日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
41 巻, 3 号
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  • 葛原 茂樹
    2004 年 41 巻 3 号 p. 245-253
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病の罹患率は高齢になるほど高くなり, 65歳を超えると数百人に一人という高率になって, 脳血管障害, 痴呆に次いで第3位を占める神経疾患である. 薬剤性パーキンソニズム, 血管性パーキンソニズム, パーキンソン病類似の変性疾患 (進行性核上性麻痺, 線条体黒質変症, 大脳皮質基底核変性症) も増加する. 高齢者パーキンソン病は, 高齢期発症のパーキンソン病と初老期以前の発症で長い罹病期間の患者によって構成される. どちらであっても, 抗パーキンソン病薬は有効ではあるが劇的ではなく, 寝たきりになりやすい. 副作用では, 幻覚やせん妄のような精神症状が出現しやすい一方で, wearing-off のようなL-ドパの効果の変動や不安定性は出現しにくい. 痴呆, 抑うつ症状のような精神症状, 頑固な便秘, 排尿困難や尿失禁, 起立性低血圧などの自律神経症状の出現頻度も高い. 高齢初発のパーキンソン病は, まず十分量のL-ドパを投与して, 運動障害の改善を図り, 寝たきりやそれによる合併症を防ぐ. L-ドパの効果が不十分なら, 副作用が少なく服用法が複雑でないドパミンアゴニストを併用する. 目標の治療効果を達成でき, しかも副作用が出ないように, 抗パーキンソン病薬の種類と量を決めるのがコツである. 多剤服用中の患者に副作用, とくに幻覚, 妄想, せん妄のような精神症状が出現した場合には, 次の順に, まず最後に加えた薬の中止, 抗コリン薬, アマンタジン, セレギリンを中止, ドパミンアゴニストの減量/中止, さらに不十分ならL-ドパの減量を実施する. それでもなお精神症状が続くなら, 錐体外路副作用の弱い非定型抗精神病薬を併用する. 適切な薬物治療と並んで, リハビリテーション, 筋力維持の運動などの非薬物療法, 介護や生活サポートなどが, 精神身体の機能維持, ADLとQOLに大きな影響を与える疾患でもある. 医療と福祉を結合し自立を助け機能維持を図るために, 総合的機能評価にもとづいたマネージメントが必要である.
  • 村田 茂穂, 田中 啓二
    2004 年 41 巻 3 号 p. 254-262
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    ユビキチンは真核生物に高度に保存された76アミノ酸からなる小さなタンパク質である. ユビキチンはタンパク質に共有結合することにより, 翻訳後修飾分子として作用するが, ユビキチンの結合の仕方には多様性が存在し, それぞれの伝えるシグナルが異なることが明らかとなってきた. 最もよく知られているのが, ユビキチンの48番目のアミノ酸のリジン残基 (K48) を介したポリユビキチン鎖がプロテアソームによる分解のシグナルになることである. このいわゆるユビキチン・プロテアソームシステムは細胞周期, シグナル伝達, 免疫応答, タンパク質品質管理をはじめとした細胞のあらゆる現象に関与していると言っても過言ではない. 一方で, 最近急速に脚光を浴びつつあるのがユビキチン化が分解以外のシグナルを伝えることである. この場合はK48ではなくK63を介したポリユビキチン鎖やモノユビキチン化が, クロマチン制御, エンドサイトーシス, 小胞輸送, DNA修復, キナーゼの活性化など実に多彩なシグナルの仲介因子となることが明らかになってきた. しかし, なぜこれらのユビキチン化がシグナルとなりうるのか, 詳細なメカニズムは依然として謎に包まれたままであり, 今後の研究の発展が待たれる.
  • 冷水 豊
    2004 年 41 巻 3 号 p. 263-265
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 森 望
    2004 年 41 巻 3 号 p. 266-270
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 野村 修一
    2004 年 41 巻 3 号 p. 271-274
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 平井 俊策
    2004 年 41 巻 3 号 p. 275-277
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 白澤 政和
    2004 年 41 巻 3 号 p. 278-280
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 辻 一郎
    2004 年 41 巻 3 号 p. 281-283
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 青柳 公夫
    2004 年 41 巻 3 号 p. 284-285
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 水野 裕
    2004 年 41 巻 3 号 p. 286-289
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    介護保険法の対象は,「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態」となったものであり, 老年精神医学の対象者と重なる部分が多い. 介護保険制度において老年精神医学の関わりは多いが, 特に診断, 入院機能において期待されている部分が大きい. 物忘れ外来は, 科を超えて老年精神医学会の専門医の活躍が大きいと思われる. 入院機能を持つものの代表は, 老人性痴呆疾患センターがある. とかく入院は, 身体合併症が進行した場合や, 行動障害が著しい場合の受け皿としての役割を, 介護保険施設から期待される部分が多いが, 厚生労働省主導で, 小規模多機能施設を充実させ, 重度痴呆者や, ターミナルケアも行えるようにする研究が実行中であるので, その成果に期待したい. 介護保険制度の下, 老年精神医学が取り組むべき課題は多い. 根本に関わる問題としては, 介護保険は, 利用者自らがサービスを選択し決定することになっているが, その元となる判断能力, 意思能力に対する基礎研究は未だ乏しい. 従来のように, 同居家族がすべて抱えこむ介護から, 社会で支える介護へ大きくシフトした以上, 従来のように, 家族の判断ばかりによるわけにはいかないだろう. 社会で支えるシステムになった以上, 個々の判断力を評価し, それが保持されている場合は極力それを尊重し (医療, ケアの選択など), 障害されている場合は, 自ら適切な医療やケアを受ける能力に乏しく, 自身を危険な状態 (セルフネグレクト) に陥れる可能性もあるため, 社会制度としてどう保護していくかの視点が必要になろう. また, 痴呆性高齢者に対するインフォームド・コンセントも未だコンセンサスを得ているとはいえず, 老年精神医学会が中心となって研究, 社会啓蒙の双方に対して取り組むべきと考える.
  • 前沢 政次
    2004 年 41 巻 3 号 p. 290-291
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 井藤 英喜
    2004 年 41 巻 3 号 p. 292-293
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    介護保険制度の創設は, 老年医学の教育, 診療, 研究のあり方に大きな影響を与えつつある.
    介護保険の仕組みや利用の仕方, 医療との役割分担のあり方などを教育する, あるいは知ることは, 老年医学教育, 老年者の診療においては必須の項目になった. また, 老年医学の研究においては, より適切な老年者医療や介護保険制度の成熟をもたらすための研究の推進が求められている. そこで, 介護保険制度の理念, 実態および改革の方向をまず述べ, 問題点を整理しつつ, 老年医学教育, 診療および研究のあり方につき考察した.
  • 林 登志雄
    2004 年 41 巻 3 号 p. 294-297
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    少子高齢化の急激な進行により本邦の高齢者医療は主として経済面から種々の制約を加えられ, 自己負担率増加されつつある. 今年で第45回となる日本老年医学会は, 関連学会と合同で隔年で日本老年学会を開催してきた. 日本ケアマネジメント学会が加入し構成学会は6学会になった. 学会の活動内容を紹介すると共に, 大学病院老年科の寄与について触れる. また, 名古屋大学大学院老年科を例に救急から終末期医療に及ぶ診療内容とその特色, 卒前および必須化に向けた卒後臨床研修に対する取り組みに触れたい. さらに老年医学会は立場表明として, 高齢者終末期医療における適切な医療を受ける権利を提唱した. この方針に基づく研究を始め, 当科で行われている遺伝子レベルから社会学にまで及ぶ多彩な研究内容を紹介する. 最後に, 国立療養所中部病院のナショナルセンター化を受け今後の本邦での老年学の研究体制および大学病院老年科の役割についての私見を加えた.
  • 廣瀬 輝夫
    2004 年 41 巻 3 号 p. 298-300
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 青柳 俊
    2004 年 41 巻 3 号 p. 301-302
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 秋下 雅弘, 寺本 信嗣, 荒井 秀典, 荒井 啓行, 水上 勝義, 森本 茂人, 鳥羽 研二
    2004 年 41 巻 3 号 p. 303-306
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    高齢者では臓器機能の低下や多剤併用を背景として薬物有害作用が出現しやすいとされるが, その実態はよく知られていない. そこで, 大学病院老年科5施設の入院症例について, 後ろ向き調査により薬物有害作用出現頻度と関連因子について解析した. 2000年~2002年の入院症例データベースから薬物有害作用の有無が記載された症例を抽出し, 総計1,289例を解析に用いた. 主治医判定による薬物有害作用出現率は, 5施設全体で9.2%, 施設別では6.6~15.8%であった. 薬物有害作用の有無で解析すると, 多疾患合併および老年症候群の累積, 多剤併用, 入院中2薬剤以上の増加, 長期入院, 緊急入院, 抑うつ, 意欲低下が有害作用出現と関連する因子であった. 以上の結果は, 従来の単施設でのデータを裏付けるものであるが, 今後の高齢者薬物療法における参照データとなりうる. 関連因子については, 有害作用の予防および影響の両面から高齢者薬物療法に際して注意していく必要がある.
  • 荒井 秀典
    2004 年 41 巻 3 号 p. 307-309
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 荒井 啓行
    2004 年 41 巻 3 号 p. 310-313
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    Currently, cholinergic therapies for Alzheimer's disease (AD) have been developed and widely accepted based upon an observation that presynaptic cholinergic neurons in the basal nucleus of Meynert that widely project to the cerebral cortices are consistently damaged in AD brains. Since it is likely that the loss of central cholinergic activity may be associated with cognitive worsening in patients with AD, it is hypothesized that cholinergic augmentation could improve the cognitive ability of patients with AD. Cholinesterase inhibitors represent one way of implementing this strategy by inhibiting the breakdown of acetylcholine and increasing its availability in synapses. Indeed, several recent clinical trials of donepezil, galanthamine and rivastigmine have come to the conclusion that these cholinesterase inhibitors have overall beneficial effects in cognitive as well as global functions. American Academy of Neurology recommended a use of cholinesterase inhibitors as a first choice medicine in the treatment of AD. All 3 major studies of Donepezil from USA, Europe and Japan have reached the same conclusion favoring Donepezil in the treatment of mild to moderate AD. Donepezil can also be used as a safe and efficacious drug in the elderly aged 85 or older. Clinical trial of galantamine is in progress in Japan. Moreover, herbal medicines named kami-untan-to and hachimi-jiou-gan have been shown to be beneficial in some priority studies with a small sample size. It is critically needed to widen therapeutic windows in the treatment of AD.
  • 森本 茂人
    2004 年 41 巻 3 号 p. 314-317
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    各種疾患の成因が遺伝子レベルで明らかになるにつれ, 体質に合わせた生活習慣の修正, 薬剤選択など合理的な治療法が可能になってきた. 老年病の発症・進展もまた体質の影響を濃厚に受ける. 肺炎, 高血圧につき概説する.
    1) 肺炎: 高齢者肺炎の発症には, アンジオテンシンI変換酵素 (ACE) 遺伝子 (ACE) Dアレルが独立危険因子となる. ACE阻害薬投与により高齢者肺炎発症は抑制されるが, DD型に特に顕著で, ID+II型での抑制に有意差は認められなかった.
    2) 老年者高血圧: 成壮年期高血圧においては, アンジオテンシノーゲン遺伝子 (AGT M235T) Tアレル, 男性におけるACE Dアレルがそれぞれ危険因子となることが知られているが, 高齢者においてはこれらの遺伝子多型の高血圧の有意関与性は薄れており, 同一疾患でも加齢とともに関与遺伝子が変遷する可能性がある.
  • 細井 孝之
    2004 年 41 巻 3 号 p. 318-320
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 無作為化比較対照試験
    大渕 修一, 小島 基永, 柴 喜崇, 島田 裕之, 鈴木 隆雄
    2004 年 41 巻 3 号 p. 321-327
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    我々はこれまでに, 歩行中の「つまずき」や「すべり」に相当する転倒刺激付き左右歩行ベルト分離型トレッドミル (ころぶくん) を開発した. 本研究では, この転倒刺激つきトレッドミルによるトレーニングが, 地域在住高齢者のバランス機能を改善するかどうか検討することとした. 65歳以上の地域在住高齢者29名を無作為に2群に分け, 両群ともに週2回15分間のトレッドミル歩行を4週間行わせた. トレーニング群には, このトレッドミル歩行中に, 5秒間隔で左右無作為に歩行ベルトを瞬時に減速・加速することで, 転倒刺激を加えた. 転倒刺激は, 1週毎に20%ずつ増加させ第3・4週は一定にした. コントロール群には転倒刺激を加えなかった. 開・閉眼片脚立位時間, ファンクショナルリーチ (FR), タイムドアップアンドゴー (TUG), 10m最大歩行速度, 刺激側・非刺激側前脛骨筋反応潜時を, トレーニング前後および終了1カ月後で測定し, 有意水準5%にて比較した. トレーニング前後において, トレーニング群では, FR, TUG, 刺激側前脛骨筋反応潜時, および非刺激側前脛骨筋反応潜時で有意に能力向上が認められた. コントロール群で有意な差を認めたのは, TUGのみであった. また, トレーニング群における前脛骨筋反応潜時の変化は, 刺激側および非刺激側の両側ともに, トレーニング終了1カ月後においても維持されていた.
    本研究の結果より, 転倒刺激付きトレッドミルによるトレーニングによって, 地域在住高齢者のバランス機能, 特に動的バランス能力が改善されることが示され, また前脛骨筋反応潜時の短縮は転倒回避能力の向上に結びつくと考えられることから, 転倒回避能力の向上が期待されることが示唆された.
  • 端野・壮瞥町研究
    磯部 健, 斎藤 重幸, 高木 覚, 大西 浩文, 大畑 純一, 竹内 宏, 藤原 禎, 東浦 勝浩, 浦 信行, 島本 和明
    2004 年 41 巻 3 号 p. 328-333
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的】アディポネクチンはインスリン抵抗性や動脈硬化と関連することが注目されている. 高齢者では若年者に比して血中レベルが高いとする報告が多い. 今回我々は地域住民検診の結果より高齢者におけるアディポネクチンの意義を検討した.【方法】対象は2001年北海道端野町, 壮瞥町の地域住民検診を受診した男性395人 (平均年齢64.9±11.2歳). 測定項目は安静座位にての血圧値 (SBP/DBP), 早朝空腹時下での血糖値 (FPG), 総コレステロール値 (TC), 中性脂肪値 (TG), HDLコレステロール値 (HDL), 血清アディポネクチン値 (Adipo) である. Adipo を四分位し最高位の7.94μg/ml以上をH-Adipo 群, それ以外をN-Adipo 群に分し, 二群間の諸量の検討を行った. また年齢を70歳以上, 未満の二群に分け冠動脈危険因子と Adipo との関係を検討した. Adipo はF分布を示したため自然対数変換した値 (lnAdipo) を用いた.【結果】アディポネクチン (lnAdipo) はBMI, FPG, TC, TGと負の相関があり, 年齢, SBP, HDLと正の相関を認めた. lnAdipo を従属変数とした重回帰分析では年齢, BMI, SBP, FPG, TG, HDLが独立した説明変数として採択された. H-Adipo 群ではN-Adipo 群に比し年齢, HDLが有意に高値となり, BMI, FPG, TC, TGが有意に低値であった. また70歳以上の群では70歳未満の群と比較してSBP, Adipo が有意に高値となり, BMI, DBP, TC, TG, FPGは有意に低値であった. 冠動脈危険因子集積数の平均値は70歳以上, 未満の群でそれぞれ1.71, 2.06と70歳以上の群で有意に集積は少数であった.【結論】アディポネクチンの低下に伴いインスリン抵抗性は増悪することが知られている. 今回の検討ではアディポネクチン値の増加は年齢, 血圧以外の冠動脈危険因子の改善傾向と相関することを確認した. また壮年者と比較して高齢者ではアディポネクチンが高値であり, 収縮期血圧を除く冠動脈危険因子数の有意な減少を認めた. この理由として高齢者ではアディポネクチンが低値の冠動脈危険因子高集積者は過去の心血管疾患発症や死亡などですでに除かれている可能性が考えられた.
  • 藤井 総一郎, 宮田 明, 菊地 武志, 木畑 正義
    2004 年 41 巻 3 号 p. 334-338
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 男性. 平成12年2月貧血, 血小板減少を指摘され当院へ紹介入院となる. 骨髄検査では有核細胞数42×104l, 芽球90%で, 急性骨髄性白血病 (FAB:M1) と診断した. BHAC/DM療法にて寛解導入不能であった. 次の寛解導入予定のところ大量吐血し, 内視鏡検査で孤立性の胃 angiodysplasia を認めた. 4月のCAG療法後に, 同部位からの出血による吐血を認め, polidocanol 局注にて止血した. CAG療法後, 完全寛解が得られ, その後は外来にて治療を行った. 7月に急性骨髄性白血病は再発し, 輸血療法を中心に加療していた. 9月に再び吐血し同様の処置にて止血し, その後, 粘膜病変は消失した. 胃 angiodysplasia は, 高齢者では稀に観察される病変であるが, 大量出血を生じることは稀である. 本例において, 血小板減少を伴う高齢者急性白血病においても angiodysplasia 等による消化管出血に対し, polidocanol 局注は有効な治療手段であることが示された.
  • 丸田 恭子, 園田 至人, 西郷 隆二, 義岡 孝子, 福永 秀敏
    2004 年 41 巻 3 号 p. 339-343
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は, 基礎疾患に von Recklinghausen 病 (以下R病と略す) を持つ72歳, 女性. 両側大腿部痛と頸筋および下肢近位筋の筋力低下が持続し, 筋原性酵素の増加, 筋電図所見から, 多発性筋炎が疑われた. 一方, 腹部CT, MRI, 131I-MIBGシンチグラフィおよび血中・尿中カテコラミンの著明な上昇から左副腎褐色細胞腫と診断したが, 高血圧を認めず, 無症候型と判断した. プレドニゾロン内服後, 多発性筋炎症状および異常検査所見は1カ月後に消失した. しかし, その後, 再び肝胆道系酵素値が上昇したため, 腹部CTを施行したところ, 肝右葉を占める腫瘤性病変を認めた. 左褐色細胞腫摘出術と肝右3区域の切除術を施行し, 組織学的所見から, 褐色細胞腫および肝平滑筋肉腫と診断した. 肝平滑筋肉腫については, 全身検査や術中検索範囲に明らかな異常を認めなかったことから, 肝原発性と診断した. 以上から, 本例は多発筋炎で発症し, 無症候型褐色細胞腫と原発性肝平滑筋肉腫を合併したR病と診断した. これまでR病において多発性筋炎で発症し, 無症候型褐色細胞腫と, きわめて稀な原発性肝平滑筋肉腫を合併した報告は見当たらなかった. また褐色細胞腫のR病における合併例の平均年齢は42歳, 原発性肝平滑筋肉腫の平均年齢は53歳であり, 本症例が72歳と高齢であったことも特異であった. R病は腫瘍を合併する頻度が高いことから, 定期的な全身検査が必要であると考えた.
  • 2004 年 41 巻 3 号 p. 344-354
    発行日: 2004/05/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
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