日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
47 巻, 3 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
第51回日本老年医学会学術集会記録〈シンポジウムIII:超高齢者の心血管病リスク管理:脳・心・腎・血管事故予防に向けて〉
第51回日本老年医学会学術集会記録〈若手企画シンポジウムI(臨床系):Lifelong diseaseとしての動脈硬化〉
第51回日本老年医学会学術集会記録〈特別企画:高齢者医療・介護制度の今後の展開〉
  • 黒岩 卓夫
    2010 年 47 巻 3 号 p. 206-208
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
  • 武久 洋三
    2010 年 47 巻 3 号 p. 209-212
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    平成20年10月23日,社会保障国民会議において発表された「将来の医療提供体制・介護提供体制の現状と将来像」から一般病床という病床区分が消え,近い将来には急性期,慢性期(急性期後期),介護期に分類されると考えられる.日本慢性期医療協会は,急性期病院を峻別化し,高度急性期病床以外を病院病床として統一した上で,平均在院日数・人的資源・病床面積の3要素で診療報酬を評価すべきと考える.各施設に求められる機能や理念を今一度見つめ直し,対象領域を明確にする必要があるだろう.
    厚生労働省の描く「改革シナリオ」では,高齢化の進展や有病率の増加,年間死亡推定数を加味し,医療・介護サービスの対象人数を現状よりも約300万人多く設定している.医療・介護体制は川上である高度急性期病院の定義から始まる.平均在院日数の短縮化に伴い,退院患者数と慢性期医療の必要性も倍増する.各施設に患者を当て込み,残りは居住系施設や在宅と考えなければ,事はシナリオ通りには運ばないだろう.
    療養病床の再編は急性期医療にも思わぬ歪みを生んだ.慢性期医療の縮小は急性期病院の崩壊を加速させる危険性を孕んでいる.高度急性期病院と慢性期病院は相補関係にあり,互いに連携の強化を求めている.実際に連携ネットワークが機能している地域では,着実にその実績を上げている.各医療機関が機能に合った患者の治療に当たることで医療費は適正化され,その機能を補完し合うことで今後激増する地域ニーズを受け止めることが可能と考える.
    時代は利益優先・経済優先主義の社会から国民が安心して暮らせる社会の構築へと移り変わっていく.国の施策が目指すべき方向は,子供たちや高齢者の尊厳を守り,将来の不安を感じることのない未来を築くことである.国民にとって必要な医療施策の提言とその実現を目指し,すべての医療福祉施設は「国民の命と健康を守る」との立場から一致協力する必要を強く感じている.
原著
  • 藤村 昌彦
    2010 年 47 巻 3 号 p. 213-219
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    目的:発症後3カ月から10カ月間にわたり高齢者脳血管障害患者の回復過程を介護予防市町村モデル事業中間報告の運動機能評価に準じて調査した.方法:対象は過去3カ月以内に脳血管疾患を発症した14名の患者(男性8名,女性6名,年齢77.4±6.5歳,入院日数164.6±33.1日)とした.評価項目は,握力測定,片脚立位テスト,ファンクショナルリーチ,棒落下テスト,Time up & goテスト(TUGT)とした.最も回復した数値を100%とし,それに対する割合を機能回復率として算出した.結果:握力は健側と患側ともに発症6カ月で最大回復値を示したが,発症12カ月では最大回復値の76.1%(健側),68.6%(患側)となった.片脚立位テストは発症7カ月で最大回復値72.8%を示したが,発症12カ月では最大回復値の24.5%となった.ファンクショナルリーチは発症4カ月で最大回復値86.9%を示したが,発症12カ月では最大回復値の57.5%となった.棒落下テストは発症6カ月で最大回復値83.5%を示したが,発症12カ月では最大回復値の63.8%となった.TUGTは発症5カ月で最大回復値90.4%を示したが,発症12カ月では最大回復値の64.1%となった.結論:最も早く回復ピークに達したのはファンクショナルリーチであった.一方,片脚立位は他の項目よりやや遅れて発症後7カ月で最大回復に達した.最大回復後,握力は他の検査項目と比して機能を維持するが,片脚立位,ファンクショナルリーチ,棒落下,TUGTは減少の一途を辿った.特に,平衡機能に関与する片脚立位とファンクショナルリーチの低下が著しかった.平衡機能の低下は転倒リスクの増大を招き,脳血管障害後の二次的障害を生むことになるため,転倒予防対策の必要性が求められる.以上より,退院後のリハビリテーションのあり方について検証する必要が示唆された.
  • 高井 逸史
    2010 年 47 巻 3 号 p. 220-225
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    目的:転倒恐怖感は様々な活動制限を来たし,転倒そのものよりも深刻な問題として近年注目されている.転倒経験者は転倒恐怖感のほか注意能力低下も報告されている.そこで転倒歴のある要介護高齢者を対象に注意課題を伴うバランス練習が転倒恐怖感に影響を及ぼすか検討した.対象:転倒を経験した施設要介護高齢者22名(男性3名,女性19名,平均年齢83.1±5.2歳)とした.方法:被験者をバランス練習のみの運動群と,口頭指示と内省報告による注意課題を伴うバランス練習を注意運動群の2群に分け週3回の5分間,10週間実施した.転倒恐怖感(Fall Efficacy Scale;FES),Functional Reach Test(FRT),Timed Up & Go Test(TUG),10 m歩行時間を介入前後に計測した.結果:両群ともFRTは向上したが(p<0.05),注意運動群のみTUGが向上し(p<0.05)転倒恐怖感が減少した(p<0.05).結語:転倒歴のある要介護高齢者の転倒恐怖感軽減には,バランス能力向上のほか,注意機能向上も必要と考える.
  • 関口 晴子, 大渕 修一, 小島 成実, 新井 武志, 平野 浩彦, 小島 基永
    2010 年 47 巻 3 号 p. 226-234
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    目的:口腔機能向上プログラムは,主に通所で歯科衛生士などが中心となって実施しているが,専門職を配置できない場合には実施することが難しいことが指摘されている.それに対しては,専門職によるインターネットなどを利用した遠隔介入が考えられるが,高齢者には難しいことが考えられる.そこで本研究では,対象者と歯科衛生士の媒介となるコーディネータを配置して遠隔的に実施した口腔機能向上プログラムの効果を検討した.方法:東京都島嶼部在住65歳以上の高齢者で参加希望の55名を対象とした.歯科衛生士が事前にコーディネータの教育を行い,参加者の事前事後に咀嚼機能,嚥下機能,口腔機能関連QOLの評価を行った.プログラムは教材を基に参加者が自宅で毎日行うこととし,実施に必要な知識の提供,動機づけを目的に,週1回,2カ月間教室を開催した.その際,参加者の実施状況,質問をコーディネータを通じてファクシミリにて歯科衛生士に送付し,歯科衛生士はプログラムを継続していくための専門的助言をファクシミリにてコーディネータに返送した.結果:嚥下機能のRepetitive saliva swallowing test(RSST)積算時間3回目で事前が35.1秒,事後が27.6秒と有意に早くなった.構音機能のOral Diadochokinesis(ODK)は事前が「パ」4.2回,事後が4.6回,「タ」は事前が4.2回,事後が4.6回,「カ」は事前が4.1回,事後が4.5回と,有意に増加した.咀嚼能力判定ガムは有意な差を認めた.口腔関連QOLのGeneral oral health assessment index(GOHAI)も事前は53.0点,事後は54.7点と有意に増加した.口腔衛生についても同様に改善を認めた.結論:嚥下機能,構音機能,咀嚼機能,口腔衛生,口腔関連QOLとすべての領域で改善がみられ,歯科衛生士がコーディネータを介して遠隔的に関わり,口腔機能向上サービスを提供する遠隔型プログラムは高齢者の口腔機能を向上するために有効であることが示唆された.
  • 山本 泰雄, 坂口 隆一, 永田 博一
    2010 年 47 巻 3 号 p. 235-242
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    目的:認知症発症前の早期の認知機能低下を発見する新しい認知機能検査を開発し,その効用を検討することを目的とした.方法:新しく開発したSimple Cognitive test(以下,SC-test)は,一番左端にある図形とは色と形のどちらも違う図形を制限時間3分で選択するというもので,パソコン,紙面の両方で行え,満点は50点である.正常対象者として,介護施設の職員271名にSC-testを行った.また,通所リハビリテーション(以下,通所)利用者114名に対して,Mini Mental State Examination(以下,MMSE),Frontal Assessment Battery(以下,FAB),新しく開発したSC-testの3テストを行い各テスト間にどのような関係があるかを検討した.結果:正常対象者では若年者はほとんどが満点近くであり,10歳代(18歳以上)から20歳代では平均点48.1(±3.40)点であったが加齢と共に下降し,60歳代では36.2(±11.6)点であった.通所利用者の平均年齢は80.2(±6.2)歳,MMSE平均点23.8(±4.3)点,FAB 11.2(±3.5)点,SC-test 13.1(±11.5)点であった.SC-testとMMSEとの相関係数はr=0.569(p=4.17×10-11),FABではr=0.664(p=6.661×10-16)であった.説明変数をMMSEとFABとし,従属変数をSC-testとした重回帰分析では,重相関係数R=0.681(p=9.9×10-16)で,回帰方程式は(SC-test)=0.550×(MMSE)+1.74×(FAB)-19.4であった.3つのテストの3次元散布図では,MMSEが満点近くでもFABが低いとSC-testも低い傾向が認められた.結論:SC-testはMMSEやFABと有意な相関を認めるが,よりFABとの関連が強く,MMSEでは発見できないような早期の認知機能低下,特に前頭葉機能の低下に対して非常に鋭敏である.また認知機能の低下がないと予想される若年者ではほとんどが高得点を取ることから特異度も高いと考えられる.
  • 宇野 久光
    2010 年 47 巻 3 号 p. 243-249
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    目的:本邦では高齢者の貧血については,調査された対象集団により,有病率が異なっており,また貧血の診断基準も一定ではない.高齢者の貧血有病率とその背景を検討するため,介護老人保健施設(以下老健)入所者と人間ドックの高齢利用者を調査した.方法:広島県K市の独立型老健KK(以下老健KK)の129名(男性39名,女性90名)の入所者と,同県H市の病院併設型老健HP(以下老健HP)の155名(男性39名,女性116名)の入所者を対象とした.また,同県H市のHRC病院の人間ドック(以下人間ドックHRC)の65歳以上の利用者1,019名(男性687名,女性332名)を調査した.結果:平均Hb濃度は,老健KKでは男性12.8 g/dl ,女性11.9 g/dLで,老健HPでは男性12.2 g/dL,女性11.9 g/dLであり,人間ドックHRCでは男性14.9 g/dL,女性13.5 g/dLであり,老健入所者では人間ドック利用者に比べて有意にHb濃度が低かった.両老健入所者の血清総タンパク(TP)濃度は,人間ドック利用者に比較して男女共に有意に低かった.TPとHbの濃度の相関では,老健KKと老健HPの入所者では相関係数(r)はそれぞれ,0.27と0.33であり,人間ドックHRCのそれは0.13であった.老健入所者の基礎疾患を検討したが,特定の疾患群とHb濃度は相関を示さなかった.WHOの貧血の診断基準による有病率は,男性では老健KKとHPでそれぞれ,51.1%と64.1%で,女性のそれは51.1%と55.2%であった.他方,人間ドックHRCでは,男性6.1%,女性6.9%で,国民健康・栄養調査の高齢者の20%台の貧血有病率よりも低かった.結論:老健施設入所者の貧血の有病率は,男女共に50%以上で,老健入所者の多彩な基礎疾患を反映していると考えられた.他方人間ドック利用者では,一般集団に比べても貧血有病率が低く,同施設利用者の選択バイアスを反映していると考えられた.
  • 塩路 直子, 饗庭 三代治, 津田 裕士, 礒沼 弘
    2010 年 47 巻 3 号 p. 250-256
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    目的:認知症病棟への専従配置が義務づけられている精神保健福祉士(PSW)の退院援助が,認知症症例の退院の状況とどのように関係しているかを明らかにするために検討を行った.方法:認知症病棟から退院した症例について,PSWの退院援助と入院期間,退院先機関,栄養摂取方法,服用薬剤などとの関係を検討した.結果:検討対象の要件を満たした症例は192例であり,アルツハイマー型認知症が94例(49.0%)と約半数を占めていた.在宅療養への移行例では,当院外来への通院例が45例,他院への通院例が17例の計52例(32.3%)であった.他院への転入院例は34例(17.7%)であった.その他の96例(50.0%)は,約半数が介護老人保健施設(老健)に入所し,介護老人福祉施設(特養),有料老人ホーム(有老),グループホーム(GH)の順に減少した.1症例当たりの平均援助回数および時間(平均援助頻度)は,施設では有老が最も多く,回数で50回,時間で800分を超え,特養,老健,GHの順に減少した.他院への通院例は,入院期間が最も短いにも係わらず,当院への通院例よりも多くの援助を必要とした.栄養摂取方法と平均援助頻度との関係では,経口摂取で援助頻度が最も少なく,経鼻経管,胃瘻の順に多く,経口摂取と胃瘻との間には有意差(P<0.01)を認めた.服用薬剤と平均援助頻度との関係では,老健の場合においてのみ,塩酸ドネペジル服用例でその他の薬剤服用例よりも有意(P<0.003)に多くの援助を必要とした.結論:認知症病棟からの退院においては,PSWの退院援助が不可欠であり,かつ多くの時間を必要とすることが判明した.また,在宅療養の場合よりも,医療機関への入院または施設への入所において,退院援助の必要度が高いことも示された.さらに,療養型医療機関への入院および老健への入所では,服用薬剤によりその調整に頻回の援助を必要としていた.
症例報告
  • 竹下 雅子, 宮尾 益理子, 水野 有三
    2010 年 47 巻 3 号 p. 257-261
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/05
    ジャーナル フリー
    我が国は食塩感受性高血圧が多く臓器障害の危険が高い.治療は減塩,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(以下RASと略す)の抑制,利尿薬で,近年サイアザイド/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(以下ARBと略す)合剤の使用が増している.特に高齢者の有用性が高まるが,このたび降圧加療で利尿薬内服中,意識障害を伴う低Na血症で入院した2例を経験した.
    症例1は78歳女性.サイアザイド/ARB合剤内服開始2カ月後,嘔吐・腹痛で受診しNa 118 mEq/Lで入院.臨床所見上脱水があったが,検査所見で尿中Na排泄亢進,レニン値正常,アルドステロン低値とRASの賦活はなく,低浸透圧血症にもかかわらず高張尿,ADHの相対的分泌亢進を認め,Mineralcorticoid responsive hyponatremia of elderly(以下MRHEと略す)様の病態が認められた.利尿薬中止18日後Na 139 mEq/Lに改善するもADHの相対的分泌亢進は残存し,K 5.0 mEq/L,TTKG 3.5と遠位尿細管のmineralcorticoid作用低下は残存した.症例2は64歳女性.サイアザイド系類似利尿薬内服開始1カ月後,嘔吐・下痢で受診しNa 111 mEq/Lで入院.検査・臨床所見上症例1同様MRHE様病態を認め,同薬中止後等張輸液で治療したが低Na血症が遷延し,2%高張食塩水で加療.21日後Na 149に改善したがADHの相対的な分泌亢進と遠位尿細管機能低下は残存した.
    高齢者低Na血症の原因の一つにMRHEという病態が提唱され,遠位尿細管障害が一因とされている.このたび経験した2例ともかねてより遠位尿細管機能障害があったと考えられ,このような病態下での利尿薬投与は意識障害を伴う程の低Na血症に至る可能性があり注意が必要と考えられた.
短報
Letters to the Editor
feedback
Top