目的:認知症発症前の早期の認知機能低下を発見する新しい認知機能検査を開発し,その効用を検討することを目的とした.
方法:新しく開発したSimple Cognitive test(以下,SC-test)は,一番左端にある図形とは色と形のどちらも違う図形を制限時間3分で選択するというもので,パソコン,紙面の両方で行え,満点は50点である.正常対象者として,介護施設の職員271名にSC-testを行った.また,通所リハビリテーション(以下,通所)利用者114名に対して,Mini Mental State Examination(以下,MMSE),Frontal Assessment Battery(以下,FAB),新しく開発したSC-testの3テストを行い各テスト間にどのような関係があるかを検討した.
結果:正常対象者では若年者はほとんどが満点近くであり,10歳代(18歳以上)から20歳代では平均点48.1(±3.40)点であったが加齢と共に下降し,60歳代では36.2(±11.6)点であった.通所利用者の平均年齢は80.2(±6.2)歳,MMSE平均点23.8(±4.3)点,FAB 11.2(±3.5)点,SC-test 13.1(±11.5)点であった.SC-testとMMSEとの相関係数はr=0.569(p=4.17×10
-11),FABではr=0.664(p=6.661×10
-16)であった.説明変数をMMSEとFABとし,従属変数をSC-testとした重回帰分析では,重相関係数R=0.681(p=9.9×10
-16)で,回帰方程式は(SC-test)=0.550×(MMSE)+1.74×(FAB)-19.4であった.3つのテストの3次元散布図では,MMSEが満点近くでもFABが低いとSC-testも低い傾向が認められた.
結論:SC-testはMMSEやFABと有意な相関を認めるが,よりFABとの関連が強く,MMSEでは発見できないような早期の認知機能低下,特に前頭葉機能の低下に対して非常に鋭敏である.また認知機能の低下がないと予想される若年者ではほとんどが高得点を取ることから特異度も高いと考えられる.
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