日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
39 巻, 6 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 永田 智子, 村嶋 幸代
    2002 年 39 巻 6 号 p. 579-584
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    診療報酬改定によって在院日数短縮のインセンティブが強まっている昨今, 退院支援の重要性についての認識が高まっている. 退院支援とは, 患者が異なるケア環境に円滑に移行するのを助けるための「一連のプロセス」であり, かつそれを行うための「病院全体のシステム」である. 本稿では, 高齢者の退院支援に関する研究の現況について, 病院の特性に応じた退院支援体制のあり方, ハイリスク患者を早期に発見するためのスクリーニング方法の開発, 支援方法の改善を目指す介入研究, 支援過程自体の評価, 病院と地域との連携の際に生ずる情報提供にあたっての問題点という, 5つの切り口から検討した. 日本では, 退院支援の実践・研究共に歴史が浅いが, 今後は, 臨床と研究機関との協働により, 患者・家族と医療者双方にとって有益な支援が行われるよう, 知見を蓄積していくことが必要である.
  • 藤野 政彦
    2002 年 39 巻 6 号 p. 585-589
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    ヒトの遺伝子情報が殆ど解明された現在, 創薬研究の中心はその遺伝子情報をどのように利用して画期的な医薬品を創製するのかに移ってきている. 医薬品として最も多い標的分子が膜蛋白質のGPCRであることを踏まえて, いまだに作用分子が分からないオーファンレセプターを探索し, その結果を元に創薬研究のターゲットを開拓することを目的に, 主として新しいペプチド系のリガンドを探したが, 現在までに7種類の新生理活性ペプチドを発見し, さらに4種類の既知ペプチドのレセプターを確認することが出来た. これらの研究結果は直接新医薬品開発のアッセイ系を提供するもので, 最近ではこのような方法論は一般に reverse pharmacology と呼ばれるようになって来ている. 我々はこれらの研究から新しい画期的な医薬品が創製されるものと考えている. また, 今後のゲノム創薬のターゲットとしてはDNAチップ等の技術的な進歩が支えになって, 疾患や病気の進展にともなって変動する遺伝子を同定し, その遺伝子情報を元に薬をデザインする研究が進展するものと考えている. 以上のような研究に関して我々の研究を中心に解説する.
  • 日野原 重明
    2002 年 39 巻 6 号 p. 590-597
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 成田 亘啓, 吉川 雅則, 玉置 伸二, 古西 満, 木村 弘, 岡村 英生
    2002 年 39 巻 6 号 p. 598-601
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 戸張 幾生
    2002 年 39 巻 6 号 p. 602-605
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 尿失禁の機能評価と対策
    鳥羽 研二
    2002 年 39 巻 6 号 p. 606-609
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    長期介護の高齢者における排尿障害でもっとも重要な事項は機能性尿失禁の診断とその対策である. 機能評価で重要な4要素は, 器質的尿失禁の除外, ADLの評価, 痴呆の重症度, 意欲の評価である. 高齢者は合併疾患が多いため, その疾患に特有な失禁の出やすいタイプと使用されている薬物特性を踏まえた対応が求められる. 機能性尿失禁対策は, 排尿誘導などの行動療法が推奨される. 尿失禁対策は患者の意欲を向上させ, 施設介護における重要な介護手技の一つである.
  • 平田 結善緒
    2002 年 39 巻 6 号 p. 610-612
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 松島 敏春
    2002 年 39 巻 6 号 p. 613-614
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    肺炎ガイドラインにおいて, 老年という因子はそれほど重要視されていない. 欧米のガイドラインでは, かつては群別に用いられていたものが, 改訂後は耐性菌に関与する因子などへと, むしろ格下げされている感がある. 日本呼吸器学会のガイドラインでは, 重症度を規定する因子としている. そのため, 肺炎の重症度を上げ, 重症肺炎を多くしていると指摘されている. 老年者肺炎では加齢と共に著明に死亡率が増加するので, それでよいのかもしれない. 非典型的な形で発病する老年者肺炎の早期診断の糸口や, 老年者特有の治療方法や, ワクチン接種による予防法などを, 今後のガイドラインには示す必要がある.
  • 永井 厚志
    2002 年 39 巻 6 号 p. 615-617
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 恩田 光子
    2002 年 39 巻 6 号 p. 618-625
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 薬局・薬剤師機能が在宅ケアのサービスリソースとして有効活用されない原因を検討するために, 在宅ケアサービス利用者 (以下利用者とする) の薬局・薬剤師に対するニーズおよび医師が薬局・薬剤師に対して要望するサービスの内容と, 自らの業務に対する薬局・薬剤師の重要性認識に差はあるのか, また, 医師と看護・介護職の間で薬局・薬剤師との業務連携の重要性やそれに影響を与える要因に対する認識に差はあるのかについて検証した.
    在宅ケア関連サービスに着目すると, 利用者および医師は, 薬局・薬剤師に対して在宅医療・福祉サービスの相談応需を重視し, 訪問薬剤管理指導への要望は比較的低かったのに対し, 薬局・薬剤師は訪問薬剤管理指導を重視し, 在宅医療・福祉サービスの相談応需は比較的重視していなかったことから, 利用者ニーズおよび医師の要望と, 自らの業務に対する薬局・薬剤師の重要性認識には差があることがわかった.
    医師および看護・介護職の薬局・薬剤師との業務連携に対する重要性認識は, 他職種に対するそれと比較して低く, 医師と看護・介護職の認識に差はなかった. 連携認識に影響を与える要因として, 訪問薬剤管理指導の認知度を比較すると, 医師, 看護・介護職共に低かったが, 医師に比して看護・介護職の認知度が低かった. また, 薬局・薬剤師の在宅ケアサービスへの参加に対する期待度は, 看護・介護職に比して医師の方が低かった. 一方, 訪問薬剤管理指導の必要性については, 両者共に7割以上が必要だと認識し, 両者に差はなかった. したがって, 業務連携を推進するためには, 特に看護・介護職の訪問薬剤管理指導の認知度を高めること, 医師の薬局・薬剤師の在宅ケアサービスへの参加に対する期待度を高めることに焦点があることが示唆された.
  • 梅田 正法, 飯島 喜美子, 荒井 ちあき, 加藤 雅子
    2002 年 39 巻 6 号 p. 626-630
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    われわれはETに対するラニムスチン (MCNU) による化学療法の臨床的効果について検討した. 対象は当科で化学療法を開始した60歳以上のET患者14名で, 初診時の年齢は61歳より88歳 (中央値73歳), 男女比は6対8であった. 治療前の血小板数は115.7±28.4×104lであった. 対象患者の内5例は血栓症を発症して, 1例は鼻出血を契機に病院を受診していた. 治療は主にMCNUの点滴静注により行ない, 12例においては血小板数を50×104l以下に, 2例においては70×104l以下にコントロールした. 14例中1例で脳梗塞の発症が見られた. 治療前に血栓症を起こした症例でもMCNUによる血小板数のコントロールにより1例を除いて血栓症を再発していない. 鼻出血を呈して入院した1例では血小板数のコントロールにより出血傾向が改善した. MCNUによる化学療法は高齢者ETの合併症の予防に有用である可能性が示唆された.
  • 梅田 正法, 足立 山夫, 富山 順治, 高崎 優, 新 弘一, 森 眞由美, 堤 久, 村井 善郎, 武藤 良知, 友安 茂, 川戸 正文 ...
    2002 年 39 巻 6 号 p. 631-638
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者多発性骨髄腫 (MM) の骨病変の発現率および経過について, また, 骨病変と臨床的検査パラメータおよび予後因子との関係について検討した. 対象は1988年より1997年までの間に老年者造血器疾患研究会の11施設に入院した65歳以上の患者146例で, 年齢は65歳より97歳で, 中央値は74歳で, 男女比では男64例, 女82例, 病型ではIgG型88例, IgA型37例, Bence-Jones (BJ) 型17例, IgD型3例, 非分泌型1例であった. 65例の非高齢者MM患者 (NE-MM群) を対照とし, 比較した. MM診断時に骨病変があるもの104例, 骨痛があるもの75例であり, 骨病変の種類では溶骨性病変のみが26例, 溶骨性病変+骨粗鬆症が23例, 骨粗鬆症が2例, 病的骨折のある症例が53例であり, 非高齢者MMに比して溶骨性病変+骨粗鬆症の症例の頻度が多かった. 骨病変を病的骨折を考慮せずに溶骨性病変+骨粗鬆症, 溶骨性病変, 骨粗鬆症の3型に分けると溶骨性病変+骨粗鬆症が66例, 溶骨性病変が33例, 骨粗鬆症が5例, 非高齢者は溶骨性病変+骨粗鬆症が15例, 溶骨性病変が37例, 骨粗鬆症が1例で, 高齢者では骨粗鬆症を合併した症例が有意に多かった (p<0.0001). 初診時の骨病変の部位は腰椎 (骨病変を有する症例中58.7%), 頭蓋骨 (56.7%), 胸椎 (40.4%), 肋骨 (27.9%) が多く, 非高齢者では頭蓋骨 (64.2%), 胸椎 (28.3%), 腰椎 (22.6%) が頻度が多く, 腰椎の骨病変は非高齢者よりも有意に高率であった (p<0.0001). また, 全経過中で骨痛により運動制限を受けたものは146例中71例 (48.6%) であった. 予後因子と骨病変の関係では入院時の骨髄中の形質細胞%は骨病変の有無により差があり, 血清Ca値, 骨髄中の形質細胞%および血清β2-microglobulin 値は骨痛および病的骨折の有無により有意差があった. 生存期間は非高齢者MMでは骨病変の有無, 骨痛の有無, 病的骨折の有無でそれぞれp<0.05で有意差が有りそれぞれ骨病変の有る症例, 骨痛の有る症例および病的骨折のある症例で短かったが, 高齢者MMでは骨病変の有無, 骨痛の有無, 病的骨折の有無においてすべてに有意差を見なかった. 以上より, 高齢者MMと非高齢者MMの骨病変の間に2・3の相違が見られた.
  • 大西 丈二, 益田 雄一郎, 葛谷 雅文, 市川 正章, 橋爪 眞言, 井口 昭久
    2002 年 39 巻 6 号 p. 639-642
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    経皮内視鏡的胃瘻造設術 (PEG) は管理が比較的容易で安全に栄養を与えることができる方法で, 近年広く行われるようになったが, 患者の長期予後やQOLに与える影響については十分に明らかになっていない. また高度痴呆患者に対して施行する場合, 誤嚥性肺炎を減少させ, 生命予後を改善するという確かな根拠が乏しいため, 適応は慎重にすべきであるという意見もあり, PEGの適応についてはまだ議論すべき問題が多い. 今回我々は, 安城更生病院で行われた連続78例のPEG患者の生命予後や家族の満足感などについて, 患者または家族に調査票を郵送することによって retrospective に調査した. このうち69例 (88%) より回答を得た結果, 1年後の生存率は64.0%であり, 2年後の生存率は55.5%であった. また「PEGを行ってよかったと思うか」という質問に対しては, 53%の家族が「はい」と答えた. PEG患者の生存率は, 本研究の結果はこれまで欧米で報告されてきたものに比べ良好な成績であったが, 対象患者, 治療内容や医療文化の相違などの要因が関与していることが考えられる. これらの要因を明らかにすることは今後の課題であるが, 高齢者でPEGを行う際には, 予後に関連する要因と, 見込まれる予後を検討した上で本人や家族の意向を十分に考慮し総合的に適応を判断すべきであろう.
  • 高橋 宏三, 藤永 洋, 小林 元夫, 内藤 毅郎, 飯田 博行, 青木 周一
    2002 年 39 巻 6 号 p. 643-647
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    高齢者においてリウマトイド因子陰性の多発性関節炎を診たときに, 考えるべき疾患はいくつかあるが remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema (RS3PE) 症候群もその1つである. これまで7症例経験した. 男2例, 女5例. 年齢は平均75.9歳 (67~82歳) と高齢で, 比較的急速な発症, 多関節炎, 両側の手背足背の pitting edema, リウマトイド因子陰性, 抗核抗体陰性ということが共通しており, McCarty らの提唱するRS3PE症候群とよく一致した. ただし本疾患は性別では男に多いとされているので, この点では異なっていた. 発熱を7例中4例に認め, 初診時CRP 0.9~27.8mg/dl, 赤沈70~140mm/hrであり, 全例が変形性関節症を伴なっていた. いずれも経過良好で, 有効治療はプレドニゾロン20mgが3例, 同10mgが2例, 非ステロイド性抗炎症薬が1例, 漢方薬が1例であった. 本邦での報告例は少ないが, まれな疾患ではないと思われる. 特に高齢者医療においてはこの疾患を知っていることが大切であり, 日常診療における注意深い観察が必要である.
  • 児玉 充央, 梅垣 宏行, 茂木 七香, 井口 昭久, 武田 章敬
    2002 年 39 巻 6 号 p. 648-653
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    痴呆症状にステロイドが著効した高齢者サルコイドーシスの1例を経験した.
    症例は, 74歳女性で, 10年来高血圧にて近医で治療を受けていた. 1年ぐらい前から, 物忘れを指摘さ れていたが入院前1カ月から症状が急速に悪化したため入院となった.
    入院時理学的所見では, 異常所見は認めず, 神経学的所見も, 両側 Babinski 徴候陽性以外に特記する所見は認められなかった. Mini-Mental State Examination (MMSE) は17/30点と低下し, 見当識障害と記銘力の低下を認めた.
    視野異常を訴えたため, 眼科を受診し両側葡萄膜炎と診断されたことをきっかけにサルコイドーシスを疑い, 諸検査を施行した. 胸部レントゲン写真では, 縦隔リンパ節腫脹が見られた. 頭部CTとMRIでは多発性ラクナ脳梗塞を認める以外異常を認めなかった. 脳造影MRIでは特異的な所見を認めなかった. 67Gaシンチグラフィーでは, 胸部に高吸収域を認めた. 髄液検査では, 蛋白量の増加, 脳波ではθ波~δ波が頻回の出現を認めた. ツベルクリン反応は陰性, 血清ACE値は高値であった. また, 確定診断の為, 右前斜角筋よりリンパ節生検を実施しサルコイドーシスと確定診断した. 入院後痴呆症状は急速に進行し, 入院時には17/30点であったMMSEの得点が, 30日後には7/30点へ低下した. 神経サルコイドーシスによる痴呆症状を疑いプレドニン (50mg/日) の内服投与を開始した. 治療開始1カ月後より各種検査所見は改善し, それとともに見当識の改善などがみられる様になった. その後, ステロイドを徐々に減量したが経過は良好で痴呆症状も徐々に改善しMMSE20/30点にまで改善した.
    文献的には高齢者のサルコイドーシスで痴呆症状を呈することは比較的に稀ではあるが, ステロイド投与によって症状の改善が期待できる疾患であり, 鑑別診断のひとつとして重要であると考えられた.
  • 橋田 英俊, 本田 俊雄, 森本 尚孝, 相原 泰, 松本 有司, 栗田 美恵
    2002 年 39 巻 6 号 p. 654-658
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症 (familial hypocalciuric hypercalcemia, 以下FHHと略す) は, 常染色体優性遺伝を示す比較的稀な疾患で, 高カルシウム血症にもかかわらずカルシウムクリアランスとクレアチニンクリアランスの比である尿中カルシウム排泄率は低値を示す. 通常血清カルシウム値は12mg/dl以下の軽度の上昇にとどまるため, 基本的には無症状で検診などで偶然発見されることが多い. しかし時に危険な高カルシウム血症を呈し治療を要することがあるが, 本疾患の場合副甲状腺摘除術を施行しても高カルシウム血症は治癒せず, 効果に乏しいことが多い. 今回我々は, 高齢になって著明な高カルシウム血症を呈したFHHが疑われる女性症例を経験した. 血清カルシウム値のコントロールに苦慮したが, 骨吸収抑制剤であるアレンドロン酸ナトリウム水和物の定期投与が有効であった. 本症例は, 症状が出現する約1年半前の検査では血清カルシウム値が正常を示しており, 高齢になって高カルシウム血症が顕在化するなど通常のFHHの経過とは異なっていた. FHHの病態の多様性を示唆している可能性のある症例と思われた.
  • 2002 年 39 巻 6 号 p. 659-676
    発行日: 2002/11/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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