目的:養護老人ホームに入所している高齢者84名を対象に,オーラルディアドコキネシス(OD)とADLとの関連性を明らかにした.
方法:ODは,「ぱ」(/pa/),「た」(/ta/),「か」(/ka/)の3種類の音節と,これら音節の組み合わせ「ぱたか」(/pataka/)の繰り返しをそれぞれ測定した.1秒あたりのODの回数を求め,平均値と標準偏差より得た基準値より,それぞれ反復運動維持群(OD維持群)と反復運動低下群(OD低下群)の2群に分類した.また,対象者の包括的ADLと知的機能を,ADL20と改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を用いて評価した.ADL20は総スコアと4つの下位尺度スコア(起居動作,身の回り動作,手段的ADL,コミュニケーションADL)を求めた.
結果:全てのOD評価において,OD低下群のADL20総スコアとHDS-R評価値は,維持群と比較して有意に低かった(
p<0.01).交絡要因調整後の共分散分析の結果,/pa/と/pataka/におけるOD低下群のADL20総スコアは,維持群と比較して有意に低かったが(
p<0.05),/ta/と/ka/においては有意な関連性は認められなかった.ADL20下位スコアでは,全てのOD評価において,OD低下群の起居動作スコアは,OD維持群と比較して有意に低かった(
p<0.01).また,/pataka/のOD評価において,OD低下群の身の回り動作の下位スコアは,OD維持群と比較して有意に低かった(
p<0.01).さらに/pa/のOD評価では,OD低下群におけるコミュニケーションADLの下位スコアは,OD維持群と比較して有意に低かった(
p<0.05).
結論:オーラルディアドコキネシスは,包括的ADL評価と起居動作に係る基本的ADL評価と有意な関連性を示した.養護老人ホーム入所高齢者のオーラルディアドコキネシスの低下は,ADL低下に随伴して生じることが示唆された.
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