日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
51 巻, 1 号
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目次
第28回日本老年学会総会記録
会長講演
シンポジウム1:老年医学における新たな展開~注目される最近の動き~
シンポジウム2:更なる健康長寿をめざして:超高齢社会における老年学の役割
  • 葛谷 雅文
    2014 年 51 巻 1 号 p. 46-48
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/18
    ジャーナル フリー
  • 田高 悦子
    2014 年 51 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/18
    ジャーナル フリー
    わが国では,今後,独居高齢者が急増する.65歳以上の男性世帯主のうち独居の割合は,05年の11.0%から30年には21.5%になると推計されており,男性高齢者の5人に1人は独居となる.しかしながら男性独居高齢者は女性独居高齢者に比してセルフケアや生活習慣に課題を有しやすく,また他者や地域社会との交流が乏しくなりがちで社会的孤立のリスクがあることが指摘されている.このような中で,我々は,男性独居高齢者の健康長寿を支えるケアのあり方を講ずる立場から,すなわちその人がその人らしくできるだけ長く住み慣れた地域で自立した生活を維持するための方策の確立を目指す立場から,高齢者の生活習慣と社会的交流の要因に着眼した,地域を基盤とする健康教育プログラムを開発し,男性独居高齢者のセルフケア能力の向上ならびに社会的交流に対する動機付けに一定の有効性を確認した.今後,わが国における一人ひとりの高齢者の健康長寿を目指すとともに,豊かな超高齢社会を実現するためには,地域を基盤とした高齢者個人と地域社会双方への両輪的なアプローチについて学術的にも施策的にも推進することが必要である.
  • 井上 剛伸
    2014 年 51 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/18
    ジャーナル フリー
    目的:本稿では,超高齢社会の課題解決のために役立つ学問分野の一つとして,ジェロンテクノロジー(gerontechnology)を紹介し,その推進のための方策を示すことを目的とする.方法:ジェロンテクノロジーは,ジェロントロジー(gerontology)とテクノロジー(technology)を組み合わせた言葉であり,老化に関する科学と近代技術の融合領域を意味する.本稿では,ジェロンテクノロジーの市場規模の大まかな予測をたて,さらに,認知機能の低下した高齢者の生活を支えるためのIT技術,移動を支えるパーソナルモビリティー,ユニバーサルデザイン製品の動向について概説する.さらにそれらをふまえ,ジェロンテクノロジー推進のための方策を考察することとした.結果:福祉用具の市場規模は約1兆2,000億円であり,共用品の市場規模は,1995年に4,869億円であったものが,2010年には3兆6,324億円と増加している.支援機器の分野では,各種のIT技術を駆使した機器が開発・普及の兆しを見せている.情報支援ロボットは,認知症高齢者との会話を通して,日付やスケジュールといった生活に必要不可欠な情報を伝えることができることが示されている.また,服薬支援器や探し物発見器などは市販品もあり,生活の中で役立つことが臨床評価の結果から示されている.ロボット技術を駆使したパーソナルモビリティーの開発・実用化も進められており,高齢者の移動の支援に役立つ可能性が示されている.ユニバーサルデザイン製品分野では,高齢者の特性を計測・把握することで,高齢者に使いやすい機器開発を促進する研究や規格化が進められている.結論:高齢者を支えるテクノロジーは着実に進歩している.これらの進歩を支えているのは,利用者である高齢者およびその生活場面を中心とした技術開発の促進であり,フィールド・ベースト・イノベーションの考え方が重要である.
  • 牧野 篤
    2014 年 51 巻 1 号 p. 57-59
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/18
    ジャーナル フリー
原著
  • 古戸 順子, 結城 美智子
    2014 年 51 巻 1 号 p. 60-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/18
    ジャーナル フリー
    目的:山間地域在住高齢者の円背保有状況と,円背高齢者における日常生活動作に対する自己効力感および健康関連QOLとの関連,さらに1年後の変化について検討した.方法:山間部に在住する65歳以上の高齢者に参加を依頼し,円背指数計測及び,日常生活動作に対する自己効力感と健康関連QOLについて質問紙を用いた面接聞取り調査を実施した.初回調査時と追跡時のいずれも参加した155人(男性68人,女性87人)を分析対象とし,円背指数13.0以上を円背群,13.0未満を非円背群とした2群間において各要因との関連及び1年後の変化量について比較検討した.さらに,追跡時の円背指数の変化量に基づき,非円背群,円背維持・改善群,円背悪化群の3群に分け,各要因の変化量について比較検討した.結果:対象者の平均年齢は74.9±6.2歳,平均円背指数は初回調査時に10.0±3.7(2.4~20.0),追跡時に10.2±3.6(3.0~22.9)とわずかな上昇であったが,女性の65~69歳の者の1年間の増加量が大きく,他の年齢区分の中で最も高い平均円背指数を示した.円背保有者は20.6%であった.男性は,非円背群に比し円背群で健康関連QOL「日常役割機能(身体)」「日常役割機能(精神)」が有意に低かったが,1年後には,「日常役割機能(身体)」「活力」が有意に上昇していた.女性は,非円背群と円背群の2群間では有意差は認めなかった.しかし,1年後の円背悪化群は女性全体の9.2%を占め平均年齢は若く,健康関連QOL「活力」「社会生活機能」が3群間で有意に低下していた.結論:活動性の高い高齢者においては,円背姿勢があってもその姿勢を維持・改善した者は健康関連QOLが回復しているが,1年間で円背姿勢が悪化する者や高齢期初期の女性では健康関連QOLや日常生活動作に対する自己効力感が低下した.円背姿勢悪化者および高齢期初期女性の円背保有者の早期発見や追跡,下肢機能の低下防止対策が必要であることが示唆された.
  • 波戸 真之介, 鈴川 芽久美, 林 悠太, 島田 裕之
    2014 年 51 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/18
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,要支援1,2の認定を受けた高齢者(要支援群)と要介護1,2の認定を受けた高齢者(軽度要介護群)の判別に影響を与える要因を,心身機能及び生活機能の側面から検討することとした.方法:対象は全国の通所介護サービスを利用している高齢者3,198名(平均年齢82.0±6.5歳,要支援群:1,129名,軽度要介護群:2,069名)であった.調査項目は,握力,Chair stand test 5-times,開眼片足立ち,歩行速度,Timed "up & go" test,Mental status questionnaire(MSQ),Functional independence measureの運動項目(以下,FIM-M)とした.FIM-Mはすべての項目が6点以上である者を自立群,1項目でも5点以下の項目がある者を介助群として対象者を2群に分類した.統計解析は,要介護状態(要支援群/軽度要介護群)を従属変数,各調査項目を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:要支援群と軽度要介護群の判別において,独立して影響を与える変数として性別,握力,MSQ,FIM-Mが抽出され(p<0.05),FIM-Mのオッズ比は2.47(95%信頼区間;1.89~3.24)であった.結語:要支援と軽度要介護群の判別には,日常生活活動の自立の有無が強く影響を及ぼすことが明らかとなった.介護予防の推進におけるADL評価は,状態の詳細を把握し,介入目標を定めるためにも重要である.
  • 北村 伸, 中村 祐, 本間 昭, 木村 紀幸, 浅見 由美子
    2014 年 51 巻 1 号 p. 74-84
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/18
    ジャーナル フリー
    目的:メマンチン塩酸塩(メマリー®)は本邦では2011年6月に発売され,中等度および高度アルツハイマー型認知症に対して使用されている.今回,2002年から2011年までに本邦で実施したメマンチン塩酸塩の種々の臨床試験の結果を集計して,メマンチン塩酸塩20 mg/日投与の長期忍容性と有効性を検討した.方法:2002年から2011年までに実施したメマンチン塩酸塩の臨床試験のうち,メマンチン塩酸塩を投与した702名の被験者を対象に,安全性およびMMSEの推移を検討した.結果:メマンチン塩酸塩の平均投与期間は798.1日,最長は3,373日(約9年3カ月)であり,52週ごとの投与期間別に集計した有害事象発現率は71.0~88.9%,副作用発現率は5.6~32.1%であった.有害事象,副作用ともに発現率と投与期間との間に関連性は認められなかった.また,長期投与に特有と考えられる副作用の発現は認められなかった.試験の途中で中止した主な理由は「有害事象」であったが,長期に及ぶ投与期間中では,加齢や原疾患の進行に随伴する有害事象の発現,および在宅介護環境の変化や原疾患進行に伴う施設入所による投与中止等,被験者の背景的な要因による有害事象や投与中止例が多く集積された.メマンチン塩酸塩を投与した被験者のMMSEスコアの推移は,過去に報告されたメマンチン塩酸塩未投与時のMMSEスコアの推移と比較して緩やかな低下であった.結論:メマンチン塩酸塩20 mg/日の長期投与時の忍容性に問題は認められなかった.また,MMSEスコアの推移を検討した結果では,メマンチン塩酸塩が長期に亘って認知機能の悪化を抑制する可能性が示唆された.
症例報告
  • 栢森 健介, 藤谷 順子, 河内 正治
    2014 年 51 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/18
    ジャーナル フリー
    高齢者の夜間頻尿は不眠や転倒のリスクであり,また介護負担ともなる.頻尿には神経因性膀胱,前立腺肥大,骨盤底筋筋力低下などさまざまな要因があるが,夜間頻尿には臥床による腎臓循環血液量の増加やバゾプレシンの日内変動の消失も指摘されている.今回我々は就寝前にデスモプレシンスプレーを使用することによって夜間頻尿が激減した一例を経験した.同症例では入院時より夜間頻尿があり,それによる本人のQOL低下は著しいものであった.また看護負担も大きなものであった.飲水制限や眠前導尿,抗コリン薬,ナイトバルンなど夜間頻尿に対して様々な対策を講じたがいずれも改善には至らなかった.就寝前にデスモプレシンスプレーの使用を開始してから夜間排尿回数が減少し,本人のQOLも著しく改善した.また周囲の看護負担も同時に軽減した.デスモプレシン使用は時として副作用に低ナトリウム血症を起こしうるが,今回経過中には認めなかった.夜間頻尿の各種治療に対して治療抵抗性のある場合,デスモプレシンスプレーの使用は治療の選択肢の1つになると考えられた.
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