日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
48 巻 , 6 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
第53回日本老年医学会学術集会記録〈教育講演〉
第53回日本老年医学会学術集会記録〈高齢者の診療ガイドライン〉
第53回日本老年医学会学術集会記録〈シンポジウム1:老年症候群の予防と管理〉
原著
  • 須藤 剛, 佐藤 敏彦
    2011 年 48 巻 6 号 p. 665-671
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者大腸癌に対する腹腔鏡下手術の安全性と有効性を検討した.方法:2000年~09年に当院にて術前深達度がMP~腫瘍径約2 cm程度のSS癌までと診断された,75歳以上の大腸癌手術症例270例を対象とし,臨床病理学的因子,手術関連因子,周術期経過,術前・後合併症につきretrospectiveに検討した.結果:腹腔鏡下手術(以下:LAC群)81例,開腹手術症例(以下:OC群)189例であった.年齢中央値や,BMI,PNI,組織型は差を認めなかった.LAC群はOC群と比較し,腫瘍径が小さいが,リンパ節転移例が多い傾向にあった.手術時間は中央値で215分と195分でLAC群は長い傾向にあったが,出血量は少なく,リンパ節の郭清度及び,郭清リンパ節個数も差を認めなかった.歩行開始は1日と1日,食事開始は3日と4日,排ガス日は2日と3日,排便日3日と5日は早く,術後在院日数も11日と15日でLAC群が短かった.術前合併症保有患者は各々80.2%と81.1%で差を認めていなかったが,術後合併症は6.7%と12.2%でLAC群が少なかった.主に術後せん妄や,呼吸器疾患が多く,縫合不全や術死などは認めなかった.術後1,3,7日のWBC・CRP値は中央値でWBCは術後1,3日目,CRPは術後3日目にLAC群が低値であった.結論:我々の検討では高齢者に対する腹腔鏡下大腸切除術は早期癌症例が多い傾向にあったが,術後経過も比較的良好であり,手術も安全に施行されていた.外科手術の侵襲として創長の程度やサイトカインなどの問題が術後の回復に影響する要因の一つと考えられ,それらを軽減する腹腔鏡下手術は高齢者の大腸癌手術においても術後経過に良好な影響を与えると考えられた.更に在院日数の減少や,早期の社会復帰につながることから,LAC群の耐術能や進行度を考慮することで高齢者にも安全に施行可能であり,今後更に大腸癌手術の適応の拡大につながると考えられた.
  • 中坊 麻利, 甲斐 達也, 前嶋 哲也, 金政 健
    2011 年 48 巻 6 号 p. 672-678
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
    ジャーナル フリー
    目的:最近,魚油の摂取が冠動脈疾患を中心に動脈硬化性疾患の発生を減少させることや,細胞老化抑制作用を有する可能性が報告されている.これまで報告されているEPA/AA比に関する臨床研究は,70歳代までの患者を対象とした研究報告が大半であり,80歳以上を対象として検討した研究は少ない.そこで超高齢者を対象に脂肪酸4分画値を測定し,EPA値やEPA/AA比の検討と,動脈硬化性疾患との関連性を比較検討した.方法:当院当科に加療を要した患者のうち,EPA製剤を服用していない80歳以上の患者連続150人(平均年齢85.4±4.3歳)を対象に,脂肪酸4分画を測定し,動脈硬化性疾患との関連性を検討した.結果:平均値は,EPA 55.9±34.5 μg/mL,AA 145.1±45.4 μg/mLであり,EPA/AA 0.40±0.24であった.虚血性心疾患の既往のある患者でのEPA/AA比とEPA値は,有意差は認めなかった.脳血管障害の既往のある患者においてもEPA/AA比とEPA値は非既往者と有意差がなく,また,eGFR値とEPA/AA比との間にも相関関係は認めなかった.結語:超高齢者を対象とした今回の検討では,70歳代を境にEPA/AA比やEPA値は低下傾向となると推察された.また,80歳以上の超高齢者におけるEPA/AA比と動脈硬化性疾患との関連性は70歳代までの患者と比較して低いと考えられた.
  • 新木 真理子
    2011 年 48 巻 6 号 p. 679-685
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
    ジャーナル フリー
    目的:エリクソンの自我発達論による成人期の発達課題はジェネラティヴィティである.ジェネラティヴィティとは次世代を確立させ引き継ぐことへの関心である.高齢者の介護施設で働く職員のジェネラティヴィティ発達と仕事の有能感の関連を明らかにし,高齢者ケアの職業的価値の一側面を検討する.方法:福岡県に所在する特別養護老人ホーム13カ所に勤務する職員(事務職員を除く)367名を対象として,質問紙調査を実施.「ジェネラティヴィティ」と「仕事の有能感」及び基本属性のそれぞれの因果関係をみるために,確認的因子分析としてパス解析を行った.結果:仕事の有能感に対して年齢(β=.19,p<.01),経験年数(β=.14,p<.05),ジェネラティヴィティに対して仕事の有能感(β=.67,p<.001)が有意差を示した.介護施設職員の『業務の達成』や『能力の発揮・成長』,及び『仕事上の予測・解決』という仕事の有能感は,年齢や経験年数により高まり,有能感が高いほどジェネラティヴィティの発達が促されることが明らかとなった.結論:介護施設職員のジェネラティヴィティの発達は,仕事満足や職業的アイデンティティの強化をもたらすことが示唆された.
  • 緒方 利安, 矢坂 正弘, 湧川 佳幸, 北園 孝成, 岡田 靖
    2011 年 48 巻 6 号 p. 686-690
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
    ジャーナル フリー
    目的:脳出血急性期における下肢深部静脈血栓症(DVT)の発症の有無と部位に,D-dimerが関連するかについて検討した.方法:対象は2005年6月から2006年9月までに当院に入院した発症72時間以内の急性期脳内出血患者のうち,2週間後のD-dimer値を測定し得た48例(年齢70.5±10.0歳,男性21例,女性27例)である.脳出血発症から約2週後に,下肢静脈エコーで総大腿・深大腿・膝窩・後脛骨・腓骨・ヒラメ筋静脈におけるDVTの有無を調べた.そして,DVTが見られなかった群(陰性群),下腿のみにDVTを認めた群(下腿群),大腿もしくは膝窩静脈にDVTを認めた群(近位群)に分けた.下肢静脈エコーと同時期に,D-dimerを測定し,各群ごとにD-dimer値が異なるかについて,単変量・多変量解析を用いて検討した.結果:陰性群は27例(61.4%),下腿群は15例(34.1%),大腿群は2例(4.5%)であった.発症2週間後のD-dimer中央値は陰性群0.9 μg/mL,下腿群4.8 μg/mL,近位群25.0 μg/mLで,下腿・大腿群ともに陰性群よりも有意にD-dimer値が高かった(陰性vs下腿;p<0.001,陰性vs近位;p=0.001,下腿vs近位;p=0.21,Scheffe test).D-dimerでDVTの有無を推定するための,また下腿のDVTから大腿にDVTが存在することを推定するためのカットオフ値はそれぞれ3.9 μg/mL,18.5 μg/mLだった.結論:D-dimer値は脳出血急性期患者のDVTの存在および発症部位を予測するのに有用である.
  • 奥野 純子, 戸村 成男, 深作 貴子, 金 美芝, 大藏 倫博, 田中 喜代次, 柳 久子
    2011 年 48 巻 6 号 p. 691-698
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
    ジャーナル フリー
    目的:特定高齢者の特徴である移動能力低下は血清ビタミンDや腎機能が関連していると報告されている.運動教室に参加後の体力改善に,ビタミンD濃度,ビタミンD補充,腎機能がどのように影響しているか検討し,介護予防の資料とすることを目的とした.方法:2006年6月から2009年12月までの介護予防運動教室に3カ月間参加した茨城県Y町とS市(いずれも北緯36度)に在住の65歳以上の特定高齢者177名(平均年齢76.4±5.5歳)を対象とした縦断研究である.質問紙による面接調査,血液検査(血清intact parathyroid hormone(iPTH),25-hydroxyvitamin D3(25(OH)D),1,25-dihydroxyvitamin D3(1,25(OH)2D),クレアチニン,カルシウムなど)を実施した.推算糸球体濾過量(eGFR(ml /min/1.73 m2))は新推算式から算出した.アルファカルシドール1 μg/日を3カ月間希望者に投与し,80%以上服用者をVD群とした.体力測定項目は移動能力,バランス能力,筋力である.結果:開始時のeGFR<60 ml /minは約24.3%,86.4%が25(OH)D<75 nmol/Lであった.Functional Reach変化にVD服用有無・eGFR,Timed Up & Go変化にpre-eGFR・pre-25(OH)D 45 nmol/L以上・未満,タンデムバランス変化にpre-25(OH)D 50 nmol/L以上・未満,ステップテスト・5回椅子立ち上り変化にpre-25(OH)D 67.5 nmol/L以上・未満,タンデム歩行変化にpost-1,25(OH)2D 44 pg/ml が関連していた.結論:特定高齢者が,自立した生活を継続するためにも腎機能を管理し,体力レベルに応じた25(OH)D濃度を適正に維持し,可能であれば67.5 nmol/L以上維持することが介護予防に重要である事が示唆された.
  • 藤本 聡, 山崎 幸子, 若林 章都, 松崎 裕美, 安村 誠司
    2011 年 48 巻 6 号 p. 699-706
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
    ジャーナル フリー
    目的:福島県喜多方市が虚弱高齢者に対して実施している体操教室「太極拳ゆったり体操」の介護予防の効果について,新規要介護認定の発生,および,生命予後との関連を検証することを目的とした.方法:喜多方市に在住の65歳以上で,要支援,要介護認定を受けていないもののうち,過去1年間に転倒経験があり,本プログラムに同意し体操教室へ参加したものを介入群34人,参加しなかったものを非介入群84人とした.体操教室の内容は,準備運動,「太極拳ゆったり体操」座位バージョン,休憩,同体操立位バージョン,整理運動の計60分コースであった.介入期間は,平成18年12月5日から平成19年3月22日で,週1回,全15回実施した.また,介入群に対して介入前後で質問紙法による調査と体力測定を行った.平成22年3月末までの要介護認定の有無,死亡の発生を確認した.分析は,介入の有無を説明変数,要介護発生状況と死亡状況の各々を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した.結果:介入群は,男性10人(29.4%),年齢の中央値は73.0歳であった.非介入群は,男性40人(47.6%),年齢の中央値は75.0歳であった.新規の要介護認定の発生は,介入群が2人(6.3%),非介入群が19人(24.1%)であった.多重ロジスティック回帰分析の結果,新規要介護認定者は介入群の方が非介入群よりも有意に少ない傾向にあった(p=0.098).死亡の発生では介入群が2人(5.9%),非介入群が5人(6.0%)であり,有意差は認められなかった.介入群における介入前後の質問紙法及び体力測定では,生活体力指標,長座位からの立ち上がり時間,10 m最大歩行時間,Functional Reach Test,最大歩幅において有意に改善した.結論:本研究では虚弱高齢者を対象に実施した「太極拳ゆったり体操」により,3年4カ月後の新規の要介護認定の発生を抑制できる可能性が示唆された.このことから,本体操は介護予防プログラムの一つとして有用であると考えられた.
症例報告
  • 土方 直也, 浅沼 晃三, 佐藤 新太郎, 原澤 慶次, 宮岡 啓介, 石津 英喜
    2011 年 48 巻 6 号 p. 707-711
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.慢性胃炎,逆流性食道炎にて消化器外来へ定期通院中であったが,湿性咳嗽が遷延するため胸部X線撮影を施行.右肺尖部に結節影を認めた.胸部CTでは右S1aに最大径28 mm大の境界明瞭で辺縁整の結節影を認めた.気管支鏡検査を実施したが診断を確定できず,胸腔鏡下に結節を切除した.術中迅速病理で炎症性肉芽腫の診断を得たため,部分切除のみで手術は終了した.術後の病理組織標本では結節中にフィラリア虫体と乾酪壊死を伴う肉芽腫を認め肺犬糸状虫症と確定診断した.肺犬糸状虫症は画像上,肺に結節影や腫瘤影を呈し,高齢者の胸部異常結節影における肺癌などの鑑別診断として稀ながら考慮すべき疾患であると考えられた.また,多くの報告では結節は下葉に認められることが多いが,本例では上葉肺尖部に病変を生じた貴重な1例と考えられた.
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