日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
43 巻, 1 号
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  • 神長 達郎
    2006 年 43 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    fMRI (functional MRI) は, 人における脳機能局在を研究する手段として, 中心的な地位を占める. fMRIは100mmのオーダーの空間分解能と, 数秒程度の時間分解能とを持ち, 脳内部位の認識が容易であるという特徴を持つ. また, ほぼ大脳および小脳全体の計測が可能である. 時間分解能を補うためには, 時間分解能に優れた脳機能局在研究手段である, EEG (Erectroencepharogram) やNIRS (Near-Infrared Spectroscopy) との並列, または同時施行が有用である. fMRIは臨床MRI機でも施行可能であるが, fMRIを適切に計画および実行し, さらに得られた結果を正しく解釈するには, 一定の知識が必要である. また, 結果は別の手段により検証されることが望ましい. fMRIで重要な事のひとつはタスクのデザインである. タスクの形式は大きく分けて Block design と Event related design があり, それぞれに利点, 欠点がある. コントロールタスクの選択, タスクの提示順番や回数などにも検討が必要である. 被験者や患者の安全を守るという点では, 強い静磁場に入れてはならない被験者があり, 熟知しておく必要がある. 得られた結果の解析には, 複雑な数学的過程が必要であり, SPM (Statistical Parametric Mapping) などがこれを担っている. SPMは複雑な機能を備えたソフトウェアであるが, fMRIの結果解析にはこれの理解が必要である. このように, fMRIは多様な知識を必要とするため, その運用は集学的なチームによってなされる事が望ましい. 適切に運用すれば, fMRIは多くの可能性を秘めた手段であると考えられる.
  • 川上 治, 加藤 雄一郎, 太田 壽城
    2006 年 43 巻 1 号 p. 7-18
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    転倒・骨折は高齢者に好発する老年症候群の一つであり, 要介護の主要な要因となっている. 転倒・骨折の要因は, 国内外の調査研究により多くの危険因子が同定されており, そのうち改善可能なものに目標を定める介入研究が行われている. しかし, 高齢者の身体特性は千差万別であり, どのような身体特性を持った高齢者にどのような介入をしたら効果があるかに関して, 系統的な評価は少ない. 本総説では, 高齢者の転倒・骨折の発生率, 危険因子等のこれまでの観察研究と疫学研究に関してまとめた. 特に,介入研究に関しては, 無作為化対照比較試験といった科学的信頼性の高いものを中心にまとめ, 対象者の身体状況ごとの介入方法とその効果について整理した. 日常生活活動の効果については, 介入研究が少ないことから観察研究を中心にまとめた. 高齢者の転倒発生状況は, 転倒の定義によってもまちまちであるが, 欧米諸国での年間転倒率は65歳以上の高齢者で28~35%, 75歳以上では32~42%と特に後期高齢者で高くなる傾向が見られた. 本邦では, 約20%で欧米諸国より低い傾向であった. 脳卒中患者では, 特に自宅に戻った際に転倒する確率が極めて高く, その対策が問題となっている. 転倒の危険因子は内的因子と外的因子があり, 主な改善可能な因子としては, 筋力, バランス能力, 移動能力などの生理的機能と,内服薬や生活習慣の内的因子の他に住宅環境といった外的因子がある. 地域在住の高齢者に対する転倒予防介入では, 筋力向上トレーニングや太極拳といった運動訓練が有効とする報告がある. 施設入所中の虚弱高齢者には, 運動訓練単独ではなく, 個別に危険因子を同定して多角的に介入する方法が有効とあるが, その効果は小さく, より有効なプログラムの開発が必要とされている. また, 転倒予防が困難な例ではヒッププロテクター装着により股関節骨折が予防可能であるが, 定着率が低いのが課題である.
  • 近藤 克則
    2006 年 43 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    世界ではじめて, 全国民に利用時原則無料で医療を保障する制度を作った国がイギリスである. しかし, そのイギリスでは, 長きにわたる医療費抑制政策の結果, 130万人を超える入院待機者に象徴される医療の荒廃を招いた. そこからの脱却を図ろうとブレア政権は, 医療費を5年間で実質1.5倍にし, 医師・看護師を大幅に増員する医療改革に取り組んでいる. 政府の発表によれば最近になりようやくその効果が見え始めている. その過程や改革の内容は, 公的医療費抑制に向けた論議がされている我が国の将来を考える上で, 多くの示唆を与えてくれる.
    本論では, まず「第三世界並み」とまで表現されたイギリス医療の荒廃ぶりを, 待機者問題などを例に示す. 次に, それと比べる形で, 我が国にも医療費抑制政策の歪みが表れていることを述べる. 例えば, 病院勤務医が労働基準法を遵守すれば病院医療が成り立たない状況にあることを示す. この余裕のない状態から, さらに医療費が抑制されれば, もはや医療従事者の士気が保てず, 医療が荒廃するであろう.
    後半では, ブレア政権が, どのようにして医療費拡大への国民の支持を得たのか, その医療改革の枠組みや保守党時代との違いを検討する. さらに, ここ数年の改革の軌跡と, それへの政府の立場と批判的な立場の両者の評価を紹介する.
    これらを通じ, イギリスの医療改革の経験を踏まえ, 日本においても「医療費抑制の時代」を超えて「評価と説明責任の時代」へと向かうための3つの必要条件-(1)医療現場の荒廃ぶりと, その主因が医療費抑制政策にあることを国民に知ってもらうこと, (2)医療界が自己改革をして国民からの信頼を取り戻すこと, (3)「拡大する医療費が無駄なく効率的・効果的に使われる」と国民が信頼し納得できるシステムを構築すること-を述べる.
  • 折茂 肇
    2006 年 43 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    Over the past 10 years (1992-2002) the physical activity of healthy elderly (over 65) has been more youthful by 7.5 years in men and 10 years in women. Functional independence in elderly diabetic patients (over 65) has been more youthful by 15 years. pathological examination revealed that the cerebral arteries have been more youthful by 20 years in men and 10 years in women during the past 14 years (1986-2000). Based on these data, the current definition of elderly (65 year over) should be changed to those over 75 years. Changing the social system (retirement, pension, medical care etc.) to harmonize with the coming aging society is a matter of great urgency.
  • 須田 立雄
    2006 年 43 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 疫学からみた重要性
    萩野 浩, 片桐 浩史
    2006 年 43 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 細井 孝之
    2006 年 43 巻 1 号 p. 42-44
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 治療薬の骨折予防効果に関する多剤比較試験 (中間解析)
    白木 正孝
    2006 年 43 巻 1 号 p. 45-47
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    現在我が国では数種類の骨粗鬆症治療薬が使用可能であるが, それら薬物の使用を個々の患者にどのように使い分けたらよいのか指針がない. 数種類の薬物の骨粗鬆症治療効果につき, 多剤比較試験を行った. 776例の骨粗鬆症患者にアレンドロネート (ALN, n=197), エチドロネート (EHDP, n=199), 活性型ビタミンD3 (アルファカルシドール, VD3, n=221) およびメナテトレノン ((K2, n=159) を投与し, 無治療の対照群 (No, n=266) および各薬物間で新規骨折発生率, 骨密度変化率および骨吸収マーカー変化率を比較した. 平均年齢は70歳, 平均観察期間は3年間であった.
    骨密度はALN治療群で最も強く上昇 (8%) し, ついでEHDP (6%), VD3 (1~0%), K2 (-2%) の順であり, K2群を除き, No群 (-3%) に比べ有意に上昇もしくは維持した. 骨吸収マーカーはALN群で約50%抑制され, EHDP群では30%抑制された. しかしVD3群やK2群では有意の変化は観察されなかった. VD3群やK2群ではALNやEHDP群に比べ, 骨密度上の変化も少なく, 骨吸収抑制効果も見られなかったが, 骨折抑制効果は全ての治療群で有意であった. ALN群は骨折のリスクレベルにかかわらず60~70%の骨折率低下効果を示した. しかしその他の群では明らかに骨折を抑制しているリスクレベルと抑制効果がみられないレベルがあった. EHDP治療は骨折リスクが低い例でのみ有意な骨折抑制効果がみられ, 一方VD3やK2は骨折リスクが高い例で有意な骨折抑制効果がみられた. 以上の結議果は骨粗鬆症治療の第一選択薬がALNであり, ALNが何らかの理由で使用できない例に病態を考慮して他剤を用いるべきと考えられた.
  • 転倒骨折と介護に伴う骨折
    森本 茂人, 高本 勝之
    2006 年 43 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    老人病院入院中の虚弱老人の転倒骨折と介護に伴う骨折について調査した. 転倒は男性に, また高齢者ほど多く, 夕方および早朝にピークが認められた. 転倒例のうち2%に骨折が認められ, 大腿骨頸部骨折が男女とも多かった. さらに, 完全寝たきり例18例に19骨折を認め, うち8例が大腿骨顆上骨折であり, 全ての例において骨折部近傍の関節に高度拘縮を認めていた.
  • 2事例をもとに
    花輪 祐司
    2006 年 43 巻 1 号 p. 52-54
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 守屋 国光
    2006 年 43 巻 1 号 p. 55-57
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 心理学の応用 理解と介入 (個体と環境の関係)
    山崎 百子
    2006 年 43 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    超高齢社会を背景にWHOがICFユニバーサルモデルを謳い, 万人が「加齢障害」を積極的にケアする時代に対応した心理学などを応用する学際研究が要請されている.
    著者は心理学の応用例とし“当事者ニーズを理解した質の高い福祉サービスの提供”を目的に県内の特別養護老人ホームを例にデータ収集を行いマズローの欲求階層説 (A. H. Maslow, need-hierarchy-theory) と比較分析考察した. 要求と提供サービスを定義し, 両者の双方向充足状態が質の高いサービス状況と定義し, 以下の手続きでデータを入手後解析した. 提供サービスは人が提供するサービスとし, ホーム1日参加観察ビデオ撮影等にて「~を~する」単位サービス266項目を収集し, KJ法にて53項目の列とした. 次いでビデオを30分に編集し200名の10代から70代の人に示し「~を~したい」単位サービス506項目を収集し57項目の行とした. 行列2元表の内部構造を4段階の関連度合いの数値化後数量化3類で解析し3つの表結果: 要求があるのに提供がない要求サービス項目「不足サービス表」, 提供があるのに要求されていない提供サービス項目「当たり前サービス表」, 不足と当たり前サービスを除く1現状の要求と提供とが整合化した「現行サービス表」を得た. マズローモデルと3表との比較考察後, 特に3表の不足や要求項目の満足度合いについて別途質問表を作成し, 現在と将来の満足度を改善可能性αとして定義数値化後, 入所者, 職員, 学生3者からデータを入手し比較した. 3者の現在と将来の満足度差の改善項目を明らかにし, 入所者と職員の現在満足度について正反対の結果項目を同定した. 全結果とマズローモデルとの比較考察から, 日常の介護方法とコミュニケーションサービスに質を高める職員の努力が必要であることを示した. 特に生活リハビリを希求する入所者の潜在要求を特定し質の高いケアが自己実現欲求を充足させ得る指標となることを明らかにした.
  • 祖父江 友孝
    2006 年 43 巻 1 号 p. 62-64
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    わが国のがん罹患・死亡率は欧米に比べてやや低いレベルにある. しかし, 欧米のがん死亡率が増加から減少に転じつつあるのに対して, わが国の変化は緩やかなものにとどまっている. 一方, 高齢者人口の増加の影響が大きいため, わが国のがん罹患数, 死亡数は, 今後20年間で現在の1.5倍程度に増加する. がん予防対策として, 効果のはっきり示されているものは, たばこ対策とがん検診である. WHOでは, がんの罹患率と死亡率を減少させること, がん患者とその家族のQOLを向上させること, を目的とした国家的がん対策プログラムの推進を提唱している. この背景には, 既存の知識技術だけでも, がんの3分の1は予防可能, 3分の1は検診・治療で救命可能, 残りは治療・緩和ケアでQOL向上可能で, 問題は如何に対策として実行するかにある, との認識がある. わが国においても, 厚生労働省に設置されたがん対策推進本部を中心として国家戦略としてがん対策を推進することが急務である.
  • 鳥羽 研二
    2006 年 43 巻 1 号 p. 65-67
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 大腸癌の治療方針
    杉原 健一
    2006 年 43 巻 1 号 p. 68-70
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 三木 恒治
    2006 年 43 巻 1 号 p. 71-73
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 介護予防に向けて
    都島 基夫
    2006 年 43 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • ゲノムからのアプローチ
    井上 聡
    2006 年 43 巻 1 号 p. 78-80
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症は高齢者のQOLを低下させる大きな要因となり, 未病の段階で発症を抑えるために, その予防と早期診断が望まれる. 21世紀を迎えヒトの全ゲノム情報が解読され, 新しい時代に入った. 個人差を決める遺伝子の多様性としてSNP (単一ヌクレオチド多型) が注目され, この解析が, 疾患の診断, 予測に活用できることが想定される. モデル生物, 疾患モデル動物は, 骨粗鬆症の病因, 治療法を解明するのに大変役立つが, 究極的には, ヒトの疾患における遺伝解析, 機能解析が特に重要な情報をもたらす可能性が高い. 今後, 骨粗鬆症の未病における, ゲノム医学の応用が, 一層重要な役割を演ずるようになっていくと考えられる.
  • 無症候性不整脈を中心に
    鎌倉 史郎
    2006 年 43 巻 1 号 p. 81-83
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 永田 正男
    2006 年 43 巻 1 号 p. 84-86
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    Diabetes Mellitus is thought as the presymptomatic stage to cause various vascular diseases. From the point of view that diabetes is already a disease, this paper discusses the prevention of the manifestation of diabetes in the elderly. STOP-NIDDM study demonstrated that acarbose, an α-glucosidase inhibitor, reduced the onset of diabetes in impaired glucose tolerance (IGT) subjects by 24%. On the other hand, the Diabetes Prevention Program (DPP) study for IGT subjects revealed that intensive life style intervention prevented diabetes most powerfully by 58% and metformin treatment also reduced by 31%. Furthermore, HOPE, LIFE, and SCOPE studies against hypertension showed that ACI or ARB reduced diabetes by 20-32%, and the WOSCOT study that pravastatin, a HMG-CoA reductase inhibitor, reduced diabetes by 30%. These accumulated results suggest that the most suitable strategy to prevent diabetes in the elderly is intensive life style intervention, and in cases incapable of exercise and diet therapy, acarbose or metformin are recommended for IGT. When associated with hypertension and/or hyperlipidemia, the subjects have to receive ACI or ARB and statins to prevent diabetes.
  • 梅垣 宏行
    2006 年 43 巻 1 号 p. 87-88
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 新村 健
    2006 年 43 巻 1 号 p. 89-91
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    動物実験より得られた知見では, 遺伝子改変を除き寿命の延長効果が期待されうる唯一の抗加齢療法は, カロリー制限である. カロリー制限による老化制御の機序に関しては, さまざまな仮説が提唱されているが, 最近着目されている仮説の一つに Hormesis 仮説がある. 非致死的なストレス (毒物) によりストレス (毒物) に対する適応機転を獲得することを意味する Hormesis という概念は, 心血管領域においては20年来研究されてきた Preconditioning の概念と極めて類似する.
    臨床の場に目を向けると, 今日高齢者の栄養管理は2極化した問題を内包する. 過栄養や肥満は, 生活習慣病の進展を介して動脈硬化をすすめ, 循環器疾患発症の増加, しいてはADLやQOLの低下に寄与している. そのため自立高齢者においては, 健康維持と老化制御を目標とした栄養療法の確立が望まれている. そのような背景のもと, カロリー制限の臨床応用やカロリー制限模倣物開発に対する期待はますます高まっている. 未だヒトにおいてもカロリー制限が本当に老化を制御しうるかは結論が出ていないものの,いくつかの臨床研究は, ヒトにおいてもカロリー制限が有望な抗老化療法となりうる可能性を示唆している. しかし, カロリー制限の臨床応用にあたっては, 多くの基本的な問題が未解決のまま残されていることを忘れてはならない. 過栄養や肥満の一方で, 要介護高齢者において低栄養や栄養障害は, 感染症の増加やADLやQOLの悪化の一因となり, 生命予後を短縮させる大問題となっている.
    老化予防に向けての栄養療法とは, 各人の栄養状態, 基礎代謝や身体活動度を考慮した上でオーダーメード医療として今後確立, 発展させていくべきものと考えられる.
  • 上野 めぐみ, 河合 祥雄, 三野 大來, 鴨下 博
    2006 年 43 巻 1 号 p. 92-101
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    背景: 本邦における転倒高齢者の特性や転倒要因は高齢者の運動プログラム開発や生活支援およびケア・マネジメントのための基礎資料として必須であるが, 転倒要因や転倒高齢者の特性をメタアナリシスで抽出, 検討した研究はない. 目的: わが国における在宅高齢者の転倒関連因子を抽出すること. 方法: メタアナリシスを用いて, 国内文献検索システム医中誌 web 版 ver. 3および医学文献検索システム Pub Med で検索, 抽出した29研究 (1991年~2003年) を統合した. 結果: 転倒関連因子として予測した32項目のうち, 統計学的に転倒と有意な関係が認められた項目は, 女性, 70歳以上, 過去の転倒経験, 既往歴 (脳血管障害), 握力, 膝伸展筋力, 開眼片脚立ち, 閉眼片脚立ち, 皮下脂肪厚 (女性) の9項目で, 有意な関係が認められなかった項目は, 配偶者, 既往歴 (高血圧), 自覚症状 (めまい), 自覚症状 (手足のしびれ), 10m最大歩行能力, つまずきやすさ, 歩行補助用具の使用, 重心動揺 (外周面積), 重心動揺長座体前屈, 皮下脂肪厚 (男性), body mass index の11項目であった. 結論: 日本人高齢者の転倒関連因子を決定するのにはさらなる個別研究が必要である.
  • 関 徹, 粟田 主一, 小泉 弥生, 木之村 重男, 瀧 靖之, 寳澤 篤, 大森 芳, 栗山 進一, 福田 寛, 辻 一郎
    2006 年 43 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的: community-based study により, 1) MRI上の脳血管病変が高齢者の抑うつ症状 (depressive symptoms; 以下DSと略す) に関連するか, 2) MRI-defined vascular depression (以下MRI-VDと略す) の臨床単位としての妥当性が支持されるか, を検証する. 方法: 70歳以上の仙台市T地区在住者に2002年7~8月に総合機能評価を実施し, 75歳以下かつ Mini Mental State 22点以上で同意の得られた196人に頭部MRIを撮影した. Geriatric Depression Scale 15点以上の41人をDS (+) 群, 9点以下の141人をDS (-) 群として計182人を解析対象とした. 修正 Fazekas 基準により放射線科医が画像を評価し, 深部白質と皮質下灰白質の高信号のうち高い評点をCVL score として採用した. また, Krishnan らのMRI-VDの定義に準じてCVL2点以上をCVL (+), 1点以下をCVL (-) と定義した. CVLとDSの関連については, CVL score または CVL (+)/(-) を独立変数, DSの有無を従属変数, 年齢, 性別, 認知障害の有無,教育レベル, 主観的健康感, IADLを共変量とした多重ロジスティック回帰分析を行い, DS (+) 群内でのCVL (+) 群と (-) 群の間の臨床像の差異については単変量解析を行った. 結果: 多重ロジスティック回帰分析上, CVL score を独立変数とした場合はCVL 0点群と比較して1点群, 2点以上群共にDSとの有意な関連を認めたが, CVL (+)/(-) を独立変数とした場合には認めなかった. 年齢, 性別, 認知機能, IADL, 主観的健康感, 睡眠障害, アルコール関連問題, 自殺念慮についてDS (+) 群内のCVL (+)群と (-) 群の間で有意差を認めなかった. 結論: 脳血管病変が種々の交絡因子と独立に抑うつ症状と関連することが示された. しかし, MRI-VDという独立の臨床単位を取り出すためには, 臨床プロフィールのさらなる明確化が必要と考えられた.
  • 介護者の在宅受け入れへの意向に影響する要因より
    奥野 純子, 戸村 成男, 柳 久子
    2006 年 43 巻 1 号 p. 108-116
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的: 介護保険制度が施行され5年が経過したが, 施設入所を希望する者は年々増加している.介護保険制度の基本理念は在宅での「自立支援」や「自己決定」であるにも関わらず, 入所や在宅復帰の決定は介護者の意向が強く反映されており, 在宅へ復帰する割合は年々低下している. 本研究では, 介護老人保健施設 (老健施設) に在所中の高齢者の介護者に在宅への受け入れの意向を調査し, その意向へ影響する要因を検討することを目的とした. 方法: 平成16年6月末に茨城県M市の介護老人保健施設に在所中の高齢者88名とその介護者を対象とした. 本人には面接調査を実施, 介護者へは郵送法によるアンケート調査を実施した. 入所時の情報は施設から収集した. 結果: 在所者79名, 介護者58名が分析対象であった. 家庭復帰を希望した在所者で, その介護者が在宅へ受け入れる意向がある者は34.6%と低く, 本人と介護者の意向に差がみられた. 介護者の在宅への受け入れ意向を困難とする要因 (オッズ比 (OR), 95%CI)は, (1)家族の協力が無い (OR: 15.37, 2.05~115.24), (2)問題行動が1個以上ある (OR: 8.34, 1.02~68.05),(3)ベッド上で寝て過ごす時間の長さ (OR: 1.31, 1.01~1.71), (4)介護保険制度の知識が無い (OR: 3.65, 0.81~16.38) であった. 結論: 在所者がベッド上で過ごす時間が増加すると, 介護者の在宅受け入れが困難になることから, 施設内での身体活動を活発にし生活機能を維持する必要が示唆された. 問題行動は受け入れに影響することから, 認知症高齢者や家族を支援する地域でのケアシステムを早急に確立することが重要と思われた. また, 他の家族の協力が無いことや介護保険制度の知識が不十分だと受け入れが困難となる危険性が高まるため, 病院退院時や施設入所時に介護保険制度の情報を提供し, 制度の利用方法について啓蒙活動をする必要があることが示唆された.
  • 浅川 康吉, 高橋 龍太郎, 遠藤 文雄
    2006 年 43 巻 1 号 p. 117-121
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    目的: 地域在住高齢者を対象とした転倒予防教室は介護予防施策の一環として各地で開催されている. 本研究の目的は教室参加前の参加者がどのような転倒予防対策に取り組んでいたのかを踏まえて転倒予防教室に求められる指導内容を考察することである. 対象と方法: 初めて転倒予防教室に参加する地域在住高齢女性104名 (71.7±6.3歳) を対象に, 転倒予防対策について転ばないための心がけの有無を尋ね, ありの場合はその内容を記述させた. 関連因子として年齢, 定期的な通院の有無, 老研式活動能力指標および Timed Up&Goなどのデータを収集した. 結果: 転ばないための心がけありと回答した者は64人 (61.5%) であった. 多重ロジスティック回帰分析の結果, 心がけありとする因子は年齢 (OR=1.10, 95%CI: 1.00-1.21) と定期的な通院あり (OR=4.77, 95%CI: 1.75-12.98) であった. Timed Up&Goも弱い関連がみられた (OR=1.42, 95%CI: 0.95-2.13, P=0.085). 心がけの内容は, 足を高くあげて歩くなどの行動面 (38人, 59.4%) が最も多く, 次いでウォーキングなどの運動 (16人, 25.0%) に関するものであった. 環境整備 (2人, 3.1%) は少なかった. 結論: 転倒予防教室を通じて地域在住高齢女性に転倒予防を指導する場合, 転倒予防をしたいという動機を学際的・包括的な対策の実践へと結びつける指導が必要と考えられる.
  • 永井 勅久, 城戸 知子, 城戸 美和子, 伊賀瀬 道也, 小原 克彦, 三木 哲郎
    2006 年 43 巻 1 号 p. 122-125
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は89歳女性. 平成15年7月より食欲低下にて近医で加療を行っていたが, 自発性低下, 食欲不振, 低血圧が見られたため精査加療目的で平成15年8月22日に入院した. 入院時食欲不振, 自発性低下, 起立性低血圧を認めた. 血液検査では低Na血症 (125mEq/l) および血中アルドステロン0.7ng/dlと低値であった. 点滴加療で低Na血症は軽快しなかったため, フルドロコルチゾン0.05mgの投与を開始した. 一時食欲不振, 低血圧は軽快したため他院で経過を観察していたが, 食欲不振が増悪し, ADLの低下, 下肢拘縮が見られ, 内服も不安定となった. このため低栄養状態の改善目的で平成16年2月10日に再入院した. 再入院時経口摂取不良, 自発性低下の増強, 下肢筋力低下および拘縮を認めた. 血液検査では前回入院時と同様低Na血症 (127mEq/l) を呈していた. 入院時経口摂取を試行したが強度の誤嚥が見られたため経鼻チューブによる経管栄養を導入した. 入院時よりフルドロコルチゾンを0.2mg/dayに増量したところ平成16年4月ごろより自発性が向上し, 経口摂取が可能になり経管栄養から離脱し得た. 以後血中Na値は正常化し, 下肢拘縮の改善により現在自力での車椅子移動が可能となった. 本症例は鉱質コルチコイド投与にて経管栄養より離脱し得た低Na血症の一例であり, 文献的考察を交え報告する.
  • 鴨川 賢二, 冨永 佳代, 岡本 憲省, 奥田 文悟
    2006 年 43 巻 1 号 p. 126-131
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    今回我々は短期間に6例の手口感覚症候群を経験したのでその臨床像と責任病巣について検討した. 年齢は56~90歳で, 男性4例, 女性2例であった. 発症から受診までの時間は当日受診が3例, 翌日2例, 5日目1例であった. 感覚障害の分布は全例とも手口型で, 自覚的感覚障害は全例でみられ, 他覚的感覚障害は4例でみられた. 自覚的しびれの身体部位は表在覚低下部位よりも広い傾向があった. 随伴症状は3例でみられ, 失調性不全片麻痺, 不全片麻痺, 巧緻運動障害, 構音障害であった. 全例とも視床近傍の梗塞 (5例はラクナ梗塞, 1例は branch atheromatous disease) により発症し, 責任病巣は後腹側核群 (4例), 視床枕・内側膝状体近傍 (1例), 視床後腹側部・内包後脚・放線冠 (1例) であった. 3例で無症候性脳梗塞がみられた. 危険因子は高脂血症, 高血圧, 糖尿病, 頸動脈硬化, 喫煙, 多血症であった. 予後は1例でのみ自覚的感覚障害が消失したが, 残りの5例では感覚障害や麻痺が残存した. 手口感覚症候群は主として視床の後腹側核群の病変により生じるが, 上行性感覚線維の障害によっても発症することが示唆された. 初発症状は軽症であるが, 運動障害を合併する例もあるため早期の診断, 治療が必要である.
  • 第16回日本老年医学会北海道地方会
    2006 年 43 巻 1 号 p. 132-134
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
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