日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
42 巻, 4 号
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  • 鳥羽 研二
    2005 年 42 巻 4 号 p. 383-391
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    介護保険が5年ぶりに改訂された. もっとも大きな変更は「介護予防」という予防給付が設定されたことである. 介護予防は, 日常生活自立機能, 基本的日常生活動作, 認知機能など多くの機能低下を理解すること (総合的機能評価) が基本となる.
    介護予防戦略では, 重点的な施策が求められ, 介護予防-厚労省のモデルとして地域高齢者を活発高齢者・虚弱高齢者に区分し新たに介護予防検診を実施する. 栄養, 口腔機能の評価と介入, 運動器機能 (筋力, 関節, 転倒) の評価と介入, 閉じこもりの評価と介入が重点とされている. 従来の要介護Iと要支援は, 地域包括支援センターで, これらのプログラムが決定される. また, 介護保険の非該当者でも, 虚弱に陥る危険がある対象は自治体が地域支援事業を行うこととなっている. 対象の高齢者の多くにパワーリハの適応があるのか大きな疑問も提示されている. 介護予防には実証的な, 研究にもとづいた介入が求められ, 転倒予防など具体的な項目ごとに内外の成績を集積した取り組みが求められる.
  • その到達点と今後の展望
    仙波 恵美子
    2005 年 42 巻 4 号 p. 392-398
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    痛みは,“生体警告系”として我々の身体を傷害や危害から護るためになくてはならないシステムである. しかし, 持続する痛みは, 中枢神経系の可塑的変化を起こして慢性痛に移行し, 日常生活のQOLを著しく低下させる. 特に神経損傷による痛み (神経因性疼痛) は極めて難治性である. 神経系の可塑的変化の基盤となるのは, 受容体とその下流のシグナル伝達系の活性化, 遺伝子発現を介した新たな蛋白合成であるが, 中でもMAP kinase (ERK, p38) の活性化が重要な役割を演じている. MAP kinase の活性化を阻害することによる新たな鎮痛薬の開発が期待される. これまでの疼痛研究は一次知覚伝達系~脊髄後角を中心に進められてきたが, 最近さらに上位の脳の関与が注目されている. これまで, 下行性疼痛抑制系と考えられていた経路が疼痛の増強や慢性痛の維持にも働くことが指摘されている. さらに痛みの中枢回路については, 脳イメージングを用いた研究の進展により多くの知見が得られているが, 特に慢性痛の患者においては前帯状回と島皮質の活性化が見られるのが特徴的である. これらの領域の興奮は, 下行性疼痛調節系を介して痛みを強めることが動物実験により示されていることから, 慢性痛の維持・増強に働くことが示唆される. 上位脳をターゲットにした疼痛治療も今後の課題である. 老齢ラットでは, 痛みに対する感受性が増し, 病的な痛みが慢性化しやすいことが示されているが, これは加齢に伴う末梢および中枢神経系の変化, 中でも下行性抑制系の減弱が原因ではないかと考えられている. 高齢者の痛みの特徴・メカニズムを明らかにすることが, 治療戦略として不可欠である.
  • 前田 貞亮
    2005 年 42 巻 4 号 p. 399-402
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 泉 キヨ子
    2005 年 42 巻 4 号 p. 403-405
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 田中 靖代
    2005 年 42 巻 4 号 p. 406-408
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 本間 昭, 浦上 克哉, 北村 伸, 山田 正仁, 繁田 雅弘
    2005 年 42 巻 4 号 p. 409-410
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    痴呆症の診断方法だけでなく的確な治療・ケアの方法まで踏み込み, 模擬患者を使った問診, 診察のロールプレーイングにより, 明日からの日常臨床に応用できるように配慮した点が大きな特徴である. 約3時間にわたりビデオ上映を交えたポイント解説と, 問診・神経学的診察・画像診断の実演を行った.
  • 大浦 麻絵, 鷲尾 昌一, 和泉 比佐子, 森 満
    2005 年 42 巻 4 号 p. 411-416
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    本研究は, 2003年10月に福岡県遠賀郡のM町の唯一の訪問看護ステーションの利用者 (要介護高齢者とその家族介護者) 44名中, 有効回答を得られた40人を対象に, 日本語版 Zarit 介護負担尺度 (J-ZBI) を用いて, 介護負担に関する調査を行った. J-ZBIの得点を3分位に分け得点の高い順に高負担群, 中負担群, 低負担群, と定義した. また, 本調査までのJ-ZBI, CES-D, 抑うつの割合, 寝たきりの割合, 痴呆の割合やサービスの利用を, 介護保険導入前と経時的に比較検討した.
    高負担群は中負担群, 低負担群に比べてJ-ZBI, CES-Dが高かった. 高負担群は低負担群に比べて健康状態の悪いと答えた者, 経済的ゆとりの無い者の割合が高く, 介護時間が長かった. 高負担群は中負担群に比べてショートステイの利用が多かった.
    介護保険導入前と導入後の調査を経時的に比較検討した結果, 導入前と比べJ-ZBIは3年目には低下する傾向を認め, 4年目には有意に低下した. 統計学的有意差は認めなかったものの, 抑うつの割合は導入前の56.3%から4年目の37.5%に低下した. 寝たきりの割合は4年目に有意に低下した. デイケア・デイサービスの利用者の割合は3年目, 4年目には有意に低下していた. 介護保険導入により4年目にはJ-ZBIは有意に低下し, 介護者の抑うつの割合も低下傾向を示したが, 一般人の抑うつの割合と比べるとはるかに高く, 介護者に対する支援をもっと行う必要があると考えられた.
  • 藤巻 博, 粕谷 豊, 川口 祥子, 原 志野, 古賀 史郎, 高橋 忠雄, 水野 正一
    2005 年 42 巻 4 号 p. 417-422
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    (目的) 高齢者慢性腎不全の透析医療において, 患者側が透析導入拒否の意思を表明することは少なくない. ここでは, 透析拒否例への私共の取り組みを通して, 透析導入拒否という事象をいかに捉えるべきかについて検討した. (方法) 東京都老人医療センターにおいて, 私共が対応した年齢60歳以上の高度慢性腎不全症例は152例であった. それらの症例中, 以下の2項目を満たす症例を透析拒否例とした.第一項目は, 再三再四, 長時間にわたって, 患者・家族・医療者による話し合いが行われたにもかかわらず, 透析導入の了解が得られなかった場合とした. 第二項目は, 病状の進行による致死的症状発現によって, 帰結が導かれた場合とした. 個々の透析拒否例で, その背景と家族状況を調査し, 透析拒否と関係する言葉を拾いあげた. 帰結についても調査を行った. (結果) 透析拒否例は7例 (男性5例・女性2例) で, 年齢は78±7歳 (平均±標準偏差) であった. 7例中6例が歩行可能であり, 全例が認知機能良好であった. 配偶者同居例は4例で, それら以外の症例では配偶者はすでに亡くなっていた. 世帯人員は3.9±1.8人であった. 医療者側としては, 全例が透析導入後も良好な生活の質を維持できると判断していた. 患者側からは,「もう, 十分に生きてきた」「このまま死んでもよい」という言葉が聴かれた. 帰結は緊急透析導入5例・死亡2例となった. 最初の話し合いから帰結までの経過日数は115±37日であった. (結論) 透析導入の受容/拒否は, 患者にとって生死に係わる選択である. 透析導入の意義を医療者側が認めた場合には,同意を得るための話し合いを続けるという立場を崩すことはできないと考える.
  • 鈴木 みずえ, 内田 敦子, 金森 雅夫, 大城 一
    2005 年 42 巻 4 号 p. 423-431
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的: 痴呆に特異的なQOL指標である Dementia Quality of Life Instrument の日本語版を作成し, 信頼性・妥当性を検証した. 方法: 対象者は72名 (男性19名; 女性53名, 脳血管性痴呆66名; アルツハイマー型痴呆6名) でデイケアまたはデイサービスに通所し, 研究の承諾を得た痴呆高齢者である.面接調査は平成14年11月から平成15年1月までである. 結果: 日本語版DQoL (DQoL-Japanese version) は29項目から構成され, (1) 自尊感情, (2) 肯定的情動, (3) 否定的情動 (逆転項目), (4) 所属感, (5) 美的感覚の5つの下位尺度から構成される. 日本語版DQOLの下位尺度5項目の2週間後の再テストの相関係数は0.730~0.857 (p<0.05) であり, Cronbach's αは0.666~0.864であった. Geriatric Depression Scale の基準関連妥当性に関してもDQoLと同様の結果が得られ, 信頼性, 妥当性が検証された. 結論: 日本語版DQoLを用いて痴呆高齢者の主観的QOLの測定が可能であることが示唆された. プレテストからDQoLの質問と回答が理解でき, 調査可能となった対象者は Min-Mental State 13点以上であった. 今後, 日本語版DQoLは, 痴呆の進行予防およびアクティビティなどケア介入の評価の一つとして活用が可能であろう.
  • 荒井 由美子, 熊本 圭吾, 杉浦 ミドリ, 鷲尾 昌一, 三浦 宏子, 工藤 啓
    2005 年 42 巻 4 号 p. 432-443
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は, 1) 要介護高齢者の状態, 2) 介護者および介護の状況, 3) 居宅内の介護環境の3領域から在宅ケアを総合的に評価する方法として, Home Care Quality Assessment Index: HCQAIを作成することを目的とした. 方法 はじめに, 評価項目原案を作成し, それぞれの項目についての信頼性の検証を行った. 信頼性は, a) test-retest 信頼性および, b) 異なる検者間における評価の信頼性の2点を検討した. 調査は, 岡崎市医師会訪問看護ステーションを利用する要介護高齢者とその家族介護者を対象に実施した. 各評価項目の test-retest 並びに検者間信頼性については, 原則的にκ係数0.4以上を基準とした. 上記の条件を満たした項目について, 因子分析を行い, 10の尺度を作成した. 結果 この尺度の内的整合性 (信頼性) を示す Cronbach のα係数は, 0.6~0.9であった. これら10の尺度のうち, インプット (居宅内の介護環境) に相当するものとして,「段差解消」尺度と「水まわりの改修」尺度の2つが該当し, プロセス (介護者および介護の状況) に相当するものとして,「適切な着衣」尺度,「不適切な処遇」尺度,「衛生と介助」尺度の3つの尺度が該当し, アウトカム (要介護高齢者の状態) に該当するものとしては,「認知」尺度,「麻痺」尺度,「視聴覚」尺度,「ADL」尺度,「粗大運動」尺度の5つの尺度が該当した. 結論 今回作成した41項目からなるHCQAIは, 専門職の観察により, 在宅ケアの質を, 客観的かつ総合的に評価するものである. 在宅ケアの質を, 客観的かつ総合的に評価する評価法は, 世界的に見ても数少ない. 今回, 開発されたHCQAIは, 在宅ケアにおけるインプットやプロセスを, 専門職の観察により客観的に評価するという点において, 他に類をみないものであり, 在宅ケアの質を向上させていく上でも有用であると考えられる.
  • 花岡 陽子, 山本 寛, 飯島 勝矢, 大賀 栄次郎, 神崎 恒一, 大内 尉義
    2005 年 42 巻 4 号 p. 444-449
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性. 抗生剤 (CEZ, PIPC) が無効な不明熱に対する精査目的で2002年6月第1回入院. 39℃に至る発熱, CRP上昇, 汎血球減少を認めた. 貧血については, 骨髄穿刺で赤芽球癆と診断された. 原因の特定に至らないまま, 1カ月後に胆嚢腫脹, 胆道系酵素の上昇を認め, 胆嚢穿刺を行ったところ発熱は軽快, その後赤芽球癆も軽快し退院となった. しかし2003年4月, 再び発熱, CRP上昇, 汎血球減少を認めたため第2回入院. 検索の結果, 脾腫・異型リンパ球の出現とともに骨髄穿刺の所見からびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (骨髄浸潤) の診断に至った. 高齢者は典型的な症状を示しにくく, 発熱のみを主症状とする節外性の悪性リンパ腫の場合には, 他疾患との鑑別がきわめて困難である. 高齢者の不明熱においては血液悪性腫瘍, とくに悪性リンパ腫が潜在している可能性を念頭におき, 精査を行うことが必要と考えられた.
  • 渡邉 裕文, 矢崎 俊二, 堀内 正浩, 高橋 洋一
    2005 年 42 巻 4 号 p. 450-452
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は75歳女性. 主訴は左顔面神経麻痺, 左上肢不全麻痺. 既往歴は未加療の高血圧症と高脂血症を認めた. 現病歴は, 公園で子供と遊んだ後, 帰宅後に, 突然, 左手に力が入りにくくなった. 当院受診後, 当科に精査加療目的にて入院となった. 入院時は, 血圧が200/102mmHgと上昇していた. 神経学的所見は, 左顔面神経麻痺, 軽度の左上肢不全麻痺を認めた. 脳波検査は異常所見を認めなかった.頭部造影CT検査, 造影MRI検査で右中心溝近傍に網状の造影効果 (the caput medusae sign) を伴う静脈血管腫を認めた. 症状は血圧の正常化によって消失した. 頭蓋内の左顔面, 左上肢の運動神経路が静脈血管腫と近接していたことによると推察され, 血圧変動による静脈血管腫の血管拡張が左顔面と左上肢不全麻痺の原因と考えられた.
  • 藤本 勝洋, 原田 泰志, 渡辺 憲太朗
    2005 年 42 巻 4 号 p. 453-456
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は82歳男性. 進展型小細胞肺癌であり, 低用量の irrinotecan hydrochoride (40mg/body, day 1, 8 and 15) と carboplatin (100mg/body, day 1) により治療が開始された. 治療開始前のクレアチニンクリアランスは20ml/minであり終了後は28ml/minであった. 2方向測定による縮小率は88%であった. 副作用として2コース目の治療中に一時的な白血球減少 (900/μl) を認めたが, 感染症等の重篤な合併症もなくG-CSFにより正常化した. 低用量のCPT-11とCBDCAによる治療は腎機能の低下した高齢者にも使用可能な選択肢のひとつと考えられた. 今後, 高齢化とともに担癌患者は増加する傾向にあり, Quality of Life を保つ低用量化学療法のあり方を検討する必要があると考えられた.
  • 2005 年 42 巻 4 号 p. 457-465
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
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