目的:2009年1月1日から2009年12月31日までの一年間に入院した全症例5,296例中65歳以上の3,034例について,感染症による発熱のために血液培養が施行された症例についてretrospectiveにその実態を検討した.
方法:血液培養時の採血の状況,検出された細菌の種類,菌血症の原因となった原因感染部位からの検出細菌との比較について検討した.発熱のために入院して入院から48時間以内に血液培養を行った市中型と,48時間以降の入院中に発熱したために血液培養を行った院内型とに区別し,両者間の検出菌の差についても検討した.
結果:血液培養は638例(男334例・女304例)に施行され,平均年齢は80.8±7.3歳であった.2セット採血されていたのは389例(61.0%)であった.細菌を検出したのは182例(28.5%)であり,市中型が66例,院内型が116例であった.細菌は259検体(25.1%)で陽性であった.動脈血は153検体で,静脈血は106検体で陽性であり,動脈血で有意(P<0.001)に高頻度に細菌を検出した.グラム陽性菌が57.2%,グラム陰性菌が42.8%であり,院内型でグラム陽性菌が僅かながら高頻度であった.真菌は,院内型でのみ11検体検出された.検出菌種は,市中型では
E. coli,
CNS,
S. aureus,
K. pneumoniaeの順で,院内型では
S. epidermidis,
B. cerreus,
E. coliの順であった.菌血症の原因となった感染病巣からの検出菌との一致率は,尿路感染症,中心静脈カテーテル感染症で他よりも高かった.
結論:血液培養での細菌検出率は28.5%で,厚生労働省院内感染対策サーベランス事業での報告(17.5%)より高頻度であった.汚染細菌を除外出来ていない点は残るが,高齢者の場合には静脈血では採取血液量を十分に確保できず,動脈血を用いることで検出率が上昇する可能性が示唆された.検出菌については,尿路感染症および中心静脈カテーテル感染症とで菌血症の原因病巣からの細菌検出結果と高い頻度で一致しており,高齢者においても種々の感染症での血液培養は有用であると考えられた.
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