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目的】アディポネクチンはインスリン抵抗性や動脈硬化と関連することが注目されている. 高齢者では若年者に比して血中レベルが高いとする報告が多い. 今回我々は地域住民検診の結果より高齢者におけるアディポネクチンの意義を検討した.【
方法】対象は2001年北海道端野町, 壮瞥町の地域住民検診を受診した男性395人 (平均年齢64.9±11.2歳). 測定項目は安静座位にての血圧値 (SBP/DBP), 早朝空腹時下での血糖値 (FPG), 総コレステロール値 (TC), 中性脂肪値 (TG), HDLコレステロール値 (HDL), 血清アディポネクチン値 (Adipo) である. Adipo を四分位し最高位の7.94μg/m
l以上をH-Adipo 群, それ以外をN-Adipo 群に分し, 二群間の諸量の検討を行った. また年齢を70歳以上, 未満の二群に分け冠動脈危険因子と Adipo との関係を検討した. Adipo はF分布を示したため自然対数変換した値 (lnAdipo) を用いた.【
結果】アディポネクチン (lnAdipo) はBMI, FPG, TC, TGと負の相関があり, 年齢, SBP, HDLと正の相関を認めた. lnAdipo を従属変数とした重回帰分析では年齢, BMI, SBP, FPG, TG, HDLが独立した説明変数として採択された. H-Adipo 群ではN-Adipo 群に比し年齢, HDLが有意に高値となり, BMI, FPG, TC, TGが有意に低値であった. また70歳以上の群では70歳未満の群と比較してSBP, Adipo が有意に高値となり, BMI, DBP, TC, TG, FPGは有意に低値であった. 冠動脈危険因子集積数の平均値は70歳以上, 未満の群でそれぞれ1.71, 2.06と70歳以上の群で有意に集積は少数であった.【
結論】アディポネクチンの低下に伴いインスリン抵抗性は増悪することが知られている. 今回の検討ではアディポネクチン値の増加は年齢, 血圧以外の冠動脈危険因子の改善傾向と相関することを確認した. また壮年者と比較して高齢者ではアディポネクチンが高値であり, 収縮期血圧を除く冠動脈危険因子数の有意な減少を認めた. この理由として高齢者ではアディポネクチンが低値の冠動脈危険因子高集積者は過去の心血管疾患発症や死亡などですでに除かれている可能性が考えられた.
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