日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
39 巻, 1 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
  • 知能と痴呆症をめぐって
    井上 勝也
    2002 年 39 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 戸田 年総
    2002 年 39 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    プロテオームとは, 特定の細胞が特定の状態にあるときに発現している全蛋白質の集合を意味し, プロテオーム科学とは, これらを解析し, 生物学的, 医学的知見を得る研究手法のことである. 近年, 高齢者の孤発的神経変性疾患が蛋白質のコンフォメーション病としての側面を持つことが次第に明らかになり, これを解析するには, ゲノム情報だけでは不十分であることもわかってきた. プロテオーム科学は, このような翻訳後修飾の過程が関わる様々な疾患の解析に有効な手法であり, 今後, 老化の基礎研究や老年病の臨床研究において広く利用されるようになるものと期待される.
  • 岡本 祐三
    2002 年 39 巻 1 号 p. 15-17
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 佐々木 昌弘, 山口 淳一
    2002 年 39 巻 1 号 p. 18-19
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 導入前の介護状況
    広瀬 信義, 谷 正人, 鳥羽 研二, 大荷 満生, 新 弘一, 難波 吉雄, 大内 尉義, 井藤 英喜, 大庭 建三
    2002 年 39 巻 1 号 p. 20-21
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    2000年4月に施行された介護保険制度が介護状況にどの様な影響を及ぼすかを東京地区において検討した. 被介護者の特徴は, 平均年齢は81.3歳で, 原疾患としては高血圧, 脳卒中, 心臓病が多く, ADLは低下していた. 介護提供者の特徴は, 平均年齢61.1歳, 女性が圧倒的に多かった. 訪問看護, デイサービス, 訪問介護員がよく利用された. 利用サービスの評価については, 短期入所, 宅配給食サービス, 通所通院リハビリの満足度は低かった. 介護時間は毎日 (終日) 介護している割合が64%で, 介護による疲労度は90%の介護提供者が何らかの疲労を感じていた. 介護時間の長さ, 被介護者のADLが介護による疲労度と関連した. この疲労度は介護提供者のQOLを著しく低下させた. 介護保険導入により, 介護提供者のQOLを向上させるか, 被介護者のQOLが向上するかが今後の検討と考えられた.
  • 高知県香北町の調査から
    奥宮 清人, 松林 公蔵, 森田 ゆかり, 西永 正典, 土居 義典, 小澤 利男
    2002 年 39 巻 1 号 p. 22-24
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    要介護者はサービスの導入よりも, 家族による家庭での手厚い介護を依然として望んでおり, 介護サービスの受け入れには, まだ機の熟するのを待つ必要がある. しかし, サービスの内容 (訪問リハビリや軽度痴呆者に対する音楽療法など) によっては, 要介護者本人ならびに介護者双方のQOLが上がった成績も得られており, 今後, サービスの質の向上に関する検討が必要である.
  • 河野 あゆみ
    2002 年 39 巻 1 号 p. 25-27
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 日本老年医学会教育認定施設, 老人保健施設, 療養型医療施設の多施設共同調査
    高橋 龍太郎, 山口 昇, 河合 秀治, 峰廻 攻守, 大塚 宣夫, 荒井 由美子, 石田 暉, 一瀬 邦弘, 遠藤 英俊, 白澤 政和, ...
    2002 年 39 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    平成12年4月から開始された介護保険制度は, 今後の高齢者介護に新たな一歩を開いた. この介護保険制度に期待されているのは在宅ケアサービス, 施設ケアサービスの量的拡充と, 専門的ケアの質的向上である. 日本老年医学会高齢者介護システム検討委員会では, 後者について委員会としての提言をおこなうべく75項目からなる「介護の質を計る物差し」を取りまとめた. この提言の意義と実用化への展望を検討するため日本老年医学会教育認定施設225施設, 全国老人保健施設協会400施設にアンケート調査を行い, 平成13年5月末日段階までに回答を得た276通 (回収率それぞれ37%, 47%), および独自に調査を行った名古屋大医学部老年科関連施設94通, 合計370通について分析を試みた.
    その結果, 協力頂いた施設の種類 (介護老人福祉施設 (以下特養ホーム), 介護老人保健施設 (以下老健施設), 介護療養型医療施設 (以下療養型医療施設), 一般病院) によって施設規模に大きな違いが見られ, 前二者は比較的小規模で, 後二者は中, 大規模であった. これらの施設で行われている介護サービスは, 介護保険の「施設サービス」の位置付けに合致した施設種類ごとの特徴がみられた. 特養ホームや老健施設では, ケアの方針や理念が明確にされているところが多く, 生活ケア, 娯楽や献立へ配慮している姿勢がうかがわれた. 療養型医療施設では要介護度が高く, 医療ニーズの高い高齢者ケアを行っている実態が示された.
    これらの調査結果を通して他施設の平均像を知ることにより, それぞれの施設の特性に合わせた介護サービスの点検, 向上に役立つのではないかと考える. また,「介護サービス」の量を点検, 評価するためには, それぞれの施設の種類ごとに独自の物差しを作る必要があると思われた.
  • 井上 正康
    2002 年 39 巻 1 号 p. 36-38
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 福尾 惠介
    2002 年 39 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 靖史
    2002 年 39 巻 1 号 p. 42-43
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • その同定・分離法の開発と移植による神経機能回復の試み
    岡野 栄之
    2002 年 39 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 開 祐司
    2002 年 39 巻 1 号 p. 48-50
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 市川 英幸, 林 四郎
    2002 年 39 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    90歳以上の腹部手術13例を対象にして, この年齢層における手術の適応, 功罪などを検討した. 待期手術は7例で, 平均年齢92.0歳で, 男女比2:5であった. 胃癌3, 直腸癌1例, 直腸ポリープ1例で, 術前合併疾患は7例中6例で認められ, 循環器系の合併症が多かった. 手術は胃切除3例, 低位前方切除1例, 経肛門的ポリープ切除1例, 胆摘総胆管ドレナージ2例である. 術後合併症は7例中5例に認められたが一過性精神症状, 癒着性腸閉塞症など, 軽度なものであった. 96歳女性は術前からの寝たきり状態であったが, 胃癌の出血のため, 姑息的胃切除が行われた後も8カ月間入院治療を余儀なくされ, 死亡したが, 他の6名は平均23日で軽快退院した. 一方, 緊急手術6例は平均年齢92.7歳で男女比2:4であった. 腸閉塞3例, 胃潰瘍, 上行結腸癌, 腸閉塞症による穿孔で汎発性腹膜炎が各々1例であった. 術前合併症としては6例中4例に循環器系, 脳梗塞などの合併症が認められた. 発症より手術までの時間は5時間から6日で, 手術術式としては小腸切除, 右半結腸切除, 胃穿孔部の閉鎖術などが行われた. 6例中4例に術後合併症が発生したが, 創感染3例, 肺炎2例, 縫合不全, 創開, 腸閉塞など重篤な合併症が多かった. 上行結腸癌に盲腸穿孔, 腹膜炎を合併し, 右半結腸切除が行われた97歳女性は縫合不全を生じ, 多臓器不全で術後21日目に死亡した. 他の5例の術後入院日数は平均32日で軽快退院した.
    ASA分類上, II, III度と判定される90歳台の高齢者でも待期手術, 緊急手術のいずも比較的安全に行われることが示された. 手術後の生存率は待期手術と緊急手術との間に差はなかったが, 良性疾患と悪性疾患との間では, 悪性疾患群では有意に低率であった. また, 退院できた11例中7例のPSは, 術後も術前と同程度の日常生活が可能であった. PSが悪化した4例も介助は必要であったが自分で身の回りの世話が出来たため, 患者も家族も手術に対して満足していた.
  • 大森 久司, 羽野 卓三, 伊藤 周平, 西尾 一郎
    2002 年 39 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    和歌山県医師会内科医会に所属する医師を対象に, 1997年2月に外来を受診した高血圧患者の治療開始時の血圧, 初診時の高血圧性臓器合併症のための検査, 初回使用降圧薬とその3カ月後の効果について, 実地医家における老年者高血圧治療の実態調査を行った.
    7,647症例の回答を得た. 治療開始時の血圧は, 老年者群で収縮期血圧が有意に高く, 拡張期血圧が有意に低かった. 初診時の高血圧性臓器合併症評価の検査は, 心電図 (非老年者群/老年者群; 98.3%/71.3%), 胸部X線 (86.5%/65.2%), 心エコー (27.1%/23.7%), 尿検査 (96.0%/69.3%), 眼底検査 (27.0%/24.3%) のすべてにおいて, 老年者群での施行率が有意に低かった. 一方, 心電図での左室肥大所見, 胸部X線での心胸郭比の拡大, 尿検査での蛋白陽性についての有意所見は老年者群で低かった.
    薬物治療開始時の各降圧薬は, カルシウム拮抗薬 (Ca拮抗薬); (47.3%/51.9%), ACE阻害薬 (ACE-I); (14.4%/12.2%), 利尿薬; (6.3%/10.2%), β遮断薬; (11.2%/4.7%), α遮断薬 (1.4%/1.3%) であった. 老年者での使用降圧薬は, 非老年者と同様Ca拮抗薬, ACE-Iが多かった. また, 3カ月後の降圧効果で降圧十分としたものは, (61.5%/68.5%) で老年者で有意に高かった. 降圧不十分な場合は, 薬剤を増量するよりも他剤に変更や他剤を併用が多かった.
    老年者における初診時の高血圧性臓器障害の評価のための検査施行率が低く, 潜在的な高血圧性臓器障害を有する患者を評価するための積極的な取り組みが必要と考えられた. 老年者における薬物治療開始時の各降圧薬は, Ca拮抗薬, ACE阻害薬, 利尿薬が多く, 降圧効果が不十分な場合には, 他剤に変更や他剤を併用が多く, 実地医家の治療は, 現行の老年者高血圧ガイドラインとも合致していた.
  • 斉藤 真一, 中塚 喜義, 三木 隆己, 中 弘志, 北谷 香代子, 西沢 良記, 森井 浩世
    2002 年 39 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    アルファカルシドール (以下1α(OH)D3) はわが国では, 骨粗鬆症に対して処方される頻度の高い薬剤である. その長期経口投与による骨量の改善や骨折出現率の抑制効果がこれまで報告されているが, どのような骨・カルシウム (Ca) 代謝の変化をもたらすかについての詳細は明らかではない. 高齢女性16名, 平均年齢72.6±4.5 (62~81) 歳を対象に1α(OH)D3 1μgを毎朝食後経口投与し, 投与開始前, 開始後1, 4, 12, 24週においてカルシウム (Ca) 代謝に関連した生化学検査, ビタミンD代謝産物, 生物学的骨代謝マーカーを測定し, 骨・Ca代謝の変化について観察し検討した. intact-PTH, ビタミンD代謝産物として, 1α,25(OH)2D, 24,25(OH)2D, 25(OH)Dを測定した. 骨代謝マーカーとして, オステオカルシン (OC), 骨型アルカリフォスファターゼ (BAP), 尿中デオキシピリジノリン (DPD), I型コラーゲンC末端テロペプチド (CTx) 等を測定した. その結果, 骨形成マーカーである血中OC, BAPは, 基礎値からの変化は有意ではないものの, 1週後でいずれも上昇を認めた. 骨吸収マーカーである尿中DPDでは投与維持期の12週, 24週後で有意な低下を認め, CTxは12週後で有意な低下を認めた. 高齢女性においては, 1α(OH)D3の1μg/日の投与により, 長期には副甲状腺機能の抑制により骨吸収は抑制されるが, 初期には骨形成へ直接作用する傾向が確認され, 骨形成を促進するという in vitro で示されている成績を臨床的に裏付けるものと考えられる.
  • 久山町研究
    城田 知子, 大石 明子, 篠原 章子, 内田 和宏, 清原 裕, 藤島 正敏
    2002 年 39 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    福岡県久山町の在宅高齢者387名 (60歳以上) を1988年から10年間追跡し, 栄養状態および栄養摂取状況の加齢に伴う変化を検討した. 1988年における対象集団の平均年齢は男性65歳, 女性66歳であった. 10年後の1998年では, 男女とも身長, 体重, body mass index の平均値が有意に減少していた. また, 栄養状態を反映する血液ヘモグロビン, 総コレステロール値も有意に減少したが, 血清アルブミン値とHDLコレステロールは逆に有意に増加した. 血清アルブミン値の低下がみられなかったことは, 本研究の対象者は元気に年齢を重ねた高齢者と考えられる.
    男女ともに糖質摂取量の減少によってエネルギー摂取量が有意に減少したが, たんぱく質および脂質の摂取量に明らかな変化はなかった. 鉄以外の栄養素の摂取率 (栄養所要量に対する割合) は, 100%を超えた範囲で増減がみられた. 栄養比率 (総エネルギー摂取量に占める割合) の経年変化をみると, たんぱく質エネルギー比と脂質エネルギー比の増加, 糖質エネルギー比の減少がみられた.
    以上より, 地域住民中の比較的元気な高齢者では, 加齢に伴い糖質摂取量は減少したがたんぱく質および脂質摂取量に変化はなかった. 脂質を相対的に多めに摂取することは血清脂質の維持に寄与していると考えられた.
  • 梅垣 宏行, 野村 秀樹, 中村 了, 安藤 富士子, 下方 浩史, 山本 さやか, 葛谷 雅文, 井口 昭久
    2002 年 39 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    在宅高齢者では, 病院への入院を契機に介護施設へ移行することもまれではない. 今回我々は, 在宅から名古屋大学医学部附属病院老年科病棟に入院した65歳以上の患者に対し高齢者総合機能評価を施行し, 退院先と各評価スケールとの関連を検討した. 退院先が自宅であった自宅群と, 老人保健施設, 療養病床などの施設に移った施設群に分けて, 入院時の基本的日常動作 (Barthel index), 手段的日常動作 (Lowton scale), 認知機能 (Mini Mental State Examination) を比較すると, 各スケールのスコアは施設群において有意に低かった. 抑うつのスケールである Geriatric Depression Scale-15では, 2群間に統計学的に有意な差を認めなかったが, 両群とも抑うつ度が高く, 施設群においてより抑うつ度が高かった. また, 自宅群と施設群とでのカイ2乗検定による単変量解析では, Barthel index では食事の項目以外のすべての項目, Lowton scale では, 洗濯以外のすべての項目が退院先と有意に関連していた. Mini Mental State Examination では, 場所の見当識, 計算, 図形描画の項目が有意であった. 年齢, 性別, GDSスケールの得点は退院先と有意な関連がなかった. 社会生活の項目では, コミュニケーションと集団行動の項目が有意であった. さらに, 単変量解析で有意であった項目を用いて行った多重ロジスティック解析では, ADL, 特に排泄の自立度とコミュニケーション能力が退院先と関連が強いことが示唆された.
  • 宮村 季浩, 飯島 純夫, 山縣 然太朗
    2002 年 39 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    目的 変形性膝関節症の骨構造を単純X線画像を用いて定量化することを目的に, 空間周波数解析パワースペクトルの指向性に注目した新たな指標を求めた. その有用性を検討する目的で変形性膝関節症のX線分類との関係を, 空間周波数解析パワースペクトルの1次モーメントおよびフラクタル次元と比較検討を行った. 方法 34歳から85歳の女性41名の右膝の単純X線画像を用いFFT (fast Fourier transform) によりパワースペクトルを求め, そこから骨構造の指向性を示す新たな指標であるDI (directivity index) 値を得た. 変形性膝関節症のX線分類との相関を空間周波数解析パワースペクトルの1次モーメントおよびフラクタル次元と比較した. 結果 DIと変形性膝関節症のX線分類との間には有意な関係が認められたが, 1次モーメントおよびフラクタル次元との間に有意な関係は認められなかった. また膝関節の変形の有無を従属変数, 年齢, ΣGS/D, DIを独立変数としたロジスティック回帰分析を行い, DI値のみが膝関節の変形の有無との間に有意な関係を認めた. 結論 DI値は軟骨下骨梁の網目構造が変形により傾きパワースペクトルの指向性が失われることに注目した指標である. そのため骨梁の網目構造の緻密さを示す指標である1次モーメントやフラクタル次元と比べ, わずかな軟骨下骨梁の変化を客観的にとらえることができるものと考える. DI値が変形性膝関節症の状態を定量化するための指標となれば, 予防のために重要な疫学調査に用いることにより変形性膝関節症による高齢者のADL低下防止に大きく貢献するものとなる.
  • 菊池 清香, 林 豊, 藤岡 精二, 茎田 仁志, 越智 直登
    2002 年 39 巻 1 号 p. 88-93
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病 (以下ITP) に急性心筋梗塞を合併し, 経皮的冠動脈形成術 (以下PTCA) を施行しステントを留置したが重篤な出血症状を来すことなく順調に経過した一例を経験した. 症例は68歳女性. 1998年12月にITPと診断された. 1999年2月6日に急性心筋梗塞を発症し入院. 入院時の血小板数は22,000/μlと低値であったがあきらかな出血傾向は認めなかった. 発症後約10時間に緊急冠動脈造影を開始し, seg. 4PD: 75%狭窄, seg. 7: 完全閉塞, seg. 9: 50~75%狭窄, seg. 10: 75%狭窄, seg. 13: 完全閉塞という結果であった. 心電図, 心エコーの結果とあわせて seg. 7が今回の心筋梗塞の責任血管と考え, seg. 7に対して direct PTCAを施行した. 冠動脈解離を併発したため同部位に対しステントを留置し終了した. 終了後の穿刺部の止血は良好であり, その後もヘパリンの持続点滴, 塩酸チクロピジンの内服で抗凝固療法を行ったが出血症状を認めることもなく経過した. 一般的に血小板減少はPTCAの相対的禁忌であるが, 症状, 状態を見ながら適応を決定し慎重に抗凝固療法ならびに抗血小板療法を行うことによって安全に施行することが可能であると考えられた.
  • 海老原 文, 芦田 映直, 杉山 卓郎, 奥野 茂, 藤井 潤, 米満 勤
    2002 年 39 巻 1 号 p. 94-96
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    患者は初診時 (1969年) 47歳, 現在79歳で外来通院中の男性である. 初診時血圧は164/98mmHg, 心電図, 尿検査では異常がなかった. その後8年間は非降圧薬療法で治療していたが, 最終的には降圧薬療法を開始した. 71歳時, 血圧の動揺が著明で高いときには210/110mmHgを示したので入院した. 入院時に両側眼球雑音 (右<左), 両側頸部血管雑音 (右<左) を聴取した. 75歳時に小脳梗塞を合併したが, 神経症状は短期間で軽快した. 76歳時, 動揺が著明な高血圧と脳虚血との関係を検討するために脳血管造影を施行したところ, 両側内頸動脈海綿静脈洞部に有意狭窄を認めた. 狭窄は左側の方が右側より高度であることから, 眼球雑音は血流増加によるものではなく狭窄性雑音と考えた. 血圧の上昇, 動揺が脳の虚血と関係する可能性を念頭に置いて患者の経過を観察中である.
  • 森本 尚孝, 橋田 英俊, 本田 俊雄, 相原 泰
    2002 年 39 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は83歳, 男性. 平成9年10月に当院耳鼻科にて左耳下腺癌と診断された. 高齢ということで手術は希望されず, 化学療法と放射線治療を施行した. 平成9年12月から平成12年7月までにCAP療法 (Cyclophosphamide, Adriacin, CDDP) を計6クール施行した. 全身状態の改善目的で平成12年7月15日より prednisolone 15mg/day が開始となった. 平成12年8月2日に下痢が出現した. 翌3日に発熱, 腹痛も出現するため当院救急外来を受診し, 急性腸炎で入院となった. 8月10日に下血し, 緊急大腸内視鏡検査にて, 下部直腸に出血を伴う潰瘍性病変を認めた. 生検組織では封入体細胞と抗サイトメガロウイルス抗体染色で陽性細胞を認め, サイトメガロウイルス腸炎と診断した. Gancicrovir 投与にて解熱し下血や下痢も消失した. 11月に大腸内視鏡検査を再検したが潰瘍性病変は消失していた.
    サイトメガロウイルス腸炎は日和見感染症であり, 癌患者や高齢者においては免疫力が低下しているため発症の可能性がある. 治療法としては Gancicrovir が有効である. 免疫不全患者において下痢や下血のような消化管症状を起こす場合はサイトメガロウイルス腸炎を鑑別に入れ, 早急に大腸内視鏡検査を行うことが重要である.
  • 2002 年 39 巻 1 号 p. 101-123
    発行日: 2002/01/25
    公開日: 2009/11/24
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