日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
53 巻, 1 号
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目次
原著
  • 高橋 美妃, 饗庭 三代治, 櫻井 貴子, 坂本 直治, 梁 広石, 津田 裕士, 塩路 直子, 礒沼 弘
    2016 年 53 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
    目的:身体疾患を合併する認知症高齢者の実態を分析し,今後の増加を踏まえてどのような対応が必要であるかを明らかにすることを目的とした.方法:順天堂東京江東高齢者医療センターの認知症治療専門病棟に入院して合併する身体疾患の治療を行い,2009年4月から2011年3月までの2年間に退院した認知症高齢者についてretrospectiveに検討した.結果:対象症例は390例(男144例・女246例)で,平均年齢は80.5±8.1歳であった.認知症の種別は,アルツハイマー型213例,血管性29例,混合性46例,その他102例であった.入院の原因となった身体疾患は,悪性新生物65例,呼吸器疾患57例,腎泌尿生殖系疾患50例,外傷・骨折41例,消化器系疾患39例,循環器系疾患37例,神経系疾患26例,その他75例であった.家庭からの入院が281例(72.1%),居宅系施設からが71例(18.3%)であった.死亡例61例を除く全生存退院例329例の退院場所は,家庭が160例(48.6%),居宅系施設が74例(22.5%)であった.家庭から入院した生存退院例239例では,家庭退院157例(65.7%)は家庭以外退院例に比較して,年齢が有意(P<0.008)に若く,入院期間が有意(P<0.000)に短く,N式老年用日常生活動作能力評価尺度(N-ADL)が入院時(P<0.013)・退院時(P<0.000)共に有意に良好であった.N-ADLは,家庭以外退院例では排便を除いて退院時は入院時より有意(P<0.009)に悪化していた.経口摂取可能例が家庭退院例で有意(P<0.025)に多く,独居例で家庭退院例が有意(P<0.018)に少なかった.結論:身体疾患合併認知症高齢者の身体疾患の治療に当たっては,入院当初から入院期間を可能な限り短縮し,入院中にN-ADLの低下を可能な限り来さないように配慮し,食事の経口摂取の継続を工夫することが,家庭での療養を可能にする要因であることが示唆された.
  • 杉本 大貴, 堤本 広大, 中窪 翔, 村田 峻輔, 土井 剛彦, 小野 玲
    2016 年 53 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/03
    ジャーナル フリー
    緒言:本邦では高齢者の約3割が肥満であるとされ,その主な原因は身体活動量の減少とされている.高齢期の肥満は,歩行能力低下につながるとされる.一方で,身体活動量の減少も歩行能力低下を引き起こす.このことから身体活動量の減少による歩行能力低下には肥満が媒介的役割をしていると考えられるが,身体活動量,歩行能力,肥満の関係は明らかになっていない.本研究の目的は,地域在住高齢者の身体活動量と歩行能力の関連性に肥満が媒介的役割を果たしているかを検討することである.方法:解析対象者は,Mini-Mental State Examination 24点未満,脳卒中,膝・股関節疾患,関節リウマチの既往のある者を除いた地域在住高齢者56名(男性28名,女性28名,平均73.3±4.1歳)とした.肥満度の指標はBody Mass Index(BMI),腹囲を測定した.歩行能力は通常歩行速度を測定し,身体活動量は活動量計を用いて一日の平均歩数を算出した.その他,運動習慣の有無,握力を評価した.肥満度の指標,身体活動量,歩行能力の3つの関係はBaron & Kenny(1986)が紹介した媒介モデルを作成し検討した.また,全身的脂肪蓄積を表すBMIと腹部脂肪蓄積を表す腹囲の歩行能力への影響を検討するため,従属変数に歩行速度,独立変数にBMIまたは腹囲を投入した重回帰分析を行った.結果:単変量解析にて平均歩数と通常歩行速度に関連が認められ(ρ=0.29,p<.05),肥満度の指標のうち腹囲のみ平均歩数と通常歩行速度に関連が認められたため,X(独立変数:平均歩数)-M(媒介変数:腹囲)-Y(従属変数:通常歩行速度)の媒介モデルを作成した.媒介分析の結果,X-Yの回帰係数がβ=0.29(p<.05)から腹囲投入後β=0.21(p>.05)に減少し,腹囲の通常歩行速度に対する効果が有意となり(β=-0.27,p<.05),X-M-Yの媒介モデルが成立した.また,腹囲と歩行速度の関連性は年齢,性別,平均歩数,握力で調整後も有意であった(β=-0.31,p<.05).結論:高齢者の身体活動量減少による歩行能力低下には,媒介因子として腹囲増大が関連していた.
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