日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
38 巻, 4 号
選択された号の論文の35件中1~35を表示しています
  • 林 泰史
    2001 年 38 巻 4 号 p. 433-439
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 富田 哲治, 長瀬 隆英
    2001 年 38 巻 4 号 p. 440-443
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    哺乳類, 昆虫などにおいて感染防御を司る生体内の抗菌物質の存在については以前より知られている. ヒトにおける抗菌ペプチドはディフェンシンと総称され, 細菌, 真菌など広範囲にわたり抗菌活性をもち, このうち粘膜上皮の感染防御に関与しているのがβ-defensin である. 現在, 3種類のβ-defensin が単離・構造決定されているが, human β-defensin-2 (hBD-2) は, 1) 肺, 気管にて発現がみられる, 2) 細菌感染や炎症性サイトカイン刺激にて発現誘導される, という特徴をもっている. そのため, hBD-2は呼吸器感染症により密接な関係をもつことが示唆されている. その抗菌活性機序として従来より細菌細胞膜表面にディフェンシン重合体が孔 (pore) を形成し, 細胞膜透過性を亢進するためと考えられているが, hBD-2ではそれ以外に膜電位への静電気的な関与によるものと考えられている. また発現誘導されるhBD-2の転写活性としてはCD14と Toll like receptors (TLRs) を介してNF-κBを活性化すると報告されている. hBD-2は元来生体で産生されるものであり, 広範囲に抗菌活性を有することより, 今後の臨床的応用が期待される.
  • 岩本 俊彦
    2001 年 38 巻 4 号 p. 444-446
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 久米 典昭
    2001 年 38 巻 4 号 p. 447-451
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    血中LDLの増加が, 粥状動脈硬化の極めて強力な危険因子であることはよく認知されるに至ったが, その分子機構については未だ不明な点も多い. この15年間ほどの研究により血管壁内にうっ滞したLDLが酸化変性を受けることがその成因であることを示唆する研究成果が報告されてきた. 酸化LDLは特にマクロファージにおいて細胞内でのコレステロールの蓄積を引き起こすのみならず, 催炎症性の変化をもたらすなどで, 動脈硬化の進展, プラークの破綻を惹起していると考えられる. 酸化LDLに対する受容体はすでに複数の分子が同定され, その性質などが明らかにされてきている. 抗酸化剤のヒト動脈硬化に対する治療効果などはさらに検討すべき点も多い.
  • 永田 正男
    2001 年 38 巻 4 号 p. 452-454
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢糖尿病患者に対するインスリン注射による血糖コントロールは, 日常の診療の上, 意外に少なくない. インスリン治療は, 報告の増加している高齢発症1型糖尿病の絶対的適応に加えて, SU剤二次無効例が多いものと思われる. 高齢者のインスリン自己注射あるいは自己血糖測定はやや複雑な操作を伴うため, 自己管理が困難な事例も多いのではないかと危惧される. 高齢糖尿病患者に薬剤コンプライアンスに対するアンケート調査を行った結果から, 高齢者インスリン治療の問題点を明らかになった. また, SU剤二次無効例にはブドウ糖毒性によるインスリン分泌不全と抵抗性によるものが多く含まれており, 短期のインスリン治療により経口剤への切り替えが可能である. 一方で, インスリンの絶対的欠乏を示す1型糖尿病に対するインスリン治療は若年者と同様に厳格なインスリン治療を必要とする.
  • アポリポ蛋白E, プレセニリンを中心に
    柳澤 勝彦
    2001 年 38 巻 4 号 p. 455-457
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 関 英一
    2001 年 38 巻 4 号 p. 459-460
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 青柳 俊
    2001 年 38 巻 4 号 p. 461-464
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 安藤 祐介
    2001 年 38 巻 4 号 p. 465-466
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 加藤 正弘
    2001 年 38 巻 4 号 p. 467-469
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 瀧口 徹
    2001 年 38 巻 4 号 p. 471-472
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 佐々木 啓一
    2001 年 38 巻 4 号 p. 473-475
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 米山 武義
    2001 年 38 巻 4 号 p. 476-477
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    近年, 誤嚥性肺炎の治療と予防に対する新しい戦略が構築されつつあるが, その中で口腔ケアがにわかに注目されている. われわれは数年にわたる口腔ケアと誤嚥性肺炎発症に関する介入研究から口腔ケアが誤嚥性肺炎を予防しうる可能性をつかんだ. 本ワークショップでは, これを裏付ける2つの研究を取り上げ, その内容を紹介する.
    特別養護老人ホーム入所者を対象に, 5カ月にわたり歯科医師と歯科衛生士による専門的口腔ケアを受けた高齢者 (口腔ケア群, 7名) と, 同時期入所者自身によって口腔清掃を行った, 高齢者 (対照群, 8名) にわけ, 両グループの咽頭における総細菌数, 連鎖球菌数および黄色ブドウ球菌を含むブドウ球菌数がどのように変動するかについて検討した. その結果, 長期間専門的口腔ケアを継続した5カ月後の口腔ケア群と対照群を比較すると対照群に比べて口腔ケア群の総細菌数および連鎖球菌数は共にt検定により統計学的有意差 (p<0.01) をもって減少した. さらに口腔ケア群では, 急性呼吸器感染症の主たる起因菌の一つであるブドウ球菌が, 3カ月後より検出限界以下に減少した.
    一方, 全国11カ所の特別養護老人ホーム入所者366名を対象として, 肺炎発症に関する介入研究を行った. 各施設毎, 無作為に従来通りの口腔ケアのみにとどめる群 (対照群) と看護婦もしくは介護職による毎食後の歯磨きと1%ポピドンヨードによる含嗽, さらに週に1回の歯科医師もしくは歯科衛生士によるブラッシングを行う口腔ケア群に分類した. そして2年間にわたって37.8℃以上の発熱日数および肺炎罹患者数を追跡調査した. その結果, 口腔ケア群は対照群に比較し, 発熱日数および肺炎罹患者数とも統計的に有意の差をもって抑制された.
  • 角 保徳
    2001 年 38 巻 4 号 p. 478-480
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 「口腔ケアによる高齢者の肺炎予防」2年間の追跡調査結果から
    吉田 光由, 米山 武義, 赤川 安正
    2001 年 38 巻 4 号 p. 481-483
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者の肺炎の多くが口腔内細菌の誤嚥により引き起こされる誤嚥性肺炎であることが指摘されている. とりわけ, 誤嚥性肺炎起炎菌として歯周病菌であるグラム陰性嫌気性菌が注目されており, 口腔内に歯がある有歯顎者の方が歯のない無歯顎者よりも誤嚥性肺炎が発生する危険性が高いという報告も見受けられる. 我々は全国11カ所の特別養護老人ホーム入所者366名を口腔ケアを行う群 (ケア群184名, 平均年齢82.0歳) と行なわない群 (対照群182名, 平均年齢82.1歳) に分け, ケア群には, 看護士もしくは介護職による毎食後の歯磨きならびに1%ポピドンヨードによる含嗽の他に, 週に1回, 歯科医師もしくは歯科衛生士がブラッシングを行なったのに対し, 対照群では, 従来行われていたケアをそのまま継続することで, 両群の肺炎発生頻度を比較した. 2年間にわたる追跡調査の結果, 誤嚥性肺炎は, 脳血管障害の既往 (p<0.05) のあるADLの低下 (p<0.01) した者で有意に発生したものの, 有歯顎者と無歯顎者との間で肺炎の発生に差はなかった. さらに, 期間中の肺炎発生者は, ケア群で21名 (11%), 対照群で34名 (19%) とケア群で有意に低く (p<0.05), この傾向は, 有歯顎者においても有意に (p<0.05), 無歯顎者でも有意差はなかったもののほぼ同様の傾向が示された. このことは, 口腔ケアは口腔内の歯の有無に関わらず, すべての要介護高齢者の肺炎予防に効果的であることを示唆している.
  • 気管支喘息を中心にして
    大類 孝, 山谷 睦雄, 山田 紀広, 冲永 壯治, 矢内 勝, 佐々木 英忠
    2001 年 38 巻 4 号 p. 484-486
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    気管支喘息の新しい早期診断法を確立するために, 気管支喘息の患者 (未治療群30名, 吸入ステロイド治療群30名) および健常人 (非喫煙群30名, 喫煙群20名) を対象として, single-deep-breath 法によって, 呼気中の一酸化炭素 (CO) 濃度を測定した. その結果, 未治療の気管支喘息患者では, 5.6 (平均) ±0.6 (標準誤差) ppmと健常人の1.5±0.1ppmに比して有意な上昇を認めた (p<0.001, n=30). また, 気管支喘息患者の呼気中CO濃度は吸入ステロイド剤のベクロメサゾン (800μg/day) の4週間の治療により正常化することが確認され, 疾患の活動性の指標となり得ることが明らかにされた. また, 呼気中のCO濃度は, 喘息患者の喀痰中の好酸球数と正の相関を示すこと, さらに一秒率と逆相関することが明らかにされた. 本法は, 高齢者や比較的重症患者においても, ベットサイドで非侵襲的に施行でき, 今後日常の診療に十分に活用されるものと考えられる.
  • 山田 正仁
    2001 年 38 巻 4 号 p. 487-488
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    脳アミロイドアンギオパチー (CAA) の発症要因を解明することを目的に, アルツハイマー病 (AD) やアミロイドβ蛋白沈着との関連が報告されているアポリポ蛋白E (APOE), プレセニリン-1 (PS-1), α1-アンチキモトリプシン (ACT), ブチリルコリンエステラーゼ (BChE), α2-マクログロブリン遺伝子 (A2M) 多型とCAAとの関連を分子遺伝学的に検討した. ADの危険因子である. APOEε4アリルがCAAのリスクでもあることが米国で報告されているが, 日本人高齢者においてはε4とCAAとの直接的な関連は明らかではなかった. 一方, PS-1遺伝子多型とCAAの間には有意な関連があり, PS-1 2/2多型がCAAが低リスクであることと関連していた. また, ACT遺伝子多型が, ADにおけるCAAの程度と有意に関連していた. BChEおよびA2M遺伝子多型はCAAと関連しなかった. 本研究により, CAAがPS-1およびACT遺伝子多型と関連することが示唆された.
  • 川上 秀史
    2001 年 38 巻 4 号 p. 489-490
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 久木山 清貴
    2001 年 38 巻 4 号 p. 491-493
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 丸山 和佳子
    2001 年 38 巻 4 号 p. 494-497
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    孤発性パーキンソン病の病因は不明であるが, ヒト脳内に存在するドパミン神経に選択的な神経毒の関与が示唆されている. N-メチル (R) サルソリノールはそのような神経毒の候補物質であり, ヒト脳内でドパミンから2段階の酵素反応により生成される. (R) サルソリノールからN-メチル (R) サルソリノールを生成する酵素である中性 (R) サルソリノール N-メチルトランスフェラーゼは, N-メチル (R) サルソリノール生成の律速酵素である. 未治療パーキンソン病患者の脳脊髄液の分析により, N-メチル (R) サルソリノール濃度がパーキンソン病患者で増加していることが示された. さらに, リンパ球中の中性 (R) サルソリノール N-メチルトランスフェラーゼ活性を分析したところ, パーキンソン病患者において本酵素活性の増加が認められた. 脳内中性 (R) サルソリノール N-メチルトランスフェラーゼ活性の増加は, 黒質ドパミン神経における神経毒, N-メチル (R) サルソリノールの増加を引き起こし, 長期間の蓄積の後に細胞死の原因となる可能性がある. 現在, 本酵素活性を規定する環境および遺伝因子につき検討が行われている.
    N-メチル (R) サルソリノールによるドパミン神経細胞死の機序を培養細胞を用い検討したところ, 用量依存的にアポトーシスが惹起されることが示された. さらに, 近年その神経保護作用が注目されている propargylamine 化合物により, アポトーシスが抑制された. N-メチル (R) サルソリノールおよび propargylamine 化合物の作用点はミトコンドリアであることが示唆された. propargylamine 化合物は経口投与可能な神経保護薬として有用である可能性があると考えられた.
  • 太田 信孝, 中島 敏晶, 江見 充
    2001 年 38 巻 4 号 p. 498-500
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 中里 雅光, 松倉 茂
    2001 年 38 巻 4 号 p. 501-506
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    われわれは血清蛋白であるトランスサイレチンの分子異常が中年発症の遺伝性全身性アミロイドーシスの原因物質であることを明らかにしてきた. 今回, 家族歴のない高齢発症の心アミロイドーシスとアミロイドポリニューロパチー患者におけるトランスサイレチンの分子異常を解析した. トランスサイレチンの免疫染色により病理診断の確定した5例の心アミロイドーシスと15例のアミロイドポリニューロパチーの生検または剖検組織より, DNAとアミロイド線維蛋白を抽出した. トランスサイレチン遺伝子の塩基配列解析とアミロイド線維蛋白のアミノ酸配列解析により, 心アミロイドーシス症例のうち, 3例がトランスサイレチン Met 30, 2例がトランスサイレチン Ile 50であった. またアミロイドポリニューロパチーの12例がトランスサイレチン Met 30, 2例がトランスサイレチン Ile 50, 1例がトランスサイレチン Ser 109であった. 代表的な6例の臨床像とDNA診断を含む塩基配列解析ならびにアミロイド蛋白の構造解析の成績も提示した. 高齢発症で家族歴のない原因不明のアミロイドーシスにはトランスサイレチンの分子異常が原因となる例がある. 剖検により初めてトランスサイレチン型アミロイドが証明された例でも, 極めて少量の組織からトランスサイレチンの遺伝子変異を同定することが可能である.
  • 4年間の追跡調査
    鈴木 達也, 大庭 建三, 猪狩 吉雅, 松村 典昭, 犬塚 有紀, 木川 好章, 網代 由美子, 岡崎 恭次, 中野 博司, 妻鳥 昌平
    2001 年 38 巻 4 号 p. 507-513
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    2型老年糖尿病患者において, 高Lp (a)血症が虚血性心疾患および穿通枝系脳梗塞 (脳梗塞) の発症に及ぼす影響を検討する目的で, 4年間の経年観察を行った. 対象は60歳以上の2型糖尿病患者158名 (男性83名, 女性75名) で, 観察開始時点での虚血性心疾患および脳梗塞の合併の有無別に, 脳梗塞非既往群, 脳梗塞既往群, 虚血性心疾患非既往群および虚血性心疾患既往群の4群に分類した. それぞれの群について, 観察開始時の血清Lp (a) 値により20mg/dl以上の高Lp (a) 血症群と20mg/dl未満の正Lp (a) 血症群の2群に分類し, その2群間における虚血性心疾患および脳梗塞の発症率を Kaplan-Meier の生存曲線法を用いて比較検討した. 虚血性心疾患は心電図および血液生化学的検査にて, 脳梗塞は頭部CTにて診断した. その結果, 虚血性心疾患の発症率は, 虚血性心疾患非既往群においては高Lp (a) 血症群が正Lp (a) 血症群に比し有意に高率であったが (p<0.001 log-rank test), 虚血性心疾患既往群では両群間の再発率に有意差はなかった. 脳梗塞の発症率は, 脳梗塞非既往群および脳梗塞既往群のいずれの群も正Lp (a) 血症群と高Lp (a) 血症群の2群間に有意差はなかった. 多重ロジスティック回帰分析では, 虚血性心疾患の発症については血清Lp (a), 高脂血症, 虚血性心疾患の既往がそれぞれ独立した危険因子であり, 脳梗塞の発症については高血圧, 高脂血症, 脳梗塞の既往がそれぞれ独立した危険因子であった.
    以上より老年2型糖尿病患者についての経年観察の結果では, 血清Lp (a) は虚血性心疾患の初発に対しての独立した危険因子であったが, 虚血性心疾患の再発および穿通枝系脳梗塞の危険因子ではなかった.
  • 阿部 勉, 土田 典子, 石橋 英明, 山本 精三
    2001 年 38 巻 4 号 p. 514-518
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 大腿骨頸部骨折の術後後療法における, 従来の8週間のリハビリテーションプログラム (Long Program: LP) と, 近年, 臨床経過より新たに試作した4週間のプログラム (Short Program: SP) との間で, 適切なクリティカルパス作成のためにどちらのプログラムが, 有効性, 安全性, 経済性の観点から適切であるかを明らかにすることである. 対象は, 両群とも65歳以上, 受傷前に独歩または杖歩行が自立していた, 手術で骨折部の良好な整復および固定性が得られた, 片麻痺, Parkinson 病などの神経疾患を持たない, 病的骨折でない者という条件を満たす症例を選んだ. このうちLP群は, 101名 (平均年齢83.1±7.0歳, 男性12名, 女性89名), SP群は, 143名 (平均年齢82.8±7.5歳, 男性19名, 女性124名) であった. リハビリテーションプログラムの効果を検討するために, 入院期間と自立歩行再獲得率, 痴呆と年齢による影響を比較した. また, プログラムの安全性として, 術後合併症の発生頻度, 経済性として, 入院期間中の医療費を調査し比較した. 入院期間は, 有意にSP群で短縮された (p<0.01). 自立歩行再獲得率は, 有意差は認めなかった. 痴呆症例の自立歩行再獲得率は, 有意にSP群で高かった (p<0.05). 術後合併症は, 有意にSP群で減少した (p<0.05). 入院費用は, 有意にSP群で低くなった (p<0.01). 以上より, SPは訓練効果を維持したまま平均で約1カ月間の入院期間の短縮を可能とし, 有効性, 安全性, 経済性に優れており, 痴呆や骨折型に影響されることなく, 大腿骨頸部骨折のクリティカルパスに適切であると考えられる. しかし, 85歳以上の超高齢者の場合は, SP群での自立歩行再獲得率が低く, 歩行訓練開始後に従来のような十分な期間が組み込まれた超高齢者用のプログラムが必要であると思われた.
  • 寺本 信嗣
    2001 年 38 巻 4 号 p. 519-522
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者における抗コリン薬吸入の呼吸生理学的効果と生活の質 (QOL) への影響を評価した. 80歳以上のCOPD患者12名について, 抗コリン薬吸入前後で安静時肺機能, 呼吸筋力を測定し, 運動負荷試験によって運動時換気動態と運動時呼吸困難感を調べた. さらに, 吸入療法前後一カ月の生活の質を評価した. 抗コリン薬吸入によって肺活量, 一秒量が増加し, 残気率が低下した. 呼吸筋力は最大吸気圧 (PImax) が増加した. ボルグスケールで評価した運動時呼吸困難感は Borg scale slope (ΔBS/ΔVO2) が有意の低下を示した. St George's Respiratory Questionnaire で評価したQOLスコアは, 吸入療法一カ月後で改善がみられた. したがって, 高齢COPD患者について, 吸入抗コリン薬療法の導入によって生理学的改善のみならず, QOLの改善も望める可能性が示唆された.
  • 老人病院の鍼灸・理学療法室の患者を対象として
    鷲尾 昌一, 高杉 紳一郎, 荒井 由美子
    2001 年 38 巻 4 号 p. 523-527
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老人病院患者 (平均年齢79歳) を対象に鍼灸・理学療法室での腰痛・下肢痛に対する治療の効果を調べた. 治療効果を認めた群 (60名) は認めなかった群 (15名) に比べ, 鍼治療を受けている者の割合が有意に高かった (55.5% vs 26.7%, p=0.05). 両群間で, 低周波治療, ホットパック, マッサージ, SSP療法を受けている者の割合, 年齢, 性別, 脳梗塞・脳出血後遺症, 整形外科疾患, 貧血や低アルブミン血症の割合に差は認めなかった. 鍼治療を受けている者と受けていない者とで, 腰痛・下肢痛の程度に有意差を認めなかった. 鍼治療は高齢者の腰痛・下肢痛に有用であると考えられた. しかし, 鍼治療を受けている者の46.0%がその他の治療 (低周波治療, ホットパック, マッサージなどの理学療法) を併用していた.
  • 岩本 俊彦, 藤井 広子, 馬原 孝彦, 高崎 優, 今村 敏治, 近喰 櫻, 野口 寿美子
    2001 年 38 巻 4 号 p. 528-533
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    痴呆患者を抱える家族によって痴呆相談室に持ち込まれた相談事例を通して痴呆医療の現状と問題点を検討した. 解析の対象には, 患者の家族背景, 病歴および相談内容を記録した103件の中で, Clinical Dementia Rating (CDR) が1以上で痴呆ありと判断した75例を取り上げた. このうち病歴では痴呆に随伴する精神症状や行動異常 (以下, 周辺症状) の有無に加え, 加療の有無・形態について検討した. また, 相談内容は叙述的内容に基づいて, 項目1 (痴呆や周辺症状の評価に関する相談), 項目2 (症状に対する対応の仕方に関する相談), 項目3 (医療機関への受診方法に関する相談), 項目4 (治療方法・服薬に関する相談), 項目5 (福祉資源の情報に関する相談) に分類して各項目の相談頻度を検討した. 対象は女性50例 (平均年齢77.8歳), 男性25例 (平均年齢77.1歳) で, 女性が多かった. 対象を世話している者は高齢配偶者が多かったが, 相談者の多くは同居の子供や別居の娘であった. 脳卒中の既往は3例のみで72例には身体症状がなく, 緩徐発症の痴呆や周辺症状の問題で来室した. 痴呆の重症度ではCDR 1が54例と多く, 周辺症状では幻覚・妄想が21例にみられた. 治療は29例に行なわれていた. 各項目別の相談頻度は項目1, 3, 2の順でいずれも半数を越えて高く, 医療に対する不満を抱く相談者も13例あった. 以上より, 項目1の頻度が高かった点や, 特に, 高齢配偶者では痴呆が緩徐に発症した場合には発見が遅れることも考えられた点で, 痴呆患者の早期発見に関する啓蒙がさらに必要であると考えられた. また, 項目3が高頻度であった成績は, 周辺症状を伴う痴呆があっても何科にどのように連れていったらよいかがわからないでいるものが少なくない現状を示唆していた. 一方, 医療への不満から, 治療経過や病状の説明, 対応の仕方や薬の副作用, 社会資源の活用に関する情報提供が不足していると考えられた.
  • 救急搬送事例の検討
    浅川 康吉, 高橋 龍太郎, 香川 順
    2001 年 38 巻 4 号 p. 534-539
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 都市在住高齢者の転倒・転落事故のうち, 受傷者が救急搬送された事故について, 発生頻度の推計ならびに発生件数と高齢者人口との関連および事故内容の特徴を検討することである. 調査地域は東京都内の一地域58町で, 調査期間は平成9年9月1日からの一年間とした. 対象は65歳以上の高齢者が受傷者として搬送された居宅での転倒・転落事故517件 (男性136件, 女性381件) とした. 65歳以上人口1,000人の年あたり事故発生頻度は男性では4.13件, 女性では788件となり, 女性は男性の1.9倍高率であった. また, 各町の事故発生件数と65歳以上人口との間には有意な正の相関を認めた (男性r=0.674, 女性r=0.846, p<0.001).
    年齢別にみた事故内容の特徴は住居形態にみられ, 男性, 女性とも85歳以上の超高齢者群における一戸建住宅での事故の割合が65歳以上75歳未満の前期高齢者群に比べ有意に高かった (p<0.05). また, ロジスティック回帰分析の結果, 骨折の危険因子となる事故内容として, 受傷部位と住居形態が有意であった (p<0.05). 受傷部位のオッズ比は7.559 (95%信頼区間4.926-11.598), 住居形態のオッズ比は1.660 (95%信頼区間1.067-2.584) であり, 四肢の受傷や一戸建住宅での事故は骨折の危険性を高めることが示唆された. 一戸建住宅における転倒・転落事故の予防策を講じることは, 都市在住高齢者の転倒・転落事故防止において重要であると考えられた. 一戸建住宅では手すりの設置や踏み台の利用などにより転倒のきっかけを減少させるとともに, 衝撃緩和動作がとりやすいように小型の家具を配置するなどの住環境の工夫が必要と思われた.
  • 米野 由希子, 阿古 潤哉, 島田 由紀, 難波 吉雄, 松瀬 健, 鳥羽 研二, 大内 尉義
    2001 年 38 巻 4 号 p. 540-543
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は77歳女性. 1998年7月以降進行する左片麻痺, 構音障害を主訴に, 1998年11月入院となった. 入院2カ月前の頭部単純CTでは軽度脳萎縮以外に異常を認めなかった. 入院時単純CTでは特に異常を認めなかった. 造影CTでは左頭頂葉に淡い造影効果を認め, 右脳梁膨大部と脳梁体部に明瞭な造影効果を認めた. 頭部MRIのT2強調画像では脳梁から両側大脳半球にわたり連続性に広がる高信号域を認めた. 経過及び画像所見から脳腫瘍が疑われたが確定診断には至らなかったため, 小開頭による脳生検を施行する必要があった. 生検の結果 glioblastoma multiforme の組織像が得られた. 臨床所見と画像所見のみでは診断が困難な大脳膠腫症の1例と考えられたため報告する.
  • 高橋 光司, 大島 清孝, 山本 浩三, 岩田 猛
    2001 年 38 巻 4 号 p. 544-547
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    薬剤の副作用による高度な徐脈が誘因となって右心不全が増悪した高齢者特発性右房拡張症の1例を経験した. 症例は84歳, 男性. 10年前から下腿の浮腫が出現するようになり, 近医より心疾患のためと言われてプロスシラリジンと塩酸ベラパミルが投与されていた. 2カ月前から食欲低下と全身倦怠感があり, さらに10日前から労作時息切れが出現した. 理学的所見では頸静脈怒張と肝腫大, 下腿浮腫を認め, また心臓の聴診上収縮期逆流性雑音とIII音を聴取した. 心電図では心房停止と心室拍数31/分の房室接合部調律を認めた. 胸部X線写真では胸水貯留と心陰影の拡大を認めたが, 肺うっ血はなかった. 心エコー図では右心系, 特に右房の著明な拡大と三尖弁逆流を認め, 心室中隔は奇異性運動を呈していたが, 高度な右房拡大の原因となる器質的疾患はなかった. 以上より特発性右房拡張症を基礎疾患とする右心不全と診断した. 本症例に対して, 徐脈の原因と考えられた上記薬剤を中止し, 塩分と水分の摂取制限をするとともにβ刺激薬と利尿薬を投与した. その後, 心拍数が徐々に増加し, それに伴って右心不全は改善した. 現在, 利尿薬 (アゾセミド, スピロノラクトン) とジギタリス (メチルジゴキシン) を投与している. 自覚的には労作時に軽度の動悸を認めるのみで, 浮腫はない.
  • 的場-上野 和枝, 藤本 眞一, 土肥 直文, 西野 俊彦, 山野 繁, 椎木 英夫, 橋本 俊雄, 中村 忍
    2001 年 38 巻 4 号 p. 548-553
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は, 76歳の女性. 平成10年10月末から微熱を自覚していた. 11月2日に眼前暗黒感が出現してから意識レベルが低下し, 救急車で近医に搬送された. 発熱と呼吸困難を示したために抗生物質が投与されたが, 両症状が改善しなかったので11月26日に当科に紹介された. 右鎖骨上窩に腫脹したリンパ節を触知し, 腹部エコーで大動脈周囲にリンパ節腫大が認められた. 右鎖骨上窩のリンパ節生検所見から悪性リンパ腫 (diffuse large B cell type) と診断された. 第31病日からピラルビシン, シクロホスファミド, ビンクリスチン, およびプレドニゾロンによる低用量のTHP-COP療法を開始した. 以後の経過が良好で, 発熱と呼吸困難は消失した. 第87病日から第3クール目の化学療法を標準用量で施行したが, 第89病日に呼吸困難が出現した. 胸部レントゲン所見で心胸郭比の拡大 (69%) と肺うっ血, 心エコー所見で左室駆出率の低下 (33%) が認められたので, うっ血性心不全と診断した. フロセミド, 硝酸イソソルビド, およびミルリノンの投与で心胸郭比が60%に改善した. 以上, 心毒性が少ないとされていたピラルビシンを用いた化学療法後にうっ血性心不全を発症した高齢者悪性リンパ腫の1例を経験したので報告した.
  • 須藤 英一, 田沼 志保, 樋口 直樹, 吉田 章, 高橋 義彦, 小林 力, 大浜 用八郎, 大久保 昭行
    2001 年 38 巻 4 号 p. 554-559
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    当院で脳血管傷害後, 理学療法・作業療法・言語療法を取り入れた摂食・嚥下リハビリテーション (以下嚥下リハと略す) を行い, 嚥下機能の改善を認めたと考えられる2症例を経験した. 症例は82歳と68歳の脳血管障害後遺症の男性2例. 嚥下リハは, 間接訓練としての嚥下体操, アイスマッサージ, 頸部・顔面のマッサージ, 発声練習, 空嚥下パターン訓練と, 直接訓練として摂食時の指導, 食事器具の工夫, 食塊の検討, 家族指導も含め適宜少なくとも4週間から6週間行った. 1例目は入院中に嚥下性肺炎を生じ, 嚥下リハ前むせを数回認め水飲み試験スコア2であった. 嚥下リハ後は摂食時むせを認めず, スコア1まで改善し嚥下性肺炎を再発することなく経口摂取が可能となり, 内科病棟から長期療養型病棟へ転棟となった. また, 嚥下リハ開始時, 全介助レベルであったADL (Activities of Daily Living) も, 起居動作, 排泄動作自立となり, 歩行は監視レベルまで可能となった. 2例目は持続的経鼻経管栄養 (continuous naso-gastric; CNG) チューブを留置し絶食の状態で当院に転院してきたが, 嚥下リハ後は摂食時のみに間欠的口腔食道経管栄養 (intermittent oro-esophageal; IOE) チューブを挿入し経管栄養を注入, 経口からは“おやつ”程度の摂食が可能な状態となり退院となった. なお2例目に施行した videofluorography では明らかな誤嚥が認められたが, 横向き嚥下 (右回旋90度) では誤嚥がみられなかった. 症例数は現時点で少ないが, 今後も症例のタイプや重症度を考慮しつつ, 当院でも嚥下リハを継続する有用性が期待された.
  • 黄川田 雅之, 清水 聰一郎, 宇野 雅宣, 赤沢 麻美, 杉山 壮, 大野 大二, 岩本 俊彦, 高崎 優
    2001 年 38 巻 4 号 p. 560-563
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は88歳女性. 2000年5月に右眼球の異物感を自覚し近医受診したところ, 眼窩腫瘍を指摘されたため当院紹介受診となった. 受診時に胸部X線で右中肺野に約3cm程度の腫瘤状陰影を認めたことから, 精査目的にて5月23日に当科入院となった. 右B3からの経気管支肺生検 (TBLB) で肺腺癌と診断し, 眼窩部の腫瘍は肺癌からの転移性病変であると判断した. 眼窩部への放射線療法を行うものの効果なく, 腫瘍は急速に増大し肝臓への浸潤と副腎, 腎への転移も認め, 全経過約2カ月で永眠した. 転移性眼窩腫瘍は画像診断技術の向上に伴い近年報告例が増えているが, 一般的にその予後は非常に悪い場合が多い. 特に肺からの転移の場合は眼症状が先行することが多く, 症状出現後の生存期間はきわめて短い. 本例のように転移性眼窩腫瘍は眼症状が先行することもあり, 今後高齢者でもますます増加が予想されることから, 十分な全身検索が必要であると考えられた.
  • 2001 年 38 巻 4 号 p. 564-581
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
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  • 2001 年 38 巻 4 号 p. 582-586
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/11/24
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