日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
46 巻, 5 号
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第51回日本老年医学会学術集会記録〈特別講演〉
第51回日本老年医学会学術集会記録〈教育講演〉
  • 近森 大志郎
    2009 年 46 巻 5 号 p. 391-394
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
    Clinical features of ischemic heart disease in the elderly are different from those in non-elderly patients. The prevalence of female patients, hypertension and co-morbidity was higher in the elderly than in non-elderly patients. Atypical clinical presentation should be taken into consideration, particularly in patients with acute coronary syndrome, because early initiation of coronary reperfusion therapy reduces mortality significantly in elderly patients. In chronic stable angina, risk stratification of patients using stress myocardial perfusion imaging plays an important clinical role.
    The management of coronary risk factors to prevent cardiovascular events is of utmost importance in the elderly since the mortality of acute myocardial infarction is very high. Among classical risk factors, beneficial effects of the management of blood pressure on hypertensive and/or diabetic patients are enormous. Recent development of percutaneous coronary intervention facilitated coronary revascularization to reduce ischemic burden even in patients aged 80 years or older due to the low invasiveness of the procedure. However, cardiac surgery is still regarded as the first option for the elderly ith associated aortic stenosis, diffuse 3-vessel coronary artery disease, or distal left main trunk disease.
  • 近森 正幸
    2009 年 46 巻 5 号 p. 395-397
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
  • 味村 俊樹
    2009 年 46 巻 5 号 p. 398-401
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
    便失禁や便秘などの排便障害は加齢とともに増加し,65歳以上での有症率は,便失禁で7%,便秘で30%程度とされる.その原因として,加齢に伴う肛門括約筋を含む骨盤底筋群の脆弱化や協調運動障害,腹筋の筋力低下,大腸の蠕動運動低下などが挙げられる.また両症状の原因となる脳卒中,認知症,パーキンソン病などの基礎疾患が高齢者で増加することも関与している.これらの症状は生命に関わらないために軽視されがちだが,日常生活や心理面に多大な影響を及ぼすため,原因や病態に応じた適切な治療を行うことが望ましい.
    平成20年8月に高知大学医学部附属病院に新設された骨盤機能センターでは,骨盤底機能障害としての便失禁や便秘を専門的に診療している.開設以来の9カ月間に便秘128名,便秘と便失禁31名,便失禁51名が初診し,そのうち65歳以上の高齢者は,各々102名(80%),22名(71%),39名(76%)であった.本稿では,この排便障害のうち便失禁と高齢者における特徴に関して概説する.
    便失禁は症状名であり,その原因となる病態は多数存在する.その病態を解明するためには,症状,内服薬を含めた既往歴,直腸肛門機能検査による客観的機能評価,肛門超音波検査による解剖学的評価を総合して診断する必要がある.便失禁の原因に関する高齢者の特徴は,肛門括約筋収縮力の低下,直腸性便秘による溢流性便失禁,便秘に対する下剤の過量であり,便失禁治療の主体は,ポリカルボフィルカルシウムや塩酸ロペラミドによる便性の固形化である.
第51回日本老年医学会学術集会記録〈Aging Science Forum:エイジングサイエンスのホットトピックス〉
  • 平尾 敦
    2009 年 46 巻 5 号 p. 402-404
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
    造血幹細胞は,骨髄内ニッチにおいて,細胞周期から逸脱したG0期,すなわち細胞周期上静止状態(Quiescence)で,未分化性を維持している.静止状態および未分化性の維持には酸化ストレスを抑制することが必要であり,その制御の破綻は,幹細胞の自己複製能の喪失の原因になることが明らかとなってきた.我々は,造血幹細胞の寿命制御機構を明らかにする目的で,線虫の寿命制御分子FOXOの造血幹細胞における機能解析を行い,この分子が,細胞周期,ストレス応答において重要な役割を果たし,造血幹細胞プールの維持に必須であることを明らかにした.
  • 近藤 祥司
    2009 年 46 巻 5 号 p. 405-408
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
    多くの初代細胞は通常培養条件では細胞複製能に限界があり,テロメア依存性あるいは非依存性に細胞老化する.テロメア非依存性老化とは,様々なストレスにより誘導される細胞老化の総称であり,別名,ストレス老化とも呼ばれている.一方で,ES細胞は,不死化能と分化全能性を両立し,遺伝子改変を受けない唯一の初代細胞である.ES細胞は,これらテロメア依存性および非依存性細胞老化の両方をバイパスできる細胞とも呼べる.ES細胞が初代細胞にも関わらず不死化能を維持できるのは大きな謎である.
    最近,我々はマウス初代細胞のテロメア非依存性不死化因子研究を端緒として,解糖系代謝亢進とミトコンドリア酸素消費低下という非常にユニークな代謝特性が,ES細胞はじめとした不死化細胞共通のものであり,その不死化能維持に大きく寄与することを報告した.本稿では,細胞老化に寄与する解糖系代謝に関して,我々の知見を中心に総説する.
  • 小原 克彦, 田原 康玄, 伊賀瀬 道也, 三木 哲郎
    2009 年 46 巻 5 号 p. 409-411
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 利治, 羽田 沙緒里
    2009 年 46 巻 5 号 p. 412-415
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
    目的:アルツハイマー病(AD)の発症に関わるβ-アミロイド(Aβ)は,アミロイド前駆体タンパク質(APP)がβセクレターゼとγセクレターゼによる2回の連続する切断を受けて生成する.γセクレターゼによる切断変化が,凝集性(病原性)の高いAβを生成するが,患者数の多い孤発性AD(SAD)でγセクレターゼの機能変化が起こっているかどうかは不明である.APPと協調的な代謝を受けるAlcadein(Alc)のγセクレターゼによる代謝産物p3-Alcペプチドは,Aβと異なり凝集性が乏しくγ切断変化を捉える事ができる.CSF中のp3-Alc分子種の質的変化を解析することで,SADの発症機構としてγセクレターゼの機能変化を検証する.方法:γセクレターゼの機能変化をもたらす触媒ユニットであるプレセニリン(PS)の変異は,凝集性の高いAβ分子種の増加をもたらすため,家族性AD(FAD)の原因遺伝子の1つとされる.FAD変異を持つPS1を発現する細胞では,Alcのγ切断が変化し,凝集性の高いAβ分子種が増加し,AlcとAPPのγセクレターゼによる切断変化は共変性を示す.ヒトCSF中のp3-AlcおよびAβ分子種を解析することにより,この共変性がAD患者に認められるか検証した.CSF中のp3-AlcをMALDI-TOF/MSで解析し,主要分子種に対するマイナー分子種の割合を求め,Aβ42(凝集性の高いマイナー分子種)/Aβ40(主要分子種)の比と相関性を解析した.結果:Alcは,Alcα,Alcβ,Alcγの3種のタンパク質からなるファミリーを形成する.それぞれからp3-Alcα,p3-Alcβ,p3-Alcγが生成し,いずれもPS遺伝子の家族性変異によりγ切断が変化する.今回,CSF中のp3-AlcαおよびAβを解析したところ,p3-Alcα[マイナー分子種」/p3-alcα[主要分子種]比とAβ42/Aβ40比は,SAD患者(CDR 0.5+1)では正の相関を示し,非認知症患者(non-AD,CDR 0)および他の神経疾患患者(OND)では,負の相関を示した.家族性遺伝子変異を持つPS1を発現する細胞では,正の相関を示し,SADと同じ傾向を示した.SADとnon-ADおよびONDの傾きは,統計学的に有意であったが,non-ADとONDの傾きは有意差を棄却した.これらの解析から,SAD患者では,γセクレターゼの機能変化が起こっている事が示唆された.結論:1.Alcadein(Alc)の代謝産物p3-Alcは,生体内でγセクレターゼの機能変化を検出するsurrogate markerとなる.2.一定の割合の孤発性アルツハイマー病の発症機構として,γセクレターゼの機能変化が考えられる.3.アルツハイマー病の生化学的早期診断法として,p3-Alcの質的変化の検出が考えられる.
  • 井上 聡
    2009 年 46 巻 5 号 p. 416-419
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
原著
  • 河野 直子, 牧野 多恵子, 鈴木 裕介, 梅垣 宏行
    2009 年 46 巻 5 号 p. 420-427
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
    目的:自動車運転の中止が認知機能低下を有する高齢者の日常的な交通利用に与える影響について,実態を把握することを目的とした.方法:名古屋大学医学部附属病院老年科のもの忘れ外来を利用する101名の高齢者が,自動車運転の状況と交通利用の状況に関する調査に参加した.調査協力者のうち48名(47.5%)が免許保持者,16名(15.8%)が免許失効済者,37名(36.6%)が免許未取得者であった.結果:免許保持者の大多数(77.1%)が現役のドライバーであり,免許保持者は免許未取得者に比べて公共交通機関を利用する割合の低いことが確認された.また,免許失効済者においては,認知症の有無により利用する交通機関に違いが認められ,認知症を有する免許失効済者は認知症のない免許失効済者と比べて,公共交通機関の利用割合の低いことが確認された.考察:医療者が認知機能低下を有するドライバーに運転中止を求める場合には,公共交通機関を代替利用する難しさへの配慮が不可欠と考えられる.
  • 加藤 智香子, 猪田 邦雄, 原田 敦
    2009 年 46 巻 5 号 p. 428-435
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
    目的:介護老人保健施設の女性高齢者を対象に,日常生活活動(activities of daily living:ADL)と乖離した高い転倒自己効力感が転倒発生に与える影響について検討した.方法:介護老人保健施設に入所中である70歳以上の女性のうち,Mini-Mental State Examination(MMSE)18点以上で,6カ月間転倒観察が可能であった72名を対象とした.Functional Independence Measure(FIM)運動項目と転倒自己効力感尺度(Falls Efficacy Scale:FES)の散布図からADLと転倒自己効力感の関係を3群に分類した[I群(ADLに比して転倒自己効力感が高い25名),II群(ADLに比して転倒自己効力感が低い30名),III群(ADLと転倒自己効力感に95%信頼区間内で相関関係あり17名)].そして,3群での6カ月後の転倒発生者の割合と転倒回数を比較検討した.さらに,多重ロジスティック回帰分析を用いて転倒発生に関連する要因について検討した.結果:3群において,6カ月後の転倒割合(56.0%vs 26.7%vs 17.7%,p=0.02),転倒回数(1.44 vs 0.47 vs 0.35,p=0.03)に有意な差がみられた.各群間での比較では,I群とIII群間の転倒割合に有意な差が認められた(p=0.02).6カ月後の転倒の有無とは,過去1年間の転倒歴,FESとともにADLに比して転倒自己効力感が高いI群(オッズ比13.20(1.34∼130.12),p=0.027)が有意な関連を示した.結論:日常生活活動と乖離した過度な転倒自己効力感を有する場合には,身体能力に応じた「用心深さ」が失われて注意が散漫になり,転倒リスクが高くなると考えられた.
  • 的場 宗敏
    2009 年 46 巻 5 号 p. 436-439
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
    目的:当院における高血圧患者の家庭血圧測定実態調査をおこなった.方法:平成19年7月から8月における外来高血圧患者260人に家庭血圧手帳を渡し起床時と就寝時の家庭血圧測定を依頼した.そのうち回収できた60人(男性21人,女性39人,平均年齢74.8±9.2歳)を対象に外来血圧と家庭血圧の相関を検討した.結果:(1)降圧薬治療中の高血圧患者260人中96人の36.9%の患者が家庭血圧を測定した.(2)平均外来収縮期血圧136.4±15.8 mmHg,平均外来拡張期血圧71.1±9.5 mmHg,平均外来脈拍70.8±11.1 bpm,平均早朝収縮期血圧133.9±16.2 mmHg,平均早朝拡張期血圧74.7±10.0 mmHg,平均早朝脈拍67.5±10.2 bpm,平均就寝時収縮期血圧131.7±14.4 mmHg,平均就寝時拡張期血圧72.2±11.7 mmHg,平均就寝時脈拍68.3±9.4 bpmであった.(3)外来血圧,早朝血圧の目標達成患者は34.4%であった.(4)仮面高血圧患者は24.6%,白衣高血圧患者は16.4%存在した.結論:家庭血圧測定により早朝高血圧,白衣高血圧,仮面高血圧の情報がえられ今後の治療方針に有用と考えられた.
  • 吉松 竜貴
    2009 年 46 巻 5 号 p. 440-446
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は高齢慢性期患者の近赤外分光法(NIRS)による体脂肪測定の妥当性を検討することである.方法:対象は高齢患者群59例(男性23例,女性36例,年齢82.0±6.6歳)と若年対照群38名(男性19名,女性19名,年齢28.1±6.1歳)とした.対象の体脂肪率(%BF),体脂肪量(BFM),除脂肪量(LBM)をNIRSと皮下脂肪厚法(SF)の二法から推定し,高齢患者群と若年対照群間で男女別に比較した.結果:高齢患者群のNIRSによる%BFは男性18.6±5.8%,女性26.0±4.8%,BFMは男性8.8±3.5 kg,女性10.7±4.2 kg,LBMは男性37.7±6.1 kg,女性29.6±5.8 kgであった.男女共に,NIRSはSFに比べ%BFを有意に高く,BFMを有意に多く,LBMを有意に少なく推定した.男性の%BFは,NIRSでは群間に有意差はなく,SFでは高齢患者群で有意に低かった.男性のBFMは,両法ともに高齢患者群で有意に低かった.男性のLBMは,両法ともに高齢患者群で有意に低かった.女性の%BFは,両法ともに群間に有意差はなかった.女性のBFMは,NIRSでは群間に有意差はなく,SFでは高齢患者群で有意に低かった.女性のLBMは,両法ともに高齢患者群で有意に低かった.NIRSとSFの相関に関しては,男女共に両群の全ての体脂肪値で有意な正の相関を認めた.男女共に全ての体脂肪値で群間の回帰式の傾き,切片に有意差はなかった.結論:NIRSとSFとは異なる体脂肪値を推定しており,高齢慢性期患者ではNIRSが文献的により妥当性が高い事が示唆された.また,高齢患者群におけるNIRSとSFの相関は若年対照群と同質であり,高齢慢性期患者のNIRSによる体脂肪評価と,健常成人のSFによる過去の体脂肪研究との比較の可能性が示された.
  • 横川 博英, 安村 誠司, 丹野 高三, 大澤 正樹, 小野田 敏行, 板井 一好, 川村 和子, 坂田 清美
    2009 年 46 巻 5 号 p. 447-457
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
    目的:要介護の危険因子として,閉じこもりが関心を集めており,要介護発生と閉じこもりとの関連および「閉じこもり」の特徴を明らかにすることを目的とした.方法:岩手県北地域コホート研究の調査対象である2002∼2004年に岩手県北地域3保健医療圏における健診受診者のうち,同意が得られた26,469人のなかで登録時に65歳以上であり脳卒中や心筋梗塞,心不全の既往がある者,既に要支援以上の要介護認定を受けている者を除外し,要介護認定の調査が行われた12,056名(男性4,751名,女性7,305名)を分析対象とした.登録調査時に実施した自記式アンケートに含まれている「外出時の1日平均の歩行時間」を「5分未満」および「5分以上」に2分し,「5分未満」群を閉じこもりと操作的に定義した.追跡期間中に介護認定で要支援以上と判定されたものを要介護発生とした.Cox比例ハザードモデルを用いて,要介護認定のHazard ratio(HR)と95% confidence interval(CI)を男女別に算出した.結果:平均2.65年の追跡期間中,要支援以上に認定された者は男200人(4.2%),女412人(5.6%)だった.男性では,非閉じこもりと比較し閉じこもりでHR=1.07(95%CI=0.76∼1.52)と要介護発生と閉じこもりとの間に有意な関連を認めなかったが,女性では,HR=1.64(95%CI=1.29∼2.09)と要介護認定の相対リスクが有意に上昇していた.「閉じこもり」群では,総コレステロール値や体重変動,歯の本数などの栄養に関連する項目や,日常生活リズムなどに関連する項目について問題がある可能性が示唆された.結語:高齢女性において「閉じこもり」は,要介護発生に有意に関連していた.「閉じこもり」の定義にも考慮した詳細な検討が必要と考えられた.
症例報告
  • 鴨川 賢二, 戸井 孝行, 岡本 憲省, 奥田 文悟
    2009 年 46 巻 5 号 p. 458-461
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/17
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の女性.急性の左不全片麻痺と意識障害にて発症し,一旦症状の回復がみられた.その後,次第に発語減少,歩行障害が進行し,発症8カ月頃よりミオクローヌス,驚愕反応が出現した.プリオン蛋白遺伝子検査によりコドン180変異(Val→Ile)が判明し,家族性Creutzfeldt-Jakob病(CJD)と診断した.頭部MRIでは,拡散強調画像で右大脳皮質の一部にみられた高信号が経過とともに両側大脳皮質と基底核に拡大した.両側中心回や後頭葉内側,海馬の信号変化は軽度にとどまった.codon180変異を伴うCJDでは非典型的な臨床経過をとり,選択的な皮質·皮質下病変の進展様式を呈する可能性が示唆された.
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