日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
39 巻, 2 号
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  • 外科の立場から
    木村 理
    2002 年 39 巻 2 号 p. 127-140
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    外科手術を対象にした患者層における高齢者の頻度は年々増えている. 外科おける高齢者の消化器疾患では悪性疾患が重要である. 胃癌では分化型の多いことが特徴である. 胃癌の手術の場合には根治性に対して少し引いた考え方をする. 早期胃癌に対しては内視鏡的粘膜切除術 (EMR) の適応を臨機応変に拡大して施行する. 大腸癌の発生頻度は加齢とともに増加する. 近位側結腸の癌および多発癌の頻度が増すことが特徴である. 大腸癌では根治性を落とした手術をする必要はない. 根治性を落とすべきなのは, 併存する合併症に対してである. 腹腔鏡補助下大腸切除術の術後の経過をみると, 排ガスまでの期間や経口摂取開始時期, 在院日数が短く, 高齢者における有用な大腸手術術式の一つである. 高齢者肝癌では, 女性の頻度が高いこと, HB坑原陽性率や肝硬変合併率が低いことが特徴である. 比較的肝機能の良いものが多く, 浸潤型が少なく門脈腫瘍塞栓の頻度が低率で, 組織学的に高分化のものが多い. 治癒切除により長期生存を期待できる症例が多く, 周術期管理を注意深く行えば, 安全な肝切除が可能である. 転移性肝腫瘍は肝腫瘍のなかでもっとも頻度が高い. 肝切除の適応は原発巣が根治的に切除されており, 肝以外に転移がないことである. 胆石症は高齢者に高頻度にみられる疾患である. 著者らの高齢者主体の剖検例の検索では, 4,482例中957例 (21.4%) に認められ, 男性では60歳から94歳までは加齢とともに増加した. 高齢者にみられる胆石症では, 無症状のものが大く, 生前に有症状で胆嚢摘出術受けていたのは16%程度であった. 治療としては, 腹腔鏡下胆嚢摘出術, 内視鏡的乳頭括約筋切開術や開腹胆管切開・切石, T-チューブドレナージなどがある. 胆嚢結石は胆嚢癌の危険因子, 関連因子と考えられ, 胆石保有者は非保有者より6倍の高率に胆嚢癌の発生がみられた. 胆嚢癌の外科的治療は進行度とくに深達度に応じて単純胆摘術, 拡大胆摘術, 肝右葉あるいは部分切除などに胆管切除術やリンパ節郭清を組み合わせて行う. 高齢者の急性膵炎には, 原発性急性化膿性膵炎と呼称されるべき特徴をもった一群が認められる. 通常型膵癌の治療成績は, 膵が後腹膜に存在し早期に広範な浸潤をすること, 大多数が進行癌であることなどから, 切除例の5年生存率が9%と不良である. 最近, 予後のいい粘液産生膵腫瘍が注目を浴びている. 高齢男性の膵頭部に好発する. 高齢であっても膵頭十二指腸切除術は安全に行えるようになってきた. 救急手術では高齢者ではとくに対応の遅れの影響が大きいため, 手術や観血的な緊急処置の適応をすばやく判断しなくてはならない. 高齢者では高血圧, 糖尿病, 動脈硬化など慢性疾患を高率に合併すること, および癌が関与する場合が多い. 全身状態の悪い患者に対しては縮小手術, 緊急避難的処置を十分に考慮する.
  • 森 憲作
    2002 年 39 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    匂い分子受容体の発見以降, 嗅覚神経系の研究は最近の10年間に劇的な進歩を遂げ, 匂い分子識別の神経メカニズムの理解や嗅球での「匂い地図」の解明へと展開している. 本稿では, 老年医学への応用を念頭におき, 嗅覚神経系の最新の知識と展望をまとめた.
  • 尾前 照雄
    2002 年 39 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 木幡 陽
    2002 年 39 巻 2 号 p. 149-151
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 柴田 博
    2002 年 39 巻 2 号 p. 152-154
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 稲葉 繁
    2002 年 39 巻 2 号 p. 155-156
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 心の病と老い
    松下 正明
    2002 年 39 巻 2 号 p. 157-159
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 水野 肇
    2002 年 39 巻 2 号 p. 161-162
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 中島 健二
    2002 年 39 巻 2 号 p. 163-165
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 生理的老化への介入
    木谷 健一
    2002 年 39 巻 2 号 p. 166-167
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 西村 健
    2002 年 39 巻 2 号 p. 168-169
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 下山 和弘
    2002 年 39 巻 2 号 p. 170-172
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 浅野 仁
    2002 年 39 巻 2 号 p. 173-175
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 江藤 奈緒, 芳野 純治, 乾 和郎, 若林 貴夫, 奥嶋 一武, 小林 隆, 三好 広尚
    2002 年 39 巻 2 号 p. 176-180
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    実年齢と身体の加齢は必ずしも比例しない. 老化を年齢以外で評価する指標を見出すことを目的として, 通常肝疾患で測定される4種類の線維化マーカー (ヒアルロン酸, IV型コラーゲン, IV型コラーゲン7S, PIIIP) に着目し, 加齢との関連を検討した. 対象は当院に入院または外来通院中の患者78例であり, 超高齢者群, 高齢者群, 非高齢者群に分け, それぞれの各線維化マーカー値を比較した. 結果, ヒアルロン酸は超高齢者群で86.3±46.7ng/ml, 高齢者群で58.9±37.4ng/ml, 非高齢者群の50~69歳で48.7±71.9ng/ml, 20~49歳で22.6±26.1ng/ml, IV型コラーゲンは超高齢者群で134.6±27.8ng/ml, 高齢者群で131.1±46.5ng/ml, 非高齢者群の50~69歳で135.1±102.1ng/ml, 20~49歳で92.8±21.8ng/ml, IV型コラーゲン・7Sは超高齢者群で4.4±0.9ng/ml, 高齢者群で4.4±0.6ng/ml, 非高齢者群の50~69歳で4.8±1.6ng/ml, 20~49歳で4.3±0.6ng/ml, PIIIPは超高齢者群で0.70±0.31U/ml, 高齢者群で0.64±0.34U/ml, 非高齢者群の50~69歳で0.59±0.43U/ml, 20~49歳で0.46±0.14U/mlであり, ヒアルロン酸, IV型コラーゲン, PIIIPは加齢により上昇する傾向を認めた. とくにヒアルロン酸においてはその傾向が顕著であった. さらに対象 (健診受診者81例) を加え, 各年代におけるヒアルロン酸値を検討した. 結果, 年代が上がるにつれヒアルロン酸値は確実に上昇を示し, 年齢とヒアルロン酸値の間には相関が認められた (相関係数r=0.64, p<0.001). さらに線維化マーカー, 免疫グロブリンや血清アルブミンなど各種項目における加齢への影響について多因子分析を用いて検討したところ, ヒアルロン酸が最も影響しているといった結果であった (p<0.0002, p<0.00002). ヒアルロン酸は実年齢以外で老化を評価する指標になりうると考えられた.
  • 江藤 仁香, 土橋 卓也, 阿部 功, 飯田 三雄
    2002 年 39 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    本邦における高齢者高血圧へのアンジオテンシンII (以下AIIと略す) 受容体拮抗薬と低用量利尿薬との併用効果を検討した報告は少ない. そこで高齢者高血圧におけるAII受容体拮抗薬と利尿薬との併用の有用性について24時間血圧測定 (ABPM) を用いて検討した. 対象は高血圧を有する高齢者14例 (60~88歳, 平均75歳). AII受容体拮抗薬 losartan (25~50mg/日) または hydrochlorothiazide (以下HCTZと略す, 12.5mg/日) 投与後4週以上経過した症例に対してABPMによる血圧測定を30分間隔で施行し, 24時間または昼間平均収縮期血圧が140mmHg (80歳代では160mmHg) を越える例について両薬剤の併用を開始し, 4週間後にABPMを再度施行した. また, 両薬剤併用前後に血液化学検査を施行した. losartan 先行投与群 (n=9) における利尿薬併用後の降圧は24時間収縮期/拡張期血圧-19.3±2.3/-6.6±2.3mmHg, 昼間収縮期/拡張期血圧-21.4±4/-8.4±2.8mmHg, 夜間収縮期/拡張期血圧-15.2±4/-4.2±2.4mmHgと有意であった. 一方, HCTZ先行投与群 (n=5) における losartan 併用後の降圧も, 24時間収縮期/拡張期血圧-12.2±4.8/-3.4±1.4mmHg, 昼間収縮期/拡張期血圧-13.8±6.6/-4±1.1mmHg, 夜間収縮期/拡張期血圧-10±4.7/-3±2.4mmHgと昼夜を通じて相加的降圧を認めた. HCTZ先行群においては losartan 追加投与により昼間脈拍数が低下する傾向がみられた. いずれの投与法においても体重, 腎機能, 電解質, 尿酸, 脂質などに有意な変化を認めなかった. 高齢者高血圧患者に対し, AII受容体拮抗薬と低用量の利尿薬併用は代謝性および自他覚的副作用を来すことなく相加的降圧効果をもたらし, 高齢者高血圧の治療に有用と思われた.
  • 浅井 俊亘, 葛谷 雅文, 小池 晃彦, 神田 茂, 前田 恵子, 井口 昭久
    2002 年 39 巻 2 号 p. 187-192
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    β遮断薬は多くの大規模疫学試験にて生命予後を改善し, 心不全の患者に対しても血行動態, 自覚症状の改善が報告されている. しかし心不全患者や心予備能の低下している患者に対しては投与開始初期の心機能低下を来たすことがあり慎重な観察, 用量調節が必要と考えられている. また高齢者高血圧症患者では多臓器合併症を有していることが多い点からもβ遮断薬が降圧薬剤として選択されることが少ないのが現状である. 今回, 我々は高齢者においてもβ遮断薬が血行動態の改善に働くか, また副作用, 過度の降圧, 合併症の悪化などの忍容性の低下があるかを調べるために, 血管拡張作用を有するとされる非選択性β遮断薬である carvedilol を用いて, 高齢者高血圧及び狭心症患者を対象に検討した. 平均75.5±5.6歳 (65~88歳) の高血圧症または狭心症患者16名に対して carvedilol を10~20mg投与し投与前, 投与後3カ月で血圧, 心エコー図法による心機能計測, 臨床検査値を比較検討した. 血圧は163.8/87.6±15.6/11.2mmHgから141.6/76.9±16.6/11.7mmHgと有意に低下させた (p<0.001/p<0.01). 脈拍数は72.0±16.1bpmから63.9±11.4bpmへ低下させたが (p<0.05), 心拍出分画 (EF) は65.8±11.8%から71.2±11.4%へと増加させ (p<0.05), 心拍出量には有意な変化を認めなかった. また左室後壁厚が11.6±3.2mmから10.3±2.3mmへと減少傾向 (p<0.10) がみられた. 投与期間内において過度の降圧, 徐脈, 心不全などの副作用の出現例はなく, 臨床検査値についても投与前後において有意な変化を認めなかった.
  • 田原 康玄, 小原 克彦, 大西 美智恵, 植木 章三, 矢野 宏光, 山本 善邦, 伊賀瀬 道也, 山縣 英久, 名倉 潤, 三木 哲郎
    2002 年 39 巻 2 号 p. 193-196
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者の起立性血圧変動の特徴について, 特に起立後の血圧測定時間の影響について検討した. 調査対象として, 愛媛県下のコホートから50歳以上の在住者全例を選定した. このうち本研究に同意し, 降圧薬等の服薬のない237例を解析対象とした. 起立性血圧変化は, 安静臥床時, 起立1分後および3分後の収縮期血圧変化から判断した. 対象者全体では, 起立後の経時的血圧変化は, 1分後の変動が最も大きく, 3分後には前値に戻る傾向を示した. しかし起立1分後には血圧変動異常を示さず, 3分後に初めて過度の低血圧または高血圧を呈した例がそれぞれ7.2%, 8.4%存在した. 起立性血圧変化の異常は, 起立1分後の血圧測定でまず評価し, 異常が認められない場合は, 3分後にも再度測定することで評価する必要があることが示された.
  • 島田 裕之, 内山 靖, 加倉井 周一
    2002 年 39 巻 2 号 p. 197-203
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    本研究では通所にてリハビリテーションを利用している高齢者において, 屋外活動範囲の違いが筋力, バランス, 歩行機能といった運動機能に及ぼす影響を検討するとともに, 屋外活動の遂行に関連する身体機能を明らかにすることを目的とした. さらに, 施設入所者を加え身体活動とともに, 知的, 社会的活動が身体諸機能に及ぼす影響を検討した. 対象は施設を利用する高齢者265名 (平均年齢80.3±7.0歳) であった. 屋外活動範囲の聴取によって屋内活動, 近隣のみの屋外活動, 遠方までの屋外活動を行う群に通所者を分類し, これらの群間で身体機能の差を調べた. その結果, Barthel Index, 片脚立ち保持時間, Timed Up and Go Test, Performance-Oriented Mobility Assessment において有意差が認められ, 広範囲に活動している者ほど高い身体機能を保持していた. また, 近隣での屋外活動を行うためには Barthel Index が95点以上, バスなどの公共交通機関を利用して遠方まで活動するには Timed Up and Go Test が18秒以内, Performance-Oriented Mobility Assessment が26点以上であれば概ね遂行可能であると考えられた. 身体活動や知的活動の遂行別に身体機能を比較すると, 入所者, 通所者ともに運動習慣や家事などの身体活動を行っている者が高い身体機能を示した. 以上から, 活動範囲の拡大や積極的な身体活動を遂行している高齢者は, 良好な身体機能を有しており, 適切な活動の遂行が機能低下の予防に関連するものと考えられた.
  • 寺本 信嗣
    2002 年 39 巻 2 号 p. 204-208
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者における吸入β2刺激薬の呼吸生理学的効果と生活の質 (QOL) への効果を検討した. 80歳以上のCOPD患者12名について吸入β2刺激薬 fenoterol bromide (FB) 2パフ (200mg) 前後で安静時肺機能, 呼吸筋力, 運動時呼吸困難感を評価した. さらに, FBによる吸入療法前後一カ月の生活の質をSt. George's Respiratory Questionnaire (SGRQ) を用いて評価した. FB吸入により, 安静時肺機能では肺活量, 一秒量が増加し, 残気率が低下した. 呼吸筋力は, 最大吸気圧 (PImax) が増加した. ボルグスケールで評価した運動時呼吸困難感は, 有意の低下を示した. SGRQは, symptoms, impact, activity の全ての指標でFB吸入療法後改善がみられた. 従って, 吸入β2刺激薬によって呼吸生理学的改善と同時にQOLも改善することから高齢COPD患者の吸入療法の選択薬の一つとして考慮すべきと思われる.
  • 織田 雅也, 和泉 唯信, 宮地 隆史, 越智 一秀, 中村 毅, 伊藤 聖, 片山 禎夫, 中村 重信
    2002 年 39 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    患者は78歳女性. 15年以上経過した気管支喘息に加えて, 亜急性に多発単神経炎を発症し, 両足および左手のしびれ・疼痛および筋力低下・筋萎縮が進行した. 他医で prednisolone を最高80mgまで投与されたが改善せず, 歩行困難となり当院に転院した. 検査所見では, 好中球優位の白血球数増加, CRP上昇, 腎機能障害がみられ, P-ANCAの上昇を認めた. 腓腹神経の組織学的検査では血管周囲の著明な炎症細胞浸潤像と血管閉塞所見を認め, 有髄線維の脱落が非常に高度であった. 多発単神経炎および腎機能障害が増悪したため, ステロイドパルス療法を行い, 両足の疼痛は軽減し, 検査所見では炎症反応の鎮静化と腎機能の改善を認めた. しかし重度の筋力低下と感覚低下を残した. 本例は高齢発症のANCA関連血管炎症候群で, 気管支喘息の先行を認めアレルギー性肉芽腫性血管炎 (Churg-Strauss 症候群, CSS) が考えられたが, 経過を通して好酸球数増加は軽度にとどまりCSSの診断基準を満たさなかった. 本例は高度の腎障害を呈し組織学的に細小血管の炎症を認めたことから顕微鏡的多発血管炎と診断したが, 複数の血管炎の病型がオーバーラップした病態も考えられた. 血管炎症候群の予後は不良で, ステロイド治療に反応し比較的予後良好なCSSでも高齢発症の場合は治療成績が悪く, 重度の後遺障害を残して日常生活動作 (ADL) の低下を招きやすいため特に注意を要する病態である.
  • 金森 雅夫, 鈴木 みずえ, 田中 操
    2002 年 39 巻 2 号 p. 214-218
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者が定期的にペット型ロボットAIBOとの活動に参加することで Quality of Life, 孤独感などに何らかの影響を及ぼしたと考えられるので報告する.
    施設高齢者では, AIBO活動中の評価の1回目と20回目を比較すると「発語」,「感情語」,「満足度」が有意に上昇していた (p<0.05). AKO孤独感尺度は3.33 (±2.16) から1.00 (±1.26) と有意に減少していた. SF-36のAIBO活動前後の比較を示したが, 日常役割機能 (身体) (RP) は活動前と比べると活動後が有意に上昇していた. カテコラミン濃度変化と相関する唾液 Chromogranin A (CgA) では, ロボット活動の対象群は活動直前と比べると有意に低下していた (p<0.01).
    症例1: 女性, 68歳, 慢性関節リウマチ, AKO孤独感尺度が減少し, 心がやすらぐと訴えた.
    症例2: 女性, 74歳, 頚椎骨軟骨症, AKO孤独感尺度が5点から2点と減少した. 他の入所者とのトラブルで塞ぎ込んでいたが, 後半はロボット活動に積極的に参加した.
    症例3: 男性, 84歳, 脳梗塞による体幹機能障害, AKO孤独感尺度は6点から1点と減少, ロボットと一緒に歌うなど表情が明るくなった. 家庭の親子間の会話の量が非常に増えた.
    以上の結果からペットロボットは動物と違い細菌感染の危険が全くないため, 医療機関では無菌室, ICU,痴呆病棟, 小児病棟における動物介在療法の代償として, あるいはロボット技術の進歩によってさらに別の心理社会療法として活用される可能性が示唆された.
  • 2002 年 39 巻 2 号 p. 219-234
    発行日: 2002/03/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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