日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
42 巻, 1 号
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  • 清水 徹男
    2005 年 42 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    睡眠・覚醒は脳の働きによってもたらされるものである. 従って, 脳機能の加齢による変化は睡眠・覚醒に影響を与える. それを反映して高齢者には睡眠障害が多く認められ, 高齢者のQOLに大きな影響を与えている. まず, 正常睡眠とその加齢による変化を紹介し, ついで高齢者に高い頻度で見られる不眠について解説する. また, 高齢になると著しく有病率のます睡眠時無呼吸と周期性四肢運動障害, および, ムズムズ足症候群, REM睡眠行動障害について解説する.
  • その細胞間接着における役割と作用機序
    福山 泰平, 扇田 久和, 高井 義美
    2005 年 42 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    低分子量Gタンパク質 (以下 small Gと略す) は分子量20~30kDaの比較的小さいGTP結合タンパク質の総称で, 細胞内において正確な時間的・空間的秩序のもとで活性化・不活性化されることにより, 細胞内シグナル伝達をダイナミックに制御していることが知られている. Small Gは Ras, Rho, Rab, Arf/Sar, Ran の5つのファミリーに分類されており, 主としてそれぞれ遺伝子発現, アクチン細胞骨格再編成, 小胞輸送, 核-細胞質間物質輸送といった基本的な細胞機能を制御している. 以前より, Rho ファミリーがアクチン細胞骨格再編成を介して細胞運動に関与していることは知られていたが, 近年, Rho や Ras のファミリーに属する small Gが細胞間接着によるシグナル伝達に深く関わっていることが解明されつつある. 細胞間接着は, 個体発生における形態形成だけでなく脳における神経回路網の形成, 炎症, 創傷治癒, がんなど広く重要な生命現象に関与しており, その分子機構を解明することは医学・生物学上極めで意義があると考えられる. 細胞間接着装置の1つとして, 細胞間の機械的な接着を担うアドヘレンスジャンクション (以下AJと略す) が存在し, カドヘリンがその主要な接着分子として知られているが, 私共は最近, AJにおける新しい接着分子としてネクチンを見出し, このネクチンがカドヘリンと協調して細胞間接着の形成に重要な役割を果たしていることを明らかにしている. 隣り合う細胞の表面でネクチン同士が結合すると, Rhoファミリーに属するCdc42と Rac が活性化され, その過程で Ras ファミリーに属するRap1も活性化される. 活性化されたこれらの small Gがフィードバックして細胞間接着を制御している. 本稿では, small Gと細胞間接着との関係について概説する.
  • 栗山 喬之
    2005 年 42 巻 1 号 p. 15-17
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 折茂 肇
    2005 年 42 巻 1 号 p. 18-20
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 葛原 茂樹
    2005 年 42 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    Aged people are frequently the victims of iatrogenic diseases, especially adverse effects of drugs since they are affected by many age-related diseases and are given many drugs. Geriatric medicine in Japan has a bitter history of having produced many victims by adverse effects of cerebral vasodilators and cerebral stimulants; they included parkinsonism and depression induced by flunarizine and cinnarizine, and Reye-like encephalopathy induced by calcium hopantenate. Parkinsonism induced by sulpiride, tiapride, metoclopramide or atypical anti-psychotics, dyskinesia induced by anti-parkinsonian drugs or anti-psychotics, and psychotic symptoms induced by anti-parkinsonian drugs, anti-cholinergic drugs, anti-depressants or histamine H2 antagonists are still very common. Wernicke encephalopathy caused by intravenous glucose infusion without thiamine, central pontine myelinolysis by too rapid correction of hyponatremia are important though infrequent. Iatrogenic Creutzfeldt-Jakob disease by dura grafts is a warning against the easy use of medical materials produced with human organs or blood. Iatrogenic diseases are preventable, and geriatricians have to pay attention to the information on adverse effects of drugs and medical materials and carefully observe the early signs of iatrogenic diseases.
  • 寺澤 捷年
    2005 年 42 巻 1 号 p. 25-26
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 吾妻 安良太
    2005 年 42 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    特発性間質性肺炎の慢性型にあたる特発性肺線維症 (IPF) は初診時からの平均余命3~4年と, 極めて予後不良な疾患である.
    従来, 線維化に先行する炎症を抑制するステロイド療法あるいは免疫抑制療法が行われてきたが, 生命予後の改善にはいたっていない.
    近年, 線維化抑制を目指して, いくつかの臨床試験が展開された. わが国では pirfenidone の無作為化二重盲検比較試験を遂行し, 呼吸機能の悪化ならびに, 急性増悪の頻度に有意な改善を認めた. また定速歩行中のSpO2最低値を比較し, 呼吸予備能を鋭敏にとらえる装置を導入して検討したところ, IPF患者の評価に有用であった. 本法は新たな評価法として注目されている. 米国では Hermansky-Pudlak 症候群に伴う肺線維症に pirfenidone を投与する試験が行われ, 比較的軽症例 (%FVC>60%) にVC悪化の遅延を認めたが, 進行例では差が見いだせなかった.
    IFN-γ療法については北米・欧州で大規模臨床試験が施行され, 全体の悪化・不変・改善の割合にプラセボとの有意差が認めないものの, FVC≦60%軽症群で死亡率の低下が認められた.
    本シンポジウムではこれらの臨床試験結果を踏まえて, IPFの治療戦略のあり方を提起した.
  • 竹内 保雄, 谷口 正実, 秋山 一男
    2005 年 42 巻 1 号 p. 31-33
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • ワクチン療法を中心として
    大類 孝, 中山 勝敏, 福島 健泰, 千葉 大, 佐々木 英忠
    2005 年 42 巻 1 号 p. 34-36
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症の中で肺炎は, 抗菌剤の開発がめざましい今日においても, 日本での疾患別死亡率の第4位を占めている. また, 肺炎による死亡者を年齢別に見ると, 65歳以上の高齢者が全体に占める割合は約9割と極めて高い. 近年, 高齢者の肺炎は複雑化し難治例が増加しつつあるといわれる. その背景には高齢化社会を迎え, さまざまな基礎疾患を抱えた易感染状態の患者が増加している点や, 加齢に伴う免疫能の低下によって弱毒性の病原微生物によっても肺炎を発症しうる点などが挙げられる. よって, 高齢者特に寝たきり高齢者の免疫状態を把握し, ワクチン等を用いて免疫を賦活化させ感染防御能を高める方法は, 高齢者の感染症, 特に肺炎の予防に有効ではないかと考えられる. 本シンポジウムで, 私は, 初めに寝たきり高齢者の免疫能について言及し, さらにこれらの対象者におけるインフルエンザワクチン, 肺炎球菌ワクチンおよびBCGワクチンの効果について解説する.
  • 東 光太郎, 伊藤 健吾, 松成 一朗, 上田 善道, 樋口 隆弘, 佐川 元保, 栂 博久, 竹上 勉, 久賀 元兆, 利波 久雄, 山本 ...
    2005 年 42 巻 1 号 p. 37-39
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    ポジトロン断層法 (positron emission tomography; PET) は, 分解能および定量性に優れる新しい核医学的画像診断法である. 特に18F-fluorodeoxyglucose (FDG) を用いるFDG PETは, 生体における糖代謝活性を非侵襲的に画像化するための唯一の方法である. FDG PETの肺癌診断への臨床応用は, 1)病期分類, 2) 再発の診断, 3) 肺癌の性状診断, 4) 治療効果判定, および5) 予後予測などが報告されている. 肺癌の治療選択に際し, 肺門縦隔リンパ節転移の診断は非常に重要である. 131例の肺癌手術症例を対象にX線CTとFDG PETによる肺門縦隔リンパ節転移の診断能を比較したところ, X線CTよりもFDG PETの方が優れていた. また肺癌のFDG集積の程度は悪性度を反映し, FDG集積が強い肺癌はリンパ節転移の頻度が高かった. 次に116例の非小細胞肺癌手術症例を対象とした検討では, 肺癌のFDG集積の程度は病期分類と同様に独立した術後予後因子であり, FDG PETにより術後再発の予測が可能であった. FDG-PETによる正確な病期分類および予後予測は, より適切な治療法の選択を可能にするであろう. 特に, 縮小手術および術後化学療法の適応の決定にFDG PETが役立つ可能性がある.
  • 宮永 和夫
    2005 年 42 巻 1 号 p. 40-41
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    The significance of early detection of dementia is that there is some benefit from almost all involved, especially, patients, their family, attending physicans and administration (local financial affairs).
    1) Both patients and their family can recognize that dementia is not ageing but a disease. They can have the hope that early treatment of dementia can improve symptom. Moreover, their family and care givers can look after demented persons more easily by acquiring the knowledge of the official welfare system and how to cope with dementia-related problem behavior. These can reduce ill-treatment.
    2) The improvement or supression of dementia symptoms, and the teaching of how to handle daily life can give attending physican an incentive to treat.
    3) If the onset of dementia can be delayed for 2 years, administration can reduce expenses by 560 billion yen in all Japan, which would benefit the medical economy greatly.
  • 月岡 鬨夫, 鈴木 憲一, 乾 純和, 西田 圭佐, 赤沢 達之
    2005 年 42 巻 1 号 p. 42-44
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 田中 真
    2005 年 42 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    物忘れ早期発見のネットワークにおける大学病院としての主要な役割は, 物忘れ検診による痴呆疑い例について痴呆の有無と痴呆の原因疾患を明らかにし, 治療方針を決定するために必要な情報と共に患者を紹介元へ還元することにある. 同時にこのシステムは検診のみならず, 痴呆疾患における病診連携の構築にも貢献している. 本報告では, 私たちが日常診療で行っている痴呆をきたす疾患の診断手順, すなわち変性・血管障害・感染性疾患・代謝障害・その他の多くの疾患の中から当該疾患を系統的にスクリーニングしてゆく手順を紹介した. さらに痴呆の有無・程度・性質などの評価法の実際とその注意点について述べ, ネットワークをもとに紹介・受診し, 痴呆の原因が明らかになった症例を呈示しながら, 各痴呆疾患の臨床的・画像的特徴の概要を紹介した. 最後に大学病院の立場からみたネットワークの問題点についてふれ, 今後の進展のための糧としたい.
  • 宮永 和夫
    2005 年 42 巻 1 号 p. 49-51
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    Drugs to treat the primary symptoms of dementia are nootropics (anti-dementia medicine). These can be divided into three stage historically. Drugs of brain metabolic improvement and blood expanssion and anti-coagulation drugs used till now, are the first stage. AChE inhibitor and glutamin receptor inhibitors used at present are second generation drugs. The cause of degenerative diseases like Alzheimer's disease is the accumulation of abnormal protein. So, fundamental medicines to prevent such accumulation are the third generation drugs. Anti-inflammation drugs, anti-cholesterol drugs, female hormones, and nerve growth factors used at present are third generation grugs. In truth, only vaccine treatment is the third stage medicine.
    Adjuvant treatment is also available at present. This approach is not based on the elimination of various causes of cell injury, but on increasing resistance to cell injury. These methods include protection of the nerve cell membrane, supply of nerve transmission material, and improvement of brain blood flow.
    Non-medicinal methods of treatment and prevention of dementia include mental training and body movement (exercises). These promote supply of nutrition and oxygen to the nerve cells as a result of increases in brain circulation caused by the various stimuli. In addition to training, nutrition should also be suppled at the same time.
  • 事例を通して考える
    山田 圭子
    2005 年 42 巻 1 号 p. 52-53
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    現在, ケアプランを担当している方の約半数に痴呆ありと認定調査で評価されている. いつから始まり早期に専門的な治療を受けたのか不明なことが多い. 生活状況は一人暮らしや家族と同居する方がいる一方, 介護困難な状況となり家族とはなれて暮らす方も少なくない. 痴呆という診断を受けた方が「ボケたらどうしよう」と不安を訴え, 思い出せない苛立ちをぶつける.“ものをわすれる”ことは恥かしいことと認識されている. すべてを失ったわけではなく「自分がなぜ, ものをわすれるのか」がわからない. 痴呆症状を理解されなかったMさんの行動は最も近い家族が痴呆を理解したときに変化が見られた.
    「いつ始まるかわからないものわすれ」に対してその体制が出来ること社会の中で共に暮らしていける心の処方箋となる.
  • 上島 弘嗣
    2005 年 42 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 久山町研究
    藤島 正敏, 清原 裕
    2005 年 42 巻 1 号 p. 58-60
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 一夫
    2005 年 42 巻 1 号 p. 61-63
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 磯 博康
    2005 年 42 巻 1 号 p. 64-66
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 加齢の影響を中心に
    有田 健一, 西野 亮平
    2005 年 42 巻 1 号 p. 67-73
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    入院患者の多くが高齢者である高齢社会では, それを診療し看護する医療従事者ははるかに若年の者である場合が多い. しかし一般人と医療従事者とはもともと医療に関しては考え方が異なっている可能性があるし, 加齢の影響を考慮に入れれば考え方に差があってしかるべきかもしれない. そこでアンケート調査によって両者の健康や感染症に対する考え方を比較した. 健康に対する関心は医療従事者に比べて一般人で強く表現される傾向がみられた. 一般高齢者が健康のためによいと考え実行している生活習慣は, 医療従事者が指導している生活習慣よりも重点の置き方が異なっていた. 今後の高齢者感染症に対して医療従事者は, 在宅医療との結びつきを強く意識した. 実際の医療においては耐性菌の出現を防ぎ, 体力や年齢を考えた個別の治療を認め, 一方ではセカンドオピニオンにも考慮する姿勢を示した. しかし一般高齢者からは, 良い結果を生む医療であればそれがもたらす問題 (たとえば耐性菌出現など) は容認しようとする姿勢さえみられた. このように一般人と医療従事者の間には考え方に差があり, 特に高齢者では身の回りで生じる変化を健康と関連付けて考える傾向であった. 医療従事者は, 一般人との間に存在する考え方の違いや加齢による影響を考慮に入れながら, 行うべき教育・指導や医療に取り組み, 一方では一般人の思いにも配慮する度量が必要である.
  • 鈴木 みずえ, 金森 雅夫, 長澤 晋吾, 猿原 孝行
    2005 年 42 巻 1 号 p. 74-82
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    本研究では痴呆高齢者の音楽療法における評価手法として行動障害, ストレス, 免疫機能評価を検討した. 入院中の痴呆患者8名を音楽療法群の対象とし, コントロール群は同病院の痴呆患者で音楽療法に参加しない人で性別, 診断名をマッチングした8名を選択した. 音楽療法は1時間程度の内容を週2回, 3カ月間, 合計25回実施し, 評価手法はMMSE (Mini-Mental State), Gottfries-Brane-Steen Scale (GBS), Alzheimer's Disease Rating Scale (Behave-AD), 唾液 Chromogranin A (CgA), 唾液免疫グロブリン Immunoglobuline A (IgA) を用いた.
    1. GBSの4つの下位尺度を比較した結果, 音楽療法群は「D. 痴呆に共通なその他の症状」が有意に改善し, Behave-ADでは「A. 妄想観念」の有意な改善が認められた (p<0.05).
    2. GBSの各項目を検討した結果, 音楽療法群は「A. 運動機能」の6項目において「6. 用便の管理不能」が有意な改善が認められた.「D. 痴呆に共通なその他の症状」の各項目中「1. 錯乱」,「2. 焦燥」,「4. 苦悩」では音楽療法群の介入後は介入前に比べてでは有意な改善が認められた (p<0.05).
    3. 唾液 Chromogranin A (CgA) では音楽療法群は音楽療法介入後と介入前を比べて有意に減少していた (p<0.05).
    行動障害の評価尺度であるGBS, Behave-AD, ストレス指標である唾液CgAなどは痴呆高齢者の音楽療法の評価尺度として有効であることが示唆された.
  • 山田 思鶴, 鳥羽 研二
    2005 年 42 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    痴呆の非薬物療法については様々な療法の有効性が検討されてきているが, 対照群をおいて比較検討したものは少ない. 本研究では高齢者総合的機能評価を用い, ケアサービスの相違 (在宅生活でデイ・ケア利用者, 在宅で介護サービスを利用しながら外出のない者, 施設生活のみの者) により, ADL, 意欲, うつ, 認知能, 問題行動の一年間の変化を測定した. デイ・ケア利用者ではADLに関する意欲低下が見られず, 問題行動が有意に改善したことから, 非薬物療法の一つとしてのデイ・ケア利用の有用性が示唆された. またデイ・ケアにおける任意選択性作業療法 (運動, 園芸, 買い物・調理) を通常のデイ・ケア利用者を対照群として開始前, 1カ月, 2カ月を比較したところ, 有意に改善したのはADLについては運動の1カ月 (P<0.05), 認知能で園芸の2カ月 (P<0.05) とコントロール群の1カ月 (P<0.05), 問題行動は買い物・調理の1カ月, 2カ月の双方 (P<0.05) であった. これらから作業療法の種類によって改善項目に差があることが示唆された. また認知能の4群の群間比較では1カ月, 2カ月とも有意な差は見られず, どの治療法が特に有効ということはなかった. 総合的機能評価を行うことにより, 作業療法対象の改善すべき問題点 (ニーズ) が的確に把握され, それに応じた非薬物療法の組み合わせを処方することによって, ADL, 認知, 問題行動などが改善できる可能性が示唆された. また今回の任意選択性においてもなお認知能, 問題行動の改善に個人差が見られ, この点についても今後の検討課題と思われる.
    老年科医は, 各行動療法の効果の比較や個人差の検討について, 縦断的客観比較研究方法の普及と実行を担って行く必要がある.
  • 実験計画法による組み合わせ治療
    宮路 裕子, 櫻井 博文, 黄川田 雅之, 山口 克彦, 木村 明裕, 藤原 孝之, 今田 薫郎, 今井 美保子, 岩本 俊彦, 高崎 優
    2005 年 42 巻 1 号 p. 90-98
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    長期臥床患者に発生頻度の高い褥瘡は, その予防方法の改善, 即ちベッドの各種改良, 感染コントロール, 栄養管理など全身ケアの充実等により減少傾向にあるが, 老年症候群として高齢者医療の重大な問題点の一つである事に変わりはない. 私共は褥瘡の効率的治療法を開発する目的で, 従来より使用されている褥瘡に有効と思われる薬剤を選びその組み合わせ治療を行い検討した. 対象は16例, Shea の深さの分類にて何れもII~IVの症例を選択し, 褥瘡の発生および増悪の主要な要因である局所の体圧を軽減する目的で, 体圧を分散するエアーマットを全例に用いて実験を行った. 方法は実験計画法を導入し, 薬剤および処置方法をL16直交表に従って16通りの組み合わせ治療プログラムを作成し適用した. 因子として, A: 創面への被覆物の種類 (エレース軟膏, イソジンシュガー, イソジンゲル, ソルコセリル軟膏), B: イサロパン粉末, C: プロスタグランジン500μg含有溶液 (0.005%) 噴霧, D: 1日の処置回数, F:タッピングの有無とした. 特性値として, 創部の治癒速度の指標は創面の面積を経時的に測定し, その面積が1/2になる日数 (T/2, 半減日数) を採用した.
    16症例についての繰り返しなしの治療データを基に分析した結果, 各因子の分散分析では因子A, B, D, Fに有意なF値が認められた. 各々の寄与率はA37.84%, B8.47%, D14.98%, F13.81%で誤差項 (e) は16.37%であった. 即ち最適治療組み合わせは, ソルコセリル軟膏処置を1日2回施行であり, 今回は期待されたプロスタグランジンによる相乗効果は認められなかった. 誤差項(e)は個々症例の個体差も含め, 別の治癒因子が存在している可能性を示している. 今後例数を増やし, この点においても更に追究して行く必要があると思われた. また, 局所の減圧は褥瘡の予防はもとより治療の基本であると考えられた.
  • 渡辺 美鈴, 渡辺 丈眞, 松浦 尊麿, 河村 圭子, 河野 公一
    2005 年 42 巻 1 号 p. 99-105
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    自立生活の在宅高齢者において, 外出頻度から判定した閉じこもりが要介護に移行するか, また低水準の社会交流がより強く要介護状態の発生を増幅するのかを明らかにするために, 閉じこもりおよびその状態像から要介護の発生状況を検討した.
    平成12年10月に兵庫県五色町の65歳以上の自立生活の在宅高齢者を対象 (2,046人) に閉じこもりに関する質問紙調査を行った. その後平成15年3月末日まで追跡し (追跡期間: 30カ月), 要介護移行について調査した. 閉じこもりの判定には外出頻度を用い, 1週間に1回程度以下の外出しかしない者を「閉じこもり」とし, 外出介助と社会交流を組み合わせた閉じこもり状態像をIからIVに分類した.「閉じこもりI」は一人で外出困難かつ社会交流はある,「閉じこもりII」は一人で外出困難かつ社会交流はない,「閉じこもりIII」は一人で外出可能かつ社会交流はある,「閉じこもりIV」は一人で外出可能かつ社会交流はないとした.
    本地域において, 自立生活の在宅高齢者の閉じこもり率は7.5%, 30カ月追跡後の要介護移行率は12.7%であった. 閉じこもりの約半数は閉じこもりIIIであった. 閉じこもり群は非閉じこもり群に比べて有意に高い要介護移行率を示した. 年齢別にみた見た場合, 85歳未満の高齢者においては, 閉じこもり群からの要介護移行率は非閉じこもり群に比べて有意に高率であったが, 85歳以上では, 両者の間に有意差を認めなかった. 閉じこもりの状態像別では非閉じこもり群と比較してどの群も高い要介護移行率を示した. 社会交流のない群はある群と比べて (IIとI, IVとIII), 要介護移行率が高い傾向を示した.
    以上の結果から85歳未満の自立生活の在宅高齢者においては, 閉じこもりが要介護移行のリスク因子になる. 要介護のリスクファクターとしての閉じこもりの判定には外出頻度・「週に1回程度以下」を使用するのが有用である. さらに閉じこもり状態像において, 社会交流のないことは要介護移行により強く関連することが認められた.
  • 江藤 真紀
    2005 年 42 巻 1 号 p. 106-111
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    愛知県西春日井郡西枇杷島町の65歳以上在宅高齢者を対象に, 速さの異なる動的視覚刺激を与えた場合の重心動揺検査, 視力検査, および過去一年間の転倒経験などに関する聞き取り調査をおこない, 転倒との関係に注目しながら, バランスを崩す過程に視覚情報がどのように関係するかを検討した. 286名の調査参加者から視力0.3未満かつ老研式活動能力指標11点未満に該当する者を除いた204名 (72.7±8.7歳) を分析対象とした. 過去一年間の転倒経験者は52名 (25.2%) であった. 二元配置分散分析の結果, 視覚刺激の速さと転倒の有無は重心動揺に対して有意な主効果を示したが, 交互作用は認められなかった.
    以上から, 転倒経験者は重心動揺が大きいこと, 視覚刺激の速さが増すと重心動揺が大きくなることが示され, 強い動的視覚刺激を与えるほど転倒する危険性が増すことが示唆された.
  • 三好 誠吾, 原 裕二, 大木元 明義, 重松 裕二, 大蔵 隆文, 檜垣 實男
    2005 年 42 巻 1 号 p. 112-115
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 女性. 平成12年10月の健康診断時に心電図においてI・aVL・V1~V4誘導に陰性T波を認めたため, 精査加療目的で, 11月10日に当科外来を受診した. 諸検査の結果, 肥大型非閉塞性心筋症と診断し, 以後当科外来で経過観察していた. 外来受診時には, すでに陰性T波は改善していた. 平成15年9月上旬に, 胸部不快感を自覚した. 平成15年9月29日の心電図において, I・II・III・aVL・aVF・V2~V6誘導で陰性T波を認めた. 虚血性変化を疑い, 10月7日に当科へ入院した. 心臓カテーテル検査では, 冠動脈に有意な狭窄は認められなかった. MIBG心筋シンチにおいて, 心尖部を中心に集積の低下を認めたため, たこつぼ型心筋障害による心電図変化所見と判断した. その後の経過で陰性T波はほぼ消失した. 今回, たこつぼ型心筋障害によると思われる心電図変化を繰り返した肥大型非閉塞性心筋症の1例を経験したので報告する.
  • 河野 珠美, 大木元 明義, 重松 裕二, 原 裕二, 大蔵 隆文, 井上 勝次, 檜垣 實男
    2005 年 42 巻 1 号 p. 116-120
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性. 67歳時に狭心症と診断し, 経皮的冠動脈形成術を施行した. 再狭窄をくりかえすため, 69歳時に冠動脈バイパス術を施行し, 以後経過順調であった. 5カ月前より労作時の息切れ,胸痛が出現し, 食欲低下, 体重減少も出現したため入院した. 入院時, PaO255.9mmHgと低酸素血症を認め, 胸部X線写真では両側肺動脈の拡張を認めた. 心エコーでは右室腔の拡大と左室腔の狭小化, 心室中隔右室側から左室側への圧排がみられ, 三尖弁逆流波形では82.1mmHgの圧較差を認めた. 右心カテーテル検査で肺動脈圧は67/25 (41) mmHgと上昇していたが, 肺動脈楔入圧は4mmHgと正常であった. 精査を行った結果, 二次性肺高血圧症を示唆する所見はなく, 原発性肺高血圧症と診断し治療を開始した. 原発性肺高血圧症は高齢男性では極めてまれであり, 文献的考察を加えて報告する.
  • 2005 年 42 巻 1 号 p. 121-126
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 2005 年 42 巻 1 号 p. 127
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
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