日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
50 巻, 5 号
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目次
第55 回日本老年医学会学術集会記録
会長講演
教育講演
シンポジウム3(市民公開講座):高齢者の終末期医療
パネルディスカッション3:せん妄は防げるHELP プログラム(Hospital Elder Life Program)の理論と実践
原著
  • 枝広 あや子, 平野 浩彦, 山田 律子, 千葉 由美, 渡邊 裕
    2013 年 50 巻 5 号 p. 651-660
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/13
    ジャーナル フリー
    目的:認知症高齢者では,食事の自立が低下することにより,食事量の減少,低栄養,脱水および免疫機能の低下,さらなる認知機能の低下や,誤嚥性肺炎および死亡率の上昇が起こることが知られている.しかし認知症高齢者の食行動障害の病態および重症度別把握は不十分であり,介護現場では食事の自立支援に苦慮している現状がある.そこで本研究は,認知症高齢者の多数を占めるアルツハイマー病(以下AD)と血管性認知症(以下VaD)を対象に,認知症の重症度別に食事に関する行動障害を比較分析することで,ADとVaDにおける食行動の特徴を明らかにすることを目的とした.方法:対象者は,施設入所の認知症高齢者計233名(AD150名,VaD83名)とした.対象者に対し食行動調査と認知機能検査,神経学的検査,生活機能調査,栄養学的調査(MNA-SF)を行い,AD,VaDの2群について食行動について詳細な検討を行った.結果:食事に関連した行動障害は重度認知症の者ほど増加する傾向がみられた.一方,「リンシング・ガーグリング困難」「嚥下障害の徴候」の認知症重症度別の出現頻度は,ADとVaDで違いがあった.軽度認知症ではVaDはADに比較して食事に関連した行動障害の出現頻度が高かった.ADでは食事開始困難や注意維持困難,巧緻性の低下等の認知機能障害の影響が大きい項目の出現が重度認知症において顕著にみられた.一方VaDの食事に関連した行動障害と嚥下障害は,認知症の重症度との関連は認めらず,軽度認知症でも神経脱落症状に起因した嚥下障害が認められた.結論:ADとVaDはどちらも認知症でありながら,食事に関連した行動障害の出現頻度が大きく異なっていた.認知症背景疾患や重症度による相違点を考慮した効果的な支援の確立が望まれる.
症例報告
  • 中田 頌子, 石川 宏明, 田地 広明, 寺本 信嗣
    2013 年 50 巻 5 号 p. 661-666
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/13
    ジャーナル フリー
    症例は,85歳,女性.発熱,意識障害を主訴に来院した.来院4日前に39度の発熱で当院救急外来を受診.A型インフルエンザウイルス抗原陽性にてインフルエンザの診断で,オセルタミビルが処方された.その後,解熱していたが,受診3日後に,体温は36.9度であったが,呼びかけへの反応が悪いため家人ともに再度救急外来を受診した.胸部CT検査では,両側に広範な浸潤影を認め,一部に誤嚥を示唆する比較的大きい結節影を複数認めた.11年前に胃切除の既往があり,急速に発症した臨床経過と誤嚥を疑い,胃切除後誤嚥性肺炎と診断した.入院当日,気管支鏡下に異物除去と吸痰を試み,気管内採痰で,肺炎球菌,Morganella morganiiを含む複数菌を検出した.治療は,Sulbactam/Ampicillin単剤投与が奏効した.来院時は空気呼吸下でSpO2 60%,酸素投与下でもSpO2 80%前後の低酸素血症であったが,1週間で改善し,酸素投与不要となり退院した.これらは,消化液逆流誤嚥が急性の低酸素血症,肺浸潤影の悪化に関与していたことを示唆するものと考えられる.今回我々は,インフルエンザ感染後に胃切除後誤嚥性肺炎を発症したと考えられる高齢者症例を経験した.本例では,気管支鏡挿入時にも咳反射を含む上気道反射は著明に低下しており,胃切除による下部食道括約筋機能障害患者にインフルエンザ感染で全身予備能が低下し,肺炎発症に至ったと考えられる.高齢者のインフルエンザ感染では,インフルエンザ治療のみならず,続発する誤嚥性肺炎に対する注意も必要と考えられる.
特別記事
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