2012年度同時改定は,上流の高度急性期から中下流の慢性期を通って海という在宅への一本の幹線道路が作られた.そしてその道を渋滞なく患者が通過するように努力している機関は評価し,意図的に渋滞を起こそうとしている機関は明らかに評価しないというベクトルを示した.
急性期病院における平均在院日数は10日以内にするべきであり,急性期治療後の患者は慢性期医療の対象となる.そうなると従来の急性期治療が担ってきた後半の2/3を慢性期病床が担うことになる.すなわち急性期治療機能を持った慢性期病院でなければ対応は困難である.日本慢性期医療協会では,慢性期病院における急性期機能として,1.緊急送迎,2.緊急入院,3.緊急画像診断,4.緊急血液検査,5.緊急処置の5つを提示している.
アメリカの医療体制は,日本の高度急性期病床にあたるSTACと,高度急性期病床での治療を終えた後の患者を受け入れるLTACがある.LTACのような病床を日本では,厚労省は亜急性期病床としているが,亜急性期病床や回復期病床は,改善して退院できる見込みのある患者を診るところであり,多臓器不全,人工呼吸器装着患者などの治療の必要な患者を治療することは困難であり,日本でもアメリカのLTACのような概念が必要である.
日本慢性期医療協会では,慢性期病床群という新たな概念を提示した.慢性期病床群には,アメリカのLTACのような,ある程度長期に渡るが急性期機能を持つ長期急性期病床のほかに,回復期病床,長期慢性期病床,障害者病床が含まれる.
今後在宅療養を進めていくためには,在宅でいる間に急性増悪した場合は,速やかに後方病院に支援を求めて画像診断や検査を行い,症状の治療のために短期間入院して,改善して再び在宅に戻すほうがより長く快適に在宅療養を継続できる可能性が高い.24時間医師が常駐している病院と協力し,慢性期医療が地域の中で在宅医療の後方支援病院としてしっかり機能していく体制作りが必要である.
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