日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
49 巻 , 6 号
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第54回日本老年医学会学術集会記録
特別講演
公開シンポジウム:超高齢社会における街(都市)づくり
シンポジウム2:高齢者の「サルコペニア」ならびに「虚弱」とその対策
  • 真田 樹義, 家光 素行, 田畑 泉, 宮地 元彦, 村上 晴香, 山元 健太, 塙 智史, 川上 諒子, 河野 寛, 丸藤 祐子, 鈴木 ...
    2012 年 49 巻 6 号 p. 715-717
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,成人男女1,488名を対象として,日本人のためのサルコペニアの参照値と体力及び心血管系疾患リスクおよびメタボリックシンドロームとの関係について検討した.方法:サルコペニアの参照値は,若年被験者における二重エネルギーX線吸収(DXA)法を用いた骨格筋指数の平均値マイナス1標準偏差を使用した.結果:DXA法によるサルコペニアとサルコペニア予備群の参照値は,男性が6.87 kg・m-2と7.77 kg・m-2,女性が5.46 kg・m-2と6.12 kg・m-2であった.サルコペニア予備群と正常群を比較したところ,男女ともサルコペニア予備群は全身の骨密度や脚筋力が有意に低かった.さらに,サルコペニア予備群は,体格指数や体脂肪率が正常群より有意に低いにもかかわらず,血中グリコヘモグロビン濃度や脈波伝搬速度が有意に高かった.さらに,年齢,除脂肪量,体脂肪率を共変量とした共分散分析(低筋量×メタボリックシンドローム)の結果,空腹時血糖値及び血中グリコヘモグロビン濃度(HbA1c)は,これらの相互作用に有意性が認められた.結論:日本人のサルコペニアは,糖尿病発症や動脈硬化に関連する可能性が示唆された.また,低筋量とメタボリックシンドロームの合併は糖尿病リスクを増強することが明らかとなった.
  • 谷本 芳美
    2012 年 49 巻 6 号 p. 718-720
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
  • 下方 浩史, 安藤 富士子
    2012 年 49 巻 6 号 p. 721-725
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    加齢に伴って筋肉量が減少し,筋力を維持できなくなってしまうサルコペニアは高齢者の日常生活機能を低下させる.われわれは栄養摂取等の生活習慣や既往歴など,サルコペニアのリスク要因について,無作為抽出された40歳以上の地域在住男性1,783名,女性1,825名での10年間,延べ14,010回の測定の縦断的データを用いて網羅的に検討を行った.二重エネルギーX線吸収装置(DXA)での筋肉量から診断されたサルコペニアでは喫煙,運動不足,総エネルギー摂取量の不足,たんぱく質・分岐鎖アミノ酸不足,自覚的健康が良くないことなどがリスクになっていた.65歳以上のみを対象とした身体機能からの診断されたサルコペニアでもDXAでの診断の場合と同様に検討を行った.喫煙がリスクになっており,総エネルギー摂取量,ビタミンD,たんぱく質,分岐鎖アミノ酸摂取が意にリスクを下げていたが,身体活動との関連は有意ではなかった.
  • 金 憲経
    2012 年 49 巻 6 号 p. 726-730
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    虚弱に対する運動介入の効果,サルコペニアに対する運動,栄養補充の効果を検証するために,75歳以上の地域在住虚弱高齢者131名をRCTにより運動群66名,対照群65名に割り付け,運動群には週2回1回当たり60分間の運動指導を3カ月間行った.さらに,75歳以上のサルコペニア高齢者155名をRCTにより運動+アミノ酸群38名,運動群39名,アミノ酸群39名,対照群39名を配置し,運動群には週2回,1回当たり60分の運動指導を3カ月間,アミノ酸群にはロイシン高配合の必須アミノ酸を一日6 g補充する指導を3カ月間実施した.虚弱高齢者は正常群に比べて筋肉量,BMD,膝伸展力,歩行速度は低い値を示したが,痛み,転倒率,骨粗鬆症既往の割合は高かった.虚弱高齢者に対する運動指導によって,BMC,握力が有意に改善された.サルコペニア高齢者に対する介入効果は,四肢の筋量と歩行速度は運動群,アミノ酸補充群,運動+アミノ酸補充群で有意に改善されたが,筋力は運動+アミノ酸補充群のみで有意に改善された.これらの結果をまとめると,運動指導によって虚弱高齢者のBMCや筋力は有意に改善されたが,サルコペニア高齢者の筋量や筋力アップのためには運動+必須アミノ酸補充の介入が有効であることが強く示唆された.
原著
  • 小林 義雄, 長谷川 浩, 守屋 佑貴子, 輪千 安希子, 中居 龍平, 神崎 恒一, 鳥羽 研二
    2012 年 49 巻 6 号 p. 731-739
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    目的:本邦の特発性正常圧水頭症(以下iNPH)診療ガイドラインでは,possible iNPHの診断基準を満たす症例に対して髄液排除試験を行うよう推奨されている.しかし頭部MRI所見が類似したアルツハイマー型認知症(以下AD)例がpossible iNPHの診断基準を満たすことも多いため,髄液排除試験の奏功率はあまり高くない.そのためADとiNPHの鑑別,およびpossible iNPHにおける髄液排除試験の有効性を予測できる簡便な定量的画像指標の探索を行った.方法:臨床的にpossible iNPHと診断され髄液排除試験を施行した18例(髄液排除試験有効12例,無効6例)と,外来通院中のprobable AD症例19例を対象とし,頭部MRI画像のVSRADのZスコア,Evans Index,側脳室前角脳幅比,鈎回間距離,内側側頭葉最小厚,海馬高,脈絡膜裂高,側脳室下角横径と縦径,シルビウス裂最大高の左右平均値を測定し,probable AD症例とpossible iNPH症例,およびpossible iNPH症例の髄液排除試験有効例と無効例で,それぞれ比較した.結果:probable AD症例に比べてpossible iNPH症例で,VSRADのZスコア,Evans Index,側脳室前角脳幅比,側脳室下角横径と縦径,シルビウス裂最大高が有意に高値であり,VSRADのZスコア,Evans Indexを除くカットオフ値はそれぞれ,0.31,6.0 mm,3.13 mm,7.6 mmであった.またpossible iNPH症例に対する髄液排除試験無効例に比べて有効例では,内側側頭葉最小厚が高値であり,そのカットオフ値は11.0 mmであった.結論:頭部MRIを用いた簡易な定量評価を行うことによりpossible iNPHとprobable ADの鑑別,possible iNPH症例に対する髄液排除試験の有効性の予測ができる可能性が示された.
  • 高井 逸史
    2012 年 49 巻 6 号 p. 740-745
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    目的:運動習慣を形成し継続するには運動に対するセルフ・エフィカシー(以下,運動SE)を高めることが重要である.本研究の目的は都市在住の男性高齢者を対象に運動SEに影響する要因を検討し分析した.方法:分析の対象となったのは男性高齢者69名(平均年齢74.2±2.0歳)であった.調査内容項目は家族形態,外出頻度,転倒既往,運動行動の変容ステージ(以下,変容ステージ),運動SE,転倒に対する自己効力感(FES),うつ傾向(GDS),自覚的健康感,IADL(老研式活動能力指標),運動機能面(5 m最大歩行時間,Chair Stand Test;CST)であった.変容ステージ間の群間比較を行い,運動SEと他の調査項目の相関関係,運動SEを従属変数とし多重線型回帰分析(ステップワイズ法)を行った.結果:変容ステージ別に比較した結果,運動SE,FES,GDS(p<0.01),CST(p<0.05)が有意であった.運動SEを従属変数とし多重線型回帰分析(ステップワイズ法)の結果,FES,GDS,老研式活動能力指標が独立変数として有意であった.この3つの要因からなるモデルは運動SEの6割(調整済みR2=0.61)説明できることが示唆される.結論:運動継続によりFESの向上,GDSの減少といった精神的健康が得られ結果,運動SEの向上が示唆される.運動SEを促進するには行動変容法による介入のみならず,FES,GDSを評価し配慮することが必要であることと考える.
  • 大西 玲子, 藤井 弘二, 津田 博子, 今井 克己
    2012 年 49 巻 6 号 p. 746-751
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    目的:栄養評価に必須である体重測定において,寝たきりの要介護高齢者では,ベッド式体重計や吊り下げ式体重計等特別な装置が必要となる.また在宅の高齢者では体重の計測そのものが困難であることが多い.そこで,身体計測値から体重推定式の算出を試みた.方法:対象者は要介護病棟・長期療養病棟に入院している患者のうち,同意を得られた74歳以上の要介護度4~5の165名(男性33名,女性132名)である.身体計測項目は,身長,体重,上腕周囲長,上腕三頭筋皮下脂肪厚,肩甲骨下部皮下脂肪厚,下腿周囲長,腹囲とした.結果:体重と各身体計測値および年齢との相関関係を検討したところ,男性では腹囲(r=0.891,p<0.0001),年齢(r=0.779,p<0.0001),下腿周囲長(r=0.614,p<0.0001)の順に,女性では腹囲(0.806,p<0.0001),上腕三頭筋皮下脂肪厚(r=0.723,p<0.0001),上腕周囲長(r=0.662,p<0.0001)の順に体重と強く相関することが分かった.重回帰分析により求めた体重推定式は男性では体重=0.660×腹囲(cm)+0.702×下腿周囲長(cm)+0.096×年齢(歳)-26.917(R2=0.862,p<0.001),女性では体重=0.315×腹囲(cm)+0.684×上腕周囲長(cm)+0.183×身長(cm)-28.788(R2=0.836,p<0.001)となった.結論:男性では体重の約86%,女性では約84%を説明できる推定精度の高い推定式が作成できた.男女ともに腹囲が独立変数として選択されたことから,内臓脂肪蓄積の指標として使用されている腹囲は,寝たきり要介護高齢者の体重を推定するうえで有効な身体計測項目と考えられた.
  • 小長谷 陽子, 渡邉 智之, 太田 壽城
    2012 年 49 巻 6 号 p. 752-759
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    目的:地域在住高齢者において,運動が認知機能にもたらす影響について検討する.1)ベースライン(BL)の認知機能と運動習慣との関連,2)BLの認知機能と4年後の認知機能との関連,3)BLでの運動習慣と4年後の認知機能との関連を調べる.方法:2006年および2010年にA県O市の65歳以上の全住民に生活実態調査を行った.内容は疾患の有無,健康管理,自立度,家族や友人・近所との付き合い,経済状態,栄養や身体活動,社会活動,QOL等に関するものであり,回収率はそれぞれ62.1%,63.4%であった.同時に電話による認知機能検査(TICS-J)に協力を求め,それぞれ2,431人,2,975人から有効な回答を得た.両年ともにTICS-Jを受けた1,040人について,生活実態調査のなかの運動に関する項目と認知機能との関連を解析した.結果:BLでは,認知機能正常群は870人(年齢:75.87±4.96歳,平均教育年数11.05±2.41年),低下群は170人(79.19±6.22歳,9.61±2.23年)であった.低下群は正常群に比べ,年齢は有意に高く(p<0.001),教育年数は有意に短かった(p<0.001).TICS-Jの得点は正常群では36.02±1.89(mean±SD)点と低下群30.19±2.25点より有意に高かった(p<0.001).BLでは,移動能力はModel 1(調整なし)でOR=0.514(p=0.029)と,移動能力に支障がない者は,支障ある者に比べ,認知機能低下リスクは有意に軽減していた.歩行速度は,他の人より速い者では,OR=0.392(p<0.001),同じ者では,OR=0.357(p<0.001)と,いずれも歩行速度が遅い者に比べ,認知機能低下リスクの有意な軽減を示した.BLの点数が41点満点の人には4年後の認知機能低下者はおらず,32点以下の群では低下者は24.7%と,33点以上の群で低下した人(9.9%)に比べ有意に多かった(p<0.001).BLで認知機能正常の人の,4年後の認知機能と運動・身体活動との関連性は,歩行速度が速い者では調整なしのOR=0.423(p=0.004)および同じ者ではOR=0.355(p=0.003)と,遅い者より認知機能低下に対する有意なリスク軽減を示した.運動頻度では,週3~4回運動する者で,OR=0.401(p=0.030)と有意な関連を示した.結論:運動機能,特に歩行速度は認知機能およびその維持に関連する要因である.
  • 田中 美加, 久佐賀 眞理, 牛島 佳代, 渡辺 知保
    2012 年 49 巻 6 号 p. 760-766
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    目的:転倒予防対策は介護予防において欠かせない対策の一つである.転倒事故を防止するためには,ハイリスク者のリスク因子を低減させることに焦点を当てた研究が必要であるが,未だ十分に行われているとは言えない.そこで本研究では,地域在住高齢者を対象に,抑うつと簡易転倒リスクスコアによって評価された転倒リスクとの関連について調べた.方法:農村部の1つの村に居住する65歳以上の高齢者全員(563名)を対象とし,郵送による自記式質問票調査を行った.基本属性として性,年齢を,また健康状態に関する項目として,転倒に関連するとされる疾病の治療の有無と睡眠薬の使用状況,認知機能,身体機能について調査した.抑うつの評価には高齢者用うつ尺度短縮版を使用した.転倒リスクの評価には簡易転倒リスクスコアを用いた.抑うつと転倒リスクとの関連の強さは,多重ロジスティック回帰モデルを用いて調べた.結果:未調整のモデルや転倒リスクと有意な関連を認めた要因で調整したモデルと同様,全ての要因(年齢,性,循環器系疾患や筋骨格系疾患,眼疾患,精神行動障害,神経系疾患の現病歴,睡眠薬の使用,認知機能障害)で調整した最終モデルにおいても,抑うつと転倒リスクとの間に有意な関連が認められた.最終モデルにおいて,抑うつが認められる場合に簡易転倒スコアで転倒リスクありと評価されるオッズ比は2.28(95%信頼区間:1.31~3.96)であった.結論:本研究は地域在住高齢者において,抑うつと転倒リスクが関連することを示した.本研究は,抑うつに対する対策が転倒ハイリスク者のリスクを低減させ,結果的に転倒の予防につながる可能性を示唆している.
  • 留畑 寿美江
    2012 年 49 巻 6 号 p. 767-774
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,尿排泄機能に与える加齢の影響を調べるために,膀胱容量,排尿量,平均尿流率ならびに残尿量を用いて若年女性と高齢女性の自然な排尿状態下における蓄尿および排尿機能を比較した.方法:排尿機能障害のない高齢女性6名(平均年齢64歳)及び若年女性12名(平均年齢22歳)を対象とした.飲水(500~700 ml)後にみられる尿意出現時の膀胱容量,排尿量,尿排出時間,平均尿流率および残尿量を測定した.各項目について,初発尿意時と最大尿意時に分けて実験を2回実施した.膀胱容量を超音波測定機器を用いて非侵襲的に測定した.平均尿流率は排尿量/尿排出時間の式から求めた.残尿量は膀胱容量から排尿量を引いた値として算出した.結果:最大尿意時における若年女性群の膀胱容量は576 ml,高齢女性群の膀胱容量は505 mlであり,両群間で有意な差はなかった.若年女性群の排尿量556 mlは高齢女性群418 mlに対し有意に多く,逆に高齢女性群の残尿量88 mlは若年女性群34 mlよりも有意に多かった.最大尿意時において,若年女性群と高齢女性群は同等の平均尿流率(16 ml/s)を示したにも関わらず,高齢女性群において排尿量は少なく残尿量が多かった.若年女性群では膀胱容量に比例して尿排出時間は延長したが,高齢女性群では膀胱容量に関わらず尿排出時間が変化しなかった.高齢女性群では尿排出時間は延長されないため,膀胱に貯留した尿を排出しきれなかった.結論:高齢女性において蓄尿機能ならびに尿排出速度は若年女性と同様に維持されているが,膀胱収縮は膀胱容量に比例して持続しないため膀胱に貯留した尿を排出しきれず残尿が多いと考えられる.
  • 萩原 のり子, 井林 雪郎
    2012 年 49 巻 6 号 p. 775-782
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    目的:人口の高齢化に伴い大腿骨近位部骨折患者の受傷年齢は年々高齢化しており,近年では90歳以上の超高齢患者を経験することも稀ではない.大腿骨近位部骨折の予後は高齢者ほど不良であるが,その一因として高齢者は入院中に低栄養を来たしやすく,これに関連した合併症が日常生活活動(ADL)の改善を妨げることが指摘されている.そこで,超高齢大腿骨近位部骨折患者の入院リハビリテーションにおいて,栄養サポートチーム(NST)の介入によるリハビリテーション転帰を機能的自立度評価表(FIM)を用いて後方視的に検証した.方法:対象は当院でNST導入前および導入後に入院リハビリテーションを実施した大腿骨近位部骨折患者のうち,入院時の年齢が90歳以上の栄養障害患者40例(男性3例,女性37例,平均年齢93.3±2.7歳)とした.NST導入前後の2群間でFIMを用いてADL改善度を検証するとともに,退院転帰を比較した.また,低栄養の頻度は要介護度に依存することから,入院時FIM得点が54点以下の低ADL患者に限定して同項目を比較した.結果:対象者の内訳はNST導入前18例(非NST群),NST導入後22例(NST群)であった.入院時の栄養指標はいずれも両群で有意差なかったが,FIM利得,FIM効率はNST群で有意に高く(p<0.01),退院時歩行能力もNST群で良好であった(p<0.05).入院時低ADL患者においてもNST群でFIM利得,FIM効率が有意に高く(p<0.01),退院時歩行能力も良好であった(p<0.05).非NST群では低ADL患者でリハビリテーション転帰が有意に不良であったが,NST群ではADLレベルによる有意差を認めなかった.結論:一般的に栄養不良患者は予後不良な経過を辿りやすいが,今回の研究ではNSTの介入によりリハビリテーション効果や歩行能力に有意な改善がみられており,NSTによる多職種介入の有効性を示唆する結果と考えられた.また,入院時のADLが低い高齢患者においても,適切な栄養管理により有意な改善が期待できると考えられた.
症例報告
  • 坂本 直治, 饗庭 三代治, 高橋 美妃, 櫻井 貴子, 梁 広石, 津田 裕士
    2012 年 49 巻 6 号 p. 783-787
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.2006年11月頃から電灯の消し忘れなどの認知症症状が出現.2007年5月に1~2分の意識消失発作を伴う痙攣があり,再び8月にも痙攣発作を生じ他院に緊急入院した.陳旧性脳梗塞を認めたことから症候性てんかんと診断され,抗てんかん薬の投与を受け退院.退院後から急速に認知症が悪化し,12月27日に認知症疾患専門病棟へ入院となった.入院時には身体的な異常は認めず,血液検査はLDHとCRPの軽度上昇を認めるのみで,精神的には夕方を中心に周辺症状を認めた.MRIでは右頭頂葉背側部に脳梗塞病変,大脳半球深部白質のラクナ梗塞および脳萎縮を認めた.向精神薬による治療を行っていたが,2008年1月31日突然38℃台の発熱があり,その後持続した.炎症所見は軽微で,感染を疑わせる所見は認められず,血中可溶性IL-2レセプターが6,430 U/Lと上昇するのみであった.ガリウムシンチグラムでは,椎体骨,肋骨,骨盤骨,両側肺および脾臓への集積増加を認めた.リンパ系悪性腫瘍を疑ったが,表在および胸・腹部のリンパ節腫大は認めなかった.2月中旬に突然の低酸素血症,血小板減少,フィブリン分解産物上昇があり肺血栓塞栓症が疑われたが,胸部造影CTでは異常所見を認めなかった.骨髄穿刺では,リンパ系細胞の浸潤は認めず,血球貪食症候群の所見であった.2月下旬に新たな脳梗塞を発症し,経過から種々臓器の微小血管閉塞を生じる血管親和性細胞型リンパ腫の可能性が高いと考え,プレドニゾロン60 mgを投与しつつ皮膚生検を予定したが,2月25日突然病態が悪化し死亡した.剖検所見では胸・腹部の臓器の細動脈,毛細血管,細静脈の血管内にはCD20により免疫染色される大型B細胞リンパ腫の細胞が充満していた.脳病変は未確認だが,他臓器同様の病変が脳血管にも存在したことは十分に推測され,原因不明で認知症の急速な増悪を認めるときには,当疾患を疑う必要性を示唆する症例であった.
特別報告
  • 厚生労働科学研究補助金(長寿科学総合研究事業) 高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究研究班
    2012 年 49 巻 6 号 p. 788-805
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/24
    ジャーナル フリー
    サルコペニアの定義や診断は,国際的合意のないままで推移していたので,欧州から統一見解が提示された意義は大きく,我が国のサルコペニア研究発展の一助としてそれを監訳した.European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)は,加齢によるサルコペニアについての実際的な臨床定義と診断基準の統一的見解を開発した.
    EWGSOPは,科学的証拠に基づく答えを導くために医学文献を用いて,以下の問いを設定し,回答した.:(i)サルコペニアとは何か?(ii)サルコペニアを規定するパラメータは何か?(iii)どのような変数がこれらのパラメータを反映するか?また,どのような測定方法やカットオフ値を用いるべきか?(iv)サルコペニアはカヘキシア,虚弱,そしてサルコペニア肥満とどのように関連しているか?
    サルコペニア診断のために,EWGSOPは,筋肉量低下および筋力低下の二者の存在を用いることを推奨する.EWGSOPはこれらの特性を用いて,さらなる概念として,「プレ・サルコペニア」,「サルコペニア」そして「重症サルコペニア」を規定している.EWGSOPは,筋肉量,筋力および生活機能に関する特有の変数の測定に用いられる測定機器について広汎なレビューを行った.本論文は,サルコペニアを規定するために現在用いられているデータの性および年齢によるカットオフ値をまとめ,高齢者に認められるサルコペニアの症例から,歩行速度,握力および筋肉量の測定に基づいてアルゴリズムを示し,さらに研究のための主要な領域および副次的領域についてリストを提示した.
    本論によりサルコペニアの実用的定義が採用され,CGA(高齢者総合的機能評価)に含められることになれば,次のステップはサルコペニアの自然経過の規定と効果的な治療法の開発と確立ということになる.
Letters to the Editor
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