目的: community-based study により, 1) MRI上の脳血管病変が高齢者の抑うつ症状 (depressive symptoms; 以下DSと略す) に関連するか, 2) MRI-defined vascular depression (以下MRI-VDと略す) の臨床単位としての妥当性が支持されるか, を検証する.
方法: 70歳以上の仙台市T地区在住者に2002年7~8月に総合機能評価を実施し, 75歳以下かつ Mini Mental State 22点以上で同意の得られた196人に頭部MRIを撮影した. Geriatric Depression Scale 15点以上の41人をDS (+) 群, 9点以下の141人をDS (-) 群として計182人を解析対象とした. 修正 Fazekas 基準により放射線科医が画像を評価し, 深部白質と皮質下灰白質の高信号のうち高い評点をCVL score として採用した. また, Krishnan らのMRI-VDの定義に準じてCVL2点以上をCVL (+), 1点以下をCVL (-) と定義した. CVLとDSの関連については, CVL score または CVL (+)/(-) を独立変数, DSの有無を従属変数, 年齢, 性別, 認知障害の有無,教育レベル, 主観的健康感, IADLを共変量とした多重ロジスティック回帰分析を行い, DS (+) 群内でのCVL (+) 群と (-) 群の間の臨床像の差異については単変量解析を行った.
結果: 多重ロジスティック回帰分析上, CVL score を独立変数とした場合はCVL 0点群と比較して1点群, 2点以上群共にDSとの有意な関連を認めたが, CVL (+)/(-) を独立変数とした場合には認めなかった. 年齢, 性別, 認知機能, IADL, 主観的健康感, 睡眠障害, アルコール関連問題, 自殺念慮についてDS (+) 群内のCVL (+)群と (-) 群の間で有意差を認めなかった.
結論: 脳血管病変が種々の交絡因子と独立に抑うつ症状と関連することが示された. しかし, MRI-VDという独立の臨床単位を取り出すためには, 臨床プロフィールのさらなる明確化が必要と考えられた.
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