日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
4 巻, 5 号
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  • 一次判別関数による人間ドック検診成績の予後研究
    高橋 春雄, 岩塚 徹, 水野 嘉子, 安井 昭二, 横井 正史, 岡島 光治
    1967 年 4 巻 5 号 p. 237-245
    発行日: 1967/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    外来人間ドック予後調査の結果, 18名が脳卒中発作を起こしたが, ドック受診時検査所見から脳卒中をおこす可能性を予知できれば非常に意義あると考え, 電子計算機を使用し発作群と対照群の比較検討を行なった.
    方法として, 1) 多項目にわたる検査成績を総合判定しなければならない. 2) 検査成績の情報に連続量が多い. 3) 予後良悪の2群の判別でよいという条件から判別関数法を採用した.
    対象は愛知県中央健康相談所で外来ドック受診後, 脳卒中発作を起こした18例中15例とその15例と同年令のものを発作を起こしていない群から at random に各3名ずつ選び判別式算定に使用した. 次いで判別式算定に使用しなかった脳卒中発作例3例と非発作例6例について判別式の普遍性の検討を行なった.
    判別に使用する検査項目は, 比較的関連があると思われる12項目についてあらかじめ絶対的重みを計算し上位10項目を採用した. 症例数があまり多くないので項目数を減らす検討を加え, 心電図所見と眼底所見は夫々独立として扱い, 血圧, 網膜中心動脈圧および空腹時血糖値, 血清総コレステロール値, フィシュベルク尿濃縮試験値, 尿タンパクはそれぞれ一括し4項目にまとめた.
    判別式は, F=0.00058(0.020X1+0.066X2-0.035X3+0.020X4)+0.074X5+0.097X6+0.00082(2.04X7+0.25X8+0.037X9+0.011X10)+0.023X11X1: 収縮期血圧, X2: 拡張期血圧, X3: 最高網膜中心動脈圧, X4: 最低網膜中心動脈圧, X5: 眼底所見, X6: 心電図所見, X7: 尿タンパク, X8: フィシュベルグ尿濃縮試験値, X9: 室腹時血糖値, X10: 血清総コレステロール値, X11: 経過年数〕となった.
    脳卒中発作群の判別値の平均は13.84, 分散2.142, 非発作群の判別値の平均は10.69, 分散1.752で, 判別点の値は11.80であった.
    さらに片側危険率0.05の棄却限界を求めたところ, 脳卒中発作群の棄却下限は9.96, 非発作群の棄却上限は13.66であった. 非発作群の中2例のみが棄却上限を越えたが, 発作起こす可能性を経過観察していきたい. 今後脳卒中発作を起こした例により判別式の応用を試み, 予後判定の自動化の研究のいとぐちとして活用したい.
  • 岡田 博, 青木 国雄, 堀部 博, 栗山 康介, 大野 良之, 吉田 公平, 祖父江 逸郎, 水野 康, 高橋 春雄, 岩塚 徹, 山田 ...
    1967 年 4 巻 5 号 p. 246-256
    発行日: 1967/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    愛知県渥美郡赤羽根町の1地域集団を対象として, 脳卒中や冠状動脈疾患の基礎をなす動脈硬化症の自覚症状の調査・分析を行なった. 40~79才の男女1714名について, 自覚症状の問診とともに, 尿タンパク, 尿糖, 随時血圧, 血清コレステロール, 標準12誘導心電図, 眼底カメラ等の諸検査を行ない, 動脈硬化の有無および可能性の大小により5群に分けた. まず健常者についてみると, 自覚症状の頻度に, 性差, 年令階層差のあるものがかなりあった. すなわち「逆上感」,「浮腫」,「手足しびれ」,「眩暈」などは女に多く, 逆に男に多いのは,「気むずかしい」,「頻尿」,「胸部圧迫感」であった. 年令階層が上ると共に著しく頻度の高くなる自覚症状として,「しゃべりにくい」,「日常動作の緩慢化」,「歩きにくい」,「間歇性跛行」,「足の力が急に抜けて歩けない」があげられた. そこで動脈硬化と自覚症状の関係をみるにさいしても, 性・年令訂正を行なった. 動脈硬化症と関連の深い自覚症状をあげると,「気が遠くなる」,「しゃべりにくい」,「胸部圧迫感」,「息苦しい」,「間歇性跛行」,「逆上感」などで, その頻度は期待値の2.0~3.6倍に達した. 逆に従来動脈硬化に多いとされていて, 本研究ではそれほど結びつきのなかったものは,「頭痛」,「眩暈」,「記憶力低下」,「気むずかしい」などであった. 人口の老令化に伴ない, 動脈硬化性疾患が増加しているが, スクリーングのための信頼すべき検査は少ないので, 自覚症状の正しい評価が重要であることを強調した.
  • 微小循環の検討
    水嶋 昇, 溝部 炳, 村井 俊介, 額賀 厚徳
    1967 年 4 巻 5 号 p. 257-263
    発行日: 1967/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    諸種の薬物および因子に反応する末梢血管の態度を, 眼底血管について観察した.
    1) 酸素吸入 (100%酸素を15分間持続吸入) 後の血管は, 酸素吸入以前のものに比較して, 著しく収縮する.
    2) 正常白ウサギおよび黒ウサギに, 螢光眼底撮影法を行なうと, まず鼻側動脈から螢光物質が消褪していく像を認めた.
    3) 昇圧アミンであるメトキサミンを, 白ウサギおよび黒ウサギに静注すると, 末梢血管は著しく収縮する. これは血圧の上昇と相関した.
    4) アンギオテンシンを, 白ウサギおよび黒ウサギに静注すると, 3) の場合と同様に, 末梢血管の収縮を認めた. この場合も血圧の上昇と相関があった.
    5) 降圧物質である亜硝酸ソーダを, 黒ウサギに静注すると, 3), 4) の場合とは逆に末梢血管の拡張がみられ, 血圧の下降と相関が認められた.
    6) セロトニンを, 白ウサギおよび黒ウサギに100μg/kg静注して観察したが, この物質が, 平滑筋に対して, 強い収縮力を与えるといわれるにもかかわらず, 血管および血圧に一定の変動はみられなかった.
    7) ブラジキニンを, 白ウサギおよび黒ウサギに500μg/kg静注したところ, 血管の拡張および血圧の上昇を認めた. これは, ブラジキニンが局所の血管拡張および血液量増加をきたすという. 報告に一致する.
  • 山家 恒雄, 松渕 登代子, 前田 明文, 宮村 敬
    1967 年 4 巻 5 号 p. 264-268
    発行日: 1967/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    脂酸と血液凝固との関係は, 最近血栓症の成因と予防の面で脚光をあびている. 私たちは多価不飽和脂酸が糖尿病患者において代謝面で改善的役割を果たす証左をえている.
    そこで本報では同じく糖尿病患者54名を対象とし検討した. 投与方法は, リノール酸製剤, 1カプセル中に, リノール酸エチル500mg, ビタミンEアセテート0.5mg, ビタミンB6 0.25mgを含む. この9カプセルを1日量とし1カ月間経口投与した. 検査方法は, recalcification time, partial thromboplastin time, Prothrombin time, Thrombin time 等の血液凝固の screening test による.
    結果は糖尿病患者にみられた hypercoagulable state に対し, とくに著明な変化を認めなかった.
  • とくに胃潰瘍について
    藤田 拓男, 折茂 肇, 奥山 山治, 吉川 政己, 竹本 忠良, 木村 健, 木暮 喬
    1967 年 4 巻 5 号 p. 269-275
    発行日: 1967/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    東京大学医学部附属病院中尾内科・老人科・放射線科の患者8,277例において, fibergastroscope 検査 (FGS) を行ない, 胃疾患の年令的変化ことに, 胃潰瘍の内視鏡的所見の年令的変化を追求した. 胃潰瘍の発生部位については, 加令とともに高位の胃潰瘍が多くなる傾向を認め, 噴門部および上中部胃体部における発生が増大する. また潰瘍の大きさに関しては加令とともに小潰瘍は減少し, 逆に大潰瘍は増加する傾向を示した. 60才以上では多発性潰瘍も増加の傾向を示した. 胃潰瘍を円形, 楕円形, 三角形, 不正形, および線状潰瘍に分類すると, 不正形潰瘍は, 30才以下では少なく, 40才以後次第に増加し, 円形潰瘍は逆に加令とともに減少する傾向を示す. 以上のごとく胃潰瘍の病像は加令とともに著明な変化を示すので, 胃潰瘍の診断ことに内視鏡的診断においては, 年令的要素を考慮することが必要であると思われる.
  • 319自験例の検討
    冨田 卓, 森山 昌樹, 石森 彰次, 美原 博
    1967 年 4 巻 5 号 p. 276-283
    発行日: 1967/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    最近10カ月間に脳血管障害を疑われて入院した657例に, 原則として Four vessel angiography を施行した結果を検討した. さらに剖検例については可及的に超軟X線による屍脳脳血管撮影を行ない, 脳血管写の所見と比較検討して, 臨床所見の解明に資するように努めた.
    われわれの成績では臨床症状と明らかに合致する陽性所見を呈したものは319例中147例 (46%) であり, 異常所見から病状を肯定せしめるものの, 全般を解釈するにやや不十分のもの55例 (17.5%) である.
    入院時臨床診断と脳血管像とを対比してみると, 定型的な脳出血型61例中, 16例の脳内血腫, 7例の動脈瘤または動静脈奇型がみられた. 臨床上脳軟化と診断された171例中完全閉塞のみられたもの44例, 50%以上の狭窄像を呈するもの12例であった. また入院時広範な脳動脈硬化症と考えられた68例のうち硬化病変を指摘でき, 他に特異的所見のみられなかったものは44例であった.
    一方脳出血と診断された35例のうち, 7例の中大脳動脈閉塞, 1例の脳腫瘍を見出し, 脳軟化と診断された171例中, 10例の脳内血腫, 5例の動脈瘤, 1例の脳腫瘍, 3例の硬膜下血腫が混入していたことは注目に値することであろう. 閉塞を立証した70例の内訳は内頸動脈分岐部11例, 中大脳動脈56例, 後大脳動脈1例, Willis 輪の一部閉塞1, 矢状洞閉塞1例で, 後2者は脳血管撮影なくしては診断不能であったと考える.
    脳血管撮影の合併症については, 319例に対し314例に bilateral carotid angiography が, 191例に bilateral brachial angiography が行なわれ計1,256回の穿刺に対し13 (1.1%) の一過性の合併症を認めたにすぎない (頸部血腫7, 悪寒3, 脱力1, 呼吸困難1, ショック1).
  • 平井 俊策, 吉川 政己
    1967 年 4 巻 5 号 p. 284-288
    発行日: 1967/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    遅発性尺骨神経麻痺は骨折, 関節炎, 先天的奇型, 腫瘍等による肘関節の損傷後数年ないし数十年後に徐々に尺骨神経麻痺をきたしてくる疾患で中年以後に発症してくることが多く, また小手筋群萎縮がもっとも目だつ症状であるため, cervical myelopathy, scalenus anterior syndrome, motor neuron diseases, hypothenar neural atrophy (Hunt) などとの鑑別が必要である. われわれは, 原因となる損傷後40年以上たって発症した上腕骨々折に基づく2例, 軟骨性外骨腫による1例, 計3例の本症を報告し, 整形外科的手術が有効であることから本疾患を早期に正しく診断するよう注意すべきであることをのべた.
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