日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
39 巻, 4 号
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  • 松林 公蔵
    2002 年 39 巻 4 号 p. 355-363
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 福山 秀直
    2002 年 39 巻 4 号 p. 364-370
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    神経系の画像診断について, X線CT以後, 磁気共鳴画像装置, ポジトロンCTなどもふくめて, 機器や解析方法の進歩について概説した. 神経系画像診断の進歩によって, 形態的な診断から, 形態情報を持った機能画像へと進化し, 脳機能の解明と神経疾患の病態把握に有用な情報が得られるようになってきた. 一つは, 脳賦活試験とよばれる被験者にさまざまな課題を課して, その時の血流増加部位を統計学的に計算し, 脳機能局在を解明する方法が開発された. これは, おもに, MRIとPETによる検査で行われる. もう一つは, 神経受容体の研究で, 内因性神経伝達物質の放出量を測定するものである. PETによる脳虚血やアルツハイマー病の病態解明が行われた. アルツハイマー病では帯状回後部の代謝の低下が発病早期から見られ, 重要な所見と考えられている. また, 治療薬として, アセチルコリン分解酵素阻害薬が使われるようになり, アセチルコリン受容体の画像化が検討されている. さらに, 今後, アミロイド蛋白など脳内へ蓄積する蛋白の画像化, 脳機能局在の相互連関に関する新しい方法論の開拓が行われれば, マクロスコピックにみた脳機能の解明に大きな進歩をもたらすものと考えられる.
  • 名倉 潤
    2002 年 39 巻 4 号 p. 372-374
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    ヒトゲノムプロジェクトは約3,000Mbと推定されているヒトゲノムの全塩基配列を同定することを目標としているが, すでにドラフトシークエンスは完成し, 遺伝子の数は3万から4万と推定されている. 同時に100万以上の単一塩基置換型DNA多型もマップされており, この成果は早老症をはじめとする各種遺伝性疾患の原因遺伝子をリバースジェネティクスの手法で同定あるいは統計学的手法で解析するために大きな助けとなる. 一方, 老年病・生活習慣病などの多因子疾患の解析には, ゲノム構造が明らかになるにしたがって, 以前にも増して新たな統計学的手法の確立と多数の厳選されたサンプルや家系あるいは他の動物の比較検討や遺伝子機能の情報が要求されることとなる.
  • 谷澤 幸生
    2002 年 39 巻 4 号 p. 375-377
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 勝谷 友宏, 檜垣 實男, 荻原 俊男
    2002 年 39 巻 4 号 p. 378-380
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    2001年2月にヒトゲノムプロジェクトの成果が発表された. 塩基配列決定の次のステップは, 遺伝情報を如何に生態情報に反映させるかに焦点が絞られている. 本態性高血圧症の5割は遺伝因子により規定されると考えられるが, 明らかに高血圧原因遺伝子と呼べるものは同定されていない. この理由として, 一つの遺伝因子の規定する血圧への影響が小さい, 浸透力が低い, 環境因子・遺伝因子相互作用が不明であることなどが考えられる. 高血圧, 糖尿病に代表される生活習慣病は多因子疾患であり, 複数の因子の相互作用を解明するためには, 十分な対象者数, 正確かつ多様な生態情報 (表現型) の収集が必要である. 我々が共同研究を行ってきた吹田研究や大迫研究におけるレニンーアンジオテンシン系遺伝子多型の高血圧感受性に及ぼす影響について述べるとともに, 高血圧の臓器障害や血圧の日内変動との関連についても言及する. また遺伝子多型同定のための技術革新, 遺伝薬理学的な視点からの降圧薬治療についても触れる.
  • 山田 紀広
    2002 年 39 巻 4 号 p. 381-385
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 栗原 裕基
    2002 年 39 巻 4 号 p. 386-388
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 藤澤 智巳, 池上 博司, 荻原 俊男
    2002 年 39 巻 4 号 p. 390-392
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者糖尿病といってもその臨床像についてはかなりの多様性があり, コントロール目標の設定のためにも個々の患者において臨床的多様性をアセスメントしておく必要がある. この高齢者糖尿病の臨床的多様性を検討するために, 今回3つの側面 (過去, 現在, 将来) から, 我々の外来ならびに関連病院の外来患者の臨床データを解析した. まず,「過去」の側面として, 罹病期間と高血糖のレベルに注目して検討した. その結果, 特に罹病期間については著しい個人差があり, 合併症の進行度についても大きな多様性を認めた. 次に「現在」の側面として, 個々の患者における糖尿病の病態としてインスリン分泌能と抵抗性の二つの因子を検討したところ, 加齢によるインスリン抵抗性の悪化をベースにインスリン分泌障害の著明な個人差が認められ, 大きな多様性が存在することが示された. 最後に「将来」の側面として, 現年齢が多様であることから予命の長さも多様であるが, 合併する脳・心・腎疾患により予後が大きく左右されることに留意が必要と考えられた. 以上より高齢糖尿病患者を3つの側面 (過去, 現在, 将来) についてアセスメントすると, 非常に臨床的多様性に富むことが示された. 各患者について3つの側面より評価を行い, 治療目標の設定に反映させることが高齢者糖尿病のマネージメントに際して重要となること考えられた.
  • 小谷 玲子, 永田 正男, 横野 浩一
    2002 年 39 巻 4 号 p. 393-395
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 荒木 厚, 室谷 ゆかり, 青柳 幸利
    2002 年 39 巻 4 号 p. 396-399
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Because of diversities of physical, mental, and psychological functions as well as clinical and social backgrounds, comprehensive geriatric assessment (CGA) is of great importance in treating elderly diabetic patients. We addressed three issues as to functions important for the CGA.
    First, we assessed several domains of cognitive function in 213 elderly diabetic patients. Attention and visual memory in diabetic patients without vascular disease were impaired compared with non-diabetic controls after adjusting for age and sex using analysis of covariance. Multivariate analysis revealed that age, hyperglycemia, and the presence of cerebral infarction were independent determinants for the impairment of attention in the diabetic patients. The results suggest that glucose control is important for the maintenance of cognitive function in elderly diabetic patients. Secondly, we assessed positive well-being as a measure of psychological function using a PGC morale scale in 197 elderly diabetic patients without cerebrovascular disease at baseline and examined whether the low well-being affect the development of cerebrovascular disease in a 3-year longitudinal study. The results indicate that low well-being was an independent risk factor for cerebrovascular disease after adjusting conventional risk factors in elderly diabetic patients. Thirdly, as a physical function, we assessed 5-m walking speed for both usual and maximum walking in 64 diabetic patients. The walking speed decreased with age and correlated significantly with the knee extension power and functional reach. The result suggests that muscle-strength exercise and balance training as well as endurance exercises are necessary to improve age-related decreases in walking speed and for effective exercise in elderly patients. From a gerontological point of view, new strategies of elderly diabetes treatment including muscle strength exercise and psychological approaches should be established to improve physical, mental, psychological, and social functions as assessed by the CGA.
  • 橋本 正良
    2002 年 39 巻 4 号 p. 400-403
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Evidence has accumulated that impairment of vascular endothelial function is the initial step in the development of atherosclerosis. One important finding is the impairment of the release of the endothelium-dependent relaxing factor, which is now thought to be nitric oxide or its related substances, from endothelial cells. Flow-mediated dilatation (FMD) induced by reactive hyperemia has been know to be endothelium dependent, and this can be detected during reactive hyperemia by high-resolution ultrasound in superficial arteries. Several coronary risk factors such as hypercholesterolemia, smoking and hyperhomocysteinemia have been reported to be significantly related with decreased FMD. A non-invasive technique using B-mode ultrasonography can visualize and assess the lumen and vessel wall of the carotid artery. We analyzed Intima-media thickness (IMT) of the right common carotid artery using this method. IMT thickening consists of both an intimal atherosclerotic process and medial hypertrophy. Since IMT is increased in subjects with familial hypercholesterolemia and shows a progressive reduction with cholesterol-lowering treatment, IMT seems to be significantly related to the early phase of atherosclerosis. Ankle brachial pressure index and pulse wave velocity have been clinically applied to evaluate atherosclerosis. These methods are also introduced in this symposium.
  • 林 登志雄
    2002 年 39 巻 4 号 p. 404-408
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    我々は, 高齢者QOLを確保していくのには, 無症候の進行動脈硬化病変をできるだけ非侵襲下に診断し, 治療する事が必要と考え, いくつかの試みを行ってきた. 診療において, CGA (高齢者総合機能評価) はADLのみならず, QOLの面からも高齢者診療に有用と考えられた. 高齢者用運動負荷試験は, 高齢者に安全に施行でき, 糖尿病患者に高い運動負荷陽性率を検出した. また, 同時下肢血圧測定は閉塞性動脈硬化症の早期診断に有用であった. 血清BNP (脳性利尿ペプチド) 濃度等の血管内分泌検査は, 高齢者の潜在性心疾患の早期発見等に有用性が期待される. 反応性充血を利用した血管内皮機能検査は, 頸動脈超音波検査と並んで高齢者の動脈硬化性疾患の診断に期待できる. 治療に関してもこういった諸検査を通じて評価していく事が可能であり, 意義があると考える.
  • systemic nutritional index としての検討
    菊地 基雄, 稲垣 俊明, 品川 長夫, 上田 龍三
    2002 年 39 巻 4 号 p. 409-413
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    急性疾患や悪性腫瘍を罹患していない高齢者に認められる, 軽度に上昇したsIL2R値の臨床医学的な意義ついて検討した. 脳梗塞後遺症のために特別養護老人ホームで生活している高齢者で発熱や明らかな感染症, 急性炎症症状や疼痛などの自覚的臨床症状のあるものや, 免疫学的に影響する治療を受けているものは除外した35例を対象にして, 既往歴・現病歴より悪性腫瘍またはその疑いのない高齢者24名 (NC群) と, 悪性腫瘍はあるが安定している高齢者11名 (CA群) に群別した. 血清学的な一般検査, CD4およびCD8陽性リンパ球数, 血清可溶性IL-2受容体濃度 (sIL2R値) を測定し, NC群をsIL2R値が883U/mL以下 (15例, Control 群), 884U/mL以上 (9例, NH群) にわけ追跡した. Control 群とNH群との間で性・年齢差は無く, ADL score, Alb, BUN, T. Chol, Pettigrew の prognostic nutritional index (PNI) は有意差を認めた. sIL2R値に関する共通因子の解析では, NC群で Cre, BUNで正の相関関係を認め, Alb, T. Chol, ADL score, PNIで負の相関関係を認めた. CA群では Control 群と比較してsIL2R, Alb, TP, T. Chol, β-Lipo, PNIは有意差を認めたが, sIL2値に関する共通因子や相関関係は無かった. 生存率は Control 群の24カ月間の予後がNH群より有意に良好であったが, CA群との有意差は無かった. 軽度に増加しているsIL2R値は悪性腫瘍を罹患していない慢性期の安定している高齢者において, 栄養状態など不顕性に悪化している全身状態と密接な関係があり, 短期的な予後とも関連しうることが示唆された.
  • 寺本 信嗣
    2002 年 39 巻 4 号 p. 414-418
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者における徐放性キサンチン製剤の経口投与の効果を呼吸生理学的に検討した. 80歳以上のCOPD患者12名について徐放性キサンチン製剤 Unifil®200mgを夕食後経口投与し, 1週間継続し, 投与開始前と開始1週後で安静時肺機能, 呼吸筋力, 運動時呼吸困難感を評価した. さらに, 翌週は Unifil®400mgを経口投与し, 400mg投与開始1週後に前回と同様の検討を行った. Unifil®200mg投与では明らかな肺機能の改善は見られなかったが, 400mg投与では肺活量, 一秒量とも有意の増加を示した. 呼吸筋力についても, 400mg投与によって最大吸気圧 (PImax) が増加した. ボルグスケールで評価した運動時呼吸困難感は, 200mg投与後は明らかな変化を示さなかったが, 400mg投与によって有意の減少を示した. 副作用については200mg投与では一例も見られなかったが, 400mg投与では2例で消化器症状の訴えがあった. 従って, 徐放性キサンチン製剤は高齢COPD患者に対して投与量を工夫することで呼吸生理学的な改善をもたらすと考えられた.
  • 金 京子, 岩本 俊彦, 高崎 優
    2002 年 39 巻 4 号 p. 419-426
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    血小板凝集能が高齢者の生命予後にどのような影響を及ぼすかを知る目的で, 60歳以上の外来患者に血小板凝集能検査を施行後, その生命予後を後ろ向きに検討した. 対象は種々の疾患を有するが, 観察開始時には抗血小板療法の行われていない連続347例で, 疾患では脳血管障害慢性期例が107例と多かった. 平均年齢は77.0±7.6歳, 男性161例, 女性186例で, これらを血小板凝集能よりI群 (低下群: n=40), II群 (正常群: n=208) およびIII群 (亢進群: n=99) に分類した. 血小板凝集能は凝集惹起物質にADPを用い, 従来の吸光度法より得られた grading curve (以下GC) を血小板凝集能の指標とし, 143例には3~6カ月後に再検査した. 追跡期間は平均3.9年で, 調査は再診や診療録, 電話による聞き取り調査に基づいた. 各群の平均年齢は76.3~78.0歳となり, III群には高齢の女性が多かった. 血小板凝集能の再現性はGCの型を3群間で検討すると一致率は0.72, 一致係数κは0.37となった. 死亡数はI群3例, II群33例, III群30例, 年間死亡率は各群の2.1%, 4.0%, 7.5%となり, III群が有意に高かった. 死因は肺炎が各群に多くみられ, さらにIII群では脳梗塞が15例あった. これより血管性事故による死亡数はI群1例, II群5例, III群17例となり, 年間死亡率は各群の0.7%, 0.6%, 4.2%となった. 観察期間中に各群の約15%に抗血小板療法が行われていたが, これらを除いた生存分析でもIII群の年間死亡率は有意に高かった. Cox比例ハザードモデルでは死亡全体に影響する因子としてADLの状態, 血小板凝集能が各々ハザード比2.8, 1.4で, また, 血管性事故による死亡に影響する因子として血小板凝集能, 糖尿病が各々ハザード比2.3, 2.2で有意に高かった. 以上より, 血小板凝集能の亢進例では血管性事故による死亡率が高く, 予後は悪かった. この成績は, 亢進した血小板凝集能が既に進展している血管病変を示唆するのと同時に,このような例では抗血小板療法による治療を検討する必要があると考えられた.
  • 須藤 英一, 田沼 志保, 須藤 英津子, 高橋 義彦, 吉田 章, 小林 力, 大浜 用八郎
    2002 年 39 巻 4 号 p. 427-432
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    我々は当院において主に脳血管障害後遺症の症例を中心とした摂食・嚥下リハビリテーション (以下嚥下リハと略す) の導入を試みている. 今回嚥下リハ実施における嚥下機能スクリーニング評価法として水飲み試験の有用性を実証するため, 水飲み試験と videofluorography (以下VFと略す) を施行し, 摂食状況を含めた追跡調査を行い検討を加えた. 対象は脳血管障害後遺症の15例 (男性14例, 女性1例, 平均年齢72.9±2.3歳) であった. 水飲み試験は窪田らの方法を改訂し常温の水10mlを飲ませ, 嚥下障害スコアによりA (障害あり) 群, B (障害疑い) 群に分類した. VFはあらかじめ硬さや味を変えて工夫を加えた食塊にバリウムを混入し, 個々の患者に嚥下しやすい形態を検討することとした. 15例の患者はA群4例, B群11例に分類された. VFを施行しその後の摂食状況を追跡調査した. VF上A群は全例水分を誤嚥し不顕性誤嚥も認められた. B群はトロミをつけた食塊やゼリーの喉頭蓋谷や梨状陥凹での貯留を殆どの症例で認めたが, 明らかな誤嚥や不顕性誤嚥を伴う症例は少なかった. A群はその後嚥下リハによっても全量経口摂取ができず, 経皮内視鏡的胃瘻造設術, 間欠的口腔食道経管栄養法の対象となった. B群では嚥下リハにより食塊や姿勢の工夫, 有効な嚥下方法の検討 (嚥下後の発声や横向き, 複数回, 交互嚥下等) を行うことによって, 全例が全量経口摂取可能となった. なお全例VFによる合併症は生じなかった. ベッドサイドで容易に施行可能な水飲み試験で評価した嚥下機能は信頼性があり, VFは水飲み試験で分類した症例によって食形態や摂食環境を整え, 治療内容の決定, 並びに到達目標を予測検討する上で安全で有益な情報をもたらす検査方法であることが示された.
  • 菊地 基雄, 稲垣 俊明, 上田 龍三
    2002 年 39 巻 4 号 p. 433-438
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    多発性骨髄腫は高齢者に比較的多くみられ, 加齢に伴う合併症を伴うことがある. 症例は1989年 (54歳時) 11月脳梗塞を発症し, 多発性骨髄腫 (IgGκ型, Stage IIIA) を併発したため化学療法を開始し部分寛解した. 骨髄細胞の染色体は46, XYの正常核型であり, PCR-SSCP法によるp53遺伝子の異常は無かった. 1999年2月骨髄腫が悪化したため化学療法 (melphalan 10mg, vindesine 3mg, ranimustine 150mg, prednisolone 60mgを4日間) を施行した. 好中球数の減少に対し nartoglastim 50μg/日を連日皮下注射したところ, 6日目に血清CK値の上昇を伴って右眼周囲に発赤・疼痛の無い腫脹が出現した. Nartoglastim の投与を中止し, 腫脹は消失し血清CK値は正常化した. 7月に同様の化学療法を施行し, 好中球減少に対して filgrastim 75μg/日を連日皮下注射したところ, 6日目に左眼周囲に同様の腫脹が出現し, filgrastim の投与を中止し腫脹は消失した. 2000年7月 dexamethasone 40mgを投与時も, filgrastim 75μgを連日皮下注射したところ5日目に右鎖骨周囲の軟部組織が腫脹した. 急性心筋梗塞で死亡され病理解剖を施行し, 骨髄中に骨髄腫細胞の増殖を, 右鎖骨下筋組織内には骨髄腫細胞の浸潤を認めた. 本症例では多発性骨髄腫で複数の granulocyte-colony stimulating-factor により軟部組織が可逆性に腫大し, 末期には骨髄腫細胞が横紋筋組織内に浸潤した稀な症例と考えられた.
  • 須藤 英一, 田沼 志保, 原口 奈美, 小林 力, 高橋 義彦, 吉田 章, 大浜 用八郎
    2002 年 39 巻 4 号 p. 439-443
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    75歳女性. 主訴は咳, 痰, 労作時呼吸困難感, 発熱. 現病歴は1996年より慢性閉塞性肺疾患, 胃潰瘍にて当院内科通院中であった. その間しばしば上記主訴の増悪, 緩解にて入退院を繰り返していたが, 2000年症状が進行し, 呼吸器感染症の増悪が疑われ3月10日当院内科入院となった. 意識清明, 右下肺野に非連続性ラ音を聴取した. 検査所見上WBC 21,950/μl CRP 18.7mg/dl血沈77mm/hr動脈血液ガス分析PaO2 43.8torr PaCO2 64.7torr pH 7.381 SaO2 77.0% (room air) 胸部X-p右下肺野に浸潤影あり. 肺機能は肺活量0.89L一秒量0.37L一秒率56.1%であった. 入院後抗菌薬, 酸素投与によりWBC 7.070/μl CRP0.8mg/dlまで改善したのを確認後, 入院中に呼吸リハビリテーションを開始した. 呼吸法訓練や運動療法, 酸素療法, 日常生活動作指導を毎週5回施行し, 在宅酸素 (home oxygen therapy: HOT) を導入した. その結果運動耐容能 (6分間歩行距離) の改善を認め, 6月に自宅退院 (独居) した. その後呼吸器専門の訪問看護婦による指導と, 自宅で酸素コンプライアンス把握のための24時間モニタリングシステムを導入し, 地域医療チームと連携して経過観察を行った. 現在まで (退院後約1年8カ月) 急性増悪や再入院することもなく, 酸素管理, 内服, 日常生活能, 精神状態の自己管理能力が向上し, 呼吸状態を安定に保ち, 在宅生活が可能となっている.
  • 横山 聡, 芦田 映直, 杉山 卓郎, 海老原 文, 藤井 潤, 千田 宏司, 江崎 行芳, 大川 真一郎
    2002 年 39 巻 4 号 p. 444-447
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    初診時59歳, 死亡時85歳の日本人男子. 初診時に162/102mmHgの高血圧, 著明な収縮期雑音があったが, その後10余年間は薬物無投与で日常生活可能であった. 72歳になり労作時胸部不快感が出現, 心電図は異常ないが心エコー図で軽度狭窄を伴う石灰化した大動脈二尖弁を認めた. 81歳になり労作時の呼吸困難, 胸部圧迫感が悪化, 軽い負荷で心電図のST低下, 心エコー図で大動脈弁開放不良を認めた. その後, 心電図でQRS電位増高, ST低下, 陰性T波, 心エコー図で左室拡張終期径拡大, 大動脈起始部流速増加を認め, 85歳になり胸水貯溜, 治療抵抗性心不全で死亡した. 剖検により著明な心肥大 (重量580g), 前尖に縫線がある前後型大動脈二尖弁の高度石灰化および狭窄, 右冠動脈起始部の高度狭窄を認めた.
  • 蟹江 治郎, 各務 千鶴子, 山本 孝之, 赤津 裕康, 鈴木 裕介, 葛谷 雅文, 井口 昭久
    2002 年 39 巻 4 号 p. 448-451
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は85歳女性. 介護老人保健施設にて胃瘻による経管栄養管理を受けていた. 来所時は状態が安定していたが, その後, 経腸栄養剤の流涎, 胃瘻挿入部からの経腸栄養剤リーク, 嘔吐, 発熱, 栄養剤注入時の呼吸困難様症状, 肺炎などの症状を反復して認めた. そのため, 各症状の緩和のために, 粉末寒天により固形化した経腸栄養剤投与を開始したところ, 投与直後より発熱以外の症状が消失し, 発熱に関しても開始後2週間で消失し, 良好な経過が得られた. また投与手技も簡略化され, 介護者の労働的負担の軽減にも寄与し得た.
  • 1999-2000年度合同研究班
    2002 年 39 巻 4 号 p. 452-460
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 2002 年 39 巻 4 号 p. 461-475
    発行日: 2002/07/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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