日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
4 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 高脂血症患者における特異性とリノール酸エチル製剤添加の影響について
    木畑 正義, 岩崎 一郎, 尾崎 幸成, 藤井 靖久, 水川 士郎, 平木 潔
    1967 年 4 巻 4 号 p. 177-189
    発行日: 1967/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    動脈硬化症の脂質代謝異常の一面を探る目的で, 全血細胞による14C-acetate よりの脂質合成態度をin vitro で検索した. また linoleate の脂質合成への影響についても合わせ検討した.
    対照青年男子, 男女糖尿病, 肥満および老年男子動脈硬化症の5群について全血の脂質合成をみると動脈硬化症の明らかな老年男子では脂酸合成はむしろ低下する. 各脂酸については, myristin 酸, および palmitin 酸の低下と逆に olein 酸および炭素数20以上の脂酸の相対的増加がみられた. このことからいわゆる脂酸構成において, 動脈硬化症ではmyristin 酸, palmitin 酸が多いとされているのは, その動員障害に基づくものと考えられる.
    In vitro 4時間後で, 合成された脂酸は40~70%はFFAに止まるが15~20%宛は glyceride および phospholipid へはいり, 微量が cholesterol へはいる. 各脂質へ ester 化する脂酸に選択性がみられ, glyceride へは炭素数20以上のものが, phospholipid へは stearin 酸, cholesterol へは myristin 酸および palmitin 酸のはいる比率が高い. また, FFAへ止まるものは myristin 酸, palmitin 酸が圧倒的に多いことも判明した.
    動脈硬化症患者血液では glyceride ester 脂酸のうち olein 酸が対照に比し高値を示した. またFFAの myristin 酸および palmitin 酸の比率は対照に比し低下している.
    Linoleate 添加により脂酸および cholesterol 合成は有意に低下した. また脂酸のうちでは, olein 酸の合成抑制が明瞭であり, glyceride への olein 酸の ester 化は著しく低下した. 一方 eicosadien 酸の相対的増加をみた.
    以上の成績と従来のいわゆる脂酸構成とを比較検討するとき, なお幾多の条件を考慮すべきであるが, 各脂質の, 各種脂酸の turnover-rate の一端を推測しうるものと考える.
  • 青山 進午, 佐竹 辰夫, 飯田 幸雄
    1967 年 4 巻 4 号 p. 190-205
    発行日: 1967/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    W. H. O. Report (1961) による慢性肺性心の定義は右心室の肥大という解剖学的変化のみに基づいており, かつ, 右心室肥大の規定を右心室の壁厚と左室/右室の重量比に置いている. したがって, この定義は臨床上の診断, ならびに重症度の決定, 予後の判定などに適用できないことはもちろん, いままでの多くの報告から考察すれば, 解剖学的にさえ不十分なことが明らかである.
    それゆえ, 私どもはW. H. O. Report に記載された研究方向に対する勧告に則り, 解剖学的, 生理学的な基礎的, 臨床的研究を総合的に実施した結果, スパイログラム, 血液ガス分圧, 心電図の3者で構成される「臨床診断基準」をつくることができた. これらの研究過程においては心臓カテーテル法の成績を用いたが, 私どもは計算された肺血管抵抗の意義に新しい解釈を加え, かつ, 肺血管抵抗と他の心肺機能の指標が相関することを示して診断基準からは肺動脈圧, 肺血管抵抗などの指標を除いた. したがって, 私どもの「臨床診断基準」は簡単で実用性に富み, その上, 患者自体に対する重症度の決定,予後の判定にも使用できると考えている.
  • 井上 剛輔, 藤井 潤, 関 増爾, 村地 悌二
    1967 年 4 巻 4 号 p. 206-210
    発行日: 1967/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    従来から, 腎重量には左右差が存在し, 左側は右側に比べわずかに重いことがしられているが, 老年者の剖検記録の中には, この差が30gもあり, しかも, 臨床的, 病理学的に偏腎性疾患の明らかでない症例がある. 最近, 高血圧症との関連から, 偏腎性疾患が臨床的にも重視されてきているので, その基礎的資料として, また, 病的腎との関連を求める目的から, われわれは, 老年者腎重量の左右差について検討してみた.
    材料には, 浴風園の5年連続剖検例中, 60才以上, かつ, 両側に腎をもつ症例591例を使用した.
    591例中, 99例は, 偏腎性疾患, またはその可能性ある疾患に罹患していたので, 一括して第1群とした. 残された腎は, 臨床記録も参照して, 動脈硬化性および, 細動脈硬化性腎以外の内科的腎疾患を除外して, 第2群とした. 第2群は, 老年者腎の一般的特徴を示すものとみなし, 腎重量の経年的変化および左右差の分布を求める対象とした. 老年者腎は60才以降も各年代ごとに5~10gずつ漸減する.一方, 左右差には, 年代間の差はない. 左右差の分布は, 0~10g重い症例がもっとも多いが, 分布の形はほぼ正規型で, 右腎が左腎より重い例や, 左右差の絶対値が30g程度のものは, 偏腎性疾患でなくともみられる結果がえられた.
    この分布からえられた左右差の1%危険率棄却限界値は (左腎-右腎) gの値で, 男子, (-33.0, +46.4)g, 女子 (-28.2, +41.6)gであった. この値を用いて全症例を検討し直すと, 44例が, 有意と判定され, このうち, 42例は偏腎性疾患に属した. 疾患との関連では, 水腎症, 腎動脈疾患で, 有意の左右差を示す症例が多い.
  • 皆川 徹
    1967 年 4 巻 4 号 p. 211-219
    発行日: 1967/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Glass fiber wool を用いる Moolten 法にて血液粘稠度を測定し, アテローム硬化との関連性を検討した.
    雄家兎63羽を群に分け, すなわちラノリン飼育群, Celite 注射群, ラノリン飼育および Celite 注射群, Indion 注射および Celite 注射群, 無処置の対照群に分け検討した.
    1) ラノリン飼育による大動脈の粥状硬化様の変化の発生は Celite の静注により, より増強され, adhesive index, adhesive platelets とも増加がみられた.
    2) Celite を静注すると凝固性の亢進がみられ, また adhesive index, adhesive platelets の軽度増加が認められた. なお血漿フィブリノーゲン量, プロトロンビン値などの凝固因子の軽度減少がみられた.
    3) Celite 静注により肺動脈内膜の局所性の肥厚がみられた.
    4) Indion 投与によって adhesive platelets はさしたる変化はなく動脈の病変は抑制された.
  • 主として脈絡膜循環について
    水嶋 昇, 溝部 炳, 村井 俊介, 船橋 知也, 徳岡 冨貴
    1967 年 4 巻 4 号 p. 220-224
    発行日: 1967/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    従来とかく問題が多く, いまなお意見の一致をみない脈絡膜循環の様相を解明する目的で, 白ウサギおよび黒ウサギを用いた実験を行ない, 1つの知見をえた.
    1) 白ウサギは色素を有しないために, 脈絡膜血管を容易に透見することができる. そこで, まず, 脈絡膜循環と網膜循環とを鑑別する目的で, 脈絡膜血管遮断の手術を試みた上で螢光眼底撮影法を行ない, 不鮮明ではあるが, 純粋の網膜循環の像をとらえることができた. この方法による観察では, 実験時間が暫時経過しても, いわゆる『ムラムラ現象』をうることはできなかった.
    2) 黒ウサギおよび白ウサギに, 網膜中心動静脈の切断手術をあらかじめ施行し, 脈絡膜血管のみをのこして螢光眼底撮影法を試みた. その結果, 経時的連続撮影により, 脈絡膜血管の動態をとらえることができた. 問題とされていた『ムラムラ現象』は, 動脈相へ移行する過程の, 毛細血管叢をあらわしているものと判断できた.
  • 40K測定法, ならびに皮下脂肪厚測定による検討
    村地 悌二, 福永 安一郎, 沢田 皓史, 永井 輝夫, 飯沼 武, 鈴木 継美
    1967 年 4 巻 4 号 p. 225-233
    発行日: 1967/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    身体構成 (body composition) が年令により大きな差異を示すことは, 広く認められた事実である. 最近 human counter により, 身体内 kalium 中に含まれる天然放射性 kalium (40K) の放射能を測定し, その成績から, 身体総 kalium 量を算出することが可能となった. このようにしてえられた値から, 身体構成を推定することに関しても, 幾つかの報告がみられている.
    著者らは, 6才より82才にいたる, 男子, 136名, 女子81名の健康な日本人について本法による身体 kalium 量の測定を行なった. とくに60才以上の老年者については, 被検対象を選ぶにあたって,精密検査により潜在性疾患ないし病的異常を内在する者をのぞくことに意を用い, また, 身体各部位の皮下脂肪の厚さを測定して, 40K測定成績と比較し, 加令による身体構成の変化を検討することを試みた.
    身体総 kalium 量, ならびに体重kg当りの kalium 量は, 男女それぞれ一定の年令的推移を示し, 40才以後は男女ともほぼ直線的に低下する.
    老年者について測定した身体各部位の皮下脂肪の厚さと, 体重kg当りの kalium 量との間には, 高い負の相関関係が認められるが, 青壮年者に適応する計算式によって, おのおのの測定値より算出した体内脂肪の割合には, すべての老年被検例において, 大きな開きが認められた.
    その原因の1つとしては, 老年者臓器組織内の脂肪の沈着, 結合織の増加をあげることができると思われる.
feedback
Top