目的:要介護の危険因子として,閉じこもりが関心を集めており,要介護発生と閉じこもりとの関連および「閉じこもり」の特徴を明らかにすることを目的とした.
方法:岩手県北地域コホート研究の調査対象である2002∼2004年に岩手県北地域3保健医療圏における健診受診者のうち,同意が得られた26,469人のなかで登録時に65歳以上であり脳卒中や心筋梗塞,心不全の既往がある者,既に要支援以上の要介護認定を受けている者を除外し,要介護認定の調査が行われた12,056名(男性4,751名,女性7,305名)を分析対象とした.登録調査時に実施した自記式アンケートに含まれている「外出時の1日平均の歩行時間」を「5分未満」および「5分以上」に2分し,「5分未満」群を閉じこもりと操作的に定義した.追跡期間中に介護認定で要支援以上と判定されたものを要介護発生とした.Cox比例ハザードモデルを用いて,要介護認定のHazard ratio(HR)と95% confidence interval(CI)を男女別に算出した.
結果:平均2.65年の追跡期間中,要支援以上に認定された者は男200人(4.2%),女412人(5.6%)だった.男性では,非閉じこもりと比較し閉じこもりでHR=1.07(95%CI=0.76∼1.52)と要介護発生と閉じこもりとの間に有意な関連を認めなかったが,女性では,HR=1.64(95%CI=1.29∼2.09)と要介護認定の相対リスクが有意に上昇していた.「閉じこもり」群では,総コレステロール値や体重変動,歯の本数などの栄養に関連する項目や,日常生活リズムなどに関連する項目について問題がある可能性が示唆された.
結語:高齢女性において「閉じこもり」は,要介護発生に有意に関連していた.「閉じこもり」の定義にも考慮した詳細な検討が必要と考えられた.
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