ製剤を中心とした多剤併用による殺細胞的な化学療法が実施されてきたが, その成績は満足できるものではなかった. 1990年代に登場した新規抗癌剤は, 毒性が低く高齢者に対しても有効性が期待されているが, これのみで高齢者肺癌の予後を劇的には改善できそうにない. 近年, 患者のQOLを損なわず, 腫瘍と宿主の共存を目指すいわゆる Tumor dormancy therapy が新しい治療概念として提唱され, その理論にかなう抗血管新生療法が新しい治療法として世界的に注目され, 血管新生阻害剤が精力的に開発されている. 本稿では, 従来の化学療法剤による高齢者肺癌の治療成績を踏まえ, 新規抗癌剤および血管新生阻害剤をはじめとした分子標的薬の治療成績および開発状況を概説した.
  • 縮小手術に対する多施設共同研究の検討
    良河 光一
    2001 年 38 巻 3 号 p. 320-321
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    肺野末梢型小型肺癌に対する縮小手術の妥当性を検討する多施設共同 Prospective study の結果を示すとともに, 同 study における75歳以上症例についても検討した. 対象は, 腫瘍径2cm以下, N0の積極的適応例55例, 病期, 腫瘍径を問わず種々の理由で縮小手術が適当と思われた消極的適応例100例および腫瘍径2cm以下, N0の1肺葉切除術を行った58例. 術式は積極的適応例は拡大区域切除術, 消極的適応例は部分切除術も可とした. 消極的適応例の検討では腫瘍径2cm以下の5生率は79.5%で2.1cm以上の5生率48.2%の間に差を認めた. また腫瘍径2cm以下, N0の16例の5生率は79.6%であった. 積極的適応例55例中死亡例は10例で原病死4例, 他病死6例であり, 他病死例を除いた5生率は90.7%であった. 消極的適応, 腫瘍径2cm以下, N0例16例と積極的適応55例中無再発, 他病死を除いた65例の5生率は89.5%で, 1肺葉切除43例の5生率81.3%と有意差を認めなかった. 区域切除例の術前後におけるFVCの減少率は肺葉切除群に比し有意に低く, 肺機能の温存に有用であった. 縮小手術群中75歳以上の症例は36例で平均78.2歳であった. 36例中原病死は8例, 他病死は4例であった. また各症例の臨床病期は一致していないが, 5生率は63.7%であり, ほぼ良好な結果であった. 以上より縮小手術は根治性, 呼吸機能の温存の観点から妥当な術式であり, 高齢者においても有用である.
  • 中島 一樹, 田村 俊世
    2001 年 38 巻 3 号 p. 323-325
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    看護や介護のために移乗装置や排泄介助など, 多くの支援機器が開発されている. その中でモニターの果たす役割は大きい. 健康状態の把握や失禁の検知, 徘徊の回避などには, 監視装置が不可欠である. 本論文では実際に利用されているモニターを中心に, 日常生活内やベッド周囲でのモニターと遠隔医療モニターについて述べる.
  • 手嶋 教之
    2001 年 38 巻 3 号 p. 326-328
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    日本では急速な高齢化に伴って介護の重要性が叫ばれている. しかし高齢者のQOL向上の面で考えれば, まず重要なことは高齢者が日常生活動作において自立できるようにすることであり, そのため高齢者の自立を支援する機器は必要不可欠である. しかし重度障害者の場合と比較して高齢者が機器を使用して自立している例はほとんどない. その理由は, (1)高齢者は学習・適応能力が低下しており, 新しい機器, 特にデジタル機器の操作を覚えることが困難である. (2)努力をしてまで自立しようという意欲が乏しい高齢者が多い, という2点にあると考える. 高齢者用機器としてはこれまではスイッチや表示を大きくするなどによって対応しようとなされてきたが, 近年は新しい技術によって使いやすい機器の開発が目指されるようになってきた. その例として, 日常会話による音声指令, 指さし等の身振り認識, 操作方法はそのままで力だけを機器が補助するパワーアシストがある. また高齢者の意欲を高めるための仮想現実感技術が提案されているほか, ペットロボットなど高齢者に楽しみを与える機器の開発も行われてきている. これらの新しい技術には解決すべき問題点もあるために実用化されるまでにはもう少し時間がかかるが, 今後の発展が期待されている分野である.
  • 井筒 岳, 大竹 佐久子
    2001 年 38 巻 3 号 p. 329-332
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    In 1999, 8 elderly people aged over 70 stayed for 5 days in Mizusawa Welfare Techno-house and their health conditions and activities of daily life were monitored using 16 sensors attached around the house.
    To determine a few feasible, practical sensors and optimal sensor positions, acumulated data was analyzed. Because of bud get conditions only two sensors (infrared sensor and life line monitor sensor) were placed in one voluntary house and the data were transferred from the voluntary house to the techno-house through the ISDN and CATV lines. The data were analyzed every days. Only 2 sensors to detect were placed and attached this year, however one more sensor to detect phisical conditions such as ECG records during sleeping time, will be used next year. On the other hand, an integrate system that can analyze many data transferred from various sensors simulta neously was developed. To intrroduce this system into privatehouse, many problems such as privacy protection, security, etc must be solved.
  • 東 祐二, 藤元 登四郎, 田村 俊世
    2001 年 38 巻 3 号 p. 333-336
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    これまで, 介護老人福祉施設における介護は, 人の手による手厚い介護が理想であると考えられてきた. しかしながら, 今日の少子高齢社会におけるマンパワー不足を補うためには, 介護機器を開発し省人力化を図る一方で, 施設を利用する高齢者のQOLを向上させる努力が必要である.
    我々は, 施設介護における介護機器のあり方を検討することを目的として, 施設介護機器の実情を調査した. その結果, 施設内で長く稼働する機器は, 高齢者や介護者に直接的に装着しそれに耐えうるものであった. また, 介護者にとって使用感の高い機器はその用途が明確なものであった. 現状では, 種々の介護業務を完全に代行しうる機器は少ないと考えられるが, 業務をサポートし得る機器は多く開発されており, それをうまく運用することによって作業効率を向上させることは十分に期待できる. そこで我々は, 施設介護業務に汎用自動搬送車を導入して, 配膳車と入浴介護における搬送業務の省力化を図った. その結果, 食事介護と入浴介護時間は減少し, 代りに入所者の用事やベッド周辺介護など直接的な介護時間が増加した. 介護の効率化を図るために, 必要な機器とその特性をいかすべく, 新しい介護システムを構築する必要性があることがわかった.
  • 学際的縦断研究 TMIG-LISAから
    鈴木 隆雄
    2001 年 38 巻 3 号 p. 338-340
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 辻 一郎, ソバジェ カトリーヌ, 久道 茂
    2001 年 38 巻 3 号 p. 341-343
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Active life expectancy (ALE) is defined as an expected duration to be spent with a certain level of physical/mental function. The objectives of this article are to indicate ALE values based on our prospective observation, and to discuss factors influencing regional and gender differences in ALE values.
    We estimated ALE without disability in basic activities of daily living (ADL) on a 5% random sample (n=3, 459) of the residents aged 65 years and over in Sendai City between 1988 and 1991. At the age 65, ALE was 14.7 years for men and 17.7 years for women. ALE occupied 91% of the total life expectancy for men and 87% for women. As compared with the reports for the American elderly, ALE was longer in Sendai than in the United States. The duration to be spent with disability was shorter among the subjects in Sendai.
    We estimated ALEs in three functional areas: basic ADL, instrumental ADL, and mobility, on all the residents aged 65 years and over (n=3, 590) at Wakuya Town between 1994 and 1996. For both sexes, ALE in IADL was shorter than those in basic ADL and mobility. The development and progression of disability were different between sexes: men experienced disability at a younger age and progressed at a faster rate than women.
  • 終末期の問題を含む
    安村 誠司
    2001 年 38 巻 3 号 p. 344-346
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 3. E項-(診断と症状) の改訂と医療での有効性
    峯廻 攻守, 中川 翼, 志渡 晃一, 阿蘇 貴久子, 大浦 武彦, 川畑 雅之, 近藤 喜代太郎
    2001 年 38 巻 3 号 p. 347-351
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    MDSのE項-(診断と症状) は「現在のADL, 認知, 行動状況, 医学的治療, または死の危険性」に関係があると認めた場合に医師が記入する. 私共は2報で米国で用いられる原版を用いて, 西円山病院の1,735名の入院高齢障害者の診断と症状を記述したが, 米国で用いられる原版を日本で用いた場合, いくつかの不都合があることを示した.
    本報では「診断と症状」をA要介護状態を生じた基礎疾患, B, Aの症候・続発状態などで, 要介護状態を増悪させたもの, C合併症などで, 要介護状態に影響のないものに分け, 日本での診療の実情, とくにA群に属する疾患の特性に配慮し, E項を改訂しA, B, Cを別々に記載できるように工夫した. 分類はICD9 (本研究の時点でICD10はまだCD・ROM化されていない) に準拠し, B, Cに対しては不動文字を用意し, 934患者について上記のA (3つまで), B, Cに分けて記載した.
    Aは属するコードが0, 1, 2, 3の順に性を合わせて24, 670, 195, 45名の順であり, ゼロ (介護を要しない群) を除くと, Aがひとつだけの患者は77.6%であった. Aに属する疾患は63コードにわたっていたが, 患者の3%以上の要介護状態の原因となったものは4コード (ICD9 290, 332, 431, 434) であり, それらのほとんどは脳の変性と虚血であった.
    改訂E項では要介護状態の出発点となった疾患と患者の現状とがともに明らかになり, 現在, 西円山病院で医療もふかく関与しつつ高齢者の介護に使用されている.
  • 特に low density lipoprotein のサイズ変化について
    戸塚 光哉, 宮下 洋, 伊藤 嘉晃, 小山 朝一, 橋口 正一郎, 渡邊 仁, 白井 厚治, 伴 俊明, 石原 弘行, 山本 和男, 川野 ...
    2001 年 38 巻 3 号 p. 352-359
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    β-blocker の使用によりLDLが小粒子化することが報告されている. 今回我々はISAを有するβ1選択性のβ-blocker, 塩酸セリプロロールの脂質代謝, 特にLDLサイズに及ぼす影響を検討した. 対象は本態性高血圧患者41名. 塩酸セリプロロールを200mg/日投与し12週間, 血圧, 脈拍, 体重, 総コレステロール (TC), トリグリセライド (TG), HDLコレステロール (HDL-C), LDLコレステロール (LDL-C) 値, アポ蛋白AI, II, B, CII, III, E値, リポ蛋白 PAGdisc 電気泳動での Midband の変化を検討した. さらにLDLサイズの変化は同電気泳動上のFastβリポ蛋白の定性とLDLの相対移動度 (LDL-Rm) の変化により検討した. 血圧, 脈拍は投与4, 8, 12週後に有意に低下. 体重は有意な変動はなし. 血清TC値は対象者全体で投与8週後に有意に低下, 高TC血症者 (TC≧220mg/dl) では4, 8, 12週後に有意に低下. 正TC血症者 (TC<220mg/dl) では有意な変動なし. 血清TG値は対象者全体で有意な変動はなし. 高TG血症者 (TG≧150mg/dl) で4, 8週後に有意に低下. 正TG血症者 (TG<150mg/dl) では4, 8, 12週後に正常範囲ではあるが有意に増加. 血清HDL-C値は有意な変動はなし. 血清LDL-C値は対象者全体, 正LDL-C血症者 (LDL-C<150mg/dl) で有意な変動なし. 高LDL-C血症者 (LDL-C≧150mg/dl) では4, 8, 12週後に有意に低下. 血清アポ蛋白値は有意な変動なし. 対象者全体で Midband は8週後有意に低下, Fastβリポ蛋白は有意な変動なし. 高TG血症者では Midband は4, 8週後に, Fastβリポ蛋白は4, 8週後に, 高TC血症者では Midband は4, 8, 12週後に, Fastβリポ蛋白は4, 12週後に有意に低下. LDL-Rmは有意な変動はなし. 塩酸セリプロロールによりLDLの粒子サイズは小型化しなかった.
  • 老年者の問題行動や介護者自身の要因と家族負担度との関連
    服部 明徳, 大内 綾子, 渋谷 清子, 佐藤 和子, 細谷 潤子, 中原 賢一, 西永 正典, 亀田 典佳, 土持 英嗣, 松下 哲, 折 ...
    2001 年 38 巻 3 号 p. 360-365
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    介護負担度に影響する因子を明らかにする目的で, 老年者の問題行動の有無や介護者自身の要因と介護負担度との関連をバーンアウト・スケールを用いて検討した. 対象は当院総合内科に入院した65歳以上の患者のうち, 家族が何らかの介護をしていた73例 (男性31例女性42例, 平均年齢82.7±6.9歳) で, 主たる介護者へのアンケートにより, 患者・介護者の属性や一日の介護時間, 徘徊などの問題行動の有無などを調査した. また, アンケートには Pines のバーンアウト質問項目が含まれ, 計算式からバーンアウト・スコアを算出した. 介護者の属性では, 約3割が配偶者であり, 介護者が高齢であるとバーンアウト・スコアは有意に高値となった (p<0.01). これに加えて介護者自身の健康状態に基づき介護負担を重く感じるほどバーンアウト・スコアは高値となった (p<0.001). 老年者の問題行動のうち, 夜間の介護が必要 (p<0.05), 監視が必要 (p<0.01), そして介護拒否 (p<0.01) があるとバーンアウト・スコアは有意に高値となった. バーンアウト・スコアを説明変数とする重回帰分析では, 老年者の Basic ADL・問題行動・介護者自身の要因のうち介護者自身の健康状態による介護負担, 夜間の介護そして排泄の介助が独立した因子でバーンアウト・スコアの約4割を説明し得た (R2=040: p<0.0001). 介護保険サービスの導入によって, 上記の家族の介護負担を重くしている要因が改善され, バーンアウト・スコアを低下させるか検討することが今後必要である.
  • 内村 美由紀, 包 隆穂, 菊谷 武, 稲葉 繁, 齊藤 昇
    2001 年 38 巻 3 号 p. 366-371
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    病院に入院中の重度痴呆患者に対して歯ブラシ行動が習慣化可能か否か検証した. 今回の研究目的には患者の口腔衛生状態の改善, 職員教育, 作業療法学的アプローチの有効性の検討, 多職種による職域を越えたケアとADL訓練の試みを含み, 多重的で極めて臨床的な計画のもとに実施した.
    対象患者は血管性痴呆女性患者6名 (平均年齢84歳) で, 同室にて入院加療中であった. 全員, 歩行可能だが正常なコミュニケーションは困難だった. 口腔内の状態は有歯顎者は4名 (平均11.3歯), 義歯の使用者は4名であった. 本研究のアプローチ法は歯科, 作業療法士が操作を加えずに観察と評価を行う観察期 (a) から開始し, 作業療法士, 歯科医師, 歯科衛生士, 看護婦, 補助看護婦が協力する総合アプローチ期 (b), 再び観察と評価のみを行う観察期 (c) の3期で計画, 実施した. 約1年のアプローチの結果, ほぼ毎日のセルフケアが特定の介助のもと可能になったものの自立的な習慣とはならなかった. パフォーマンスについては6名中4名向上, 1名は変化無し, 1名は低下を示した. 口腔内についてはセルフケアのみ, または歯科以外のスタッフにより衛生状態を有意に向上させることはできず, 改めて歯科スタッフによるプロフェッショナルオーラルヘルスケアと職種を越えて評価, 治療にあたる超職種型チームアプローチの重要性が示された.
    今回実施した多職種による総合的なアプローチは病院でのチームアプローチの質的向上と治療環境の形成を可能にし, 持続的に喪失されていく痴呆患者の合目的活動の維持と向上の方法論を提示した.
  • 平野 玲子, 板倉 弘重, 近藤 和雄
    2001 年 38 巻 3 号 p. 372-376
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    酸化した低比重リポ蛋白 (LDL) はマクロファージや平滑筋細胞に取り込まれ, 動脈硬化病変部に数多く認められる泡沫細胞を形成させることから, 動脈硬化の発症, 進展に深く関与する重要な因子と考えられている. 一方, 加齢に伴い, 血清脂質が増加することや生体内抗酸化酵素の活性が低下することが知られており, これはLDLの酸化を介して動脈硬化発症の機会を増すことが推察される. 本研究ではLDL抗酸化能に及ぼす加齢の影響に焦点をおき, その関連性を検討した. 健常成人306名 (男性169名, 女性137名) を対象にLDL抗酸化能を測定した結果, LDLの酸化平均 lag time は58.9±1.0minであり, 20代で80.3±4.8minと最も長く, 40代で54.1±1.6minと最も短かった. 性差年齢階層別に比較すると, 20代男性が最も長く (88.9±6.2min), 40代女性は最も短い (50.7±2.2min) ことが認められ, 生化学検査で異常を認めた対象者を除外しても同様の結果が示された. 次に lag time に影響を与える因子に関して, 全例を対象に重回帰分析にて検討した結果, 年齢階層および尿酸 (UA), LDL-コレステロール (LDL-C) の各変数が有意となり, LDL抗酸化能は加齢および加齢に伴うLDL-Cの変動, さらには生体内抗酸化機能の増減に影響を受けていることが示唆された.
  • 他学部新入生との比較
    野村 秀樹, 内藤 通孝, 井口 昭久
    2001 年 38 巻 3 号 p. 377-381
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    【緒言】高齢者の医療・介護・福祉の連携および終末期医療が益々重要になると思われる. 医学教育でもこれらに関する教育が必要であるが, 実効性をあげるためには医学生の経験・知識・意識を踏まえることが重要と考えられる. 今回我々は1998年~2000年にわたって, これらに関する医学部新入生の意識調査を行い, 1999年については他学部生との比較を行ったので報告する.【方法】毎年4月に医学部新入生 (定員100名) を対象に無記名アンケート形式で行った. 1999年のみ他学部生75名に同様のアンケートを行い比較した.【結果】医学部生が他学部生に比べて有意に男性の割合が多かった. 実際の介護経験のある者は, 学部・年度に関わらず10%前後と少数であった. また, 身近に介護を見たことのある者の割合も, 学部・年度に関わりなく約1/3前後であった. 介護保険制度の導入及び介護支援専門員の存在は年を追うごとに知っている者の割合は増加し, 2000年度入学生は各々96.6%, 52.3%が知っていた. 癌告知の問題については, 自分自身や患者に対しては告知に前向きな回答が80%前後を占めたが, 自分の家族に対しては「告知をする」という回答と「わからない」とする回答にほぼ二分された. 高齢者介護・福祉及び終末期医療に対する関心は, 医学部生では半数以上が「関心がある」と回答しており, 他学部生が半数以下だったのに比較して有意に多かった.【考察】介護経験・知識及び癌告知に対する態度については他学部生と医学部生の間で有意な差はなく, 本学の医学部生に関しては, 他学部生と比較して特にこれらの経験・知識が多いとは限らないことが示された. しかし, 関心は他学部生よりも高く, 学生の経験や知識の不十分さを前提として, これらに対する教育を行うことが重要と考えられた.
  • アルツハイマー型老年痴呆における痴呆問題行動・身体障害度と家族介護負担度の関連
    亀田 典佳, 服部 明徳, 西永 正典, 土持 英嗣, 中原 賢一, 大内 綾子, 松下 哲, 金丸 和富, 山之内 博, 折茂 肇
    2001 年 38 巻 3 号 p. 382-387
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    在宅で介護を続けているアルツハイマー型老年痴呆 (SDAT) 患者25名 (平均年齢83.8歳) とその主たる介護者 (平均年齢59.9歳) を対象にして本研究を行った. 介護者にアンケートを渡しその回答を分析した. アンケートには, 1) 患者の痴呆の問題行動の程度 (“痴呆問題行動度”) と, 問題行動に対する介護者の感じている介護負担感 (“痴呆負担感”), 2) 患者の身体症状 (“BADL”) と, BADLの低下に対する介護者の感じている介護負担感 (“身体負担感”), および, 3) Pines らのバーンアウト・スケールが含まれる. バーンアウト・スケールから計算されるバーンアウト・スコアとの相関係数は“BADL”が, r=-0.719, p<0.001,“身体負担感”が, r=0.791, p<0.001,“痴呆問題行動度”が, r=0.740, p<0.001,“痴呆負担感”が, r=0.727, p<0.001と正あるいは負の高い直線的な相関を示したが, 身体的問題と痴呆の問題行動の両者を考慮した,“痴呆問題行動度”+(20-“BADL”) との相関は, r=0.853, p<0.001, BADL低下による負担感と痴呆の問題行動からくる負担感の両者を合計した負担感 (“身体負担感”+“痴呆負担感”) との相関はr=0.874, p<0.001, とより直線性が高くなり, 介護負担感を考える場合, 痴呆の問題行動とBADL低下の問題の両者を考慮する必要性があると考えられた. バーンアウト・スコアは, BADLの低下に伴い増加し, BADLが12~14点以上では比較的低く推移するが, 10~12点以下に下がると急に増加した. またBADLが4~6点以下に低下するとバーンアウト・スコアも低下する傾向にあった. 本アンケートは介護者のおかれているストレスを評価するのに有用であると考えられる.
  • 高齢非糖尿病患者との比較
    茂木 七香, 服部 文子, 牛田 知佳, 梅垣 宏行, 三浦 久幸, 井口 昭久
    2001 年 38 巻 3 号 p. 388-392
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢糖尿病患者と高齢非糖尿病患者に認知機能検査 (Cog-T) と頭部CT検査を行い比較検討した. 対象は65歳以上の糖尿病薬物治療患者 (DM薬物群) 9名 (平均年齢70.78歳), 非薬物治療患者 (DM非薬物群) 8名 (72.13歳), 非糖尿病患者 (CR群) 21名 (73.79歳) である. Cog-TとしてWAIS-R (WR) 数唱・符号, STROOP TEST (ST), ADAS単語再生 (AD), MMSEを6カ月間隔で2回実施し, HbA1c値, 糖尿病罹病歴, 合併症, 関連疾患の有無を調査した. 頭部CT検査はCog-T2回目実施時に行い, 画像上で測定した数値を計算して得られた以下の5つの変数によって分析した; 1) Evan's Ratio 2) Inverse Cella Media Index 3) 第三脳室最大幅 4) 左右側脳室下角最大幅 5) 島領域レベルの左右それぞれのシルビウス裂の最大幅.
    2回のCog-Tで3群間に有意差のあるものはなかった. 頭部CT検査では右側脳室下角最大幅において3群間に有意差を認め (ANOVA, P=0.035), DM薬物群の右側脳室下角最大幅がDM非薬物群, CR群と比べ有意に大きかった (Fisher's post hoc test, P=0.030, P=0.016).
    以上のように, 3群間の認知機能の6カ月間の経過では有意差が見られなかったが, CT画像上ではDM薬物群において右側脳室下角に有意な開大が認められた.
  • 清水 一紀, 藤井 靖久
    2001 年 38 巻 3 号 p. 393-398
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の糖尿病教育において, 医療チームが老年者糖尿病に特有の心理特性を理解することは臨床的意義があると思われる. また, 良好な血糖コントロールを維持するためには, 患者の心理変化を把握する事も重要である. そこで, 当院にて糖尿病教育入院を行った青壮年糖尿病患者群254例と老年者糖尿病患者群102例を対象に, 抑鬱尺度 (SDS) 及び交流分析 (TEG) を用いて心理評価を行った. まず老年者糖尿病患者の心理特性を検討した結果, 老年者では青壮年者に比し, TEGでのNP, Aが有意に高値であった (p<0.01). 次に, 教育入院前後におけるストレスをSDSで比較した結果, 老年者, 青壮年者とも退院時SDSは入院時SDSに比し有意な低下を認めた (p<0.01). 老年群におけるSDS改善群と非改善群を比較すると, 改善群は入院時SDSが有意に高値であった (p<0.01). そこで入院時SDSを抑鬱群, 軽度高値群, 正常群に分け検討したところ, 抑鬱群は有意にA, FCが低く, ACが高かった (p<0.01).
    以上老年者糖尿病患者は, 合理的で世話付きな面が認められる傾向があり, 青壮年者と同様, 糖尿病教育による心理的改善効果が認められた. また, 患者教育による心理的改善は, 入院時の心理ストレスの大きいものに認められ, この入院時の抑鬱は, 従順で消極的な心理特性との関与が伺われた. 以上から老年者糖尿病の患者教育において, 心理評価は有用であると思われた.
  • 服部 文子, 植村 和正, 益田 雄一郎, 茂木 七香, 内藤 通孝, 井口 昭久
    2001 年 38 巻 3 号 p. 399-404
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    在宅療養を経て死亡した患者を対象に, 24時間医療サービスの有無が在宅死の成立を規定する因子であるか否か, 在宅死を可能にするその他の因子は何かを検討した. Kおよび, M訪問看護ステーションにおいて訪問看護サービスを受け, 在宅療養を経て死亡した81名の訪問看護記録を retrospective に検討した. 対象を自宅で死亡した群と病院あるいは老健施設で死亡した群に分け, 患者特性, 終末期における本人, 家族, 医療者の意向, 介護環境について2群間を比較した. 自宅死亡群では, 死亡1カ月前の日常生活自立度のランクCが有意に多かった (48.1% vs. 84.6%). 死亡場所の意向は, 患者・家族・医療者のいずれにおいても自宅での死を希望する意向を表明している例が自宅群で有意に多かった. その他の患者特性 (年齢, 性別, 主病名, 痴呆度, 訪問期間), 介護環境 (同居家族数, 介護者, 補助介護者の有無) には有意差はなかった. 入院の理由は, 病状の悪化が最も多く, 急激な病状の悪化の際に, 入院を選択する結果と推察された. 24時間訪問診療体制がある施設 (M) とない施設 (K) では, Mの方が, 自宅死亡率が高い傾向があった (42% vs. 27%, p=0.18). 在宅死を希望する意思表示は, 患者・家族・医療者のいずれにおいてもMで多い傾向が認められた. 以上から, 在宅死を規定する因子として, 死亡1カ月前のADLが寝たきりに低下していること, 患者・家族・医療者の在宅死を希望する意思表示の存在が明らかになった. また, 在宅ターミナルケアを支えるには, 24時間の医療体制は必要な条件であることが推察された. 24時間の訪問診療体制を持つ施設では, 医療者側から在宅での看取りを家族に提案していることが推察された. 在宅ターミナルケアを充実させるには, 在宅医療サービスの24時間体制に加えて, サービス提供者側からの働きかけが必要と思われた.
  • 御舘 靖雄, 山内 博正, 高見 昭良, 朝倉 英策, 中尾 真二
    2001 年 38 巻 3 号 p. 405-408
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は80歳男性. 骨髄異形成症候群 (MDS) で無治療にて経過観察中, 1年6カ月後に急性骨髄性白血病に急性転化し入院した. 入院時, MDS経過時には認めなかった trisomy 8染色体異常が出現した. 高齢かつ performance status を考慮し, G-CSF 150μg+cytarabine ocfosfate (SPAC) 250mgによる治療を開始した. 治療開始3週後には治療効果がみられず, 低形成髄のままでSPACを中止した. SPAC中止18日後より維持療法として melphalan 2mg/日の連日経口投与を開始した. melphalan 投与開始直後から末梢血の回復が認められ, 骨髄芽球比率が減少し, 8番染色体のFISH解析でも異常は認めなかった. その後輸血不要となり, performance status も4度から2度へ改善した. 染色体解析でも正常核型を維持し, melphalan 投与による毒性も認めなかった. 最近, 高齢者など high risk 白血病患者を対象に Ara-C, etoposide, SPAC などを用いた低用量治療がQOLを考慮した治療として注目されている. 過去の報告で急性白血病やMDS症例に対する低用量 melphalan 療法の報告は多くはなく, 染色体異常を有する症例に対しては無効であった. 本症例はSPAC+G-CSF併用療法後の melphalan 低用量療法が有効であった.
  • 黄川田 雅之, 小山 哲央, 小川 公啓, 福富 充, 新井 久之, 勝沼 英宇, 岩本 俊彦, 高崎 優
    2001 年 38 巻 3 号 p. 409-413
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は79歳女性, 転倒による腰椎圧迫骨折のため2000年1月18日に当院入院となったが, 入院前より感冒様症状と38度台の発熱があり, 入院後の胸部X線にて右肺野の網状影を認めたため, 肺炎の診断のもと抗生剤による加療を行った. しかし, あらたに肺炎が左肺野にも出現し低酸素血症も進行, 喀痰の塗抹培養でも有意な菌は検出されなかったことから, ウイルス感染による肺炎を疑った. 進行性の呼吸不全に対しメチルプレドニゾロンによるパルス療法を行うとともに, nasal BiPAP (Bi-level Positive Airway Pressure) による非侵襲的陽圧呼吸 (noninvasive positive pressure ventilation: 以下NIPPV) を併用とした. その後徐々に血液ガスは改善し, 装着後7日間でNIPPVから離脱可能となり, その後肺炎も治癒した. 2週間後のペア血清にてインフルエンザA抗体価が128倍まで上昇していたことからA型インフルエンザ肺炎と診断した. NIPPVは本例のように進行性肺炎による急性呼吸不全に対しても有効で, 特に高齢者で人工呼吸器からの離脱が困難であると予想されるような症例に対しては, まず最初に試みてみるべき換気補助療法であると考えられた.
  • 2001 年 38 巻 3 号 p. 414-430
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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